社会保険にはあらゆる手続きがあります。適切に対応しないと、法律に違反し、罰則が科せられる恐れもあるので、正しく社会保険の手続きの流れを理解しておくことが大切です。この記事では、社会保険の手続きの手順を簡潔にわかりやすく解説します。また、社会保険の申請の注意点も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
社会保険料の支払いは従業員の給与から控除するため、従業員が入退社した際の社会保険の手続きはミスなく対応しなければなりませんが、対象者や申請期限、必要書類など大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
当サイトでは社会保険の手続きをミスや遅滞なく完了させたい方に向け、「社会保険の手続きガイド」を無料配布しております。
ガイドブックでは社会保険の対象者から資格取得・喪失時の手続き方法までを網羅的にわかりやすくまとめているため、「社会保険の手続きに関していつでも確認できるガイドブックが欲しい」という方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
1. 社会保険とは?
社会保険とは、病気や怪我、失職、災害などから労働者を守るため、一定の要件を満たした事業者や従業員に加入が義務付けられている公的保険のことです。社会保険は大きく「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」の5つから構成されます。
健康保険・厚生年金保険・介護保険は「狭義としての社会保険」、雇用保険・労災保険は「労働保険」と区分されることがあります。この記事では、主に狭義としての社会保険について解説します。ここからは、社会保険(狭義としての社会保険)の加入条件について、企業と従業員に分けて紹介します。
1-1. 社会保険の加入条件【企業側】
社会保険の適用対象となる事業所を「適用事業所」とよび、「強制適用事業所」と「任意適用事業所」に区分することができます。会社や企業といった法人は、強制適用事業所に当てはまり、社会保険に必ず加入しなければなりません。たとえ一人だけで経営している場合も対象になります。また、法人に当てはまらなくても、常時5人以上の労働者を雇用している個人事業主なども、強制適用事業所に該当し、社会保険に加入する義務が生じます。
一方、強制適用事業所に該当しない場合でも、従業員の同意を得たうえで、厚生労働大臣の認可を受けることで、適用事業所となり、社会保険に加入することが可能です。なお、任意適用事業所の場合、健康保険と厚生年金保険のどちらか一方のみの加入もできます。このように、適用事業所になると、事業主の社会保険への加入手続きが必要になります。
1-2. 社会保険の加入条件【従業員側】
会社や企業で働いている労働者は、次の要件を満たした場合、原則として社会保険に加入しなければなりません。
- 従業員数101人以上の事業所で働いている
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上(基本給と手当)
- 2カ月を超える雇用の見込みがある
- 学生に該当しない(休学している人や定時制・通信制に通っている人を除く)
このような要件をすべて満たした場合、正社員だけでなく、パート・アルバイトなどで働く人も社会保険に加入する義務が生じます。また、社会保険適用拡大により、2024年10月から「従業員数51人~100人の事業所」で働く労働者も、社会保険の適用対象になるので注意が必要です。
関連記事:社会保険の加入条件は?保険の種類ごとに条件を詳しく紹介
2. 社会保険の手続きの手順
事業者が社会保険に加入する際、従業員が社会保険に加入する際など、企業はさまざまな社会保険の手続きをしなければなりません。しかし、社会保険の申請手続きのステップはシンプルです。ここでは、社会保険の手続きの主な手順について詳しく紹介します。
2-1. 書類を揃える
まずは社会保険の手続きに必要な書類を収集することから始めましょう。健康保険や厚生年金保険、介護保険の手続きに必要な申請書類は、基本的に日本年金機構のサイトからダウンロードすることができます。また、健康保険や介護保険の手続きに必要になる申請書類は、加入先の健康保険組合のサイトからダウンロードできる場合もあります。もしも手続きのやり方がわからない場合、まずは日本年金機構や健康保険組合に問い合わせてみましょう。
2-2. 書類を記入する
