打刻まるめは、給与計算業務を効率化できる手段の一つです。しかし、フレックスタイム制やテレワークなどの多様な働き方が推進されている現代においては、適切なルールを定めないと、誤って労働基準法に違反してしまう恐れがあります。この記事では、打刻まるめとは何か、ルールの設定方法や計算のやり方を踏まえてわかりやすく解説します。
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目次
1. 打刻まるめとは?
タイムカードや勤怠管理システムなどで打刻管理をおこなっている場合、「9時17分」「18時24分36秒」のように、分単位、秒単位で測定されるのが一般的です。このような場合、給与計算を効率化するために打刻まるめを採用している企業も多いのではないでしょうか。ここでは、打刻まるめの定義を説明したうえで、打刻の丸め処理は違法なのかどうかについて詳しく紹介します。
1-1. 打刻まるめの定義
打刻まるめとは、打刻時刻の端数を切り上げ、切り捨てをすることです。打刻まるめは「端数処理」と言い換えられることもあります。打刻を丸める単位は、5分、15分、30分など企業によってさまざまです。たとえば、15分単位で打刻まるめをおこなう企業では、退勤打刻が18時11分の場合、18時として扱われます。このように、打刻まるめは決まった方法があるわけではなく、企業によってやり方が異なります。そのため、労働基準法などの法律を理解したうえで、自社のニーズにあった打刻まるめを採用することが大切です。
関連記事:打刻を行う意味とは?打刻忘れが起きた際のリスクや対応などを徹底解説
1-2. 打刻の丸め処理は違法?
労働基準法第24条「賃金支払いの5原則」のうちの、「全額払いの原則」により、労働の対価である賃金は従業員に全額支払われなければなりません。そのため、労働者が不利になるような打刻の丸め処理は認められません。このように、打刻まるめは原則として認められないことをまず押さえておきましょう。
(賃金の支払)
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。(省略)
関連記事:賃金支払いの5原則とは?違反したときの罰則や例外を詳しく紹介
2. 労働基準法に違反しない打刻まるめのルール
打刻まるめは、給与計算業務を効率化してくれる便利な手段ですが、ルールを理解しないまま運用してしまうと、労働基準法に違反しかねません。ここでは、違法にならないための打刻まるめのルールについて詳しく紹介します。
2-1. 1分単位で打刻管理するのが原則
「全額払いの原則」に則り、労働の対価の賃金は全額支払うべきであるため、打刻の丸め処理をせず、労働者の打刻時間に基づき、勤怠管理や給与計算をおこなうのが原則です。ただし、秒単位での打刻管理は非現実かつ不可能に近いため、1分単位で勤怠管理を実施するのが一般的です。なお、「1分単位で勤怠管理をすべき」という規則は、労働基準法などで明記されているわけではないので注意が必要です。まずは打刻まるめをせず、オンタイムで打刻管理ができないか検討してみましょう。
関連記事:タイムカードは1分単位で集計すべき!違反時の罰則や残業代の計算方法とは
2-2. 労働者が有利になる丸め処理は認められる
出勤打刻の切り上げや、退勤時刻の切り捨てにおいて、労働者が不利益を被るような丸め処理は労働基準法に違反することになります。その逆で、労働者が有利になるような丸め処理は認められます。まずは従業員に不利益が生じないような打刻ルールを設計することが大切です。また、勤怠管理や給与計算を効率化するためにも、従業員が有利になるような打刻まるめも検討してみましょう。
関連記事:タイムカードの打刻ルールは?事例や出勤・退勤時の注意点を紹介
2-3. 例外として認められている打刻まるめのルール
月間の総残業時間などにおいては、30分未満を0分に切り捨て、また30分以上を1時間に切り上げるという丸め処理は、事務負担の削減などの観点から、行政通達の例外規定により認められています。そのため、月間の時間外労働・休日労働・深夜労働の打刻まるめは、30分単位の切り捨てと切り上げが可能です。
A.割増賃金計算の端数処理に当たって次の方法は、常に労働者の不利となるものでなく、事務簡便を目的としたものと認められるから、労働基準法第24条および同法第37条違反としては取り扱わないとされています。具体的には、次のとおりです。
