人事管理システムとは、企業としての目的を達成するため、組織や従業員のデータを管理し、活用するためのシステムを指します。人事管理ソフトには、中小企業向けのものから、大手企業向けのものまで、さまざまな種類があります。
この記事では、人事管理システムの機能一覧やメリット・デメリット、導入方法をわかりやすく解説します。また、おすすめの人事管理システムを比較表で紹介します。
目次
1. 人事管理システムとは?
人事管理システムとは、人事管理を効率化するためのシステムを指します。ここでは、人事管理の意味や課題・問題点、人事管理システムが注目される背景・理由について詳しく紹介します。
1-1. 人事管理とは?
人事管理とは、企業や組織としての目的を達成するために、従業員や組織の情報を管理し、それを分析することで、効果的な人材活用をおこなうことを指します。人事管理の主な仕事内容として「採用」「育成」「評価」「配置」「モチベーション管理」があります。
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1-2. 人事管理における課題・問題点
現代の人事管理における課題・問題点として、次のようなものが挙げられます。
- 書類の回収や入力、確認や更新などの手続きに手間がかかる
- 入力ミスなどにより誤った情報が登録されている、あるいはそれに気づいていない
- 人事評価に時間がかかるうえ、精度のバラつきがあり、公平性を欠いている
- テレワークなどの働き方改革に対応できていない
- 従業員のエンゲージメントをきちんと把握できていない
このような課題・問題点を解決するためには、人事管理システムを導入し、データを用いて管理をおこなうことが推奨されます。
1-3. 人事管理システムが注目される背景・理由
近年では、少子高齢化が進行しており、労働人口は年々減少しています。また、働き方改革の影響もあり、テレワークや時短勤務といった多様な働き方が推進されており、一人の人事担当者が担当する業務範囲は拡大しています。このような環境で効率よく人事管理を進めるためにも、システムを導入して、業務を自動化することが求められています。
また、現代におけるテクノロジーの進歩は目覚ましく、あらゆる便利なITツールやソフトウェアが登場しています。人事管理システムもその一つです。このような背景や理由もあり、人事管理システムに注目が集まっています。
2. 人事管理システムの機能一覧
人事管理システムには、さまざまな機能が搭載されています。ここでは、人事管理システムの機能を一覧にして詳しく紹介します。
2-1. 従業員データ管理
従業員データ管理機能とは、従業員の年齢や性別、住所、資格など、基本情報をデータとして一元化して管理できる機能のことです。従業員データ管理機能を活用すれば、検索したい従業員をすぐに見つけ、必要な情報を効率よく利用することができます。
2-2. 人事評価
人事評価機能とは、適正な人事評価をおこなうための機能です。人事評価機能を活用すれば、システム上で評価シートを作成したり、評価フローを設定したりすることができます。人事評価に関する業務の効率化が期待できるとともに、従業員の人事評価に対する満足度を高めることが可能です。
2-3. 勤怠管理
勤怠管理機能とは、従業員の出勤・退勤や残業時間、有休消化数など、労働状況に関する情報を管理できる機能です。勤怠管理機能を利用すれば、リアルタイムで従業員の労働時間を把握することができます。
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2-4. 給与計算
給与計算機能とは、従業員の基本情報や勤務状況に基づいて、自動で給与や賞与などを計算する機能です。給与計算機能を利用すれば、給与計算業務を自動化できるので、人的ミスを減らし、業務を効率化することができます。
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2-5. 人員配置
人員配置機能とは、従業員の情報に基づき、適材適所に人材配置するための機能です。人員配置機能を使用することで、システム上でシミュレーションしながら、最適な人員配置を見極めることができます。
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2-6. 人材育成
人材育成機能とは、従業員のキャリア情報や研修受講履歴などを経過的に管理し、最適な育成プログラムを作成するための機能です。人材育成機能を活用すれば、従業員に不足しているスキルや目指しているキャリアを正しく把握し、最適な育成カリキュラムを構築することができます。
2-7. 採用管理
採用管理機能とは、求人応募者の応募から採用までの手続きを管理するための機能です。採用管理機能を用いれば、適切なタイミングで面談を調整したり、内定者にアプローチしたりすることができます。また、データを分析して、効果的な採用活動に役立てることも可能です。
