目標設定の押し付けとは、組織から個人に対して一方的に目標を決めさせることです。目標設定の押し付けは、従業員のモチベーションを下げる原因になります。この記事では、目標設定の押し付けによる影響や、なぜ目標設定の押し付けが発生するのかその理由について解説します。また、目標設定の押し付けを防止するためのポイントや、目標設定の良い具体例も紹介します。
目次
人事評価制度は、従業員のモチベーションに直結するため、適切に設計・見直し・改善をおこなわなければ、最悪の場合、従業員の退職に繋がるリスクもあります。
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1. 目標設定の押し付けによる影響とは?
目標設定の押し付けとは、組織や上司などの一方的な都合で、個人的な目標を決めさせられることです。ここでは、目標設定の押し付けが生じると、どのような影響が起こるのかについて詳しく紹介します。
1-1. 従業員のモチベーションが下がる
自分で目標を設定することで、その目標に対して責任感が生じ、仕事にも主体的に取り組むようになります。一方、目標設定の押し付けがあると、自分で設定していないからと当事者意識が薄れ、目標達成へのモチベーションが下がります。また、仕事にやりがいを感じられず、会社への不満につながり、帰属意識が下がる可能性もあります。従業員エンゲージメントの低下により、離職率の上昇につながる恐れもあります。
関連記事:従業員エンゲージメントとは?向上施策や調査方法とその手順をわかりやすく解説!
1-2. 効果的な人材育成につながらない
会社側と従業員側の双方で合意を得ながら目標設定をおこなうことで、適切な目標が設定できるようになります。しかし、従業員の意見を無視して、会社から一方的に目標設定を押し付けると、実力以上に高い目標を設定されて、仕事への意欲が低下し、目標達成できずスキルアップできない恐れがあります。また、簡単な目標を設定された場合、それをクリアしたとしても、必要な能力が身に付いていない可能性もあります。このように、目標設定の押し付けは、効果的な人材育成につながりません。
1-3. 適正な評価を実施できない
従業員からの同意なく、会社から一方的に目標設定を押し付けると、不公平な人事評価につながる恐れがあります。たとえば、同じようなスキルを持っている人でも、簡単な目標を設定された従業員は容易にクリアできたため高評価、難易度の高い目標を設定された従業員はクリアできなかったため低評価になることがあります。
このように、従業員の意見を汲まない目標設定は、不公平を生み出し、適正な評価を実施できなくなります。また、不公平な人事評価は、会社への不満とつながり、会社と従業員、社員同士の信頼関係が低下します。結果として、協調性がなくなり、生産性が低下する恐れもあります。
2. なぜ目標設定の押し付けが生じるのか?
目標設定の押し付けは、組織の成長を妨げる原因になります。それでは、なぜ目標設定の押し付けが生じてしまうのでしょうか。ここでは、目標設定の押し付けが発生する理由について詳しく紹介します。
2-1. 目標管理制度が整備されていない
目標管理制度(MBO)とは、組織と個人それぞれの方向性を明確にし、擦り合わせながら目標を設定したうえで、定期的に進捗管理や評価・フィードバックを実施し、目標達成を目指す手法のことです。目標管理制度が社内に整備されていない場合や、整備されていても周知されていない場合、目標管理のやり方が部署・従業員に左右され、目標設定の押し付けが生じる可能性があります。目標設定の押し付けが生じないよう、まずは目標設定から評価・フィードバックまでの方法を整備しましょう。
関連記事:MBO(目標管理制度)とは?実施手順や注意点を詳しく解説
2-2. 従業員の意見を尊重していない
目標管理制度があったとしても、上司と部下などの信頼関係が構築されていないために、部下を信頼できず、一方的に目標設定を押し付けてしまうケースもよくあります。目標管理は、従業員を信頼し、主体的に決めてもらうことから始めます。従業員を信用せず、会社から一方的に目標設定を押し付けたとしても、長くモチベーションは維持できません。目標設定をおこなう場合、上司と部下など、コミュニケーションを取る機会を頻繁に取り、信頼関係を構築したうえで進めましょう。