社会保険の手続きに必要な書類を用意できたら、記入を始めます。手続きによっては、従業員が記載しなければならないケースもあります。また、申請書を記載する際に、企業の事業所番号や従業員の基本情報が必要になることもあるため、あらかじめ情報をまとめて管理しておくようにしましょう。
2-3. 書類を提出する
申請書類の記載ができたら、提出をおこないましょう。提出する際、添付書類が必要になることもあるので、あらかじめチェックしておきましょう。社会保険関係の書類の提出先は、基本的に「日本年金機構」や「健康保険組合」になります。また、提出方法には、主に「窓口」「郵送」「電子申請」があります。なお、提出先や提出方法は指定されているケースもあるので、事前にきちんと確認して、間違った方法で提出しないように気を付けましょう。
関連記事:社会保険手続きの電子申請義務化!やり方やメリット・デメリットを解説
3. 社会保険の具体的な申請の手順
ここでは、社会保険の具体的な申請手続きの手順について詳しく紹介します。
3-1. 企業の新規適用における手続きの流れ
企業が適用事業所に当てはまる事実が生じたら、社会保険に加入するため、事業主が「新規適用届」を作成して、「日本年金機構」や「健康保険組合」へ提出する必要があります。また、新規適用届を提出する際、次の該当する書類も添付しなければなりません。
- 法人(商業)登記簿謄本(法人の場合)
- 法人番号指定通知書等の写し(国・地方公共団体・法人の場合)
- 事業主の世帯全員の住民票(強制適用となる個人事業所の場合)
新規適用届の提出期限は、事実が発生したときから「5日以内」です。
3-2. 従業員の加入申請の流れ
従業員を採用した場合や、雇用条件を変更した場合で、要件を満たすのであれば、社会保険に加入する義務が生じます。従業員の社会保険の加入手続きでは、事業主が「被保険者資格取得届」を作成して、「日本年金機構」や「健康保険組合」へ提出する必要があります。「被保険者資格取得届」を作成する際、基礎年金番号やマイナンバー(個人番号)を記載しなければならないので、従業員への確認が必要です。
「被保険者資格取得届」の提出期限は、事実発生から「5日以内」です。なお、添付書類は、原則として不要です。しかし、「60歳以上に該当して退職後1日の間もなく再雇用された場合」「国民健康保険組合に継続加入し一定の要件に該当する場合」などは、添付書類が必要になるケースもあるので注意が必要です。
関連記事:社会保険被保険者資格取得届とは?手続きの流れや注意点をわかりやすく解説
3-3. 従業員の資格喪失申請の流れ
従業員が退職や転職などにより、社会保険の資格を喪失する場合、事業主が「被保険者資格喪失届」を作成して、「日本年金機構」や「健康保険組合」へ提出する必要があります。添付書類は、組合管掌健康保険(組合健保)と全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)のいずれに該当するかで異なります。組合健保の場合、添付書類は不要です。一方、協会けんぽの場合、健康保険被保険者証や高齢受給者証、健康保険特定疾病療養受給者証、健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証などを添付する必要があります。「被保険者資格喪失届」の提出期限は、事実が生じたときから「5日以内」です。
関連記事:社会保険の資格喪失届とは?書き方や注意点を詳しく解説
3-4. 従業員の家族を被扶養者とする手続きの流れ
従業員の家族を被扶養者にする場合、従業員が「被扶養者(異動)届」を作成して、企業を経由して、「日本年金機構」や「健康保険組合」へ提出する必要があります。被扶養者に該当するかどうかは、収入や世帯状況などにより判断されます。そのため、「続柄確認のための書類」や「収入要件確認のための書類」の添付が必要です。「被扶養者(異動)届」の提出期限は、事実が発生してから「5日以内」です。
関連記事:健康保険被扶養者届とは?書き方や記入例、提出が必要なケースや添付書類を解説
3-5. 介護保険の被保険者に該当しなくなった際の手続きの流れ
協会けんぽの被保険者や被扶養者が、次のような理由で、介護保険第2号被保険者に該当しなくなった(該当するようになった)場合、従業員が「適用除外等該当・非該当届」を作成し、企業を経由して、「日本年金機構」へ提出する必要があります。
- 転勤により日本国内から外国へ転居した場合または日本国内に居住するようになった場合
- 介護保険施設、特定施設等に入所した場合または退所した場合
- 入管法の規定による3カ月を超える在留期間が決定等されていない場合または決定等された場合
