従業員の労働時間をタイムカードで管理している会社も少なくないでしょう。タイムカードで労働時間を計算する際、15分単位や30分単位で切り捨て・切り上げするのは労働基準法違反になります。本記事では、タイムカードを30分単位で計算することが違法になる理由や、違法と判断された場合の罰則、労働時間の正しい計算方法について解説します。
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そこで、解決策の一つとして注目されているのが勤怠管理システムです。 勤怠管理システムの導入を検討することで、
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・締め作業はワンクリックで、自動集計されるので労働時間の計算工数がゼロに
・ワンクリックで給与計算ソフトに連携できる
など、人事担当者様の工数削減につながります。
「システムで効率化できるのはわかったけど、実際にタイムカードでの労働時間管理とどう違うのかを知りたい」という人事担当者様のために、タイムカードの課題を勤怠管理システムでどのように解決できるのかをまとめた資料を無料で配布しておりますので、ぜひダウンロードしてご覧ください。
目次
1. タイムカードの30分単位での計算は違法!
タイムカードを30分単位で計算して、「17時48分」にタイムカードを切った場合は「17時30分」までの勤務とするような扱いをしている会社もあるかもしれません。このようなタイムカードの30分単位での計算は、労働基準法に違反することになり、原則として違法となります。ここでは、タイムカードの勤怠管理の仕組みを説明したうえで、タイムカードの30分単位での計算が違法になる理由について詳しく紹介します。
1-1. タイムカードの勤怠管理の仕組み
タイムカードとは、始業や終業時刻、休憩時間、残業時間などを管理して、労働時間を正しく把握し、正確に勤怠管理や給与計算をおこなうためのカードのことです。タイムレコーダー(打刻機)にタイムカードを差し込むことで、そのときの時刻を印字することができます。月末などに、タイムカードの情報を基に、労働時間を集計することで、給与計算を実施することが可能です。このように、タイムカードの勤怠管理の仕組みはシンプルです。しかし、間違った運用をすると、違法になる可能性もあるので、正しいタイムカードでの勤怠管理の方法を理解しておくことが大切です。
関連記事:タイムカードとは?仕組みや使い方、メリット・デメリットを徹底解説
1-2. タイムカードの30分単位での計算が違法になる理由
労働基準法第24条「賃金支払いの5原則」のうち、「賃金全額払いの原則」により、労働の対価である賃金は、全額支払わなければなりません。たとえば、タイムカードの退勤時刻を15分単位や30分単位で切り捨てている場合、その切り捨てた労働時間分の賃金が支払われないことになります。このように、労働基準法に基づき、タイムカードの30分単位での計算は違法になります。そのため、原則として、タイムカードに記載された通りの時間で労働時間を集計し、給与計算をおこなう必要があります。
(賃金の支払)
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。(省略)
関連記事:賃金支払いの5原則とは?違反したときの罰則や例外を詳しく紹介
2. タイムカードを30分単位で打刻まるめしている場合のリスク
タイムカードを30分単位で計算している場合、さまざまなリスクがあります。ここでは、タイムカードを30分単位で打刻まるめしている場合のリスクについて詳しく紹介します。
2-1. 未払い分の賃金を請求される可能性がある
従業員には未払いの賃金を請求する権利があります。労働基準法第115条では、未払い賃金の請求は該当月の給与が支払われた日の翌日から5年間認められています。ただし、労働基準法第143条の経過措置により、当面の間は3年間とされています。
従業員から未払い賃金の支払いに関する請求を受け、従業員の訴えが裁判所から認められた場合、企業は該当従業員を含むすべての従業員に対し、未払い賃金を支払う必要があります。1日単位では少額であっても、3年間分の未払い賃金を従業員全員へ支払うことになれば、企業の経営を脅かす事態になりかねません。
(時効)
第百十五条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
第百四十三条 (省略)
③ 第百十五条の規定の適用については、当分の間、同条中「賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間」とあるのは、「退職手当の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)の請求権はこれを行使することができる時から三年間」とする。
