標準報酬月額とは?決定・変更タイミングや計算方法をわかりやすく解説! |HR NOTE

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標準報酬月額とは?決定・変更タイミングや計算方法をわかりやすく解説!

  • 労務
  • 給与計算

ビジネスマンの影が映っている

会社は従業員の給与から健康保険料や厚生年金保険料といった社会保険料を天引きして納める必要があります。その際の計算に用いられているのが「標準報酬月額」です。

標準報酬月額が変動すると徴収する保険料も変わるため、間違いのないよう計算する必要があります。今回は、標準報酬月額の決定・改定方法やタイミング、社会保険料の計算方法をわかりやすく解説します。

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年度更新定時決定随時改定と、労務担当者は給与の改定と並行して、年間業務として保険料の更新に関わる業務を行う必要があります

一方でこのような手続きは、実際に従業員の給与から控除する社会保険料の金額にダイレクトに紐づくため、書類の記入内容や提出はミスなく確実に処理しなければなりません。しかし、書類の記入欄は項目が多く複雑で、さらに申請書や届出にはそれぞれ期限があり、提出が遅れた場合にはペナルティが課せられるケースもあります。

当サイトでは社会保険の手続きをミスなく確実に完了させたい方に向け、「各種保険料の更新・改定業務のマニュアル」を無料配布しております。

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1. 標準報酬月額とは?

女性にはてなが浮かんでいる

標準報酬月額とは、健康保険や厚生年金保険の被保険者が事業主から受ける毎月の給与などの報酬を区切りの良い幅(等級)で区分したものです。健康保険は50等級に、厚生年金保険は32等級に区分されます。毎月給与から天引きされる社会保険料は、標準報酬月額に一定の税率を乗じて計算されています。

関連記事:標準報酬月額とは|社会保険料の計算に必要な金額はどのように決まるのかご紹介

1-1. 標準報酬月額に含まれるものとは

標準報酬月額を計算する際の基準となる報酬には、労働の対価として支払われているものをすべて含めなければなりません。そのため「基本給」だけでなく、「割増賃金」「通勤手当」「住宅手当」なども含まれます。また、現物支給の「食事券」「自社サービス」なども含めます。ただし、臨時的に支給される金銭や、年3回以下の賞与・ボーナスなどは含めないので注意が必要です。

引用:算定基礎届の記入・提出ガイドブック|日本年金機構

なお、6カ月分まとめて定期代を支給するなど、複数月をまたぐ場合は、1カ月分の金額を報酬月額に含めて計算しましょう。

1-2. 標準報酬月額の調べ方

標準報酬月額は毎年見直されており、全国健康保険協会(協会けんぽ)や各健康保険組合、日本年金機構のホームページで調べることができます。

引用:令和6年度保険料額表(令和6年3月分から)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

1-3. 標準報酬月額の計算方法

標準報酬月額は、原則として、事業主が毎年7月1日現在で使用している全被保険者の3カ月間(4月、5月、6月)の報酬月額を算定基礎届により届出し、この届出内容に基づき、決定されます。たとえば、4月、5月、6月の報酬がそれぞれ41万円、42万円、37万円とする場合、4月~6月の報酬月額は40万円となります。「保険料額表」にあてはめると、「395,000~425,000」の区分に該当するため、健康保険は27等級、厚生年金保険は24等級となります。

2. 標準報酬月額の決定・改定方法とそのタイミング

黒板にポイントが書かれている

標準報酬月額の決め方は大きく分けて以下の4通りがあります。

  • 定時決定
  • 随時改定
  • 資格取得時決定
  • 育児休業等終了時改定

ここでは、それぞれの決定・改定方法とそのタイミングについて詳しく紹介します。

2-1. 定時決定

定時決定とは、毎年7月1日時点において被保険者としての資格を保有している人に適用される決定方法です。4月、5月、6月の3カ月間に受けた報酬総額をその期間の総月数で割り、標準月額表にあてはめた金額によって標準報酬月額が決定されます。