2-8. タレントマネジメント
タレントマネジメント機能とは、従業員の基本情報だけでなく、経験や能力などのタレント情報も管理する機能です。タレントマネジメント機能を利用することで、従業員のパフォーマンスを最大化するための育成・配置を計画することができます。
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2-9. モチベーション管理
モチベーション管理機能とは、従業員のモチベーションを可視化して継続的に把握するための機能のことです。モチベーション管理機能により、モチベーションが下がっている従業員がいたら、メンタリングをおこなうなど、素早く対応することができます。
3. 人事管理システムを導入するメリット
人事管理システムを導入することで、さまざまなメリットが得られます。ここでは、人事管理システムを導入するメリットについて詳しく紹介します。
3-1. 人事担当者の業務負担を削減できる
紙やエクセルで人事管理をおこなっている場合、手作業で仕事を実施する必要があります。人事管理システムを導入すれば、データ入力・出力などの業務の一部を自動化することが可能です。これにより、人事担当者の業務負担を削減することができます。空いた時間をコア業務に充てれば、生産性を向上させることが可能です。
3-2. 人的ミスを防止できる
人の手で作業をおこなうと、どうしてもミスやエラーが発生してしまいます。人的ミスが生じると、手戻りなどが起こり、業務負担が増加します。人事管理システムを活用すれば、データで情報を管理できるので、ヒューマンエラーを防止することが可能です。また、ミスがあったら、通知してくれる機能を搭載したソフトもあります。
3-3. 適材適所の人材配置を実現できる
大きな規模の企業になると、従業員の情報が部署やチームなどに散在してしまっているケースもあります。このような場合、従業員の適性を正しく見抜けず、誤った人材配置を実施してしまい、従業員のモチベーションや生産性を下げる原因になる恐れもあります。
人事管理システムを導入すれば、従業員情報をデータとしてシステム上で一元管理することが可能です。また、複数人でシステムを操作する場合でも、リアルタイムで情報が更新されるので、情報共有もスピーディーにおこなうことができます。このように、人事管理システムであれば、最新の情報を用いて人材配置をおこなえるため、適材適所の人材配置を実現することが可能です。
3-4. 戦略人事に活用できる
人事管理システムの導入により、従業員のデータを蓄積させていくことができます。また、分析・解析もできるので、従業員データを分析して、結果を経営戦略に活かすことが可能です。人事管理システムであれば、グラフなどで簡単に分析結果を可視化して一目で把握できるため、スムーズに情報共有をおこなうことができます。これにより、意思決定を早め、効果的な戦略人事を実現することが可能です。
3-5. 適正な人事評価ができる
紙やエクセルで作成した評価管理シートで人事評価をおこなっている企業も少なくないでしょう。このような場合、共有に時間がかかったり、過去と比較しにくかったりするなどのデメリットがあります。人事管理システムであれば、ツール上で人事評価を実施することが可能です。また、結果をデータ化して共有・蓄積することもできます。これにより、人事評価データを多くの人と共有したり、過去と比較したりして、客観的に人事評価をおこなうことが可能です。
4. 人事管理システムを導入するデメリット
人事管理システムを導入する場合、メリットだけでなく、デメリットもあります。ここでは、人事管理システムを導入するデメリットについて詳しく紹介します。
4-1. 導入・運用コストがかかる
人事管理システムを導入するには、導入費用や運用費用、サポート費用などのコストがかかります。費用対効果を検証せず、導入を決めてしまうと、人事管理システムの効果よりもコストのほうが大きくなってしまう恐れもあります。あらかじめ目的や予算を明確にし、自社に最適な人事管理システムを導入することが大切です。
4-2. セキュリティリスクがある
人事管理システムを利用する場合、不正アクセスや改ざんなどのセキュリティリスクがあります。ソフトのセキュリティ機能だけは十分でないケースもあります。自社独自でセキュリティ対策をおこなったうえで、従業員にセキュリティ教育を実施し、運用ルールを遵守してもらうことが重要です。
5. 人事管理システムの導入方法
人事管理システムを導入する場合、正しい手順を把握しておくことで、スムーズに導入することができます。ここでは、人事管理システムの導入方法について詳しく紹介します。
5-1. 目的を明確にする
まずは人事管理システムを導入する目的を明確にすることが大切です。「人事データを一元管理したい」「公正な人事評価を実現したい」「効果的な人事配置をおこないたい」など、企業によって課題や目的は異なります。また、目的に応じて、人事管理システムに必要な機能は変わってきます。目的が明確になることで、自社に必要な人事管理システムを絞り込むことが可能です。