2-3. 上司や管理職に不安がある
組織の目標を達成し、利益を出して、持続的に成長させていくためには、どうしても成果が求められます。上司や管理職の立場の人は成果を出さなければならないために、プレッシャーを感じ、部下の目標設定を押し付けてしまう可能性があります。
しかし、一方的に部下の目標設定を押し付けることは、モチベーション低下につながり、成果が出にくくなり、逆効果になります。このように、上司や管理職の成果に対する不安から、部下の目標設定を押し付けてしまうケースがあります。このような事態を生じさせないためにも、人の上に立つ人に対してマネジメントスキルを習得させる研修・教育を実施することも大切です。
3. 目標設定の目的やメリット
そもそも目標設定の目的は何なのでしょうか。ここでは、目標設定の目的やそのメリットについて詳しく紹介します。
3-1. 個人と組織の目指すべき方向性を一致させる
目標設定の大きな目的は、組織の目指す姿を確認したうえで、個人が目標を設定し、個人と組織の目指すべき方向性を一致させることです。組織の目標を理解せず、個人が身勝手に目標を定めても、組織の成長にはつながりません。一方、組織の目標を個人に押し付けても、モチベーションが低下し、思うように目標達成につなげることができません。このように、目標設定の機会を通じて、組織と個人の相互理解を深めることで、強固な組織を作り出し、同じ目標に向かって一丸となって取り組むことができるようになります。
3-2. 仕事の完遂までのスピードを早める
目標がないと、何に取り組めばよいのかわからず、意欲的に仕事に取り組めない可能性があります。目標が正しく設定されることで、何をすべきかが明確になります。これにより、無駄なタスクを減らし、具体的な行動を起こしやすくなります。また、目標の達成度を定期的にチェックし、改善をおこなうことで、仕事の完遂までのスピードを早めることが可能です。
3-3. 人材育成や人事評価に役立つ
組織の求める姿を周知させたうえで、従業員一人ひとりの価値観やスキルにあった適切なレベルの目標を設定することで、効率よくスキルアップができ、効果的な人材育成につながります。また、目標がきちんと設定されていれば、その達成度やプロセスを基に評価をおこなうことで、公平な人事評価を実現することが可能です。このように、目標設定は人材育成や人事評価にも役立ちます。
関連記事:目標設定とは?メリットや立て方のコツ、役立つフレームワーク、具体例を解説!
4. 目標設定の押し付けを避けるポイント
目標設定を正しく実施できれば、効率よく組織を成長させることができます。ここでは、目標設定の押し付けを避けるポイントについて詳しく紹介します。
4-1. 目標設定の仕組みを整備する
目標管理制度といった目標設定の仕組みが社内に整備されていない場合、まずは目標設定の仕組みを整えることから始めましょう。目標設定のやり方がある程度決まっていれば、従業員はそれに従って目標をスムーズに設定することができます。「目標設定の押し付けはしないこと」などと、マニュアルに明示しておけば、目標設定の押し付けを未然に防止することも可能です。
4-2. コントロールの感覚を与える
コントロールの感覚とは、「自分で目標を選び、主体的に関わる感覚」を指します。目標設定する際に、コントロールの感覚を従業員に与えることで、押し付けられるという感覚を取り除き、主体的に目標に対して取り組めるようになり、モチベーションは向上します。
コントロールの感覚を与えるには、あくまでも目標設定は従業員自身でおこなうことが大切になります。たとえば、組織や上司は目標設定の具体例を提示し、その中から選んでもらうように運用することで、コントロールの感覚を与えることができます。
4-3. 対話の時間を設ける
目標設定の押し付けが生じる原因として、上司と部下の信頼関係が構築されていなかったり、部下の意見を聞く時間がなかったりすることが挙げれられます。1on1ミーティングを導入するなど、上司と部下の対話の時間をしっかり設けることで、一方通行な目標設定の押し付けを避けられます。また、目標が設定された後も、部下の業務上の悩みや本音を聞きつつ、コミュニケーションを取り、目標の進捗を確認したり、見直したりすることも大切です。
関連記事:1on1ミーティングとは?メリット・デメリットや効果的な実施方法をわかりやすく解説!
