労働基準法に基づく退職の定義とは?違反した場合の罰則についても解説! |HR NOTE

労働基準法に基づく退職の定義とは?違反した場合の罰則についても解説! |HR NOTE

労働基準法に基づく退職の定義とは?違反した場合の罰則についても解説!

  • 労務
  • 労務・その他

退職する女性

労働基準法には退職に関するルールが定められています。また、民法や憲法にも、退職の定めがあり、強引な退職の引き止めは違法となります。本記事では、労働基準法に基づく退職の定義や、退職手続きの注意点をわかりやすく解説します。労働基準法の退職に関連した条文を理解し、正しく社内制度を整備しましょう。

法改正から基本的な内容まで分かりやすく解説!
労働基準法総まとめBOOK

労働基準法の内容を詳細に把握していますか?

人事担当者など従業員を管理する役割に就いている場合、雇用に関する法律への理解は大変重要です。
例外や特例なども含めて法律の内容を理解しておくと、従業員に何かあったときに、人事担当者として適切な対応を取ることができます。

今回は、労働基準法の改正から基本的な内容までを解説した「労働基準法総まとめBOOK」をご用意しました。

労働基準法の改正から基本的な内容まで、分かりやすく解説しています。より良い職場環境を目指すためにも、ぜひご一読ください。

労働基準法のebookダウンロード

1. 労働基準法に基づく退職の定義

退職届

退職とは、労働者からの申し出によって労働契約を終了させることです。実は労働基準法では、退職の定義が明確に記されていません。そのため、退職については、労働基準法のほかに民法のルールが適用されます。ここでは、労働基準法に基づく退職のルールについて詳しく紹介します。

1-1. 労働条件と異なっていた場合は契約を即時解除し退職できる

労働基準法第15条に則り、あらかじめ明示された雇用条件と、実際の労働条件が異なる場合、労働者は即時にその労働契約を解除し、退職することができます。また、仕事に就くために住居変更をしていた労働者に該当する場合、当該退職の日から2週間以内に帰郷するのであれば、使用者はそれにかかる旅費も負担しなければならないので注意が必要です。

(労働条件の明示)
第十五条 (省略)
② 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
③ 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。

引用:労働基準法第15条一部抜粋|e-Gov

1-2. 契約初日から1年が経過した後は自由に退職できる

労働基準法第137条により、有期雇用契約を結ぶ労働者は、原則として、契約初日から1年以上働いた場合、いつでも退職できると定められています。この場合、やむを得ない事情があるかどうかに関係なく、労働者の意思表示のみで退職が可能です。

第百三十七条 期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第十四条第一項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成十五年法律第百四号)附則第三条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。

引用:労働基準法第137条|e-Gov

2. 憲法や民法に基づく退職の定義

労働基準法では退職に関して明確な定めがありません。そのため、憲法や民法の退職に関する定めも確認しておくことが大切です。ここでは、憲法や民法に基づく退職の定義について詳しく紹介します。

2-1. 憲法に奴隷的拘束の禁止や職業選択の自由が定められている

日本国憲法第18条「奴隷的拘束の禁止」、日本国憲法第22条「職業選択の自由」に基づき、労働者には退職の自由が認められています。たとえば、脅迫や監禁などによって労働者を不当に拘束して、働かせた場合、憲法第18条に違反する可能性があります。また、労働基準法第4条「強制労働の禁止」に違反し、重い罰則が課せられる恐れもあるので注意が必要です。

さらに、職業選択の自由が認められていることから、すべての人に自分の意思で働きたい場所を選ぶ権利があるといえます。このように、憲法によって退職の自由が認められているため、理由に関係なく、労働者の退職を認めないことは憲法違反になる可能性もあるので気を付けましょう。

