介護休暇・介護休業とは|仕事と介護の両立を支援する休暇制度を詳しく解説 |HR NOTE

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介護休暇・介護休業とは|仕事と介護の両立を支援する休暇制度を詳しく解説

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昨今、日本では急速な高齢化が進む中で、働く従業員が介護のために離職を余儀なくされるケースが増加しています。

このように長年積み上げたキャリアを断念せざるを得ない「介護離職」は、企業にとっても会社を長年支えてきた優秀な人材を手放すという点で大きな損失につながっています。

これ以上「介護離職」を増やさないためには、企業側が「仕事」と「介護」の両立をできる体制を整える必要があります。

『家族の介護をしなければならないため、仕事と介護の両立が難しい。』

従業員からこのような申し出があったとき、会社としてどのように対応したらよいでしょうか。

本記事では、働く従業員の介護のために休みを取得できる法律制度である「介護休暇」「介護休業」について説明する中で、介護をしなければならない従業員に対する対応について解説します。

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1. 介護休暇とは | 仕事を続けながら休みを取得する

まず「介護休暇」から、説明いたします。

介護休暇とは、育児・介護休業法という法律で制定されている制度で、対象家族(事実上婚姻関係にある配偶者・父母・子供・兄弟姉妹・祖父母・孫および配偶者の父母など)が、高齢・怪我・病気などの理由により介護を必要とする状態になった時、従業員が取得できる法律制度です。

直接介護(食事や排せつなどの介助)だけでなく、買い物や役所の書類手続きなどの間接介護にも適用されます。

1-1. 育児・介護休業法の内容

育児・介護休業法(『育児休業・介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律』の略称)とは、厚生労働省が認めた制度で、育児や介護に携わる労働者について定められた法律です。

この育児・介護休業法では、労働者が介護を必要とするときに休みを取ることができるため、事業主は従業員からの介護休暇申請を拒むことはできず、また介護休暇を取得した理由で従業員を解雇することもできないと定められています。

従業員からこのような介護をともなう休みの申し出があれば、会社の人事総務では(有給休暇ではなく)「介護休暇」で対応しなければなりません。

1-2. 取得できる日数

介護休暇で取得できる日数は、1年間(年度を事業主が特に定めていない場合は、4月1日から翌年3月31日まで)で、通算して最大5日間取得でき、介護の対象者が2名以上の場合は10日間を取得できます。

半日単位の取得も可能なため、介護が必要な時に仕事を調整して休みを取ることができます。(令和3年1月1日より、介護休暇の取得に関わるルールが変更される見込みで、現行の「半日単位」取得から「1時間単位」取得へより柔軟に改正される予定です。)

1-3. 対象労働者

対象労働者は、要介護状態にある対象家族をかかえている従業員です。

正規雇用者はもちろんですが、パート・アルバイト・契約社員・派遣社員も取得できます。

ただし、下記のような従業員は取得できないので注意が必要です。

対象外の労働者
  • 雇用期間6カ月未満の従業員
  • 日雇いの従業員
  • 週の所定労働日数が2日以下の従業員
  • 介護休業申請後、3カ月以内に雇用が終了する従業員
  • 日の労働時間が4時間以下や半日単位での休暇取得が難しい業務に従事する従業員

2. 介護休業 とは| 介護が長期にわたる場合に

次に、介護休暇と比較される「介護休業」について説明します。

介護休業も介護休暇と同様に育児・介護休業法という法律で制定されており、対象家族が高齢・怪我・病気などの理由により、2週間以上の期間にわたり“常時介護”を必要とする場合に取得できます。

介護休暇との大きな違いは『取得できる日数』『給付金の有無』で、介護のために長期間休みを取得でき、その上で給付金を受給することもできます。

上記の通り、介護休暇は1年で5日間と短期間しか取得できないので、もし介護が長期にわたる可能性があれば、「介護休業」を申請する必要があります。

2-1. 取得できる日数

取得できる日数は介護休暇よりも長く、対象家族1名につき通算93日間の取得ができます。

分散して取得することもでき、最大3回に分けて取得が可能です。

2-2. 対象労働者

対象労働者は、雇用期間1年間以上で、介護取得日から93日経過しており、半年間に労働契約期間が満了しない従業員です。

より長い休みを取得できるため、取得条件も厳しくなっているので、この違いをよく把握しておきましょう。

ただし、下記のような労働者は取得ができないので注意が必要です。

対象外の労働者
  • 雇用期間1年未満の従業員
  • 日雇いの従業員
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

