育児休業を徹底解説!|人事が知っておくべき制度や仕組み、手続き等

「社内で育児休業を取りたい人が出てきたけれど、どんな手続きをすればいいか分からない…」「そもそもどれくらいの期間取得できるんだろう?」

出産に伴う育児休業、意外にきちんと仕組みを理解していない方も多いと思います。

そこで今回は、育児休業について制度の基本から、人事がおこなうべき手続き、社内の育休取得率向上のための情報をお届けします。

1.育児休業とは

育児休業とは、「養育する1歳に満たない子について、事業主に申し出ることにより取得できる休業」のことを指します。

育児休業の対象者は、

  • 対象労働者:労働者(日雇い労働者は除く)
  • 対象となる子:法律上の親子関係がある子(養子も含む)

となっており、有期契約労働者の場合、同一の事業主に1年以上雇用されていれば取得対象とみなされます。

1-1.育児休業と育児休暇の違い

育児休業と似た言葉として、育児休暇という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

育児休業と育児休暇、実は意味が大きく異なります。一番大きな違いは、法律で定められているか否かです。

育児休業は法的に整備されている制度ですが、育児休暇はあくまでも企業の裁量に任されています。

通常「育休」という場合は育児休業のことを指すと言われており、今回の記事では、育児休業にフォーカスしてご説明します。

1-2.取得可能期間

育児休業の取得可能期間は男女で異なり、女性は産後休暇を含めた1年間、男性は基本的に1年間、育児休業を取ることができます。

産後休暇とは、女性が出産後8週間の間で取得することができる休暇のことを指します。

しかし、場合によっては、子どもが2歳になるまで延長することも可能です。延長要件は以下の通りです。

  • 保育所等への入所を希望しているが、入所できない場合
  • 1歳以降子を養育する予定であった配偶者が死亡、負傷、疫病等により子を養育することが困難になった場合

この2歳までの延長は、条件を満たせば両親が同時に取得することも可能です。

1-3.知っておきたい制度一覧

育児休業の取得促進のために、政府は「パパ・ママ育休プラス」「パパ休暇」と呼ばれる2つの制度を設けています。利用することによって、全体の育休取得期間が延長されることがあります。

パパ・ママ育休プラス

父母どちらも育児休業を取得する場合、子どもが1歳2か月に達するまで育児休業の期間が延長される制度です。この延長した2か月間の育休取得は、基本的に父親分となります。

要件は以下の通りです。

☐配偶者が子が1歳に達するまでに育児休業を取得していること
☐本人の育児休業開始予定日が、子の1歳の誕生日以前であること
☐本人の育児休業開始予定日は、配偶者がしている育児休業の初日以降であること

1人当たりの育休取得可能最大日数は、産後休業含め1年間であることに変わりはありません。

パパ休暇

配偶者の出産後8週間以内に父親が育児休業を取得した場合には、特別な事情がなくても再度の育休取得が可能な制度です。取得要件は以下2つとなっています。

☐父親が子の出生後8週間以内に育児休業を取得していること
☐父親が子の出生後8週間以内に育児休業を終了していること

出産後8週間以内というのは、母親の産後休暇期間にあたります。このパパ休暇は、パパ・ママ育休プラスとの併用も可能です。

少し複雑ですので、ここからモデルケースを3つご紹介します。

(1)パパ・ママ育休プラスを利用

下の「8週」「1歳」などは、子どもの年齢です。

(2)パパ休暇を利用

(3)パパ休暇パパ・ママ育休プラスを併用

このように、制度を利用・併用することで様々な取得方法が実現します。

しかし、2021年6月3日の国会にて「育児・介護休業法」の改正案が可決され、これらの制度は変更になる可能性があります。

具体的には、男性も子どもの出生後8週間以内に4週間まで2回に分けて「産休」を取得できるようになり、また男女ともに育児休業を2回まで分割取得することも可能になります。

