企業は新しく入社する社員との間に、雇用契約を結ばなくてはなりません。その際に発行する必要のあるものの一つが、労働条件通知書です。労働条件通知書の発行は、労働基準法で定められているため、発行を省くことは違法となります。さまざまな書類の電子化が進む今、労働条件通知書も電子化が進んでいます。
そこで今回は労働条件通知書を電子化するメリットや、電子化するための要件、押さえておきたい注意点について解説します。労働条件通知書を電子化して、管理を効率化させましょう。
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目次
1. 労働条件通知書とは
労働条件通知書は、事業主が新しく労働者を雇う際に発行しなければならない書類のことです。
これは、正社員だけでなくアルバイトやパート、派遣社員など、雇い入れる全ての従業員に対して発行が義務付けられている書類です。
2019年3月31日までは、労働条件通知書は紙に印刷したものを発行する必要がありました。しかし、2019年4月1日に労働基準法施行規則が施行されたことにより、労働者が希望した場合などいくつかの要件を満たせば、労働条件通知書の電子化が可能となっています。
1-1.労働条件通知書の目的や必要な明示条件、対象者
この労働条件通知書を発行することで、事業主と労働者がお互いに労働条件に合意に合意して雇用契約を結べますし、後から労働条件の変更があった際にトラブルを防ぐことにも繋がります。
決まった書式はありませんが、以下の内容を必ず記載する必要があります。
・労働契約の期間
・有期労働契約の更新基準
・就業場所
・従業すべき業務
・始業・終業時刻
・所定労働時間超えの労働の有無
・休憩時間
・休日・休暇
・二交代制等に関する事項
・賃金の決定・計算・支払方法・賃金の締切・支払時期・昇給に関する事項
・退職(解雇を含む)に関する事項
また労働条件通知書は労働力として雇用する全ての人に作成しなければなりません。労働条件も人によって異なるため、1人ずつ対応する必要があります。
1-2. 雇用契約書との違い
労働条件通知書と混同しやすいのが雇用契約書です。雇用契約書は、事業主と労働者の双方が労働条件に合意した後に、事業主と労働者がそれぞれ署名・捺印を押す契約書です。この書類をもって、労働契約が成立したことが証明されます。
一方、労働条件通知書は、事業主が労働者に対して、一方的に発行する書類です。労働条件が詳しく記載されていて、労働者は労働条件通知書を見て、労働契約を結ぶ上で知っておくべき情報を確認します。
雇用契約書は必ずしも作成しなければならないものではありません。民法では発行することが望ましいとされていますが、雇用契約書を作成しなかったとしても労働契約は結ぶことができます。また、作成しなかったからといって違法にもなりません。
しかし、労働条件通知書は労働基準法で発行が義務付けられているため、事業主が労働者に交付しなかった場合は違法となってしまいます。
2. 労働条件通知書の電子化が可能になった背景とそのメリット
2019年4月1日から可能になった労働条件通知書の電子化ですが、電子化をするとどのようなメリットがあるのでしょうか。
労働条件通知書は雇用をする度に作成する必要があり、また1人ずつ労働条件も異なってくるので、採用人数の多い大企業になればなるほど多くの工数がかかっており、他にもあらゆる課題がありました。それらが電子化することでどのようなメリットがあるのかを電子化を検討する前にしっかり理解しておきましょう。
2-1. 業務の効率化が図れる
労働条件通知書を書面で発行するのは、時間も手間もかかってしまいます。特に雇い入れる労働者の数が多い大企業や、アルバイトやパートが多く、頻繁に労働条件通知書を発行しなければならない場合、書類を発行する手間は膨大です。労働条件通知書を電子化すれば、これまで作成にかかっていた手間や時間を大幅に削減できます。
2-2. 労働条件通知書の管理が容易になる
労働条件通知書は決まった期間保管しておかなければなりません。契約更新などで特定の従業員の労働条件通知書の確認が必要になった際、膨大な全従業員の労働条件通知書の中から必要なものを探し出すのはかなり大変です。電子化すれば、必要な従業員の労働条件通知書がすぐ探せます。また従業員が重要な書類を失くしてしまうリスクを避けられるのもメリットです。