第十八条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

引用:日本国憲法第18条|e-Gov

第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

引用:日本国憲法第22条一部抜粋|e-Gov

(強制労働の禁止)
第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

引用:労働基準法第5条|e-Gov

関連記事:労働基準法の第5条とは?条文の内容や罰則を詳しく解説

2-2. 原則2週間後に退職できる(期間の定めなし)

民法第627条に基づき、無期契約労働者の場合、いつでも退職の申し入れができ、当該申し入れ日から2週間経過すれば労働契約は終了すると定められています。そのため、期間の定めがない労働者は、2週間以上前に退職の申し出をすれば、民法に基づき退職をすることが可能です。

(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第六百二十七条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

引用:民法第627条一部抜粋|e-Gov

2-3. 5年を経過していれば退職の申し入れができる(期間の定めあり)

有期契約労働者の場合、原則として、契約期間中は合意なく退職することができません。ただし、民法第626条により、雇用期間が5年を超える場合や、雇用期間の終期が決まっていない場合は、5年が経過した後、いつでも退職することができます。

この場合、労働者は2週間前までに、使用者へ退職の通知をしなければならないので注意が必要です。また、労働基準法第137条の1年以上働いた有期契約労働者の退職の定めについてもあわせて理解しておきましょう。

(期間の定めのある雇用の解除)
第六百二十六条 雇用の期間が五年を超え、又はその終期が不確定であるときは、当事者の一方は、五年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。
2 前項の規定により契約の解除をしようとする者は、それが使用者であるときは三箇月前、労働者であるときは二週間前に、その予告をしなければならない。

引用:民法第626条|e-Gov

2-4. やむを得ない事情があれば直ちに退職できる

民法第628条に則り、無期雇用労働者でなく、有期雇用労働者であっても、病気やケガ、育児・介護、災害、パワハラなど、やむを得ない事情がある場合、労働者は直ちに退職することができます。ただし、理由によっては、損害賠償責任を負うことになるので、できる限り労使双方の合意を得たうえで、退職をおこなうことが大切です。

(やむを得ない事由による雇用の解除)
第六百二十八条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

引用:民法第628条|e-Gov

関連記事:労働基準法における「退職の自由」とは?意味や注意点を紹介

3. 労働基準法の退職に関連した条文

労働基準法に退職の明確な定義は記載されていませんが、退職に関連した条文はいくつかあります。ここでは、労働基準法の退職に関連した条文について詳しく紹介します。

3-1. 労働条件の明示(労基法第15条)

労働基準法第15条により、使用者は労働契約を結ぶ際、労働者に労働条件通知書を交付し、労働条件を明示する義務があります。労働条件通知書には、労働基準法施行規則第5条に基づき、退職に関する手続きについて含めなければなりません。また、労働条件通知書だけでは、労働者が労働条件に同意したことを証拠に残せないため、雇用契約書も交付するようにしましょう。

(労働条件の明示)
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。(省略)

引用:労働基準法第15条一部抜粋|e-Gov

第五条 使用者が法第十五条第一項前段の規定により労働者に対して明示しなければならない労働条件は、次に掲げるものとする。(省略)
四 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

引用:労働基準法施行規則第5条一部抜粋|e-Gov

関連記事:労働条件通知書とは?雇用契約書との違いや書き方・記入例をわかりやすく解説!

3-2. 解雇の予告(労基法第20条)

解雇とは、労働者の意思に関係なく、使用者から一方的に労働契約を終了させることです。退職は、従業員の意思に基づき労働契約を終了させる点で、解雇と意味が異なります。労働契約法第16条により、相当な理由がなければ、解雇は認められないため、慎重に手続きをおこなうことが大切です。

労働基準法第20条に則り、使用者は解雇をする場合、30日以上前に労働者に対して解雇予告をしなければなりません。期限までに解雇予告ができなかった場合、その日数に応じた解雇予告手当の支払いが必要になります。なお、日雇い労働者や、試用期間中の労働者など、解雇予告手当の支払いが不要なケースもあるので、正しく理解を深めておきましょう。