5-2. システムを比較して導入する
人事管理システムは、料金や機能、導入形態などの観点から、さまざまな種類があります。自社の設定した目的にあわせて、複数のソフトを多角的に比較し、ニーズにあった人事管理システムを選定しましょう。いきなり導入するのはハードルが高いと感じる場合、無料トライアル期間のあるシステムを選ぶのも一つの手です。トライアル期間中に、システムが自社にあわないと感じれば、無料で解約することができます。
5-3. 運用ルールを定める
導入する人事管理システムが決まったら、それにあわせて運用ルールを定めましょう。使い方やワークフローなどを事前に定めておくことで、現場の従業員は混乱することなく、スムーズに人事管理システムを利用することができます。また、人事管理システムの導入が決まったら、積極的に使用してもらえるよう、従業員にきちんと周知することも大切です。
5-4. 実際に運用を開始する
運用ルールを設定できたら、実際に人事管理システムの運用を開始しましょう。運用し始めは、トラブルやエラーが生じやすいです。そのため、問題が発生したときの問い合わせ先や、サポート内容について事前にきちんと確認しておきましょう。
5-5. 効果を検証する
人事管理システムを運用したら、定期的に効果を検証しましょう。目的の達成具合をチェックし、運用方法を変更するなど、改善を繰り返すことで、目的達成に近づけることができます。
6. 人事管理システムの種類
人事管理システムには「クラウド型」「オンプレミス型」「パッケージ型」といった種類があります。ここでは、人事管理システムの種類について詳しく紹介します。
6-1. クラウド型人事管理システム
近年では「クラウド技術」の発展が目覚ましく、クラウド型の人事管理システムを導入する企業が増えています。クラウド型の場合、PCやスマホといった端末とインターネット環境があれば、場所を問わず利用することができます。また、オンライン上のサーバーとサービスを利用するため、専用のサーバーやソフトを用意する必要はありません。クラウド型人事管理システムは、導入費用がかからず、利用料として月額料金の運用費用がかかるものが多いです。また、機能やセキュリティはベンダーに依存しやすいので、リスク対策をきちんとおこなうことが重要です。
関連記事:クラウド型人事管理システムとは?機能やメリット・デメリット、比較ポイントを解説!
6-2. オンプレミス型人事管理ツール
オンプレミス型の人事管理ツールとは、社内のサーバーに専用のソフトを組み込み運用する人事管理システムのことです。オンプレミス型の場合、自社のニーズに応じて機能やセキュリティなどをカスタマイズすることができます。ただし、導入費用が大きくなりやすいです。しかし、自社で運用体制を確立できれば、ランニングコストを減らすことができます。
6-3. パッケージ型人事管理ソフト
パッケージ型人事管理ソフトとは、既成のパッケージ化されたソフトウェアをそれぞれのパソコンにインストールして利用する人事管理システムです。パッケージソフトを購入するだけで導入できるので、導入にかかるコストや時間を削減することができます。ただし、機能のカスタマイズが難しかったり、法改正のアップデートがあったら再購入が必要であったりするなど、デメリットもあります。また、人事管理システムを利用する従業員すべてのPCにソフトをインストールしなければならないケースもあるので、大規模企業には向いていない可能性があります。
7. 人事管理システムの選び方のポイント
人事管理システムといっても実にさまざまなサービスがあります。ここでは、人事管理システムの選び方のポイントについて詳しく紹介します。
7-1. 必要なコスト
人事管理システムを導入するには、コストがかかります。人事管理は会社が存続する限り、必要となる業務です。そのため、長期的な目線でみて、無理のないコストの範囲で人事管理システムを選定することが大切です。
7-2. 大手企業向けか中小企業向けか
人事管理システムには、大企業向けのものから、中小企業向けのものまで、さまざまな種類があります。また、一つのサービスでも、従業員規模に応じて複数のプランを用意しているものもあります。そのため、自社の従業員数などを確認したうえで、会社の規模にあった人事管理システムを選ぶことが重要です。
7-3. 対応している業務の範囲
人事管理システムの導入目的は企業によって異なります。人材配置や人事評価だけでなく、採用管理やモチベーション管理もおこないたい場合、人事管理の機能が網羅されているサービスを選ぶ必要があります。一方、タレントマネジメントだけに特化したシステムを導入したいのであれば、専用のタレントマネジメントシステムを導入するのがコストや使いやすさの観点からもおすすめです。このように、自社がどのような人事管理を実現したいかで、システムを選ぶことが大切です。
