試用期間中でも社会保険は必須!対象外のケース・未加入のリスクも解説 |HR NOTE

試用期間中でも社会保険は必須!対象外のケース・未加入のリスクも解説 |HR NOTE

試用期間中でも社会保険は必須!対象外のケース・未加入のリスクも解説

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試用期間中においても原則社会保険の加入は必須とされています。試用期間中だからと社会保険なしで労働させた場合には、追徴金などが発生することになるので注意しましょう。本記事では、試用期間における社会保険の加入義務や対象外のケース、未加入の場合に生じるリスクについて詳しく解説していきます。

1. 試用期間・社会保険のおさらい

「試用期間」とは、労働者を本採用する前段階で、試用期間として実際の勤務に一定期間携わってもらい、仕事への適正や能力などを見極めるための期間です。

試用期間はあくまで本採用前のステップであり、試用期間満了後には継続して労働してもらうことを前提としています。

「社会保険」とは、健康保険や厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険といった各種保険の総称です。(ただし、本記事では社会保険は健康保険・厚生年金保険・介護保険を指すものとします)

社会保険に加入している労働者は、健康保険をはじめとしたさまざまな保険の恩恵を受けられます。企業の社会保険は個人が加入するものよりも負担が少なく、保障が手厚いのが特徴的です。また、社会保険には扶養制度があり、家族のいる労働者が加入すれば世帯における保険料の金額を抑えることが可能となります。

2. 試用期間中でも労働者には変わりないので社会保険への加入が必要

試用期間中の労働者であっても、基本的には一般の社員と同じような条件で働いてもらうことになります。そのため試用期間中でも、企業は労働者を社会保険に加入させる必要があります。社会保険に関しても、本採用後と同様の扱いが求められるのです。

もちろん、試用期間中の社会保険への加入は、企業が社会保険の制度を整備している場合に限られます。法人でない事業所や、従業員が5人未満の事業所には、社会保険の加入義務がありません。

ただし、製造業や土木建築業をはじめとした強制適用事業所は、法人でなかったり従業員数が5人未満であったりするときにも社会保険への加入が義務付けられています。

逆にいえば、上記の条件に合致しない事業所で試用期間を設けて労働者を雇うときには、社会保険に加入させる必要はありません。

とはいえ、こういった事業所であっても任意適用事業所として認可を受け社会保険に加入することは可能です。この場合には、新たに雇用する労働者も社会保険に加入することになります。

2-1. 強制適用事業所・任意適用事業所について

そもそも「適用事業所」とは、社会保険に加入しなくてはならない事業所のことです。

「強制適用事業所」には、以下の場合が該当します。

  • 適用事業所に該当し、常時5人以上の従業員がいる事業所
  • 適用事業所に該当しない業種だが、法人事務所である場合

「任意適用事務所」に関しては、以下の場合が該当します。

  • 適用事業所に該当するが、個人の事業所であり、従業員が5人未満である場合
  • 適用事業所に該当しない個人の事業所であり、常時5人以上の従業員がいる事業所
  • 適用事業所に該当しない個人の事業所であり、従業員が5人未満である場合

2-2. 加入義務はいつ発生する?

労働者を雇用するにあたって試用期間を設ける際には、その初日から社会保険に加入させましょう。

社会保険に加入していない場合、労働者が怪我や病気をした際に多額の治療費や賠償金を請求されることがあります。労働者が死亡してしまったときには、企業に計り知れない負担がかかることになるため、注意が必要です。

3. 試用期間中に社会保険加入の対象外となる場合

社会保険制度を整備している企業では、試用期間中の労働者であっても基本的に社会保険に加入することになります。

ただし、下記のいずれかの項目に該当する場合は、社会保険に加入する必要はありません。

  • 2ヶ月以内の有期契約の場合
  • 月給が87,999円以下の場合
  • 一週間の所定労働時間が20時間未満の場合
  • 学生の場合

以下より、詳しく解説していきます。

3-1. 2ヵ月以内の有期契約の場合

雇用の際に勤務期間を区切るケースがありますが、この期間が2ヵ月以内である場合には社会保険の適用が除外されます。

ただし、このケースの除外範囲は、2ヵ月を超えて雇用されることが見込まれない場合に限ります。令和4年10月の法改正後には、雇用契約を更新する可能性がある場合にはあらかじめ社会保険に加入する必要性が生じます。

また、同じ事業所で同様の雇用契約を結んだ者が更新などの事情により2ヵ月を超えて雇用された実績がある場合にも、社会保険への加入が求められることになるので注意しましょう。