(解雇の予告)
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。(省略)

引用:労働基準法第20条一部抜粋|e-Gov

(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

引用:労働契約法第16条|e-Gov

関連記事:労働基準法に基づく解雇の方法や注意点を詳しく紹介

3-3. 退職時の証明(労基法第22条)

労働基準法第22条に基づき、労働者が退職する場合、その証明書の請求があったら、使用者は速やかに退職証明書を交付する義務があります。なお、退職証明書には、労働者が希望しない事項を記入してはならないので気を付けましょう。

(退職時等の証明)
第二十二条 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。(省略)

引用:労働基準法第22条一部抜粋|e-Gov

3-4. 補償を受ける権利(労基法第83条)

労働者が仕事中に病気やケガになった場合、労働基準法に基づき災害補償が受けられます。また、労働基準法第83条により、補償を受ける権利は、退職したとしても変わることがありません。そのため、条件を満たす限り、補償を受け続けることが可能です。なお、補償を受ける権利を譲渡したり、差し押さえたりすることは認められていないので留意しておきましょう。

(補償を受ける権利)
第八十三条 補償を受ける権利は、労働者の退職によつて変更されることはない。
② 補償を受ける権利は、これを譲渡し、又は差し押えてはならない。

引用:労働基準法第83条|e-Gov

3-5. 就業規則(労基法第89条)

労働基準法第89条に則り、常時10人以上の従業員を雇用している場合、就業規則を定め、所轄の労働基準監督署に届け出る義務があります。就業規則には、退職に関する事項を含めなければなりません。就業規則に退職の定めをしていない場合、労使間で退職に関するトラブルにつながる恐れがあるので、明確に規定しておくことが大切です。

(作成及び届出の義務)
第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
(省略)
三 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

引用:労働基準法第89条一部抜粋|e-Gov

4. 労働基準法に基づく退職の注意点

経費 注意

労働基準法に基づく退職には、いくつか気を付けておかなければならない点があります。ここでは、労働基準法に基づく退職の注意点について詳しく紹介します。

4-1. 引き止めに法的な拘束力はない

退職予定者を引き止めたり、後任を確保するよう命じたりする会社もありますが、引き止めに法的な拘束力はありません。労働者には退職する自由があり、人事担当者を含め会社側は引き止めることができないのです。

どれほど引き止められたとしても、労働者は退職の意思を伝えれば原則2週間後に退職でき、後任を確保する義務もありません。退職者を引き止めようと無理な要求をするのではなく、退職そのものを防ぐ工夫をする必要があります。

4-2. 退職の引き継ぎのルールを定めておく

退職の引き止めに法的な拘束力がないとしても、退職日までは従業員であることに変わりません。労働者である限りは、業務として退職の引き継ぎをおこなう義務があります。もしも適切に退職の引き継ぎをしなかった場合、当該労働者に損害賠償を請求できる可能性もあります。

実際に業務の引き継ぎをしなかったことによって、退職金の支払いを免れた判例(巴屋事件)などもあります。従業員に業務の引き継ぎの義務があることを伝えたうえで、スムーズに引き続きができるよう、あらかじめマニュアルを作成しておくことが推奨されます。

退職のさいに業務引継ぎを尽さない場合には「円満退職」とせず退職金を支給しない旨の給与規程につき、業務引継ぎが完全に行なわれたものとして、退職金一部不支給分の支払い請求が認容された事例。

引用:退職金等請求事件(巴屋事件)|全国労働基準関係団体連合会

4-3. 労働基準法に違反すると罰則がある

労働基準法には、懲役や罰金といった罰則規定が定められています。たとえば、労働者が退職証明書を請求したのにもかかわらず、それを交付しない場合、労働基準法に違反することになります。この場合、労働基準法第120条に基づき、30万円以下の罰金のペナルティが課せられる恐れもあるので注意しましょう。