厚生労働省の公式サイトで最新情報をよくチェックするようにしましょう。

2.育児休業給付金について

育児休業期間中、企業から給付金などの補償をする義務はありませんが、国が給付金を支給する制度があります。これが「育児休業給付金」です。

受給のためには、育休取得者が勤務する会社による手続きが必要です。

2-1.受給資格

育児休業給付金の受給資格は、以下の通りです。

☐1歳未満の子どもがいる
☐雇用保険の一般被保険者、または高年齢被保険者
☐育児休業開始前の2年間に、賃金支払い基礎日数が11日以上ある月が12か月以上ある
☐給付期間中の賃金月額のうち8割以上の金額が支払われていないこと
☐期間中の就業日数が月10日以下であること

一般的な正社員であれば以上の項目はクリアしていると考えられますが、有期雇用契約者の場合は以下2項目に該当している必要があります。

☐同一の事業主のもとで、1年以上雇用が継続している(ただし、この条件は2022年4月からなくなります)
☐子どもが1歳6か月までの間に、その労働契約が満了することが明らかでない

2-2.受給額の計算方法

育児休業給付金の受給額は、この式で求めることができます。

休業開始時月収(休業開始時賃金日額×支給日数)×67%

ただし、育休を開始して6か月経過したら50%となり、これは男女とも変わりません。

たとえば、平均月収25万の場合、

  • 25万×0.67=167,500円

育児休業の開始から6か月経過している場合は

  • 25万×0.5=125,000円

が1か月ごとに支給されます。

3.育児休業取得のために人事担当者がすること

ここまで、育児休業の基本的な制度の説明をしてきました。

ここからは、育児休業取得者が出た際に事業主や人事担当者がやるべきことについて解説します。

3-1.育児休業取得の全体的な流れ

出産にあたって、女性の場合は基本的に産前休暇、産後休暇、育児休業を経て復帰となります。

男性の場合、現在取得可能なのは育児休業のみです。

今回は、育児休業取得に関連した部分に絞って手続きを解説します。おおまかな流れは以下の図の通りです。

    3-2.人事担当者がおこなうべき具体的な手続き

    ここからは、さらに具体的な手続き内容について、流れに沿って解説します。

    ①~出産後

    従業員から育休開始予定日の1か月前までに書面で「育児休業申出書」を受け取り、「育児休業取扱通知書」を書面で交付します。

    ②育児休業中

    人事担当者は、育児休業期間中に

    • 社会保険の免除手続き
    • 育児手当金の受給資格の確認
    • 育児休業給付金の申出

    の3つをおこなう必要があります。

    まず従業員に「育児休業等取得者申出書」に必要事項を記入してもらい、人事担当者が年金事務所に提出をします。

    そして育児手当金の受給資格の確認をし、「育児休業給付金支給申請書」、「育児休業給付受給資格確認票」などをハローワークに提出します。

    給付金の申請は、2か月単位でおこないます。

    育児休業給付金の申請に関しての詳細は、ハローワークの公式サイトを参照してください(「育児休業給付について」ハローワークインターネットサービス:
    https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_continue.html)。

    ③育児休業終了後

    育児休業が終了し、従業員が会社に復帰することになったら、

    • 育児休業終了届の提出
    • 社会保険料の報酬月額変更の届出
    • 厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例の申し出

      の3つが必要になります。

      まず、1つ目の終了届は、育児休業終了予定日よりもはやく復帰する際に提出が必要になります。

      育児休業終了後、給与に変更がある場合は、2つ目の「社会保険料の報酬月額変更届の提出」をすれば、社会保険料を改定することができます。

      また、その後短時間勤務などにより月収が減った場合も、出産前のより高い標準報酬月額をその期間の標準報酬月額とみなしてくれる制度もあります。

      3つ目の「厚生年金保険期間標準報酬月額特例」の申し出を実施すれば、将来の年金額に影響が出ないようにすることが可能です。

      3-3.提出書類チェックリスト

      育児休業取得に際して、必要な書類は以下の通りです。

      ☐育児休業申出書
      ☐育児休業取扱通知書
      ☐育児休業等取扱者申出書
      ☐雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
      ☐育児休業給付受給資格確認票
      ☐育児休業給付金支給申請書
      ☐賃金台帳、労働者名簿、出勤簿又はタイムカード等
      ☐母子手帳など育児を行っている事実を確認できる書類

