KPIとは、最終目標を達成するためのプロセスの進捗状況を評価する指標のことです。KPI設定により、行動が明確になる、組織のモチベーションが向上するなどのメリットがあり、結果として業務の効率化につながります。
本記事では、KPIの設定方法や設定例をわかりやすく解説します。また、KPIを設定するメリット・デメリットや、KPI設定のポイントも紹介します。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
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目次
1. KPIとは?
KPI(Key Performance Indicator)とは、「重要業績評価指標」のことで、最終目標達成に向けたプロセスの進捗状況を数値化して評価するための指標を指します。KPI設定の目的は、中間目標を数値化して明確にすることで、モチベーションを維持しつつ、効率よく業務を進めて、最終目標を達成させることです。日次や週次、月次など期間を決めて設定されることが多く、期間ごとにKPIを評価し、結果が好ましくない場合は、軌道修正や改善策を講じます。
関連記事:KPIとは?設定するメリットや設定のポイントを徹底解説
2. KPIの設定方法
KPIの設定方法には基本的な流れがあります。ここでは、KPIを適切に設定するためのフローについて詳しく紹介します。
2-1. KGIを設定する
まずはKGI(Key Goal Indicator)を設定しましょう。KGIは「重要目標達成指標」や「経営目標達成指標」とよばれ、最終目標の達成度合いを定量的に評価するための指標を指します。KGIを設定する理由は、最終目標を明確にすることです。KGIの設定により、最終目標を達成するために必要なプロセスを組み立てやすくして、適切にKPIを設定することができるようになります。
KGIを設定する際は、組織のメンバーが一丸となり、目標を達成できるよう、すべての従業員と共有し、意見があれば反映させる必要があります。また、KGIが達成可能かどうか、数値化されていて評価しやすいかもチェックすることが大切です。
関連記事:KGIとは?設定するメリットや設定上の注意点を徹底解説
2-2. KSFを抽出する
次に、KSF(Key Success Factor)を抽出しましょう。KSFは「重要成功要因」とよばれ、経営戦略において、目標達成のために重要な要因のことです。KSFと似た用語に「CSF(Critical Success Factor)」があります。KSFとCSFは同じ意味合いで用いられるので、この機会に押さえておきましょう。
KSF(CSF)を抽出することで、現状と目標の差を把握でき、目標を達成するための現実的な施策を講じやすくすることができます。KSFを抽出するには、「SWOT分析」や「PEST分析」などのフレームワークを活用して分析する方法がよく採用されます。KGIとの関係性を把握しつつ、できる限りの成功要因の候補を挙げて、重要度の高いものを見極めることが大切です。
2-3. KPIを設定する
抽出されたKSFをもとに、KPIを設定します。KPIは、具体的な数値を用いて、実現可能なものを設定することが大切です。また、KGIを設定する際、すべての従業員が目標に向かって取り組めるよう、十分に情報共有をおこなったうえで、それぞれの意見を尊重し、できる範囲で反映させることが重要といえます。
関連記事:KGIとKPIの違いとは?各指標の特徴や重要性を詳しく紹介
2-4. KPIツリーを作成する
KPIを抜け漏れなく設定し、組織全体にスムーズに共有するため、KPIツリーを作成するのがおすすめです。KPIツリーとは、KGIやKSF(CSF)とKPIの関連性を可視化したもので、最終目標を達成するまでに実施すべき行動をまとめたものです。KPIツリーを作成すれば、KGIとKPIを構造化して把握できるので、「〇〇が実現されないのは××が原因」のように効果検証もしやすくなります。
関連記事:KPIツリーとは?作成方法や作成上の注意点を詳しく解説
3. KPIの設定例
KPIは業種・業務によって設定項目が異なります。ここでは、営業・セールス、マーケティング、採用、製造業のKPIの設定例を紹介します。
3-1. 営業・セールス
営業・セールスにおける主なKPIの設定例は次の通りです。
- 売上
- 成約率
- 新規顧客数
- リピート率
- 顧客単価
- アポイント件数 など
営業・セールス部門においてKPIを設定することで、従業員のモチベーションが上がり、業務の効率化や生産性の向上といったメリットが得られます。また、KPIの進捗状況を確認することで、次の課題が浮き彫りになり、改善につなげることが可能です。
3-2. マーケティング