第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 (省略)、第二十二条第一項から第三項まで、(省略)の規定に違反した者

引用:労働基準法第120条一部抜粋|e-Gov

5. 労働基準法に基づく退職手続き

電子書類

従業員から退職の申し出があったら、速やかに退職手続きをおこなう必要があります。ここでは、労働基準法に基づく退職手続きについて詳しく紹介します。

5-1. 社会保険に関する手続き

従業員が退職する場合、人事担当者は雇用保険や健康保険・厚生年金保険といった社会保険の資格喪失手続きをおこなう必要があります。決められた期限を過ぎると、退職者が転職先で雇用保険に入れなくなったり、失業給付金が受け取れなくなったりするので、速やかに手続きをおこないましょう。

① 雇用保険

雇用保険の資格喪失手続きは、次の手順でおこないます。

  1. 離職証明書(雇用保険被保険者離職証明書)を作成する
  2. 書類に記載された離職理由を退職者本人に確認してもらい、署名または記名押印をもらう
  3. 資格喪失届(雇用保険被保険者)を作成する
  4. 離職証明書と資格喪失届を合わせて、退職日の翌日から10日以内に所轄のハローワークに提出する
  5. 離職票が会社に届いたら、速やかに退職者に送付する

なお、転職先が決まっているなどで離職票が不要な場合は、離職証明書の提出が不要なケースもあります。

② 健康保険や厚生年金保険

健康保険や厚生年金保険は、次のような手順で、資格喪失手続きをおこないます。

  1. 退職者の保険証(健康保険被保険者証)を退職日までに回収する
  2. 資格喪失届(健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届)を作成し、退職日の翌日から5日以内に所轄の年金事務所(および健康保険組合)に提出する
  3. やむを得ない事由によって保険証を回収できない場合は、健康保険被保険者証回収不能・滅失届を提出する

なお、協会けんぽと組合健保のどちらに所属しているかで、手続きの方法が変わるため注意が必要です。

5-2. 税金に関する手続き

労働者が退職したら、給与を確定させ、所得税や住民税に関する手続きをおこなう必要があります。社会保険に関する手続きと同様で、期限が定められているものもあるため、速やかに手続きすることが大切です。

① 所得税

給与を確定させたら、次のような手順で、所得税に関する手続きをおこなう必要があります。

  1. 1月から退職月までの賃金額や所得税額を計算する
  2. 源泉徴収票を作成し、退職後1カ月以内に退職者に交付する

なお、年の途中で退職する場合でも、年末調整が必要になるケースもあるので注意しましょう。

② 住民税

会社を退職したら、原則として、自分で住民税を納める普通徴収に切り替えをおこなう必要があります。住民税の退職手続きは、次の通りです。

  1. 給与支払報告に係る給与所得異動届を作成し、退職日が属する月の翌月10日までに市区町村の窓口に提出する
  2. 住民税の未徴収分を徴収する場合は、退職時期によって徴収方法を変える

退職時期による未徴収分の徴収方法の違いは、以下の通りです。

  • 1月1日〜4月30日:一括徴収
  • 5月1日〜5月31日:通常どおり5月分を徴収
  • 6月1日〜12月31日:以下の3つから退職者が選択
  1. 市町村の納税通知書を利用して退職者が直接納付
  2. 本人の同意があれば、翌年5月までの住民税を一括徴収
  3. 就職先が決まっていれば、就職先で徴収

なお、転職先が決まっている場合は、会社が労働者の代わりに住民税を納める特別徴収を継続できる可能性もあります。このように、住民税の退職手続きは複雑なため、疑問点や不明点がある場合は、最寄りの自治体などに相談してみましょう。

5-3. 労働基準法上の手続き

労働基準法に基づき、請求があったら、退職証明書を発行する必要があります。また、退職金制度の定めをしている場合は、労働基準法に則り、退職金を支給しなければなりません。

