次世代リーダー育成とは、将来的に組織を引っ張っていく人材を育成するための取り組みを指します。少子高齢化やグローバル化、ダイバーシティ推進、技術革新、働き方改革といったあらゆる要因により、次世代リーダー育成が多くの企業の課題とされています。本記事では、次世代リーダー育成が必要となる背景や理由、育成方法とその手順を解説します。また、次世代リーダーに求められるスキルについても紹介します。
目次
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1. 次世代リーダー育成とは?
次世代リーダー育成とは、組織の将来を担う人材を計画的に育てる取り組みのことです。市場環境の変化が激しい現代において、次世代リーダーの育成が急がれています。ここでは、次世代リーダーとは何か説明したうえで、次世代リーダー育成への課題意識について詳しく紹介します。
1-1. 次世代リーダーとは?
次世代リーダーとは、将来的に経営の中核を担い、組織を引っ張っていくことが期待される人材や候補者のことです。次世代リーダーは、管理職やマネージャーとよばれるマネジメント経験が豊富な人材の中から選抜することが一般的とされています。しかし、時代の変化によって、新入社員や若手社員のうちから次世代リーダー候補としてマネジメント経験をさせるケースもあります。どのような事情があったとしても、組織を成長させ、経営目標を達成するためには、次世代リーダー育成が不可欠です。なお、経営人材の種類は、次の通りです。
経営人材の種類 |
日本語の名称 |
CEO |
最高経営責任者 |
COO |
最高執行責任者 |
CFO |
最高財務責任者 |
CTO |
最高技術責任者 |
CSO |
最高戦略責任者 |
関連記事:「CxO」とは?CEO、COO、CTOなど詳しく解説します
1-2. 次世代リーダー育成の課題意識
一般財団法人日本経営協会の公表している「人材白書2023」によると、多くの組織(49.5%)において次世代リーダー育成に関する人材開発の悩みを抱えていることがわかります。また、人材開発の目標に、次世代リーダー育成を掲げている組織(47.3%)も多くあります。このように、昨今の企業や団体において、次世代リーダー育成への課題意識は高いことが理解できます。
2. 次世代リーダー育成が重視される背景や理由
なぜ次世代リーダー育成が求められているのでしょうか。ここでは、次世代リーダー育成が重視される背景や理由について詳しく紹介します。
2-1. 少子高齢化による人材不足
近年では少子高齢化により、労働人口が減少しています。また、若手社員が少なくベテラン社員が多い状態である「逆ピラミッド型」の年齢構成となる企業も増えています。このような会社では定年退職により上層部が抜けてしまうと、まだマネジメントスキルが未熟な若手社員に経営を任せなければならず、企業存続の危機につながる恐れもあります。外部から採用すればよいと考えていても、売り手市場のため、コストに見合った優秀な人材を雇うことは難しい可能性もあります。このように、少子高齢化が影響で、将来の企業を引っ張っていく人材が不足すると懸念されることから、次世代リーダー育成が注目されています。
2-2. グローバル化やダイバーシティ推進による価値観の多様化
最近ではグローバル化やダイバーシティ推進の影響もあり、多様な価値観を持った人材が組織に集まるようになっています。同じような価値観を持った人材をまとめるだけであれば、これまでに培ったノウハウを活かすことで、次世代リーダーを問題なく育成することもできるかもしれません。しかし、時代や市場の変化により、価値観が多様化し、従来の考え方が通用しない現代においては、新たな社会に柔軟に対応できる次世代リーダーを育成する必要があります。このように、グローバル化やダイバーシティ推進により、人材の価値観が多様化していることも、次世代リーダー育成が注目される理由の一つです。
2-3. 働き方改革や技術革新による人材の流動化
昨今の働き方改革や技術革新により、柔軟に働ける社会が実現されるようになりつつあります。たとえば、IT技術の発展により、リモートで働くテレワークが普及するようになっています。また、時短勤務やフレックスタイム制、裁量労働制、ダブルワークなど、ワークライフバランスを重視した働き方も次に次に登場しています。
このような影響を受け、1つの企業に居続けならければならないという考え方に縛られる人は減り、人材の流動化が進んでいます。時間やコストをかけて、次世代リーダーを育成しても、外部に流出してしまったら意味ないものとなってしまいます。そのため、現代のニーズにあった次世代リーダー育成の手法に注目が集まっています。