      1回の育休取得でも、多くの手続きが必要になります。書類の漏れがないよう、よくチェックしましょう。

      4.社内の育児休業取得率を上げるために

      ここからは、社内の育休取得率向上に役立つ情報をお届けします。

      4-1.育児休業取得率をめぐる動き

      社内の育児休業取得率が上がると、企業イメージのアップ、社員の帰属意識やモチベーションのアップなど、様々なメリットがあります。

      また、2023年4月からは、従業員が1000人を超える企業に育休取得率の公表を求めることが決定しています。

      そして、実際に出産を経験する女性だけではなく、最近は男性の育休取得率に関しても注目が集まっています。

      厚生労働省は「男性版産休」の制度案をまとめ国会で審議するなど、現在全国的に男性の育児休業取得率を上げようとする流れも見られます。

      4-2.現状の取得率について

      厚生労働省が発表した「令和元年度雇用均等基本調査」によると、2019年度の育児休業取得率は女性が83.0%に対し男性が7.48%でした。

      男性の育休取得率は平成20年の1.23%に比べると大きく増えましたが、いまだに女性とは大きな差があります。政府は2025年までに30%に引き上げることを目標に掲げており、まだまだ改善の余地があると言えます。

      (厚生労働省「令和元年度雇用均等基本調査」をもとに筆者が作成)

      4-3.国の施策

      育児休業取得促進に向け、政府は企業向けに以下のような取り組みを実施しています。

      利用することで助成金をもらえるため、人事担当者はチェックすることをおすすめします。

      両立支援等助成金

      男性が育児休業や育児目的休暇を取得しやすい職場風土づくりに取り組み、その取り組みによって男性労働者に育児休業や育児目的休暇を取得させた事業主に対して助成するシステムです。

      支給要件は以下の通り。

      • 男性労働者の育休取得
        • 男性が育児休業を取得しやすい職場風土づくりに取り組むこと
        • 男性が子の出生後8週間以内に開始する連続14日以上(中小企業は連続5日以上)の育児休業を取得すること
      • 育児目的休暇の導入・利用
        • 子の出生前後に育児や配偶者の出産支援のために取得できる休暇制度を導入すること
        • 男性が育児目的休暇を取得しやすい職場風土づくりに取り組むこと
        • 新たに導入した育児目的休暇制度を、男性が子の出生前6週間または出生後8週間以内に合計して8日以上(中小企業は5日以上)取得すること

      そのほか詳細は厚生労働省の特設ページにてご確認ください(「事業主の方への給付金のご案内」厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/index.html)。

      くるみん認定・プラチナくるみん認定

      企業が一定の条件を満たした場合、「子育てサポート企業」として認定するシステムです。「くるみん認定」、さらに優良企業を示す「プラチナくるみん認定」の2種類があり、商品や広告などへのマークの使用、日本政策金融公庫による低利融資などの優遇措置を受けることができます。

      支給要件は以下の通り。

      • 女性の育児休業取得率75%以上
      • フルタイム労働者の月平均時間外・休日労働45時間未満
      • 全労働者の月平均時間外労働60時間未満
      • 男性の育児休業取得率7%以上(プラチナは13%)
      • 男性の育児休業+育児目的休暇15%以上(プラチナは30%)

      そのほか詳細は、厚生労働省の特設ページにてご確認ください(「くるみんマーク・プラチナくるみんマークについて」厚生労働省:
      https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/kurumin/index.html)。

      5.企業の取り組み~取得率アップのための施策3選~

      では、実際に男性の育児休業取得率が高い企業では、どのような取り組みがされているのでしょうか?