事業主は、7月1日から7月10日までに、「被保険者報酬月額算定基礎届」を日本年金機構に提出する必要があります。なお、以下いずれかに該当する場合、「算定基礎届」の提出は不要です。

  • 6月1日以降に資格を取得した人
  • 6月30日以前に退職した人
  • 7月改定の月額変更届を提出する人
  • 8月もしくは9月に随時改定が予定されている人

定時決定で決まった標準報酬月額は、その年の9月から翌年8月まで使用されます。

関連記事:社会保険の定時決定とは?算定基礎届の作成手順も紹介

2-2. 随時改定

標準報酬月額のベースとなる報酬は、昇給や降給などによって変動します。そのため、継続した3カ月間に受けた報酬総額の平均額が、従前の標準報酬のベースになった報酬月額と比べて著しく差が生まれるケースもあります。その場合、次回の定時決定を待つことなく、都度標準報酬月額を改定する必要があります。これを「随時改定」といいます。

随時改定は、次のすべてを満たす場合に限りおこなうことが可能です。

  • 昇給・降給などにより固定的賃金に変動があった
  • 変動月からの3カ月間に支給された報酬の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差がある
  • 3カ月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である

なお、支払基礎日数とは、給与計算の対象になる日数を指します。日給制や時給制の場合は「出勤日数」、月給制や週給制の場合は「暦日数」を基に計算をおこないます。

これらのすべての要件を満たした場合、変更後の報酬を初めて受け取った月から起算して4カ月目の標準報酬月額から改定がおこなわれます。たとえば、その年の10月に支払われる給与に大きな変動があった場合、翌年の1月から標準報酬月額が改定されます。

企業は随時改定が必要な場合、速やかに「被保険者報酬月額変更届」を日本年金機構に提出する必要があります。随時改定による標準報酬月額は、その年の8月(その年の7月以降に改定された場合は翌年8月)まで使用されます。

関連記事:社会保険の随時改定はいつから必要?おこなうための条件や手続き方法を紹介

2-3. 資格取得時決定

新卒社員などのように、新しく健康保険や厚生年金保険の被保険者の資格を取得した場合、入社時点の報酬に基づき標準報酬月額を定めます。具体的な計算方法は、次の通りです。

  1. 月、週その他一定期間によって報酬が定められる場合には、被保険者の資格を取得した日の現在の報酬の額をその期間の総日数で除して得た額の30倍に相当する額
  2. 日、時間、出来高または請負によって報酬が定められる場合には、被保険者の資格を取得した月前1月間に当該事業所で、同様の業務に従事し、かつ、同様の報酬を受ける者が受けた報酬の額を平均した額
  3. 1.と2.の規定によって算定することが困難であるものについては、被保険者の資格を取得した月前1月間に、その地方で、同様の業務に従事し、かつ、同様の報酬を受ける者が受けた報酬の額
  4. 1.~3.のうち2つ以上に該当する報酬を受ける場合には、それぞれの合算額

企業は、被保険者を雇用した日から5日以内に、「被保険者資格取得届」を日本年金機構に提出する必要があります。資格取得時決定による標準報酬月額は、資格の取得月からその年の8月(6月1日~12月31日に資格取得した場合は翌年の8月)まで使用されます。

関連記事:社会保険の資格取得届とは?従業員の雇用時に必須な手続方法をご紹介

2-4. 育児休業等終了時改定

産前産後休業中や育児休業中は報酬が減少しますが、随時改定の事由に該当しない場合、次回の定時決定までの間、報酬と標準報酬月額に大きな乖離が生じる可能性があります。給与に対する社会保険料額が大きくなり、手取り額が減ってしまい、生活への負担が大きくなる恐れがあります。

