慶弔見舞金に同一労働同一賃金を適用するには?扱い方のポイントや注意点を解説 |HR NOTE

慶弔見舞金に同一労働同一賃金を適用するには?扱い方のポイントや注意点を解説 |HR NOTE

慶弔見舞金に同一労働同一賃金を適用するには?扱い方のポイントや注意点を解説

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お札と小銭

同一労働同一賃金とは、正社員・非正規社員などの雇用に関わらず、同じ働きをしている社員には同じ賃金を支払う考え方です。

しかし従業員の待遇観点では、給与だけでなく福利厚生を含めて考えなくてはいけません。なかでも慶事・弔事の際に支払う慶弔見舞金については、支給の有無や金額に悩まれている担当者の方も多いでしょう。

そこで本記事では、慶弔見舞金に同一労働同一賃金を適用する際のポイントと注意点を紹介します。ぜひ従業員の労働に見合った、合理的な支給規程や金額を考える際に役に立ててください。

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1. 同一労働同一賃金で慶弔見舞金は支給される?

ファイルを片手に悩む人

同一労働同一賃金においては、慶弔見舞金は全従業員に支給する必要があります。厚生労働省のガイドラインに、福利厚生にも待遇差を設けてはいけない旨の記述があるためです。

社員によって待遇差を設ける際には、それが合理的なものでなくてはいけません。また、根拠と理由を説明する必要があります。

まずは、厚生労働省のガイドラインにおける福利厚生の扱いと、そのうえで慶弔見舞金の扱いを確認しましょう。

1-1. 同一労働同一賃金における福利厚生の扱い

同一労働同一賃金では、福利厚生においても社員の待遇差をつけることを認めていません。

厚生労働省のガイドラインには、以下のような記載があります。

通常の労働者と短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者との間の不合理と認められる待遇の相違の解消等に向けては、賃金のみならず、福利厚生、キャリア形成、職業能力の開発及び向上等を含めた取組が必要

引用:同一労働同一賃金ガイドライン|厚生労働省

このとおり給与以外の労働環境に関しても、正社員とそれ以外の労働者の間で待遇差を作らない必要があるでしょう。また福利厚生は労働者のモチベーションを維持するうえでも重要な要素になります。

参照:同一労働同一賃金ガイドライン|厚生労働省

1-2. 同一労働同一賃金における慶弔見舞金の扱い

慶弔見舞金に関して、厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドラインには具体的な記述はありません。

しかし慶弔休暇について、短時間・有期雇用労働者の項目には下記の記述が見られます。

短時間・有期雇用労働者にも、通常の労働者と同一の慶弔休暇の付与並びに健康診断に伴う勤務免除及び有給の保障をおこなわなければならない。

引用:同一労働同一賃金ガイドライン|厚生労働省

このため、慶弔見舞金についても同様に支給する必要があるでしょう。また仮に待遇差を作る場合でも、正社員と同等の職務をこなす人物には支給するとしておくことが無難です。

2. 慶弔見舞金に同一労働同一賃金を適用する考え方3ステップ

アイディアだしをしているビジネスマンたち

慶弔見舞金に同一労働同一賃金を適用するときの考え方は次の3ステップです。

  1. 労働者の職務内容と責任を確認する
  2. 慶弔見舞金の支給の有無・金額を決める
  3. 待遇差を設けるときには合理的な説明をする

新しく福利厚生を考えるときにも、見直すときにもこのステップを意識しましょう。そうすることで、労働者間で待遇差のない制度を考えられます。

2-1. 労働者の職務内容と責任を確認する

まずはそれぞれの労働者の職務内容と、それに伴って発生する責任を確認しましょう。とくにポイントになるのは責任の程度で、同じ職務内容でも違ってくる場合があるので注意が必要です。

例えば同じ部署に属していても、次のような点で責任が異なっていることがあります。

  • 会議や打合せで何かを決める立場にあるか
  • トラブルやクレームが発生したときに対応する必要があるか
  • 繁忙期がある場合、休日出勤や長時間労働で対応する必要があるか

以上で差がみられる場合には、合理的な理由として待遇差を設けてもよいでしょう。

2-2. 慶弔見舞金の支給の有無・金額を決める

定義した労働者の職務内容と責任に基づいて、支給する慶弔見舞金とその金額を決めましょう。代表的な慶弔見舞金とその相場金額は下記のとおりです。

慶弔見舞金の種類

相場金額

結婚祝い金

1~3万円

出産祝い金

1~3万円

本人死亡弔慰金

5~10万円

親族死亡弔慰金

1~5万円

傷病見舞金

業務上:3万円

業務外:1万円

災害見舞金

2~10万円

上記以外にも、企業によっては独自の見舞金を設けているところもあります。また病気や災害の際に支給する見舞金については、怪我や被害の程度によって支給額もさまざまです。