2-3. コストを削減できる
書面で労働条件通知書を発行する場合、印刷代や切手・封筒代などの費用が発生します。電子化した場合はメールで送付するのが一般的なため、これまでかかっていたコストを大幅に削減できるのがメリットです。書面にした労働条件通知書を保管するためにはある程度のスペースが必要となりますが、電子化すれば保管に使用する場所も必要ありません。
3.労働条件通知書を電子化する方法
ここからは実際に労働条件通知書を電子化していく方法について解説していきます。
まず紙の労働条件通知書を電子化、もしくはオンライン上で労働条件通知書を作成します。その後、電子メールなどをもちいて企業側から労働者に送付します。
規模にもよりますが、毎回ひとりずつメールで送付することはかなり工数がかかります。そのため電子契約サービスなどを導入して、一斉送信するとより効率的に行うことができます。また電子契約サービスを導入すれば雇用契約も同時にオンライン上で締結することができます。
4. 労働条件通知書を電子化するための要件
労働条件通知書の電子化は法律で認められていますが、電子化するためには3つの要件を満たさなくてはなりません。電子化する際には必ず条件を満たすようにしましょう。
4-1. 従業員が電子化を希望している
労働条件通知書を電子化するためには、必ず従業員本人が電子化を希望している必要があります。従業員が希望してないのに会社都合で一方的に電子化すると、労働基準関係法違反です。最高30万円以下の罰金が課せられてしまう可能性があるので、必ず従業員の意向を確認しましょう。新規で雇用する従業員に対しては、内定の時点で電子化を希望するか確認します。
4-2. 本人だけが閲覧できる状態にする
労働条件通知書を電子化してメール等で送信する場合、労働基準関係法で「受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信機器による」送信をしなければならないことになっています。そのため、必ず本人だけが閲覧できる状態に設定して、送信しなければなりません。誰もが見られる共有ファイルやクラウドなどにアップロードするのは構いませんが、その場合は必ず本人しか知らないパスワードを設定してください。
4-3. 書面でプリントできるようにする
電子化した労働条件通知書であっても、受信した従業員が書面でプリントできる状態にしておかなければなりません。SNSなどプリントすることを前提としていないツールでの送信や、特定のデバイスでしか閲覧できないファイルで送信するのはNGです。また、期限付きのファイルで送信するのも要件を満たさないので気をつけてください。
5. 労働条件通知書を電子化する際の注意点
労働条件通知書を電子化する際は、これから紹介する注意点を必ず押さえておきましょう。
5-1. 必須の記載項目は従来と同じ
労働条件通知書は電子化が認められるようになりましたが、必須で記載しなければならない項目に変更はありません。内容は省略しないようにしましょう。
5-2. メールの誤送信に気を付ける
労働条件通知書は送られた本人のみが閲覧できる状態でなければなりません。そこで気をつけたいのがメールの誤送信です。同姓の人に間違って送信してしまうケースは少なくありませんから、気を付けるようにしましょう。
5-3. 受信を確認する
メール等で一方的に送信した場合、本人が気づいていない可能性があります。また、迷惑メールに分類されてしまうケースも多いです。受信したら返信を送るように促すなどして、必ず受信確認をしましょう。
5-4. 担当者の名前や送信日時をメールに記載する
労働条件通知書のファイルを送信するメールには、担当者の名前や送信日時を記載しましょう。法律で定められているわけではないので必須ではありませんが、万一の時にトラブルを避けられます。
6. 労働条件通知書の電子化で業務効率を上げよう
業務で使用するさまざまな書類の電子化が進んでいる今、労働条件通知書も電子化すれば企業側だけでなく労働者にもメリットがあります。電子化を検討している場合は、必ず要件を把握し、満たすようにしてください。また、注意点もしっかり確認して不要なトラブルを避けましょう。
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