5. 目標設定の具体例【悪い】
目標設定は押し付けないだけでなく、設定の仕方などにも注意が必要です。ここでは、目標設定の悪い具体例を紹介します。
5-1. 目標の期限が決められていない
目標の期限が決められていない場合、いつまでに達成すればよいかがわからず、目標を先延ばしにしてしまいがちになります。具体的な行動を起こすまでに時間がかかり、目標達成までにも時間を要します。目標設定をおこなう際は、明確な期限を設け、その期限までに達成できるような行動計画を立てることが大切です。
5-2. 1人で目標を決めている
1人で目標を決めてしまうと、主観的な目標となってしまい、成長が阻害される原因になります。また、組織の目標と乖離してしまい、個人の目標が達成されても、組織の成長につながらない可能性もあります。目標設定をおこなう際は、上司や同期などと相談し、客観的な意見を踏まえて設定しましょう。また、目標設定の際は、組織から求められる役割や理想像なども、あらかじめチェックすることが大切です。
5-3. 目標に具体性がない
目標に具体性がないと、従業員はゴールまでのプロセスを見失います。結果として何をすればよいのかわからなくなり、目標達成が難しくなります。具体性のない目標設定の例は、次の通りです。
- 売上を伸ばす
- プロジェクトを成功させる
- プログラミングスキルを向上させる
このような目標設定では、具体的な行動につなげることが困難です。「売上を伸ばす」でなく「顧客満足度を高めて、今年の売上を昨年よりも1.5倍にする」などのように、より具体的にすることで、次への行動につなげて、仕事へのモチベーションを高めることができます。目標設定をおこなう際は、「5W1H」を意識するのも一つの手です。
5-4. 目標達成に向けた計画が具体的ではない
目標を適切に設定できても、その行動計画が具体的でなければ、行動に移さず目標の意味がありません。目標設定だけではなく、達成するためのプロセスも把握しやすい内容で定めることが大切です。そのためには、プロセスを数値化するKPIや、企業全体の最終的な目標数値を表すKGIを設定するのが効果的といえます。
関連記事:KPIとは?メリット・デメリットや設定のポイントをわかりやすく解説!
6. 目標設定の具体例【良い】
目標設定を適切におこなうことで、個人と組織ともに効率よく成長することができます。ここでは、目標設定の良い具体例を紹介します。
6-1. 目標の期限が細かく決められている
目標に対する期限は、細かく決めましょう。週単位や月単位、年単位で細かく期限を設定することで、今何をすべきかが明確になり、仕事へのモチベーションを高めることができます。また、振り返りもしやすくなり、PDCAサイクルを早く回して、目標達成に近づけることが可能です。中長期的な目標を設定することも大切ですが、あわせて短期的な目標も設定するようにしましょう。
関連記事:SMARTの法則とは?目標設定に活用するメリットと方法・注意点を解説
6-2. 組織と個人の目標の方向性が一致している
組織の考えを無視した個人の目標は達成できても、組織の成長につながりません。一方、個人の考えを無視した目標設定は、会社からの一方的な目標の押し付けとなり、モチベーションの低下につながります。そのため、組織の目標をきちんと提示したうえで、個人が主体的に目標を決めることが大切です。目標設定に悩む従業員は多いので、上司や人事担当者などは、必要に応じてサポートをしたほうがよいでしょう。
6-3. 目標が具体的で数値化されている
目標が具体化されていると、何をすればよいかが明確になり、行動につなげやすくなります。また、達成可能かどうかもチェックしましょう。理想的な目標であっても、達成することが非現実的な目標を設定すると、モチベーションが低下します。
目標は数値化すると、客観的に把握することが可能になります。誰がみても同じように理解できる目標であれば、周囲もフィードバックがしやすくなります。目標が数値化されていれば、進捗状況も数字で管理することが可能です。進捗状況が上手くいっているものと、思わしくないものに区分し、次の行動を洗い出すことで、効率よく目標達成につなげることができます。
6-4. 目標の達成度を定期的に確認している
目標を設定するだけで終わらせてしまうと、目標の意味がありません。目標は達成してこそ大きな意味を成します。そのため、目標を設定したら、定期的に確認し、改善につなげることが大切です。目標の進捗状況をチーム内で報告する場を設けると、目標に対する意識が高まり、効果が期待できます。また、目標の達成度が低い従業員に対しては、フォローを欠かさずおこなうことをおすすめします。
7. 目標設定の押し付けをなくして従業員のモチベーションを高めよう!
目標設定の押し付けは、従業員のモチベーションを低下させ、結果として、組織全体の生産性低下にもつながります。目標設定をおこなう際は、組織と従業員の考えを共有し、双方が納得した目標を設定することが大切です。また、目標の設定後は、定期的に進捗状況をチェックし、改善につなげることも重要です。
人事評価制度は、従業員のモチベーションに直結するため、適切に設計・見直し・改善をおこなわなければ、最悪の場合、従業員の退職に繋がるリスクもあります。
しかし「人事評価制度に改善したいが、いまの組織に合わせてどう変えるべきか悩んでいる」「前任者が設計した評価制度が古く、見直したいけど何から始めたらいいのかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。
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