2-2. 労働基準監督署より是正勧告が実施される
企業が不正な勤怠管理や給与計算をしている場合、従業員が労働基準監督署に通報する可能性もあります。従業員の告発情報に基づき、労働基準監督署は不正が事実かどうか調査をおこないます。その際に、不正が明らかになれば、是正勧告が実施されます。後日、再調査がおこなわれる際に、改善されていない場合、労働基準法に基づき罰則が課せられることになります。このような事態に発展しないよう、不正に気付いたら早い段階で是正するよう努めましょう。
2-3. 労働基準法に基づき罰則が課せられる
労働時間を15分単位や30分単位で丸めることは、労働基準法第24条における「賃金全額払いの原則」に違反します。労働基準監督署による是正勧告に従わなかった場合、労働基準法第120条により、30万円以下の罰金の罰則が課せられます。また、従業員の労働時間を適切に管理・把握していないことは労働安全衛生法の66条の8の3にも反するほか、勤怠記録の改ざんであるとされた場合には刑法161条違反の電磁的記録不正作出罪が成立する可能性もあります。このように、適正な勤怠管理は企業の義務であり、それを怠ると、法律に基づき罰される恐れがあります。
第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 (省略)、第二十三条から第二十七条まで、(省略)の規定に違反した者
2-4. 企業名が公表される
もしかしたら、罰金だけで済むのであれば、事務処理の簡便化のためタイムカードを30分単位で管理しても問題ないと考えている人もいるかもしれません。労働基準法に違反した場合、厚生労働省サイトに企業名が公表されるリスクもあります。社会的信用を損ない、事業の存続が困難になる恐れもあります。このように、タイムカードを30分単位で計算していると、大きなペナルティを受ける可能性もあるので、法律に基づき正しく勤怠管理をおこないましょう。
3. タイムカードの30分単位での切り捨て・切り上げが認められるケース
タイムカードの30分単位での計算は、原則として違法になります。しかし、例外もあります。ここでは、タイムカードの30分単位での切り捨て・切り上げが認められるケースについて詳しく紹介します。
3-1. 1カ月単位の勤務時間の切り捨て・切り上げに該当する場合
時間外労働や休日労働、深夜労働といった割増労働が発生するケースはよくあります。このような割増労働の時間数をそれぞれ1カ月単位で合計し、1時間未満の端数が発生する場合に限り、30分単位での切り捨て・切り上げが認められています。
たとえば、法定外残業が1カ月に20時間20分あった場合、30分単位で切り捨てて20時間とすることが可能です。従業員が不利になるような処理だけをするのは認められないので、もしも法定外残業が1カ月に20時間40分あった場合、30分単位で切り上げて21時間とする必要があります。
労働時間の端数処理のルール
□ 以下の⽅法による場合には賃⾦不払いに係る法違反としては取り扱わない。
①一か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。(昭和63年3月14日付け基発150号)
3-2. 正当な理由がある場合
タイムカードで労働時間を管理している場合、打刻機と作業場に距離があり、打刻時間と実労働時間にズレが生じる可能性もあります。また、仕事をしていないにもかかわらず、従業員の都合によってタイムカードを切る時間が遅れてしまったというケースもあるかもしれません。
このような場合、客観的かつ合理的に証明できれば、タイムカードを15分単位や30分単位などで計算して問題ない場合もあります。ただし、後からトラブルを生まないよう、従業員の同意を得たうえで、証拠をきちんと残しておくことが大切です。
3-3. 従業員に有利となる端数処理の場合
労働時間は原則として1分単位で計算されなければなりません。しかし、1分単位で管理しようとすると、勤怠管理や給与計算が煩雑になり、事務負担が増える可能性もあります。業務を効率化するため、従業員に有利となるような端数処理であれば、タイムカードを15分単位や30分単位で計算しても問題ありません。
ただし、打刻まるめをすることで、人件費が大きくなる恐れがあります。また、従業員によって打刻まるめのやり方が異なると、会社への不満につながる可能性もあります。タイムカードを15分や30分単位で端数処理する場合、事前にルールを整備し、就業規則に定めたうえできちんと周知するようにしましょう。
4. タイムカードを用いて正しく労働時間を管理するためのポイント
4-1. 労働時間は1分単位で計算する