3. 次世代リーダー育成で習得させたいスキル
次世代リーダー育成のため、どのようなスキルを身に付けさせるべきでしょうか。ここでは、次世代リーダー育成で習得させたいスキルについて詳しく紹介します。
3-1. 創造力
近年における技術革新やグローバル化などの影響で、市場環境は目まぐるしく変化しています。このような時代では、従来の考え方では通用しないケースも増えています。そのため、次世代リーダーには、多様な意見を受け入れて、時代や社会の変化に応じて柔軟に対応するための創造力が要求されます。このように、次世代リーダー育成においては、新たなアイデアやイノベーションを生み出せる環境を作り出せる人材の育成が大切です。
3-2. 決断力・判断力
組織を引っ張っていく人材には、新たな価値を生み出す創造力だけでなく、経営や事業の方針を決めるための決断力・判断力も求められます。しかし、自分の考えや価値観に固執して決断や判断をしてしまうと、間違った決定をしてしまったり、従業員の不満が増大したりするなど、上手に経営ができない可能性があります。そのため、次世代リーダー育成においては、多様性を受け入れ、さまざまな立場の観点から考えられる客観性も養うことも大切です。
3-3. マネジメント力
組織のリーダーは、ヒト・モノ・カネといった経営資源を効率よく管理するスキルが求められます。経営資源を上手く活用することで、円滑に事業を進めることが可能です。そのため、次世代リーダー育成において、マネジメント力を身に付けられるようなトレーディングをおこないましょう。早いうちから人事配置により、実務を通じてマネジメントスキルを養うことも効果的です。
3-4. コミュニケーション力
働き方改革の影響もあり、リモートで働く人や、育児・介護と両立して働く人など、組織にはさまざまな考えや価値観を持った人が集まっています。組織のリーダーは、その人にあった方法でコミュニケーションを取る力が求められます。
たとえば、テレワークしている人には、Web会議やチャットを通じてコミュニケーションを取ることでスムーズにやり取りができます。また、育児や介護に従事しながら働いている人には、その人の事情に耳を傾け、意見を尊重した業務を任せることが必要となるでしょう。このように、次世代リーダー育成においては、傾聴力や交渉力などのコミュニケーションスキルも身に付けさせることが大切です。
3-5. 継続力
経営目標を達成するためには、先頭に立つリーダーが誰よりも強い意志を持って取り組む必要があります。また、組織のリーダーに求められるスキルは、時代や社会の変化によって変わっていきます。そのため、忍耐力や学び続ける力も、次世代リーダー育成で養う必要があります。次世代リーダーに継続する力が身に付けば、途中に困難があっても、組織が一丸となり乗り越えることができるようになります。
4. 次世代リーダー育成のステップ
次世代リーダー育成の手順を理解しておくことで、スムーズに次世代リーダーの育成ができるようになります。次世代リーダー育成は、次のようなステップでおこなうことが推奨されます。
- 実施目的を明確にする
- 次世代リーダーの定義を明確にする
- 候補者の選抜方法を明確にする
- 具体的な育成手法や教育プログラムを決定する
- 候補者への期待や役割を伝達する
- 施策の実施とモニタリングを行う
- 候補者へのサポートを実施する
ここでは、それぞれのプロセスについて詳しく紹介します。
4-1. 実施目的を明確にする
まずは、なぜ次世代リーダー育成をすべきか、その目的を明確にすることが大切です。目的を明確化しないまま次世代リーダーを育成しようとすると、ゴールがわからず、組織に求められる次世代リーダーを育成できない可能性があります。実施目的が明確になることで、方向性も具体化され、施策を進めやすくなります。
4-2. 次世代リーダーの定義を明確にする
目的が明確になったら、育成すべき次世代リーダーの定義を決めましょう。経営目標や将来ビジョンの観点から、どのような人材が必要になるのか、どのような人材が不足しているのかを洗い出すと、次世代リーダーの定義が定まりやすくなります。次世代リーダーの定義が明確になることで、それを目標にして、スムーズに育成方法や手段を決めることができます。
4-3. 候補者の選抜方法を明確にする
次世代リーダーの定義が明確になったら、どのように育成する候補者を選ぶか、その基準を定めましょう。たとえば、従業員のキャリア目標や適性などを考慮して明確な基準を定めることで、客観的に候補者を選び出すことが可能です。基準が明確化かつ具体化されることで、リーダーを目指したい従業員はその基準を満たすよう具体的な行動に移すことができるようになります。また、公平な選考を実現することで、従業員の納得度も高まります。