関連記事:タレントマネジメントの導入を成功させるコツとは?選び方のポイントも紹介
7-4. 他システムとの連携性
人事管理システムを導入する際に忘れてはならないのが、他システムとの連携性です。すでに勤怠管理システムや給与計算ソフトなどを導入している場合、それらのシステムと人事管理システムが連携できることを確認しましょう。というのも、人事情報は企業にとって重要なデータです。他のシステムと連携できれば、人事業務だけでなく、さまざまなバックヤード業務を効率化することができます。
7-5. 操作性の高さ
新たにシステムを導入する場合、操作に慣れるまでに一定の時間がかかります。操作性の高いシステムなら直感的に操作できるため、操作の負担を軽減することが可能です。また、人事担当者だけでなく、従業員にとっても操作性が高いことを確認しましょう。個人情報を自ら更新できるか、スマホに対応しているかなど、実用性かつ利便性の高いシステムを導入するのがおすすめです。
7-6. 権限設定の範囲
人事管理システムでは、個人情報や給与情報など、社外秘の重要な情報を取り扱います。多くの人が閲覧・操作できるシステムほど、セキュリティ性能を重視する必要があります。そのため、あらかじめ権限設定がどの程度できるのかをきちんと確認しましょう。
7-7. サポート体制
人事管理システムを導入してみたけれど、設定方法や運用方法がわからず、導入に失敗してしまったという企業も少なくありません。初めて人事管理システムを導入する場合、サポート体制の充実しているサービスを導入するのがおすすめです。また、導入時だけでなく、運用時もサポートを受けられるシステムであれば、スムーズに社内に定着させることができます。
8. 【比較表】おすすめの人事管理システム9選
ここでは、おすすめの人事管理システム9選を紹介します。なお、人事管理システムは、導入の目的に応じて、次の3つのタイプに分類することができます。
人事管理システムのタイプ |
特徴など |
人事労務の手続きに強いタイプ |
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人事情報の集約や一元化に強いタイプ |
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人事評価に強いタイプ |
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8-1. 人事労務の手続きに強いタイプ
サービス名 |
特徴や強み |
特徴など |
ジンジャー人事労務 (株式会社jinjer) |
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月額300~/1人 |
SmartHR (株式会社SmartHR) |
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要問い合わせ |
マネーフォワード社会保険(株式会社マンーフォワード) |
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月額4,980円 (ビジネスプラン) 6名以上は100円/名 |
8-2. 人事情報の集約や一元化に強いタイプ
サービス名 |
特徴や強み |
特徴など |
総務人事奉行クラウド (株式会社オービックビジネスコンサルタント) |
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月額7,000円 (IEシステム) |
COMPANY (株式会社Works Human Intelligence) |
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要問い合わせ |
ヒトマワリ (株式会社Touch&Links) |
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月額10,000円~ |
8-3. 人事評価に強いタイプ
サービス名 |
特徴や強み |
特徴など |
カオナビ (株式会社カオナビ) |
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要問い合わせ |
HRBrain (株式会社HRBrain) |
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要問い合わせ |
あしたのクラウド (株式会社あしたのチーム) |
|
要問い合わせ |
9. 人事管理システムで業務の効率化を図ろう!
人事管理システムを導入することで、人事評価や人材配置、タレントマネジメントなど、人事管理業務を効率化することができます。ただし、人事管理システムには、さまざまな種類があります。料金や機能、操作性、セキュリティ、サポートなどの観点から複数のソフトを比較し、自社のニーズにあったシステムを導入しましょう。