マーケティングにおける主なKPIの設定例は次の通りです。
- 新規顧客数
- 受注件数
- 購入単価
- リピート率
- PV数
- CV数
- CTR
- CVR
- CPA など
マーケティングにおけるKPIは、プロジェクトや業務によって大きく異なるのが特徴です。また、KSF(CSF)を基にKPIの優先順位付けをおこなうことで、次すべき施策が明確になります。また、施策の実施後に評価をおこない、その原因を突き止めたうえで改善することで、効果的なマーケティングにつなげることが可能です。
3-3. 採用
採用における主なKPIの設定例は次の通りです。
- 採用コスト
- 各採用チャネルの費用対効果
- 応募者数
- 面接参加者数
- 採用人数
- 辞退者数
- 離職率 など
採用は、営業・セールスやマーケティングのように売上に直結するわけではないため、KPIを設定することが難しいケースも多いです。まずは採用コストを抑える観点からKPIを設定してみるのも一つの手です。採用にかけられる予算が十分にある場合は、自社とマッチする人材をいかに獲得するかという観点からKPIを設定してみましょう。
3-4. 製造業
製造業における主なKPIの設定例は次の通りです。
- 労働生産性
- 機械能力指数
- 工程能力指数
- 稼働率
- 良品率・不良品率
- 在庫回転率
- 平均故障間隔
- 平均故障時間
- 平均復旧時間
- エネルギー消費量
- 事故発生率 など
製造業におけるKPIは、現場の効率や品質の観点から設定されることが多いです。KGIを明確に定めたうえで、適切なKPIを設定することが目標達成のために重要といえます。また、数値目標を下回っている場合、どのような施策が必要かを正しく見極めることが大切です。
4. KPIを設定するメリット
KPIを正しく設定すれば、さまざまなメリットが得られます。ここでは、KPIを設定するメリットについて詳しく紹介します。
4-1. 公平性を保った評価基準を設定できる
評価基準が数値化されていない場合、主観的な評価となる可能性があります。従業員が人事評価に対して不公平に感じれば、会社への不満につながる恐れがあります。また、不公平な評価は、社員の業務効率やモチベーションの低下にもつながります。KPI設定により統一された評価基準を構築することで、公平性を保った人事評価をおこなうことが可能です。
4-2. 行動が明確になる
目標を数値化せず曖昧なままにしていると、何をどのようにすれば成果が出るのかがわからず、行動に移せない従業員もいるかもしれません。KPIを設定すれば、最終目標を達成するためのプロセスが定まり、実行すべきことがわかりやすくなります。従業員は数値化された実現可能な目標に向かって取り組めばよいため、次の行動が明確になります。
4-3. 組織全体の生産性向上につながる
従業員の意見を反映させながらKPIを設定することで、組織一丸となって同じ目標に向かって取り組めるようになるため、強固な組織を作り出すことができます。また、数値化されて実現可能な目標であれば、達成できるイメージが湧き、社員のモチベーション向上につながります。また、課題が生じた際は、目標を組織内で共有していることにより全員で取り組めるので、スムーズに対応することが可能です。結果として、組織全体の生産性向上が期待できます。
4-4. PDCAサイクルが回しやすくなる
目標を達成するためには、PDCAサイクルを回し、定期的に業務の改善や効率化をおこなう必要があります。KPIでは進捗状況も数値化して把握できるため、課題や問題が発見しやすくなります。定期的にKPIの進捗状況を確認し、改善をおこない、PDCAサイクルを繰り返し回すことで、必要に応じて軌道修正をしながら、スピーディに目標を達成することが可能です。
公平な人事評価には体系だった人事評価制度が不可欠です。成果を示す従業員側の準備が整っていても、評価をする企業側の準備が整っていないと適切な評価がおこなえません。人事評価制度を整えると言っても何から手をつければ良いか分からずお困りの方へ向けて、本サイトでは「人事評価の手引き」を無料で配布しています。自社にとって適切な人事評価制度を検討するため、まずは人事評価制度について網羅的に理解したいという方は、こちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
5. KPIを設定するデメリット
KPIの設定には、メリットだけでなく、デメリットもあります。ここでは、KPIを設定するデメリットについて詳しく紹介します。
5-1. KPIに依存してしまう
KPIを意識しすぎるあまり、法令に違反したり、周囲との協調性を欠いたりする従業員が生じる可能性もあります。また、KPIで設定されている以外のことは行動しない従業員もいるかもしれません。このような状態が慢性化すると、働きやすい会社から遠ざかり、離職率の上昇や生産性の低下といったデメリットが発生する恐れもあります。KPI管理を運用する場合、ルールを明確にし、注意点とともにきちんと従業員に周知することが大切です。
