企業内大学の特徴を解説|メリット・事例などを研修と比較してみた | 人事部から企業成長を応援するメディアHR NOTE

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企業内大学の特徴を解説|メリット・事例などを研修と比較してみた

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現在は売り手市場のため、企業はますます優秀な人材の確保が難しくなってきています。

そこで、会社が社員に”学べる場”を提供し、社員が自主的に学びたいと思うカリキュラムを選んで受講できる制度、「企業内大学」を設立する企業が多くなっています。

企業内大学とは、社員が自主的に学習できる環境を整え、社員の能力向上を目指す制度です。

ですが、従来の社内研修と何が違うのでしょうか?

”学べる場”という点では社内研修制度も同じですが、さまざまな要因に違いがあることから、期待される効果にも違いがあります。

そこで本記事では、企業内大学と従来の社内研修との違いを比較しながら、企業内大学の特徴についてご紹介します。

【1】なぜ企業内大学が注目されているのか

近年、日本企業は人手不足に悩まされています。

企業内大学の設立は、「優秀な人材の確保」と「社員の能力向上」の2つの効果が期待でき、人手不足に貢献できる施策となる可能性があります。

企業内大学は、活躍している社員が講師として登壇するなど、講義内容が豊富でかつ実践的なものが多くあります。

さらに、企業内大学の受講は当然無料になるため、学習意欲の高い人材にとっては魅力的にうつります。

また研修とは違い、さまざまな講義の中から社員が学びたいことを学ぶことができるので、モチベーション高く学習することができます。

【2】従来の研修とどう違うのか

社内研修と企業内大学には似たような部分が多くありますが、大きく分けて、目的、主催者、講義内容の3つの違いがあります。

社内研修と企業内大学の違いを明確にしておくことで、企業内大学の必要性についてより深く理解でき、今後の設立を考える際に役に立ちます。

本章では、社内研修と企業内大学の違いと期待される効果についてご紹介します。

2-1 目的の違い

まず、社内研修と企業内大学では講義の目的が違います。

一定期間内でおこなわれる研修は、ビジネスマナーや通常業務に必要なスキルの向上を目的にしています。

社員研修の一環として、多くの企業が実践しているのが、OJT(On-the-job Training)です。人材育成全体の9割近くの時間を占めると言われています。

「OJT」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
OJTとは?ゼロから始める際の流れや成功させるコツをご紹介

OJTは実務を通して上司が部下に、またはベテラン社員から若手社員へと知識やスキルを継承していくものです。

しかしOJTでは、直近の業務を学ぶことしかできないため、社員がモチベーション高く研修に参加することや自身の将来について考える機会はないと考えられます。

企業内大学設立の目的

一方で企業内大学の目的は、社員に能動的な学習を促し、将来へのキャリアアップにつなげることが主な狙いとなっています。
基本的に全社員が興味のあるテーマについて学べるため、モチベーションが高く受講することができます。
講義出席の強制力は弱いですが、必修科目や学部を設けたり、研修とは違い長期的視点のもと、年単位で勉強に専念させたりと、企業内大学の特徴は企業によってさまざまです。

このことから、期待される効果として、学びの機会を充実させて社員のやる気を高めることで、離職率の低下につながる可能性もあります。

2-2 主催・講師の違い

企業内大学の主催者は誰?

ほとんどの研修は、人事部が主催でおこなわれています。

ですが、企業内大学は社内講師も多種多様の部署が登壇しますが、社外講師を外部から誘致する社員、企業内大学の発起人でさえ人事部以外の社員になることもあります。

たとえば、株式会社日比谷アメニスの「社内大学プロジェクト」の発起人になったのは、景観環境部の社員です。

この社員がプロジェクトを始めた背景は、社会人大学院で学んだ長期的な人材の育成の重要性をもとに、ものごとを考えるきっかけになる場が必要だと考え、会社に社内大学の設立を提案しました。

企業内大学を設立した効果として、接点の少ない人同士が社内大学を通じてかかわりあっていき、日ごろの業務に関しても連絡や相談をするようになるなど、社内のつながりや一体感も生まれてきているとのこと。

講師の選定方法

講師の選定方法は企業によって異なります。また、社内講師と社外講師のどちらを呼ぶかによってそれぞれメリットとデメリットが発生します。

社外講師を呼んだ場合は、メリットとして社内にはない知識を共有することができます。今までとは全く違う視点から、講義してもらうことで新たな発見があるかもしれません。

デメリットとしては、実践的な知識でない可能性がある点です。

ソフトバンクグループの企業内大学では、以前までは外部講師を呼んでいました。

しかし、実践につながりにくい講義が中心であったため、優秀な社員から講師を募りました。これにより、優秀な社員が現場で培ったノウハウを受講者に共有でき、研修翌日から実践できる即効性がある講義を実現することができました。

一方のデメリットとしては、優秀な社員の時間を確保するため、複数回できない可能性があります。

どちらの方法で講師を呼ぶかは企業の状況や講座ごとに変えたほうが良いかもしれません。

このように、企業内大学は受講内容に関係する部署の社員が講師を担当したり、外部教育機関の活用や社外から講師を招いたり、現場社員が発起人になるなど、より専門的かつ組織戦略に直接リンクできるような講義が実現できます。