      男性の育休取得率アップに成功した企業の事例を3つご紹介します。

      住友生命保険相互会社:「生産性ポイント」

      住友生命保険相互会社では、評価制度を変更し、短時間で高い成果を上げた人に高い評価がつく「生産性ポイント」を導入しました。

      長時間勤務することよりも、いかに効率的に成果を上げるかが重視されることによって、多様な働き方を実現させることができました。

      その結果、2019年に男性の育休取得率100%を実現しました。

      「「働き方改革企業 2019 特別賞(評価制度部門)」を受賞」住友生命株式会社:https://www.sumitomolife.co.jp/about/newsrelease/pdf/2018/190319a.pdf

      パシフィックコンサルタンツ株式会社:休暇中の過ごし方をシェア

      (左から2番目:パシフィックコンサルタンツ株式会社 代表取締役社長 重永智之氏)

      建設コンサルタントのパシフィックコンサルタンツ株式会社では、男性育休取得者に休暇中の過ごし方を取材し、社内WEBに投稿する取り組みを実施しました。

      それにより育児休業を取得した際のイメージが社員に共有され、取得を迷っている人の背中を押すことになりました。

      結果、2021年現在で取得率55%、取得日数は平均24日間となりました。

      「男性育休100%宣言会社が100社に!男性産休新設の法改正に向け問合せが殺到」PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000052805.html

      サカタ製作所:収入シミュレーション

      新潟にあるサカタ製作所では、対象者と上司や役員、人事の面談を行うことで取得を促しています。

      その中で、育休の取得期間や方法によって、約10パターンの収入シミュレーションを提示。これによって経済面での不安を取り除くことを目的としています。

      結果、2018年から男性育休取得率100%を達成しています。

      これら3つの例に共通しているのは、育休対象者の不安を取り除いていることです。

      具体的な収入や生活スタイルの参考例を知ることで、安心して育児休業を取得することができます。

      「サカタ流イクメン育成の取り組み」:https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/meeting/consortium/05/pdf/ikuji-3.pdf

      6.押さえておきたい「育児・介護休業法」

      先ほど、育児休業は法律で定められているとご説明しましたが、それが「育児・介護休業法」です。

      この法律は、育児休業だけではなくそのほかにも人事担当者が知っておくべき項目が書かれているため、育児関連に絞ってご紹介いたします。

      6-1.子の看護休暇(第16条の2~4)

      • 小学校就学前までの子どもいる場合、年5日を限度として取得できる
      • 子どもが2人以上いる場合は年10日取得できる
      • すべての労働者が取得可能
      • 時間単位での取得が可能(令和3年1月1日に改正されました)
      • 賃金の支払い義務はないが、時間単位で利用できる有給のこの看護休暇制度などを導入した事業主には、両立支援等助成金が支給される

      6-2.所定外労働(第16条の8~10)・時間外労働(第17条~18条の2)・深夜業(第19条~20条の2)の制限

      • 3歳に達するまでの子どもがいる者が請求した場合、所定外労働を制限
      • 小学校就学前までの子どもがいる者が請求した場合、月24時間、年150時間を超える時間外労働を制限
      • 小学校就学前までの子どもがいる者が請求した場合、深夜業(午後10時~午前5時)を制限

      6-3.所定労働時間の短縮措置等(第23条)

      • 3歳に達するまでの子どもがいる者について、短時間勤務の措置等を義務付け
      • 1日原則6時間

      6-4.不利益取扱いの禁止等(第23条の2)

      • 育児休業取得等を理由として解雇その他の不利益取扱いをすることを禁止
      • 事業主に、上司・同僚等からの育児休業等に関するハラスメントの防止措置を講じることを義務付け

      6-5.実効性の確保(第52条の2~6、第56条の2)

      • 苦情処理・紛争解決援助、調停
      • 勧告に従わない事業所名の公表

      最新の情報は厚生労働省のホームページで更新されるので、随時チェックしてください。
      (「育児・介護休業法について」厚生労働省:
      https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html

      7.まとめ

      育児介護休業法には、企業の努力義務として「育児休業等制度の個別周知」が定められています。これは、事業主が該当労働者に対して、個別に育児休業の制度概要を説明し、勧奨しなければならないというものです。

      そのため、人事担当者や事業主は育児休業の制度や仕組みをきちんと理解しておく必要があります。

      ぜひ、国による制度、社内でするべき手続きなどを把握したうえで、適切な制度の整備に取り組んでください。

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