1か月における時間外労働、休日労働および深夜業のおのおのの時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。(省略)
3. 打刻まるめのメリット
正しいルールで打刻の丸め処理をおこなうことで、さまざまなメリットが得られます。ここでは、打刻まるめのメリットについて詳しく紹介します。
3-1. 給与計算業務を簡略化できる
タイムカードを集計する際、細かな秒単位や分単位で計算している場合、時間や手間がかかります。また、集計ミスが発生し、誤った金額の給与を支給してしまい、労働基準法に違反するリスクもあります。ルールに則り、打刻まるめをおこなうことで、集計・計算作業の負担が軽減され、給与計算業務を効率化することが可能です。
3-2. 従業員の打刻に関する負担を減らせる
打刻時間をオンタイムで管理する場合、残業などがない限り、定刻通りに打刻してもらう必要があります。そのため、1分も間違ってはいけないと、従業員にプレッシャーがかかる可能性があります。また、少しの打刻ズレが生じた場合も、毎回打刻修正をおこなわければならず、事務負担が増え、会社全体としての生産性が低下する恐れもあります。労働者に有利になるよう、5分単位や15分単位で打刻まるめを実施すれば、従業員の打刻に対する負担を軽減し、コア業務に集中することができるようになります。
3-3. より実労働時間に近い打刻が可能となる
労働時間の中には、仕事と結びつかないような細かな時間が生じていることもあります。たとえば、「打刻した後に一杯コーヒーを飲んでから仕事に着手する」「上司や同期と雑談をしてから打刻をする」といった場合が挙げられます。このような時間を除外したものが、実労働時間といえるかもしれません。しかし、一つひとつの小さな出来事を管理していたらキリがなく、管理コストもかかります。そのため、数分丸めた打刻まるめを採用することで、より実労働時間に近い時刻となり、適切な勤怠管理につながる可能性もあります。
4. 打刻まるめのデメリット
正しいルールで打刻の丸め処理をおこなわないと、労働基準法に違反するなど、あらゆるデメリットが生じるリスクがあります。ここでは、打刻まるめのデメリットについて詳しく紹介します。
4-1. 打刻時間を不当に短く丸めると違法になる
打刻時間を丸めることで、会社として大きなメリットが得られるからといって、労働基準法に違反するような運用は認められません。たとえば、不当に日々の労働時間を丸めて、従業員の業務時間を短縮化することは違法にあたります。打刻まるめを導入する場合、労働者が不利になるような運用になっていないかルールをきちんとチェックしましょう。
4-2. 働き方に応じた設定・管理が必要になる
働き方改革の影響により、フレックスタイム制や裁量労働制といった柔軟な働き方を採用する企業が増えています。多様な働き方を導入している企業の場合、働き方に応じた打刻まるめのルールの設計が必要になります。ルールが複雑化し、運用・管理が煩雑化すると、意図せず労働基準法に違反してしまう恐れがあります。複数の働き方を採用している企業の場合、打刻まるめを導入する際に上手く運用できるか事前にテストしてみるなど、慎重に導入を進めることが大切です。
4-3. 大まかに丸め処理をするとコストの負担が大きくなる
タイムカードの集計・計算作業の負担は大きいです。そのため、打刻まるめを導入している企業も少なくないでしょう。しかし、18時4分に終業打刻があったものを、30分単位で、18時30分として打刻の丸め処理をすると、労働基準法に違反することはなくとも、人件費が大きくなる恐れがあります。打刻まるめを採用する場合、人件費などのコストも考慮して、何分単位で計算するのかなどルールを設計しましょう。また、この機会に自動集計・計算の機能が搭載された勤怠管理システムの導入を検討してみるのも一つの手です。
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5. 打刻を丸める際の計算方法
タイムカードや手書きでの打刻管理をおこなう場合、給与計算時に労働時間の端数まで手動で計算することは大変な作業です。給与計算は複雑ですが、ミスが許されない重要な業務です。ここでは、エクセルや勤怠管理システムを用いた打刻を丸める際の計算方法について詳しく紹介します。