4-4. 具体的な育成手法や教育プログラムを決定する
次世代リーダーの選抜方法が決まったら、目標を達成できるよう、具体的な育成手法や育成プログラムを構築しましょう。育成方法には、さまざまな手法があるので、組織や従業員のニーズにあわせて最適なものを導入することが大切です。
4-5. 候補者への期待や役割を伝達する
次世代リーダーの育成方法が決まったら、実際に施策を実施する前に、候補者に対しての期待や役割を伝えましょう。組織からどのようなことが将来求められるのかを事前に理解することで、育成の効果を高めることができます。
4-6. 施策の実施とモニタリングを行う
候補者に育成に関する周知をおこなったら、実際に施策を実施しましょう。次世代リーダー育成のやり方に正解はありません。そのため、定期的にモニタリングを実施し、目標への達成度をチェックし、必要に応じて施策を見直すことが大切です。施策の実施と改善を繰り返すことで、より効果的に次世代リーダーを育成することができるようになります。
4-7. 候補者へのサポートを実施する
施策の実施中や見直し後は、候補者へのサポートも欠かさないようにしましょう。候補者の次世代リーダー育成に対するモチベーションが高まることで、育成の効果も向上します。そのため、アンケートやヒアリングを通じて、候補者の意見を聞き出し、それに応じて必要な支援を提供するようにしましょう。
5. 次世代リーダー育成の具体的な手法
ここでは、次世代リーダー育成の具体的な手法について紹介します。
5-1. OJT
OJT(On The Job Training)とは、実際の業務に取り組みながら教育や育成をおこなう手法のことです。OJTは、効率よく新入社員を育成するために用いられることが多いですが、次世代リーダーを育成するためにも効果的な手法の一つです。
たとえば、現在の組織のリーダーから直接業務を通じてアドバイスをもらいながら仕事をすることで、実務に役立つ知識や能力を身に付けることができます。また、次世代リーダー候補者がOJT担当者となり、部下を教育する立場を経験することで、リーダーに必要なスキルを習得することが可能です。
関連記事:OJTとは?OJTの導入方法や成功させるポイントを解説
5-2. OFF-JT
OJTだけでは組織のリーダーに求められるスキルすべてを身に付けることが難しい可能性もあります。その場合、職場から離れて学ぶOFF-JT(Off The Job Training)を活用するのも一つの手です。たとえば、次世代リーダー候補者に外部研修を受講させることで、社内では得られない専門的な知識やスキルを習得することができます。ただし、OFF-JTの場合、研修を受けるための時間やコストがかかります。また、実践的なスキルは養えない可能性もあります。そのため、OJTとOFF-JTを組み合わせて、次世代リーダー育成をおこなうのも効果的です。
5-3. eラーニング
eラーニングとは、PC・スマホ・タブレットといった端末とインターネット環境を活用してオンライン上で学習する形態のことです。eラーニングであれば、自宅や移動中など、時間や場所を問わず学習することができます。また、動画を巻き戻して繰り返し勉強するなど、反復学習にも向いています。
次世代リーダーを育成する際、候補者の時間の確保が必要になります。eラーニングを活用することで、候補者の好きな時間に学習ができるため、仕事に支障をきたすことなく、次世代リーダーになるための知識やスキルを身に付けることが可能です。
関連記事:eラーニングとは?必要性やメリットとデメリットをわかりやすく解説
5-4.【具体例】 次世代リーダー育成の教育プログラム
次世代リーダーを育成するためには、教育プログラムの準備が必要になります。次世代リーダー育成では、次のようなテーマにもとづく教育プログラムが多いです。
- 戦略・マーケティング
- 会計・財務
- ロジカルシンキング
- マネジメント
- リーダーシップ
- グローバル思考
また、教育プログラムとして、少人数のグループで企業課題の解決をしていく「アクションラーニング(自社課題)」を採用する企業も多く見受けられます。組織の現実的な課題に対する解決策を立案・実施し、結果を振り返ることで候補者のスキルを向上できるためです。次世代リーダー育成の教育プログラムを選ぶ際には、自社の経営課題に沿う適切な教育プログラムを採用しましょう。