そのため、産前産後休業や育児休業を終了した際に、被保険者が事業主を通じて保険者に申し出をした場合、特例として標準報酬月額を改定することが可能です。なお、復帰した月を含む3カ月間の報酬から算定した標準報酬月額と、従来の標準報酬月額を比較し、1等級以上差がある場合に改定を申し出ることができます。育児休業終了日もしくは産前産後休業終了日の翌日が属する月から起算して4カ月目の標準報酬月額から改定がおこなわれます。

企業は育児休業等終了時改定をおこなう場合、速やかに「被保険者報酬月額変更届」を日本年金機構に提出する必要があります。育児休業等終了時改定による標準報酬月額は、その年の8月(その年の7月以降に改定された場合は翌年8月)まで使用されます。

関連記事:育児休業の期間はいつまで?男性も可能?給付金の申請条件や計算方法もわかりやすく解説

3. 標準報酬月額の決定・改定に関して押さえておきたいポイント

時計や賃金のまわりに人が集まっている

ここでは、標準報酬月額の決定・改定に関して押さえておきたいポイントを詳しく紹介します。

3-1. 固定的賃金とは?

随時改定が必要になる場合、「固定的賃金の変動」を正しく把握しなければなりません。固定的賃金とは、支給額や支給率が定まっている賃金のことです。たとえば、下記が挙げられます。

  • 昇給(ベースアップ)、降給(ベースダウン)
  • 給与体系の変更(日給から月給への変更等)
  • 日給や時間給の基礎単価(日当、単価)の変更
  • 請負給、歩合給等の単価、歩合率の変更
  • 住宅手当、役付手当等の固定的な手当の追加、支給額の変更

引用:随時改定(月額変更届)|日本年金機構

残業手当や能率手当といった「非固定的賃金」の変動だけでは、随時改定をおこなわないので注意が必要です。

3-2. 2等級以上の差とは?

随時改定が必要となる要件の一つとして、「2等級以上の差」があります。2等級以上の差とは、「保険料額表」を参照にしながら、報酬月額を標準報酬月額等級区分に当てはめると、2級以上の差が生じることを指します。

たとえば、昇給により、20等級(17等級)から22等級(19等級)に報酬月額が変わった場合、「2等級以上の差」の要件を満たしていることになります。なお、下記のケースでは、2等級以上の差として扱われないので注意が必要です。

  • 固定的賃金は上がったが、残業手当等の非固定的賃金が減ったため、変動後の引き続いた3カ月分の報酬の平均額による標準報酬月額が従前より下がり、2等級以上の差が生じた場合
  • 固定的賃金は下がったが、非固定的賃金が増加したため、変動後の引き続いた3カ月分の報酬の平均額による標準報酬月額が従前より上がり、2等級以上の差が生じた場合

引用:随時改定(月額変更届)|日本年金機構

また、標準報酬月額等級表の上限または下限にわたる等級変更が発生する場合、2等級以上の差が生じなくても随時改定の対象となります。

3-3. パート・アルバイトの標準報酬月額の算定方法

定時決定では、原則として、4月~6月(支払基礎日数17日以上ある月が対象)の3カ月間に受けた報酬の総額を、その期間の総月数で除した値を用いて標準報酬月額を決定します。しかし、パートやアルバイトなどで働いている短時間就労者の場合、下記のように、4~6月の3カ月のうち支払基礎日数が何日あるかによって標準報酬月額の決定方法は変化するので注意が必要です。

支払基礎日数の条件

標準報酬月額の決定方法

3カ月とも17日以上ある

3カ月の標準月額の平均額をもとに決める

少なくとも1カ月は17日以上ある

17日以上の月の報酬月額の平均額をもとに決める

3カ月とも15日以上17日未満

3カ月の報酬月額の平均額をもとに決める

1カ月または2カ月は15日以上17日未満(1カ月でも17日以上ある場合は除く)