5-1. エクセルの関数で切り上げ、切り捨てをおこなう
エクセルの関数の機能を使うと、記録された時間を自動で切り上げることができます。エクセルで丸めたほうが給与計算の効率化が図れるでしょう。打刻記録の端数を切り上げたい場合は「CEILING関数」、切り捨てたい場合は「FLOOR関数」を使用します。たとえば、5分単位でまるめて切り上げたい場合には、エクセルに打刻時間を入力したあと、下記関数を入力します。
逆に、10分単位で端数を切り捨てたい場合は、打刻時間を入力した後に、下記関数を入力しましょう。
5-2. 勤怠管理システムの設定で自動処理をする
打刻記録から給与計算までの一連の流れをより効率化させるためには、勤怠管理システムを導入することが最も効果的です。打刻データのまるめを設定すると、自動で端数処理をおこなった後のデータを記録することができるようになります。また、給与計算も自動でできるため、数値の入力や計算ミスのチェックなどの手間を省き、業務を効率化することが可能です。
6. 打刻まるめを導入する際の注意点
打刻まるめを導入する場合、いくつかの注意点があります。ここでは、打刻まるめを導入する際の注意点について詳しく紹介します。
6-1. 早退や遅刻の丸め処理も原則不可
終業時刻よりも早く退社した場合や、始業時刻よりも遅く入社した場合も丸め処理は、原則として認められません。たとえば、9時30分が始業時刻の企業において、10時16分に会社に着いたからといって、10時30分に打刻を丸めるのは、全額払いの原則の観点からも違法になります。
逆に、労働者が有利になるよう、給与計算において打刻まるめをおこなうのは問題ありません。しかし、このような運用にすると、早退・遅刻が横行する可能性があります。また、既存の社員の士気を下げる恐れもあります。早退・遅刻の打刻まるめを導入する際は、労働基準法のみならず、従業員のエンゲージメントなども加味して検討しましょう。
6-2. 打刻ルールを就業規則に明記しておく
たとえば、業務の特性から始業時刻前の労働が発生することは全くない会社において、「どうしても始業時刻前に業務をしなければならないのであれば申請をする」というルールを採用すれば、始業打刻を丸め処理しても問題ないでしょう。しかし、このようなルールを就業規則に記載していなかった場合、事前に従業員が申請をしていないけれど、始業時刻前に労働していたにも関わらず、丸め処理をおこなうと、労使間でトラブルが生じる恐れがあります。そのため、打刻まるめを導入する場合、設計したルールを就業規則などに明記し、きちんと従業員に周知しましょう。
6-3. 労働基準法に違反すると罰則がある
労働基準法第120条により、全額払いの原則(労働基準法第24条)に違反すると、30万円以下の罰金の罰則が課せられるリスクがあります。なお、1人あたり30万円の計算になるので、100人に違法な打刻まるめをしていた場合、3,000万円の罰金にも及ぶ恐れがあります。また、罰金だけでなく、企業名が厚生労働省のホームページに公開される可能性もあります。このように、労働基準法に違反すると、大きなペナルティを受ける恐れがあるため、打刻まるめを導入する場合、適切なルールを設計するようにしましょう。
第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 (省略)、第二十三条から第二十七条まで、(省略)までの規定に違反した者
(省略)
7. 打刻まるめの適切なルールをつくり効率よく勤怠管理をしよう
打刻まるめは、給与計算の効率化の観点からも有効的な施策の一つです。ただし、労働者が不利益を被るような打刻の丸め処理は、労働基準法の観点から認められていません。また、フレックスタイム制やテレワークなど、多様な働き方が増えてきた現代において、打刻まるめを導入する場合、一つひとつの働き方に応じてルールを設計する必要があります。誤って労働基準法に違反することがないよう、慎重にルール作りをおこなうことが大切です。
「打刻まるめの労働時間集計ってどうやるの?」「そもそも打刻まるめは問題ない?」という疑問をおもちではありませんか?
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