雇用契約書の作成方法とは?テンプレートを使用する際の注意点まで解説! |HR NOTE

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雇用契約書の作成方法とは?テンプレートを使用する際の注意点まで解説!

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雇用契約書を作成して労働者に交付しておくことで、労使間でトラブルが発生した際に役立てることができます。ただし、雇用契約書が正しく作成されないと、無効となってしまう恐れがあるため注意が必要です。本記事では、雇用契約書を作成する際に押さえておきたい4つのポイントや、法的効力などについても詳しくご紹介します。

雇用契約書とは?

雇用契約書とは、事業主と労働者の間で取り交わした雇用条件の内容を明示した書類です。

法律上では、口頭だけでも雇用契約は成立するため、雇用契約書の交付は義務付けられていません。

しかし、雇用条件の内容について労使間でトラブルが生じた場合、口頭のみだと紛争が長引く恐れがあることから、書面にて雇用契約を締結するのが一般的です。

雇用契約書の法的効力についても、ここで触れておきましょう。

労働基準法における雇用契約書の効力とは

労働基準法第13条では、雇用契約書に記載の労働契約の内容が労働基準法の基準に満たない場合、その該当の部分のみ無効とするとしています。

無効となった箇所は、労働基準法の内容が適用となります。例えば、有給休暇は条件を満たせば入社日の6か月後に付与されますが「入社後1年間は有給休暇を付与しない」といった雇用契約は無効となります。

就業規則と雇用契約書の効力の違いとは

雇用契約書の内容が就業規則を下回っている場合は、同じく労働基準法第第93条によって、該当部分は無効とされます。無効となった箇所は、就業規則の内容が適用となります。

雇用契約書の保管期間は?ないとどうなる?

雇用契約書などの労働に関する重要な書類は、労働基準法109条にて5年間(当分の間は3年間)の保管義務が定められています。

保管期間内で雇用契約書兼労働条件通知書がない場合は、労働基準法120条により30万円以下の罰金が科される可能性があるため注意しましょう。

雇用契約書と労働条件通知書の3つの違いとは?

人を雇い入れる際に、雇用契約書の他に労働条件通知書という言葉を耳にする機会があります。

労働条件通知書とは、労働条件について記載された書面です。雇用契約書と労働条件通知書、どちらも似たような書面ではありますが、両者には次のような違いがあります。

法律上の交付義務があるかないか

雇用契約書は、先に解説した通り書面の交付義務はありません。一方、労働条件通知書は、労働基準法によって書面による交付が義務付けられています(労働者が承諾すれば、メールやFAXでの交付も可)。

労働条件通知書を交付しないと、罰則が適用となりますので注意が必要です。

署名・押印が必要あるかないか

雇用契約書は労使間で雇用契約を取り交わすため、双方の署名・押印が必要となります。

それに対し、労働条件通知書は労働者へ書面を提示するのみで良いとされています。

記載事項の定めがあるかどうか

雇用契約書の記載事項に関しては、特に法律によって定められていません。

しかし、労働条件通知書の記載事項に関しては、労働基準法によって「絶対的明示事項」を書面に記載しなくてはならないと定められています。

このように労働条件通知書は、法律によって交付が義務付けられている書面です。

しかし、この書面だけでは労働者の同意の意思表示が確認できないため、企業によっては「労働条件通知書兼雇用契約書」として書面を交付している所もあります。

雇用契約書の書き方とは

ここからは、雇用契約書の書き方について解説します。

雇用契約書と労働条件通知書を兼用する場合、「絶対的記載事項」と任意で設ける事項が存在します。

記載内容は労働条件通知書に準じる

労働条件通知書を兼ねて雇用契約書を作成する場合には、法律によって定められた「絶対的記載事項」を押さえておく必要があります。

【絶対的記載事項】

  • 労働契約の期間
  • 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
  • 更新する基準
  • 就業場所
  • 従事する業務内容
  • 始業時間と終業時間
  • 交代勤務をさせる場合の交替期日や順序などに関するルール
  • 所定労働時間を超える労働の有無
  • 休憩時間、休日、休暇
  • 賃金の決定・計算、支払方法、締切日、支払期日
  • 退職・解雇に関する事項

また、就業規則に記載されている重要な事項があれば、雇用契約書を作成する際にあわせて記載します。

労働条件通知書の「絶対的記載事項」のほかに、必要に応じて「相対的記載事項」を追記することが一般的です。相対的記載事項などの、任意で設けることでトラブル防止につながる事項を確認したい方は、以下の記事からご確認ください。

勤務形態の変更を検討し、採用する場合は記載する

始業と終業の時間を固定して勤務させる「固定労働時間制」の他にも、多様化する社会の流れにあわせて「フレックスタイム制」や「変形労働時間制」、「みなし労働時間制」など、変則的な労働時間制を導入する企業が増えています。

雇用契約書を作成する際は、どの労働時間制を採用するか、業務内容と照らし合わせて事前に検討しておき、雇用契約書に明示しておく必要があります。

異動・転勤の有無を確認し、記載する

転勤や人事異動、配置転換に関する事項に関しては、求職者が会社を選ぶ上で重視する項目でもあります。

会社で転勤や人事異動、配置転換を命じたい場合は、就業規則に記載するだけでなく、雇用契約書にもこれらの有無を明示して労働者の承諾を事前に得ておいた方が良いでしょう。

そうすることで、後に転勤や人事異動、配置転換に関してトラブルが生じた際に回避することが可能となります。

試用期間を記載する

試用期間とは、本採用する前に自社の従業員としての適性があるかどうか判断するために設けられた期間です。試用期間を導入している場合は、雇用契約書にその旨を記載しておく必要があります。

