会社員であれば誰もがおこなっているのが年末調整です。人事労務担当者の方は年末調整についての案内などを出さなくてはいけません。その際に年末調整にどういった書類が必要か知っていますか。年末調整を円滑に進めるためには、どういった書類が必要か正しく理解しておかなくてはいけません。
本記事では年末調整に必要な書類について解説いたします。書類の書き方や入手する方法についても紹介しているので、ぜひご確認ください。
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目次
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1. 年末調整とは
年末調整とは、一年間で納付した源泉所得税の過不足を清算する業務を指します。企業は、毎月従業員の給与・賞与から天引きして源泉所得税を納付しますが、あくまで目安額となります。そのため、不足があれば追加徴収し、過払いがあれば還付することで正しい納税額に調整する必要があります。
関連記事:年末調整とは|確定申告との違い、対応方法、注意点など基礎からわかりやすく解説!
2. 年末調整で従業員から回収が必要な書類
年末調整に必要な書類は社員から回収しなくてはいけません。
ここからは、具体的な書類内容について紹介します。
2-1. 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、従業員に扶養親族がいるかを確認するための書類で、毎月の給与から天引きする源泉所得税額を正しく計算するために必要な書類です。従業員自らが記載しなくてはいけないので、書類を渡して期日までに提出するように指示をしなくてはいけません。
年末調整のための書類というよりは、あくまでも翌年の源泉徴収税額を計算するための書類です。この申告書には、扶養親族の数に影響する事項を記載しなくてはいけません。提出期限については「その年の最初に給与の支払いを受ける日の前日まで」となっており、他の申告書と比べて大きく異なっています。
他の年末調整に関係している書類と比べると、少し位置付けが異なるため、注意しましょう。
関連記事:【2022年度版】扶養控除等(異動)申告書とは?書き方を項目別に紹介
2-2. 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
この書類は、1枚の用紙に3つの申告書が含まれており、全てを従業員が記載しなくてはいけません。
従業員からは、年の最後に給与等の支払日の前日までに受け取る必要があるため、提出期限を漏れなく伝えましょう。
まずは給与所得者の基礎控除申告書について解説します。これは基礎控除に関係している申告書であり、基礎控除はもともとは誰でも一律に受けられるものでしたが、制限が設けられたためこの申告書に所得金額を記載する必要が生まれました。
次に給与所得者の配偶者控除等申告書です。こちらは配偶者控除や配偶者特別控除についての内容を記載する申告書となっています。基礎控除と同様に本人や配偶者の所得によって適用されるかどうか、金額などが異なるため記載をしなくてはいけません。
3つ目は所得金額調整控除申告書です。こちらには所得金額調整控除を受けるための要件を記載します。
2-3. 給与所得者の保険料控除申告書
生命保険料控除や地震保険料控除などの対象となる保険料は、給与天引きされる源泉所得税には反映されていません。年末調整をして初めて所得税額に反映されます。そのために必要なのが、こちらの申告書です。
保険会社から毎年10月中旬~10月下旬頃に控除証明書が届くので、その内容を元にして記載をすることになります。
こちらの書類の提出期限も、従業員からは年の最後に給与等の支払日の前日までに受け取る必要があるため注意しましょう。
2-4. その他の必要書類
その他、回収しなくてはいけない書類としては以下があります。
- 生命保険料の控除書
- 地震保険料の控除書
- 小規模企業共済等掛金払込証明書(iDeCoの掛け金を支払っている場合)
- 国民年金の控除証明書など、社会保険料を証明する書類
- 住宅ローン控除に必要な借入金の年末残高等証明書など
これら全ての書類は従業員から回収しなくてはいけません。従業員が対応できる時間を作るために、ある程度余裕を持ってアナウンスする必要があるので注意しましょう。
このように、年末調整をおこなう前にはどのような書類・手続きがあるのか把握しておく必要があります。
しかし、年末調整では、従業員から回収する書類・企業が準備して提出する書類が複数あり、手続きが煩雑に感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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3. 年末調整に作成すべき・提出すべき書類
ここからは、年末調整に作成・提出する必要がある書類について解説します。
提出に漏れがないよう、税務署と市区町村に提出すべき書類をそれぞれ確認していきましょう。
3-1. 税務署に提出する書類
税務署に提出すべき書類としては、以下の3つが存在します。
- ⽀払調書
- 源泉徴収票
- 法定調書合計表
⽀払調書とは、「個人や法人に対して支払った金額や内容を記載した書類」を指します。
源泉徴収票とは、「年間の収入と控除額、納付済みの所得税額を記載した書類」を指します。
ただし、提出の対象者は以下のいずれかの条件に該当する方のみであるため、確認しましょう。
(1) 法人の役員(現に役員をしていなくても、その年中に役員であった者を含みます。)については、その年中の給与等の支払金額が150万円を超えるもの。なお役員には、相談役、顧問その他これらに類する方が含まれます。
(2) 弁護士、司法書士、税理士等については、その年中の給与等の支払金額が250万円を超えるもの
(3) 上記(1)および(2)以外の者については、その年中の給与等の支払金額が500万円を超えるもの
なお、上記(2)の弁護士等に対する支払は、給与等として支払っている場合の提出範囲ですので、報酬として支払う場合には、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を提出することとなります。