それぞれの労働者について、どの種類の見舞金をいくらまで支給するのかをしっかりと決めておきましょう。

2-3. 待遇差を設けるときには合理的な説明をする

慶弔見舞金の支給に待遇差を設けるときには合理的な説明をしましょう。

同一労働同一賃金においては、非合理な待遇差をつけることは認められていません。もし合理的に待遇差が生じる場合には、事前に労働者に説明しておくことでトラブルを避けられます。

もし不合理な理由で待遇差がついている場合、法的な罰則などは生じないものの労働者の退職につながりかねません。このため雇用段階で待遇について説明しておくと同時に、説明の要求があった場合にも速やかに説明できるようにしましょう。

3. 慶弔見舞金に同一労働同一賃金を適用する際の3つのポイント

会議をする人々

慶弔見舞金に同一労働同一賃金を適用するときのポイントは下記の3つです。

  1. 均衡待遇と均等待遇を理解する
  2. 手続きの方法を決める
  3. 人事評価制度とあわせて考える

以上をおさえると非合理な待遇差を設けることを回避でき、説明を求められた際にも説明しやすくなります。制度や規程を作る・見直す際にはぜひ意識してみましょう。

3-1. 均衡待遇と均等待遇を理解する

同一労働同一賃金においてまずおさえておきたいポイントとして、均衡待遇と均等待遇の考え方を理解しましょう。

均衡待遇とは、正規社員と非正規社員の職務に差がある場合、それに応じた合理的な待遇を受ける必要があるとする考え方です。ここでは職務内容、異動や配置変更の容易さ、運用における事情などが考慮されます。

一方で均等待遇とは、雇用形態に関わらず同じ職務内容であれば同じ待遇を受ける権利がある考え方です。同一労働同一賃金では両方の考え方に則って慶弔見舞金などの福利厚生についても考える必要があります。

3-2. 手続きの方法を決める

慶弔見舞金を支給する場合には、手続きの方法を決めて申請書類を用意しておきましょう。

また、給付額を決めるのに時間がかからないように、義務ではないものの社内規程を作っておくことがおすすめです。前例がないような申請があったときのトラブルを避けることもできるでしょう。

とくに弔慰金については、支給条件に当てはまったときに速やかに支給する必要があります。従業員のモチベーションにも関わってくるのでしっかり整備しておきましょう。

3-3. 人事評価制度とあわせて考える

同一労働同一賃金における慶弔見舞金では、人事評価制度とあわせて考えましょう。なぜ従業員によって待遇が異なるのかを説明するには人事評価の観点が必要になるためです。

例えば従業員によって慶弔見舞金の有無・支給額が違う場合、その人に期待されている役割が違っていることが読み取れる必要があります。正社員と非正規社員の人事評価制度を分けておくとより効果的でしょう。

4. 慶弔見舞金に同一労働同一賃金を適用するときの3つの注意点

注意点のモチーフとパソコン

慶弔見舞金に同一労働同一賃金を適用するときの注意点は次の3つです。

  1. 正規社員と同じ働きをしている非正規社員はいないか
  2. 支給するための資金を用意できているか
  3. 高額で課税対象になっていないか

以上に注意して社内規程の作成や見直しをおこない、それぞれの働きに見合った金額が支給できるようにしましょう。

4-1. 正規社員と同じ働きをしている非正規社員はいないか

非正規社員のなかで、正規社員と同じ働きをしている労働者がいないかについては常に注意しましょう。同じ職務をこなしているのに待遇に差がある場合、トラブルの原因になるためです。

非正規社員の扱いでは給与の差が問題になることが多いですが、福利厚生などの待遇差も重要な要素でしょう。対応策としては支給規定を変更するか、その人物を正規社員として再雇用することで解消できます。

4-2. 支給するための資金を用意できているか

慶弔見舞金制度を整備する際には、支給する資金が用意できているかも確認しましょう。

あくまでも福利厚生は貢献してくれている社員へのインセンティブであり、企業にとっては出費にあたるためです。

このため慶弔見舞金の種類や金額を設定する際には、福利厚生費によって経営が傾くことがないか、原資の確認も忘れないようにしましょう。

4-3. 高額で課税対象になっていないか

慶弔見舞金は高額になると課税対象になる可能性があるので注意しましょう。

国税庁ホームページの「葬祭料、香典、見舞金等」には「その金額が社会通念上相当と認められるものであれば、課税されません」との記述があります。慶弔見舞金についても、常識的な額であれば経費として非課税で計上可能です。

労働者にその働きに応じた給与や待遇を与えることは、会社として効果的な投資になります。相場金額を参考にして設定し、妥当な範囲を超えないように設定しましょう。

同一労働同一賃金においては、給与だけでなく福利厚生も含めた待遇を考えることが重要になります。そのなかでも慶弔見舞金は、労働者の普段の貢献への対価を示せるシステムです。

ぜひ本記事を参考に、労働者の働きに見合った金額を支給できるようにしましょう。

参照:13 源泉所得税の取扱い|国税庁

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