6. 次世代リーダー育成のポイント
次世代リーダーを育成する際はポイントがあります。ここでは、次世代リーダー育成のポイントについて詳しく紹介します。
6-1. 企業の成長戦略と連動した育成計画を立てる
組織の成長戦略とマッチしない次世代リーダー育成の計画を立てると、教育の方向性が一致せず、育成効率が下がってしまう可能性があります。一方、成長戦略との連動を考慮した育成計画なら、候補者に習得して欲しいスキルなどを効率的に教育プログラムに組み込むことができます。これにより、効果的な次世代リーダー育成を実現することが可能です。
6-2. 長期的な目線で取り組む
企業がリーダーに求める能力のすべてを候補者がすぐに習得することは不可能なため、時間をかけて段階的な計画を立てる必要があります。持続的な事業成長の実現に向けて安定的に経営人材を輩出するためにも、長期的な計画により、常に複数の候補者をプールすることも重要です。また、長期的に取り組み、次世代リーダー育成のノウハウを蓄積させていくことで、効果的に育成ができるようになります。
6-3. ストレッチアサインメントを実施する
ストレッチアサインメントとは、あえて実力以上の仕事やタスクに取り組ませることで、大きな成長につなげる育成手法を指します。ストレッチアサインメントにより、次世代リーダー候補者に対して、今のスキルでは達成が難しい課題を与えることで、将来必要となる知識や能力を早いうちに身に付けさせることが可能です。
ただし、「パニックゾーン」とよばれる現状では達成不可能な課題を与えると、かえってモチベーションの低下につながり、育成効果が期待できない恐れもあります。そのため、次世代リーダー候補者の性格やスキルをチェックしたうえで、適したタスクを割り振るようしましょう。
関連記事:ストレッチアサインメントとは?注目される理由とメリット・デメリットを解説
7. 次世代リーダー育成の課題とその対策
次世代リーダー育成に取り組もうとしても、解決が困難な課題に直面するケースもよくあります。ここでは、次世代リーダー育成におけるよくある課題とその対策について紹介します。
7-1. 教育には限界がある
次世代リーダーに求められるマネジメント力やコミュニケーションスキルなどは、教育により身に付けさせることができます。しかし、組織のリーダーに必要となる使命感や責任感は、簡単に教育で習得できるものではありません。
このような感覚は、会社に貢献したいと思えるかどうかが重要です。会社への帰属意識を高めるためには、人事評価制度や報酬制度を見直したり、従業員のキャリア開発を支援したりすることが大切です。従業員エンゲージメントが向上すれば、組織のために役に立ちたいという気持ちが強くなり、使命感や責任感も身に付くようになります。
関連記事:従業員エンゲージメントとは?向上施策や調査方法とその手順をわかりやすく解説!
7-2. 適性のある人材の発掘ができない
次世代リーダー育成のためには、まず候補者を見つける必要があります。しかし、適性のある人材が発掘できないという課題を抱えている企業も少なくありません。このような課題を解決するためには、人事データを活用するのがおすすめです。従業員の年齢や経験、キャリア目標、資格などをデータとして社内に蓄積させ、分析することで、次世代リーダー候補を客観的な視点から選抜することができます。
人事データの管理を効率化したいのであれば、タレントマネジメントシステムの導入を検討してみるのも一つの手です。タレントマネジメントシステムであれば、従業員や組織に関するデータをシステム上で一元管理することができます。また、リアルタイムで調査・分析し、その時々に応じた適切な次世代リーダーを発掘することが可能です。
関連記事:タレントマネジメントとは?注目される背景やメリット・デメリット、導入方法を解説!
8. 次世代リーダーを育成して効率よく組織を成長させよう!
時代や社会の変化に伴い、次世代リーダーの育成が急務となっています。次世代リーダー育成を効率よく進めるためには、目的を明らかにし、どのようなリーダーが将来的に求められるのか、その定義を明確にしましょう。次世代リーダー候補者を選出する際は、社内に蓄積されている人事データを活用してみましょう。効率よく人事データを利用するためにも、タレントマネジメントシステムの導入を検討してみるのも一つの手です。
2023年から人的資本の情報開示が義務化されたことにより、人的資本経営に注目が高まっています。今後はより一層、
人的資本への投資が必要になるでしょう。
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