この場合、それぞれの理由を証明するための添付書類が必要になります。提出期限は「遅滞なく」と定められています。明確に期限は決められていませんが、事実が生じたら速やかに手続きするようにしましょう。
4. 社会保険の手続きの手順における注意点
ここでは、社会保険の手続きの手順における注意点について詳しく紹介します。
4-1. 健康保険証が届くまでの対処法
従業員の社会保険の加入を申請してから、健康保険証が会社に届くまで2週間程度かかります。それまでに、従業員や家族が受診する場合、医療費が全額負担となります。 あらかじめ、健康保険証の代わりとなる「健康保険被保険者資格証明書」を年金事務所で交付してもらうことで、発行後20日以内なら保険証と同様の負担で医療機関にて受診が可能です。
ただし「証明書」を取得するには、「健康保険被保険者資格証明書交付申請書」が必要になります。これを提出すれば、「証明書」を即日に交付してもらうことができます。なお「証明書」は保険証と引き換えに返還しなければならないので注意が必要です。
4-2. 労働保険の手続きも必要
労働者を一人でも雇っている場合、事業主は労働保険に加入する義務が生じます。また、次の要件を満たす場合、労働者は原則として雇用保険に加入しなければなりません。なお、労災保険はすべての労働者が加入対象になります。
- 31日以上継続して雇用されることが見込まれている
- 週の所定労働時間が20時間以上である
このように、狭義としての社会保険だけでなく、労働保険の手続きも必要です。手続きの流れや手順は、健康保険や厚生年金保険と同様です。ただし、書類の提出先や提出期限が異なるので、あらかじめ手続きのやり方を確認しておくようにしましょう。
関連記事:労働保険加入手続きの方法を一から解説!必要書類・更新手続きも確認
4-3. 適切に対応しないと罰則の可能性がある
社会保険の手続きを適切におこなわない場合、罰則が科せられる恐れがあります。たとえば、健康保険法第48条「届出」に違反すると、健康保険法第208条により「6カ月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金」の罰則を受ける可能性があります。このような懲役や罰金といった罰則を受けないためにも、社会保険のルールを正しく理解して、手順の通り手続きをおこないましょう。
(届出)
第四十八条 適用事業所の事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、被保険者の資格の取得及び喪失並びに報酬月額及び賞与額に関する事項を保険者等に届け出なければならない。
第二百八条 事業主が、正当な理由がなくて次の各号のいずれかに該当するときは、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第四十八条(第百六十八条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をしたとき。
本記事で解説してきた入社時の社会保険手続きに関しましては、提出期限を遅れてしまうと罰則が生じてしまう可能性もあるため、忘れずに手続きを行うようにしましょう。当サイトでは、本記事で解説した入社・退社時の社会保険手続きの内容や手続き時に担当者が気を付けるポイントなどを解説した資料を無料で配布しております。社会保険手続きに関して不安な点があるご担当者様は、こちらから「社会保険手続きの教科書」をダウンロードしてご確認ください。
5. 社会保険の手続きの手順を理解してスムーズに対応しよう
社会保険の手続きは、従業員の生活や健康に関わるため非常に大切です。社会保険の手続きには、さまざまな種類があり、業務が煩雑になってしまうケースもあります。社会保険の手続きに悩みを抱えている場合、労務管理システムなどのITツールを導入してみるのも一つの手です。社会保険の手続きの手順を正しく理解し、適切に対応しましょう。
社会保険料の支払いは従業員の給与から控除するため、従業員が入退社した際の社会保険の手続きはミスなく対応しなければなりませんが、対象者や申請期限、必要書類など大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
当サイトでは社会保険の手続きをミスや遅滞なく完了させたい方に向け、「社会保険の手続きガイド」を無料配布しております。
ガイドブックでは社会保険の対象者から資格取得・喪失時の手続き方法までを網羅的にわかりやすくまとめているため、「社会保険の手続きに関していつでも確認できるガイドブックが欲しい」という方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。