関連記事:源泉徴収票の作成方法|年末調整や給与所得の計算方法を図解で説明
法定調書合計表とは、「法定調書の種類ごとにそれぞれ人員数や支払い額、源泉徴収税などの総額を記載した書類」を指します。
関連記事:法定調書合計表とは?提出先や電子申告について徹底解説
3-2. 市区町村に提出する書類
住民税の計算をおこなうために、市区町村には以下の書類を提出します。
- 給与支払報告書(総括表)
- 給与支払報告書(個人別明細書)
給与支払報告書は、従業員ごとに給与をまとめた「個人別明細書」と、給与の支払者の名称や受給者人数、個人別明細書を作成した従業員の人数などを記載した「総括表」が存在します。総括表は、個人別明細表の表紙として使われるため、それぞれ作成してともに提出する必要があります。
関連記事:給与支払報告書とは?書き方や提出方法をわかりやすく紹介
4. 年末調整の書類の書き方
年末調整の書類の書き方はそれほど難しくはありません。どの欄に何を記載すればいいかが明確になっているので、その通りに記載をしていくだけで完成します。とはいえ、あらかじめ押さえておくとスムーズに作成できるポイントもいくつかあるので、具体的な書き方や注意するべきポイントについて解説いたします。
関連記事:年末調整の書き方や注意点を書類ごとにわかりやすく解説
4-1. 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方
まずは市町村名や会社名、名前や生年月日などを記入します。
また、源泉控除対象配偶者に関しても記入をしていきます。一点注意すべき点としては、単に戸籍上の配偶者を記入するのではなく、「源泉控除対象」配偶者について記載するためご留意ください。
それ以外の欄については、申告書に記載のある通り記入すれば問題ありません。
4-2. 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書の書き方
配偶者控除等申告書は、配偶者控除又は配偶者特別控除を受ける場合には提出が必要です。それ以外の場合は、記入をしなくても問題ありません。
配偶者控除及び配偶者特別控除は、納税者本人の所得の金額によって控除額が異なります。どれほど控除されるかは申告書に計算のフローが記載されているので、計算をおこないましょう。
4-3. 給与所得者の保険料控除申告書の書き方
保険料控除申告書には、年末調整に関わる保険料についての情報を記入しますが、毎月の給与から控除されている健康保険料や介護保険料は記入する必要はありません。それ以外の保険料については、漏れなく記載する必要があります。
また、国民健康保険料や介護保険料については証明書を添付する必要がないですが、国民年金保険料、小規模企業共済等掛金については必要な証明書を提出しなくてはならないため、注意しましょう。
生命保険料控除、地震保険料控除には上限額があるため、申告書に記載されている計算式にあてはめて計算をおこないましょう。
4-4. 年末調整の書類の記入例は?
国税庁の公式サイトでは、各種申請書の記載例を公開しています。
書類作成時には、記入例を参照すると記入ミスや漏れを防げるため、必要に応じてご活用ください。
5. 年末調整の書類を入手・用紙をダウンロードする方法
年末調整に必要な書類は全て国税庁のホームページからダウンロードすることができます。PDF版やExcel版があるものについては、直接入力をすることが可能です。
年末調整の関連書類は国税庁の公式サイトから入手可能ですが、年ごとに書類の形式が異なる場合もあるため、間違いのないよう注意しましょう。
左上に何年度分かという記載があるため、前年度のデータを保存している場合でも、常に最新のデータを入手するようにします。仮に書類の内容が同じだとしても、前年度のデータを使って年末調整をおこなうことはできません。毎年、国税庁のホームページからダウンロードする必要があると覚えておくとよいでしょう。
6. 年末調整の書類についてよくある質問
ここからは、年末調整の書類についてよく生じる疑問について解説します。
年末調整書類における印鑑の必要性、従業員が住宅ローン控除を受けたい場合の対応方法、年末調整書類の保管方法、訂正方法をあわせて解説していきます。
6-1. 年末調整書類に印鑑は必要か?
令和3年(2021年)以降、年末調整の書類への押印義務は撤廃されました。そのため扶養控除等申告書などの年末調整関連の書類には、印鑑は必要ありません。最新の書類には、押印欄の表示もないことが確認できます。
6-2. 従業員が年末調整で住宅ローン控除を受けたい場合の対応は?
従業員が年末調整で住宅ローン控除を受けたいとの申出が出た場合、まず適用条件を満たしているか確認しましょう。
条件を満たした従業員からは、「住宅借入金等特別控除申告書 兼 住宅借入金等特別控除証明書」と「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」の提出を求めましょう。
6-3. 年末調整の書類の保管期間は?
年末調整の書類の保管期間の保管期間は、「申告書等の提出期限の翌年1月10日の翌日から7年間」となります。請求された際には、すぐに提示できるようしっかり保管しておくことが求められます。
6-4. 年末調整の書類を訂正したい場合には?
年末調整の書類を訂正したい場合は、誤って記載した箇所に二重線を引き、付近に正しく記入し直します。その上に、訂正印を二重線に重ねるように押します。
修正テープ・修正液を用いた訂正は認められないほか、シャチハタ印は使用しないよう注意しましょう。
7. 年末調整の業務内容を正しく理解しよう
年末調整にはさまざまな書類が必要です。
書類の種類とそれぞれの内容について理解して、手続きに不備がないよう準備していきましょう。
また、従業員が書類の内容について理解しておらず、誤った記載方法で提出をする可能性があります。そのまま年末調整の手続きをおこなわないよう、人事労務担当者はしっかりと修正をしなくてはいけません。
あまりにもミスが多い箇所は、アナウンスをしましょう。従業員に対しても年末調整の書類の意味についてしっかりと理解してもらうことが大切です。
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