15日以上17日未満の月の報酬月額の平均額をもとに決める

3カ月とも15日未満

従前の標準報酬月額で決める

4. 標準報酬月額に基づく社会保険料の計算方法

積み木を積み上げる様子

ここでは、健康保険、厚生年金保険、労働保険の社会保険料の計算方法について詳しく紹介します。

4-1. 健康保険料の計算方法

健康保険料は、標準報酬月額を基に次の計算式で算出します。

健康保険料 = 標準報酬月額 × 健康保険料率

標準報酬月額の等級および月額、報酬月額の区分は全国で統一されています。ただし、協会けんぽの場合、健康保険料を計算する際に用いる保険料率は、介護保険第2号被保険者に該当するかどうかや、所属する都道府県によって変化します。

たとえば、令和6年度の北海道の場合、介護保険第2号被保険者に該当しない人の健康保険料率は10.21%、該当する人は11.81%です。一方、令和6年度の東京都の場合、介護保険第2号被保険者に該当しない人の健康保険料率は9.98%、該当する人は11.58%です。このように、同じ健康保険でも地域によって保険料率が異なるので、標準報酬月額をもとに健康保険料を計算するときには注意しましょう。

また、健康保険料は、原則として労使折半となるため、下記の式で計算された額が従業員および企業それぞれの負担額になります。

健康保険料(従業員と企業それぞれの負担額) = 標準報酬月額 × 健康保険料率 ÷ 2

なお、所属する健康保険組合によっては、健康保険料率や労使の負担割合を変えていることもあるので注意が必要です。

関連記事:社会保険における健康保険は国民健康保険と何が違うのか?|切り替え手続きについてもご紹介!

4-2. 厚生年金保険料の計算方法

健康保険料は、標準報酬月額を基に次の計算式で算出します。

厚生年金保険料 = 標準報酬月額 × 厚生年金保険料率(18.300%)

厚生年金保険料率は「18.300%」と一定です。また、厚生年金保険料は、健康保険料と同様で、労使折半のため、下記の式で計算された額が従業員および企業それぞれの負担額になります。

厚生年金保険料(従業員と企業それぞれの負担額) = 標準報酬月額 × 厚生年金保険料率 ÷ 2

厚生年金保険に加入していれば、国民年金保険にも加入していることになります。なお、厚生年金保険料を支払っている場合、国民年金保険料の納付は不要です。

    4-3. 労働保険料の計算方法

    労働保険とは、労災保険と雇用保険を総称した用語です。労働保険料は、実際に支払われる賃金を使用して計算されます。そのため、健康保険料や厚生年金保険料のように「標準報酬月額」は用いられません。

    労災保険料は、次の計算式で算出します。

    労災保険料 = 賃金総額 × 労災保険料率

    労災保険料率は、事業内容によって労働災害のリスクが異なるため、業種ごとに細かく規定されています。また、労災保険料は、全額事業主が負担する必要があります。

    引用:令和6年度の労災保険率について|厚生労働省

    雇用保険料は、次の計算式で算出します。

    雇用保険料 = 賃金総額 × 雇用保険料率

    雇用保険料率は、「一般事業」「農林水産・清酒製造事業」「建設事業」の3種類で区分されます。また、労働者と使用者で負担割合は異なります。

    引用:令和6年度の雇用保険料率|厚生労働省

    このように、標準報酬月額は、健康保険料や厚生年金保険料の計算に用いますが、労働保険料の計算には用いないので注意しましょう。

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    5. 標準報酬月額はケースに応じて決め方やタイミングが異なる

    注意点の吹き出しが浮かんでいる

    健康保険料や厚生年金保険料のもとになる標準報酬月額は、連続する3カ月間(4月、5月、6月)の報酬の平均額に応じて算出されます。健康保険は50等級、厚生年金保険は32等級に区分されており、それぞれの等級区分に応じた標準報酬月額をもとに、各種保険料を計算します。

    標準報酬月額は被保険者の資格を取得したタイミングのほか、毎年おこなわれる「定時決定」、状況に応じておこなわれる「随時改定」などによって変化するので、決め方やタイミングのルールをしっかりチェックしておきましょう。

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