① 退職証明書

退職証明書は、次のような手順で交付をおこないます。

  1. 退職者に退職証明書の交付を希望するか確認する
  2. 希望があった場合は退職証明書を作成し、使用期間や賃金など退職者が請求した事柄を記載する
  3. 作成した退職証明書を遅滞なく退職者に交付する

退職証明書は遅滞なく交付すべきと定められているだけで、明確な交付期限は定められていません。しかし、転職先などから求められるケースもあるので、できる限り早く交付するようにしましょう。

② 退職金の支払い

退職金は、労働基準法第23条や就業規則の規定を守り、支給する必要があります。

  1. 退職者の請求があった場合、原則として7日間以内に退職金を支払う
  2. あらかじめ就業規則で退職金について定めている場合は、規定に基づいて支払う

なお、退職金は「給与所得」でなく、「退職所得」に該当するため、所得や税金の計算方法が変わるので注意しましょう。

(金品の返還)
第二十三条 使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。

引用:労働基準法第23条一部抜粋|e-Gov

5-4. 退職者に返却依頼

退職手続きを進めるうえで、退職者に返却を依頼しなければならないものがあります。次のような書類や物品は会社に帰属するため、返却してもらう必要があります。

  • 保険証(健康保険被保険者証)
  • 社章や社員証
  • 本人や取引先の名刺
  • 制服や作業着
  • 会社貸与の情報端末
  • 業務や取引先の重要情報が含まれる書類

とくに個人情報や機密情報が含まれるものは、退職後にトラブルを生む恐れがあるため、必ず返却してもらうことが大切です。返却が困難な場合は、破棄してもらうように伝えましょう。

5-5. 退職者へ送付

会社が預かっている書類などは、退職にともなって本人に返却する必要があります。忘れず返却しなければならないのは、次のような書類です。

  • 年金手帳(基礎年金番号通知書)
  • 雇用保険被保険者証、離職票
  • 源泉徴収票
  • 健康保険被保険者資格喪失確認通知書
  • 退職証明書

退職日に返却するものと、退職後に送付するものに分けて、チェックリストを作成しておくと、スムーズに手続きができます。

関連記事:退職手続きで会社側がすべきこととは?必要な業務の流れを一から解説!

6. 労働基準法の退職に関するよくある質問

ここでは、労働基準法の退職に関するよくある質問への回答を紹介します。

6-1. 退職時に残っている有給の買取は可能?

退職時に残っている有給の買取は可能です。また、有給の買取について、労働基準法での定めはないので、買取の有無や金額などは、企業の裁量で決めることができます。ただし、有給の買取制度を設ける場合、トラブルを生まないようにするため、就業規則に制度の内容を細かく記載しておくことが大切です。また、退職日までに申請された有給休暇については、原則として拒否できず、当該退職予定者に取得させなければならないので注意しましょう。

関連記事:有給休暇の買取は違法?退職時の対処や買取の計算について解説

6-2. 退職金を支給するのは義務?

労働基準法に退職金の支給を義務付ける条文はありません。そのため、退職金制度を設けるかは、会社の自由で決めることができます。ただし、退職金制度を設定する場合、就業規則や雇用契約書にその内容を明記する必要があります。また、退職金を支給する場合、退職所得の源泉徴収票も退職者に送付しなければならないので注意が必要です。

関連記事:労働基準法による退職金の支払い義務や金額の決め方を紹介

6-3. 退職届の提出義務はある?

退職届の提出義務はありません。しかし、退職届は、退職の意思があったことを証明する書類になります。また、雇用保険の資格喪失手続きをする際に、退職届の添付が必要になるケースもあります。そのため、退職届のフォーマットを整備したうえで、従業員に周知し、退職する際は退職届を提出してもらうようにしましょう。

関連記事:退職届は何日前までに出すべき?民法や労働基準法の観点からわかりやすく解説!

7. 労働基準法を正しくチェックして退職の手続きをしよう!