2-3. 介護休業給付金について

介護はいつまで続くのか先の見通しがつかないため、働く従業員には精神面だけでなく経済的な収入面の不安もあります。

しかし、もし下記の条件に当てはまれば、雇用形態に関わらず介護休業を取りながら「介護休業給付金」を受給できます。

  • 介護休業の開始日以前2年間以内に月11日勤務した月が12カ月以上あり、雇用保険に加入していること
  • 介護休業中に、休業開始前の1カ月あたりの給与の80%未満であること
  • 介護期間中の就業日数が月に10日以下であること
  • 休業の開始予定日から93日後も、雇用が引き続きあること

手続き

介護休業給付金の手続きは、基本的に勤務先の会社が管轄のハローワーク(公共職業安定所)に下記の必要書類をそろえて提出します。

  • 介護休業給付金支給申請書(従業員記入分)
  • 従業員が会社に提出した介護休業申出書
  • 休業開始時の賃金月額証明書
  • 介護対象家族の詳細(氏名・従業員との続柄・性別・生年月日などが確認できるもの)
  • 出勤簿もしくはタイムカードと賃金台帳
  • 支給先口座の写し

ハローワークでの処理が完了すると、会社に書類が戻ってくるので、人事総務担当者が該当の従業員へ郵送するしくみです。

支給金額

支給金額は、休業開始賃金日額×支給日数×67%です。

支給日数は30日ごとに区切り期間ごとに算出され、支給決定日から1週間ほどで指定の口座に振り込まれます。

ただし、介護休業中に賃金の支払いがあった場合、減額される場合もあります。

介護休業給付金のしくみについては、ハローワークのページに詳しく記載されています。
参照:https://www.hellowork.mhlw.go.jp/

3. 企業がチェックするポイント

短期間で時間や日によって休みを取得できる「介護休暇」と、長期間で給付金を受けながら取得できる「介護休業」ですが、それぞれの制度の違いをうまく利用することで、仕事と介護の両立が可能となります。

従業員が介護離職してしまう前に、介護休暇もしくは介護休業のどちらを取得したほうがよいか、会社も普段からしっかりと伝えていく必要があります。

また、取得の申し出があった際には、これらの制度を活用して、すみやかに手続きができるように社内で準備を整えておく必要があります。

3-1. 介護休暇・介護休業中の給与はどうなる?

介護中の給与面ですが、介護休暇・介護休業ともにこれらの制度を利用したとき事業主の賃金支払い義務は、特に法律で定められていません。

つまり、介護期間中の収入が減るため、これらの制度を取得する前に従業員へきちんと説明しておく必要があります。

しかしながら、介護休業の場合で一定の条件を満たせば、雇用保険から「介護休業給付金」が支給されるので、この給付金についても取得を希望している従業員に伝えてわかりやすく説明できるように準備しておくとよいでしょう。

3-2. 介護休暇・介護休業の申請準備をするためには?

介護休暇の取得申し出の方法は、休暇を取得する当日までに書面もしくは口頭で申し出てもよいとされています。

一方、介護休業の取得申し出の方法は、原則として書面・ファックス・メールなどで介護を取得する日の2週間前までに、会社へ申し出をする必要があります。

介護が長きにわたる可能性もあり、職場での業務調整に差し支えがないように、きちんと準備しておきたいものです。

会社は従業員家族の介護状態を把握するために、以下の内容を申請してもらう必要があります。

  • 申請者(従業員)名
  • 対象家族名や続柄
  • 対象家族が要介護である証明書
  • 介護期間

会社は、上記の内容を明記できるフォーマットをあらかじめ準備しておくとよいでしょう。

3-3. その他のチェックするべき項目とは?

介護休暇を取得申請する従業員が発生する場合に備えて、短時間労働やフレックスタイムの導入など、会社も雇用環境を整備・配慮しておくと良いでしょう。

また、介護休業中は賃金の支払いがないので雇用保険料は発生しませんが、社会保険料と住民税の免除はされません。

そのため、従業員の事情によっては会社が立替えて納付というかたちを取ることでサポートする必要もあります。

4. まとめ

冒頭にも述べた通り、介護はいつどこで起きてもおかしくない高齢化社会の深刻な問題です。

その時代の流れにともない、介護に関する法改正も適宜行われていますので、会社は常に最新の情報をチェックしておくことが必要です。

法律に沿った運用をしていなければ違反になるため、就業規則などの見直しも随時必要になってきます。

これから増えると予測される介護に不安をかかえた従業員のサポートをしていくためにも、会社の人事総務担当者は定期的な個人面談などを通じて、従業員個々の生活状況を把握し、社内で働き方に関しての情報発信を日頃からしていくことが望ましいでしょう。

このように、仕事と介護の両立を支援してくれる会社で安心して長く働ける職場環境を、普段から整えておくことが大切なのではないでしょうか。

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