5-2. 従業員にストレスがかかる
KPI設定により、目標達成状況が一目でわかります。明確化された評価基準によりパフォーマンスの高まる従業員がいる一方で、目標達成できないことでモチベーションが下がる従業員も発生します。そのため、KPI導入にあたり、目標を達成できていない従業員へのフォローを忘れないことも大切です。
6. KPIを設定する際に意識したい「SMART」
KPIを設定する際に意識したいのが「SMARTの法則」です。SMARTとは、「Specific(具体的な)」「Measurable(計測可能な)」「Achievable(達成可能な)」「Relevant(関連性のある)」「Time-bounded(期限を定めた)」の頭文字を取ったもので、目標設定の有効性を確認する手段として用いられます。ここでは、SMARTの法則のそれぞれの要素の内容について詳しく紹介します。
6-1. Specific(具体的な)
KPIを抽象的に設定すると、次すべき行動が曖昧になってしまいます。また、評価もしにくくなり、目標達成度を正しく把握できない可能性があります。KPIを設定する際は、誰が見てもわかるよう具体的なものにしましょう。
6-2. Measurable(計測可能な)
KPIは数字やデータなどで表せる計測可能なものにしましょう。数値化することで、進捗状況の評価がしやすくなります。
6-3. Achievable(達成可能な)
KPIに設定する際は、達成可能かどうかをチェックすることが大切です。達成が難しいKPIの場合、組織全体のモチベーションが下がる可能性もあります。
6-4. Relevant(関連性のある)
KGIと関連したKPIを設定することが重要です。KPIはKGIを達成するための中間目標です。関連性が低い場合は、KPIを達成してもKGIへの貢献度が低くなり、最終目標に到達できない恐れがあります。
6-5. Time-bounded(期限を定めた)
KPIを設定する際は、期限を決めましょう。期限を設定しない場合、後回しにしてしまい、業務の滞りが発生する恐れがあります。このように、SMARTの法則を意識することで、最終目標達成のために適切なKPIを設定することができるようになります。
7. KPI設定のポイント
KPI設定を成功させるにはいくつかのポイントがあります。ここでは、KPI設定のポイントについて詳しく紹介します。
7-1. 簡潔に設計する
KPI管理のよくある失敗例として、KPIを多く設定しすぎてしまうケースが挙げられます。KPI指標が多いと、どれから手を付ければよいかわからず、業務をスムーズに進められない可能性があります。また、評価や管理に手間がかかり、スケジュール通りに目標達成できない恐れもあります。
KPIを設定する際は、KSF(CSF)の観点から優先順位の高い項目に絞り込むことが大切です。KPIが簡潔になることで、従業員は注力して取り組みやすくなり、結果も出やすくなります。
7-2. 責任の所在を明確にする
KPIを複数設定する場合、一つひとつに対して責任の所在を明確にすることが大切です。1人ですべてのKPIを管理するのは非効率的かつ非現実的です。それぞれに対して管理者を明確に定めておくことで、適切に評価・改善ができ、目標達成に向かってスムーズに取り組むことができます。
7-3. MECEを活用する
MECEとは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の頭文字を取った造語で、直訳すると「モレなく、ダブりなく」という意味です。KPIを設定する際、漏れや重複が生じ、複雑になってしまうケースがあります。KPI設定において、MECEフレームワークを活用すれば、全体像を把握したうえで、KPIをシンプルに設定することができます。
関連記事:KPIマネジメントとは?必要性やマネジメントのコツを解説
8. KPIの正しい設定方法を理解しておこう
KPIとは、最終目標達成までのプロセスの進捗状況を数値化して評価する指標です。KPIを設定することで、「評価基準を統一できる」「モチベーションを高められる」「行動を明確にできる」といったメリットが得られます。ただし、KPIの設定方法には注意点があります。「SMARTの法則」や「MECEフレームワーク」を活用して、最適なKPIを設定できるようにしましょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
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