笑顔で働く女性

労働基準法に退職に関する明確な定義はありませんが、退職に関連した条文はいくつかあります。また、憲法や民法にも、退職に関するルールが定められています。正しく退職手続きをしなければ、違法になり、罰則が課さられる恐れもあります。まずは法律をチェックし、社内の退職に関する手続きについて見直しをおこないましょう。

法改正から基本的な内容まで分かりやすく解説!
労働基準法総まとめBOOK

労働基準法の内容を詳細に把握していますか?

人事担当者など従業員を管理する役割に就いている場合、雇用に関する法律への理解は大変重要です。
例外や特例なども含めて法律の内容を理解しておくと、従業員に何かあったときに、人事担当者として適切な対応を取ることができます。

今回は、労働基準法の改正から基本的な内容までを解説した「労働基準法総まとめBOOK」をご用意しました。

労働基準法の改正から基本的な内容まで、分かりやすく解説しています。より良い職場環境を目指すためにも、ぜひご一読ください。

労働基準法のebookダウンロード

人事業務に役立つ最新情報をお届け!メールマガジン登録(無料)

HR NOTEメールマガジンでは、人事/HRの担当者として知っておきたい各社の取組事例やリリース情報、最新Newsから今すぐ使える実践ノウハウまで毎日配信しています。

メルマガのイメージ

関連記事

福利厚生には節税効果がある?節税対策できる制度や注意点を解説

福利厚生には節税効果がある?節税対策できる制度や注意点を解説

「福利厚生に節税効果があるって本当?」 「節税対策ができる制度は?」 上記のような悩みを抱えている人もいるのではないでしょうか。福利厚生には節税効果がありますが、利用する制度によって非課税にするための条件があります。 今 […]

  • 労務
  • 福利厚生
2025.02.19
HR NOTE 編集部
スタートアップ企業における福利厚生の重要性は?おすすめの種類やメリット・デメリットを解説

スタートアップ企業における福利厚生の重要性は?おすすめの種類やメリット・デメリットを解説

「スタートアップ企業における福利厚生の重要性は?」 「スタートアップ企業が福利厚生を導入するメリットは?」 上記のような疑問をお持ちではないでしょうか。福利厚生を導入することは、従業員の満足度や生産性向上に直結する重要な […]

  • 労務
  • 福利厚生
2025.02.18
HR NOTE 編集部
大企業の福利厚生を一覧で紹介!事例や導入のメリット・注意点を解説

大企業の福利厚生を一覧で紹介!事例や導入のメリット・注意点を解説

「大企業ではどのような福利厚生が実施されている?」 「大企業のように福利厚生を充実させるメリットとは?」 福利厚生は、従業員の働きやすい環境を整え、優秀な人材の確保や定着率を向上させるために欠かせない制度です。とくに大企 […]

  • 労務
  • 福利厚生
2025.02.17
HR NOTE 編集部
会社からの結婚祝いは福利厚生にできる?内容や導入方法を解説

会社からの結婚祝いは福利厚生にできる?内容や導入方法を解説

「会社からの結婚祝いは福利厚生にできるのか?」 「具体的な内容や導入方法は?」 上記の疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。 企業が瞬間を祝う方法として、結婚祝い金や結婚休暇を福利厚生として提供することが増えてきていま […]

  • 労務
  • 福利厚生
2025.02.16
HR NOTE 編集部
福利厚生の導入メリット・デメリットを解説!注意点や企業事例も紹介!

福利厚生の導入メリット・デメリットを解説!注意点や企業事例も紹介!

「福利厚生を導入するメリットとデメリットは?」 「福利厚生を導入する際に注意点はある?」 上記のような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。 福利厚生とは、企業が従業員とその家族に提供する給与以外の報酬やサービスの […]

  • 労務
  • 福利厚生
2025.02.15
HR NOTE 編集部

人事注目のタグ