2-3 講義内容の違い

2017年に企業内大学の設立した株式会社ジュピターテレコムでは、企業内大学の設立に踏み切る決定的な出来事がありました。

ジュピターテレコムの本社では、セミナールームがあり、そこでは毎日のように何かしらの研修がおこなわれていました。

あるとき、研修の主催者は本社に来た社員から、「自分の受けるべき研修はどこの部屋なのか?」と聞かれたので、研修名は何かと尋ね返したら「わかりません」と言ったそうです。

受講必須の研修を増やしたことで、気づかぬうちに学びに受動的な社員を増やしてしまったのです。ほとんどの企業で、多くの研修があると思いますが、社員の関心が少ない研修を何回も開催しても有意義な時間になる可能性は低いでしょう。

一方、研修と企業内大学とでは講義内容を決定するプロセスが違うので、社員のモチベーションが異なります。

企業内大学では、社員がこういう話を聞きたいとニーズや活躍しているこの社員の話を聞きたいというニーズ汲み取り、講義内容を決定できるため、自然と社員の興味のある講座を用意することが可能です。

また、人事部が現場社員のニーズを汲み取ることや現場社員が自身の経験を体系化することで、主催者側にも能力向上にもつながります。

このように企業内大学の講義内容決定プロセスでは、期待される効果として、高いモチベーションで主催者側と受講者側が参加することができるため、研修よりも効率的な講義を実現することが可能な点があげられます。

【3】具体例から見る運用方法

ここでは、株式会社ネオキャリアの人材開発部が主導で実施している「ネオキャリア大学」の導入背景、運用ノウハウ、参加者の変化を参照に、実施する際に気をつけるべきポイントについてご紹介します。

詳細は下記のインタビュー記事を参照にして下さい。

1.ネオキャリア大学の目的

ネオキャリア大学は、ネオキャリアグループ社員一人ひとりの持続的成長を目的に、開講している企業内大学です。

週に1回、さまざまなプログラムを用意しており、社員が自ら学びたい講座を選択して受講できます。

ネオキャリア大学では、コンテンツと対象者が決まっている研修ではなく、自ら積極的に学びたい人のための機会がつくられており、さまざまな知識や経験を持った社員と、ノウハウやナレッジを共有することができます。

2.主催者と講師

設立の背景は、人材開発部の社員がさまざまな研修の多くは、参加者が自由に選べる形式ではなく、受動的に参加している人もいるように見えたのがきっかけです。

参加する人の経験や役割によって、必要な研修内容は変わってくるので、メンバーのニーズに沿った学びの場を提供できていないという問題を解決するために、人材開発部の社員が中心となりネオキャリア大学が設立されました。

ネオキャリア大学の講師は、受講者の能力開発だけではなく、講師の能力開発も目的としています。理由は、日々の学びをアウトプットできる機会をつくりたいと主催者が考えたためです。

そのため、ネオキャリア大学は受講生が学ぶ場だけではなく、学んだことをアウトプットするための機会でもあります。

3.講義内容

ネオキャリア大学を開校するときに、社員にアンケートを取り、その中で要望が高かったものや社員の課題解決につながる内容を企画します。

具体的には「グループ内で活躍している社員ともっと接点を持ちたい」「業務効率を上げるスキルを学びたい」「限られた時間で生活の質を向上させたい」などがあり、いまではこの3つを中心に講座をつくられています。

4.運用ノウハウ

ネオキャリア大学は、積極的に学ぼうとしている人を中心に実施することに注力し、運用しています。

講座ごとに参加者が期待すること・学びたいことを事前にヒアリングし、その内容に合わせて企画を進めていきます。

その結果、多くの講座が満席になっています。また人気講座では80名以上参加希望があるなど、多くの社員の方々に積極的に参加しています。

非常に人気であるため、参加したくても参加できない講座もあります。たとえば、役員の講座やExcelの講座は、告知から3日以内に締め切り、キャンセル待ちでした。ほかにも、総会の表彰者の講座は、すぐに満席になります。

また、地方の支社にはWeb会議システムでつなぎ、遠隔でも参加できる講座もあります。

5.参加者の変化

参加者の変化は大きく分けて2つあります。

1つ目は、社内制度の利用率が上がったことです。

たとえば、ネオキャリア内の社内異動制度「ネオキャリー」の利用率です。ネオキャリーの利用率が、ネオキャリア大学に参加していない社員と比べて、参加している社員は3倍でした。

これは、自身のキャリア開発について考える機会となり、キャリアプランに沿って主体的に行動している人が増えたということかもしれません。

2つ目は、参加者の生産性の向上です。

ネオキャリア大学参加前後で、生産性が10%も違うというデータが出ています。

これは活躍している社員や役員の講座に参加することで仕事に対するモチベーションが上がり、社内ですぐに実践できるスキルを学ぶ講座に参加し、生産性向上の術を学んだことが影響しているのと考えられます。

このように、積極的に学ぼうとしている社員へ向けて企画した講座が、社員の能力向上する役割として効果があることが具体的な数値からわかっています。

【4】まとめ

いかかでしょうか。

自社の社員が研修に積極的に取り組んでいないところを見かけたことはありませんか?

それは社員に非があるのではなく、モチベーションを上げられない研修そのものに原因があるかもしれません。

そこで研修とは別に企業内大学を設立し、社員が能動的に学習できる環境を整えてみてはいかかでしょうか。

内部の社員の能力が向上するだけでなく、外部からもその環境が魅力にうつり、そこで学びたいと思う優秀な人材が集まってくるかもしれません。

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