試用期間中であっても雇用契約は成立していますので、社会通念上相当と認められる事由がない限り、自由に解雇することはできません。

ただし、試用期間中は「解約権留保付雇用契約」とみなされ、本採用後の解雇よりも若干認められやすくなっています。

試用期間を設けている場合は、就業規則に記載している期間の範囲内で、必ず明記するようにしましょう。

労働条件通知書の雛形

雇用契約書や労働条件通知書を効率的且つ法律に沿って作成するには、雛形を参考にすることが有効でしょう。

ここからは、労働条件通知書の雛形を紹介します。

厚生労働省による労働条件通知書の雛形

雇用契約書を労働条件通知書と兼用する場合には、絶対的事項を網羅する必要があります。

厚生労働省の公式サイトでは、さまざまな労働者を対象とした労働条件通知書の雛形を公開しています。必要に応じて、ご活用ください。

参考:様式集 (必要な様式をダウンロードしてご使用下さい。)|厚生労働省

雇用契約書のテンプレートを使用する際の注意点

雇用契約書のテンプレートは、web上で無料でダウンロードできるものも多数存在します。

ただし労働条件通知書と兼用する場合には、項目が不足していると法律に抵触してしまうため、注意が必要です。

テンプレートを使用する際には、絶対的事項の全ての項目が網羅されているか必ず確認するよう徹底しましょう。

雇用契約書を作成する前に知っておくべき作成ポイント

ここからは、雇用契約書を作成する前に事前に理解しておくべきポイントを紹介します。

正社員、契約社員、パートやアルバイトの雇用契約書を作成するうえでの注意点、雇用契約書の電子化について解説します。

正社員の雇用契約書

正社員は、転勤や人事異動、担当業務の変更等が生じる可能性が高いといえるでしょう。

地方や海外への転勤、配置転換により業務が大幅に変更する可能性がある場合には、雇用契約書にもしっかりと記載することが求められます。

またあらかじめ採用時に、配属先やキャリアフローの例などを正しく説明し了承を得ることで、結果的に離職率の低下や、長期人材の獲得に繋がります。

契約社員の雇用契約書

契約社員は、「有期労働契約」を結んだ雇用期間に定めがある社員を指します。契約を更新する場合にも、新たな雇用契約書を作成する必要があります。

必ず記載すべき事項として、「契約期間」と「更新の有無」は漏れなく記載するようにしましょう。

パート・アルバイトの雇用契約書

パートとアルバイトの従業員に対しては、パートタイム労働法第6条の改正にともない、労働条件通知書に以下の内容を記載することが義務付けられました。

〔対象者:すべてのパートタイム労働者〕

1. 事業主は、パートタイム労働者を雇い入れたときは、速やかに、「昇給の有無」、「退職手当の有無」、「賞与の有無」を文書の交付等により明示しなければならない。

違反の場合は10万円以下の過料

2. 事業主は、1の3つの事項以外のものについても、文書の交付等により明示するように努めるものとする。

引用:パートタイム労働法の改正について|厚生労働省

雇用契約書は電子化することも可能

雇用契約書を電子化して手続きをおこなうことは可能です。労働条件通知書の電子化は、2019年の法改正により解禁されました。ただし「当該労働者が希望した場合」との条件がついているため、従業員に合意を得ることが必要となります。

従業員にとっても、契約に署名・捺印するために来社する手間がなく、スマホやPCで完結するため効率的に手続きがおこなえるでしょう。

雇用契約書に不備があった際のリスク・問題点とは

雇用契約書の記載内容に不備があった場合、どのような問題が発生するでしょうか。ここでは、不備があった際に想定されるトラブルについてご紹介します。

雇用契約が無効となる可能性がある

雇用契約書に記載されている労働条件が、労働基準法や就業規則よりもの基準を満たさない場合は、その条件に関しては無効とされ、労働基準法や就業規則の条件が適用となります。

雇用契約書に記載した条件が無効となることによって、想定していなかった人件費を支出せざるを得ないケースが発生する可能性があります。

労使間のトラブルが複雑化する恐れがある

雇用契約書を作成しなくても、口頭のみで雇用契約を成立させることは法律上可能となっています。

ただし、後に労使間の間で問題が発生した場合、書面が無いことで双方の合意内容が不明瞭となってしまい、トラブルが複雑化する可能性があります。

また、雇用契約書を作成していたとしても、内容に不備や漏れがあった場合も紛争解決が困難となることが想定されます。

例えば、時間外労働に関してトラブルが生じた際、雇用契約書に明確に記載されていないことによって、訴訟問題に発展するケースも少なくありません。

労使間のトラブル防止のためにも雇用契約書を正しく作成しよう

雇用契約書は法律上での作成義務はありませんが、労働者とのトラブルを回避するためにも作成することが望ましいでしょう。雇用契約書を作成する際は、必要とされる記載事項に漏れが無いよう注意します。また、労働時間制、転勤や人事異動の有無、試用期間についても記載するようにします。

万が一、雇用契約書に不備があると、雇用契約書の内容が無効になったり、労使間の紛争が拡大することがありますので、作成にあたっては十分注意した方が良いでしょう。

【監修者】小島章彦(社会保険労務士)

大学卒業後、某信用金庫にて営業と融資の窓口業務に関わる。 現在は、某システム開発会社に勤務。 会社員として働きながら、法律系WEBライターとして人事労務関係や社会保険関係のライティングを4年半以上行っている。 また、金融知識を生かした金融関係のライティングも含め、多数の執筆案件を経験している。 その他保有している資格は、行政書士、日商簿記3級など。

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