労働時間は1分単位で計算する必要があります。ただし、このような規則は、法律で明示されているわけではありません。タイムカードに記載されている通り、オンタイムで勤怠管理や給与計算をおこなうのがベストかもしれません。しかし、秒単位で管理をするのは困難であり、業務負担にもつながることから、1分単位で計算すれば法律的に問題ないとされています。
4-2. タイムレコーダーの設置場所を変更する
タイムカードを使用して勤怠管理している場合、打刻漏れや不正打刻が発生しやすいというデメリットがあります。また、打刻時間と実労働時間がズレてしまうと、正確に勤怠管理や給与計算ができなくなります。このようなリスクを回避するため、タイムレコーダーの設置場所を作業場の近くに変更することも検討しましょう。また、不正打刻をなくすため、プライバシーの侵害にならない範囲で、防犯カメラを設置するのも一つの手です。
4-3. 勤怠管理システムの導入も検討する
タイムカードはコストをかけず運用でき、メリットも多くあります。しかし、タイムカードでは労働時間を正確に管理するのが難しいと感じている場合、勤怠管理システムの導入も検討しましょう。勤怠管理システムであれば、打刻機を用いなくとも、PC・スマホやICカード、生体認証など、自社にあった方法で打刻をおこなうことができます。また、1分単位での労働時間の集計から給与の計算までを自動化し、業務を効率化することが可能です。ただし、勤怠管理システムにはさまざまな種類があるので、事前に課題や目的を明確にし、自社のニーズにあったツールを選定することが大切です。
5. 労働時間の管理に関する注意点
労働時間を正しく計算し、賃金を適切に算出するためには、次のような手順に則って計算すると良いでしょう。
- 勤務時間から休憩時間を引いて実労働時間を求める
- 遅刻・早退などの事情があれば労働時間から差し引く
- 労働時間を所定労働時間と時間外労働・深夜労働・休日労働にわける
- 時間外労働・深夜労働・休日労働に対する割増賃金を算出する
- 手当がある場合は手当を上乗せする
ここからは、労働時間の管理に関する注意点について詳しく紹介します。
5-1. 労働時間の定義を正しく把握する
労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下で会社のために働く時間のことです。そのため、業務遂行のために必要な着替えや準備・後片付けなども、労働時間に含まれます。また、労働基準法第32条では、労働時間の上限「法定労働時間(1日8時間、週40時間)」が定められています。原則として、法定労働時間を超えて働かせることはできません。なお、労働時間は休憩時間を除外して算出する点も押さえておきましょう。
(労働時間)
第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
② 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
5-2. 労働時間に応じて休憩時間を正しく付与する
労働時間が6時間を超える場合、休憩時間の付与が必要です。6時間ちょうどの場合、休憩の付与は不要です。しかし、「6時間27分」の労働時間を30分単位で切り捨てて「6時間」とみなして、休憩を与えないのは違法になります。休憩時間も1分単位で計算された労働時間を基に付与しましょう。
また、休憩時間は労働時間に応じて、付与すべき時間が変わることもあります。労働時間が6時間超え8時間以内の場合、45分以上の休憩の付与が必要です。労働時間が8時間超えの場合、1時間以上の休憩時間を付与しなければなりません。このように、労働時間だけでなく、休憩時間のルールもきちんと理解しておきましょう。
(休憩)
第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。(省略)
関連記事:労働時間内の休憩に関する注意点|休憩時間に関するQ&A付き
5-3. 残業が発生するのであれば36協定の締結が必要
労働時間を1分単位で計算した結果、法定労働時間を超える場合、事前に36協定の締結が必要です。また、労働基準法第35条で定められた法定休日(週1日もしくは4週4日)に労働が発生する場合も、36協定が必要になります。36協定を結ばず、時間外労働や休日労働が発生した場合、労働基準法に違反することになります。なお、36協定は締結しただけでは、効力は発生しません。36協定を結んだら、正しく届け出ることで、36協定の効力が生じるようになります。
(休日)
第三十五条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
② 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
関連記事:36協定とは何かわかりやすく解説!特別条項や新様式の届出記入方法も紹介!