とはいえ、一般的には試用期間とは長期的な雇用を前提としたものです。そのため、試用期間を設けたにも関わらず2ヵ月以内の有期契約になるというケースは実際にはありません。

3-2. 月給が87,999円以下の場合

通勤手当をはじめとする諸手当や割増賃金、賞与などを含まず、月額8.8万円以上にならない場合には、社会保険は適用除外となります。

時給や日給などにおいても、月額換算して87,999円に収まる場合には、適用されないルールです。

3-3. 一週間の所定労働時間が20時間未満の場合

週の所定労働時間が20時間未満である場合には、社会保険に加入する必要がなくなります。特にパートやアルバイトは、勤務日数や勤務時間が少ない傾向にあるでしょう。

そのケースにおいては、社会保険に加入させずに労働させることが可能となります。

3-4. 学生の場合

試用期間中の従業員が学生の場合は、社会保険の加入は適用除外となります。

ただし、一般社員の労働時間や労働日数の4分の3以上勤務すると、社会保険の加入対象となるため、ご注意ください。

4. 社会保険未加入の状態で労働者を働かせたときのリスクとは

企業や事業主が労働者の社会保険加入を妨げたときには違反とみなされ、罰則を課せられることがあります。また、詳しくは後述しますが、労働者が社会保険の加入を拒むケースにおいても必ず加入させなければなりません。

社会保険に加入していなかった場合、以下のような問題が生じることになるので気をつけたいものです。

4-1. 延滞金を求められる

社会保険に加入した上で社会保険を支払っていなかったときには、延滞金を督促されることになります。支払い期限を過ぎると督促状が届き、督促状記載の期限を過ぎたときには社会保険料とともに延滞金を請求されます。

延滞金の支払いは企業にとって大きな痛手となります。リスクを避けるためにも、社会保険には適切に加入しておきましょう。

4-2. 追徴金を支払う必要がある

社会保険に加入させなければならない労働者を未加入の状態で労働させたときには、追徴金の支払いが課せられることがあります。

追徴金は最大2年間さかのぼって請求できると定められています。未加入の状態で労働させていた労働者が多い場合には、追徴金の額が数百万円という大きな額になってしまうこともあるので注意が必要です。

4-3. 懲役または罰金となるケースもある

社会保険料の支払いは健康保険法第208条に定められています。この法律に違反し社会保険に未加入の状態で労働者を働かせたときには、6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金を言い渡される可能性があります。

4-4. 労働者が不利な状況に置かれることになる

社会保険に加入していない労働者は、病気や怪我の際に多額の治療費を支払わなければならなくなります。

また、社会保険未加入の期間中には、厚生年金の加入記録が残りません。すると結果的に、労働者が将来受け取れるはずの年金受給額が減少してしまうことになります。

5. 試用期間中の社会保険加入に関連するよくある質問について

ここからは、試用期間中の社会保険加入に関連して、よく生じる質問について解説します。

雇用保険や労災保険の加入条件や、従業員本人に加入を拒まれたケースの対応方法について紹介します。

5-1. 雇用保険・労災保険の加入条件とは?

雇用保険や労災保険に関しては、以下の条件を満たす場合加入させる必要が生じます。

  • 1週間あたりの所定労働時間が20時間以上である
  • 1ヵ月以上雇用契約を続ける見込みがある

試用期間中においては、上記が該当するケースがほとんどであるため、加入が必要となるでしょう。

5-2. 本人から加入しないことを希望された場合の対応方法は?

労働者側が社会保険への加入を拒否するケースもあるかもしれません。

例えば試用期間中に退社して別の職場に就職した場合、社会保険の記録から前職が知られてしまうことになります。そのため、社会保険を未加入の状態にして記録を残さないようにしようと考える方がいます。

しかし、このような理由で社会保険への加入を拒否することはできません。社会保険の制度が整っている企業に入社する労働者は、必ず社会保険に加入しなければならないのです。

もしも雇用した労働者が社会保険への加入を拒否するときには、制度の内容を詳しく説明し、納得してもらうことが大切です。

6. 労働者を守るという観点からも、試用期間中には必ず社会保険に加入させよう

試用期間中であっても、労働者を働かせるにあたっては必ず社会保険に加入させなければなりません。

もしも社会保険未加入の状態で労働させた場合、違法行為とみなされ延滞金や追徴金を請求されることになるので気をつけたいものです。

社会保険への加入には、労働者が手厚い保障を受けられるというメリットがあります。労働者を守るという観点からも、必ず社会保険に加入させましょう。

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