5-4. 割増賃金も適切に支給する
時間外労働や休日労働、深夜労働に対しては、割増賃金が発生します。それぞれの割増率は、次の通りです。
- 時間外労働(月60時間以内):25%以上
- 時間外労働(月60時間超え):50%以上
- 休日労働:35%以上
- 深夜労働:25%以上
このように、割増率はそれぞれ異なるので、割増労働ごとに時間数を算出してから、割増賃金を計算する必要があります。この際も、原則として1分単位で集計しなければなりません。ただし、例外として1カ月単位で合計した結果、1時間未満の端数が生じる場合に限り、30分単位で端数処理することができます。
関連記事:割増賃金とは?計算方法や残業60時間超の割増率をわかりやすく解説
5-5. 従業員の労働状況に関する情報は5年間保存する
労働基準法第109条により、紙のタイムカードや勤怠管理システムの勤怠データなど、賃金に関係する重要な書類は5年間保存しなければなりません。ただし、労働基準法第143条の経過措置により、当面の間は3年間の保存でも問題ありません。しかし、いつ経過措置が終了するか未定なため、できる限り5年間保存しておくようにしましょう。
(記録の保存)
第百九条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。
第百四十三条 第百九条の規定の適用については、当分の間、同条中「五年間」とあるのは、「三年間」とする。(省略)
6. タイムカードの30分単位での端数処理に関連したよくある質問
ここでは、タイムカードの30分単位での端数処理に関連したよくある質問への回答を紹介します。
6-1. 早退や遅刻の場合の30分単位の打刻まるめは認められる?
早退や遅刻があった場合も、賃金全額払いの原則に基づき、労働時間は1分単位で計算されなければなりません。たとえば、10時37分に遅刻して出勤した従業員の始業時刻を、30分単位で切り上げて11時に出勤したことにするのは違法になります。
6-2. 正社員とパート・アルバイトで端数処理を変えても問題ない?
労働基準法はすべての労働者に適用されます。そのため、正社員だけでなく、パート・アルバイトにも労働基準法が適用されるので、雇用形態に関係なく、同様の端数処理をおこなうことが大切です。ただし、管理監督者は、労働時間や休憩時間、休日に関する規定が適用されないことを押さえておきましょう。しかし、適正な労働時間の把握義務は求められるため、管理監督者であっても、1分単位で労働時間を管理することが重要です。
6-3. 残業代の端数処理は認められる?
残業代を切り捨てすると、賃金全額払いの原則に違反することになるので、基本的に端数処理は認められません。しかし、1時間あたりの賃金額や割増賃金額、1カ月における各々の割増賃金額に関しては、端数処理が認められています。ただし、ルールに従っていない端数処理は認められません。なお、従業員が有利になるような端数処理は認められます。たとえば、従業員に多く賃金が支払われるようにした残業代の切り上げは可能です。
割増賃⾦計算時の端数処理のルール
□ 以下の⽅法による場合には賃⾦不払いに係る法違反としては取り扱わない。
①1時間当たりの賃⾦額及び割増賃⾦額に円未満の端数が⽣じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。
②⼀か⽉における時間外労働、休⽇労働、深夜業の各々の割増賃⾦額の総額に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。(昭和63年3月14日付け基発150号)
7. タイムカードの30分単位での計算は違法になるので気を付けよう
タイムカードの打刻時間によって、15分単位や30分単位で丸めて処理することは、労働基準法第24条における「賃金全額払いの原則」に違反します。違法だと認められると、30万円以下の罰金の罰則が課せられる恐れもあります。労働時間を正確に算出して適切に賃金を支払うことは、会社としての義務であるため、15分単位や30分単位で端数処理することなく、1分単位で計算するようにしましょう。
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