「HRTech」とは、人事や人材(Human Resources:HR)と技術(Technology)を組み合わせた造語です。
近年では、最先端のHRTechサービスが次々と生まれ、実際に活用する企業も増えてきています。
それではなぜ、HRTechサービスが注目を集めているのでしょうか。また、どのようなサービスがあり、そのメリットはどういったところがあるのでしょうか。
本記事にてご紹介してまいります。
目次
1. HRTechをはじめ、「○○×Tech」が注目される時代に
少子高齢化による採用難、働き方改革による働き方の多様化の影響もあり、人事に求められるものは質・量ともに非常に増えてきています。
そういった背景から、「人事業務の効率化」や「質の高い人事戦略の構築」を実現するために、「人事業務にITを活かそう」という考え方が注目されており、多くの企業がHRTechサービスの導入や検討を進めています。
また、HRTechだけでなく、他の領域でもITの活用は進んでいて、さまざまな「○○Tech」が存在しています。
【◯◯×Techの事例】
- 金融:FinTech(Finance×Technology)
仮想通貨やクラウドファンディング、ソーシャルレンディング、電子マネー、電子決済などが代表的なサービスとなっています。 - 農業:AgriTech(Agriculture×Technology)
作物や家畜の状態をリアルタイムで可視化できたり、卸先との取引や出荷の状況を瞬時に把握できたり、農家同士のコミュニティーを活性させたりと、農業の課題解決に貢献しています。 - 教育:EdTech(Education×Technology)
オンライン講義、オンライン教材、学習管理システム、教師向けSNSなどがあります。英語やプログラミングを勉強できる学習サイトなども含まれます。 - 不動産:ReTech(Real Estate×Technology)
人工知能(AI)や機械学習などの技術を使っておすすめの物件を紹介したり、仮想現実(VR)と拡張現実(AR)を用いて物件を遠隔から内覧したりなど、これからさらに注目されていく分野と言われています。 - 食品:FoodTech(Food×Technology)
レシピ情報や店舗情報を提供するウェブサービスからはじまり、ネットスーパーの宅配サービス、代替食品や完全栄養食の研究開発なども進められています。 - 健康:HealthTech(Health×Technology)
リストバンド型の活動量計や処方箋のレコメンドサービス、ビッグデータによる医師紹介サービスなど、健康管理を支援するサービスが数多く登場しています。 - 広告:AdTech(Advertisement×Technology)
ユーザーの趣味や嗜好、年齢、性別など、さまざまな切り口で広告を配信することができます。より適切な情報を適切なタイミングでユーザーに届けるために活用されています。
上記のように、さまざまな「◯◯×Tech」があり、テクノロジーの活用により、どんどん新しいサービスが生まれています。今後もますます新しい領域×Techが出てくることでしょう。
2. 「やることが多い」人事受難の時代へ
人事領域におけるHRTechサービスをご紹介する前に、そもそも人事はどのような業務をおこなっているのでしょうか。大枠として以下のような業務内容が挙げられます。
【おもな人事業務】
- 採用
- 教育・研修
- 人事評価
- 人材管理
- 給与計算
- 勤怠管理
- 労務管理
上記のように人事業務は非常に幅広い領域となっています。
またどの業務も「ヒト」が関わるもので、決まった正解がなく、柔軟性が求められる非常に難しい領域となっています。
さらに、前述したような「少子高齢化による労働力不足」「働き方の多様化」、さらに終身雇用の崩壊による「雇用の流動化」などの影響があり、今まで以上に求められるものが多くなってきています。
例えば、採用活動でいくと、現在は売り手市場によって、想像以上に応募者が集まらないという状況です。人材確保に苦戦している企業が多く見られます。
人材管理においては、働き方の多様化にあわせた人事制度、雇用形態、勤務体系などの確立が必要となります。
さらに、終身雇用の崩壊により雇用の流動化が進むため、優秀な人材をいかに自社に引き留めておくかという、リテンション対策も大きな課題となっています。
この流れに合わせて、副業(複業)解禁を検討、またはすでに実施している企業も増えてきています。
今までのような画一的な人事施策だけでは通用しなくなっており、多様な価値観を持つ個人に寄り添った、個別最適な人事施策が求められてきているように感じています。
3. 社会変化とともに求められる「戦略人事」
そして、このような社会構造の変化を受け、「ヒト・モノ・カネ・情報」の経営資源の中で、「ヒト」が一番重要な資源であると言われるようになってきました。
つまりは、企業成長において人事の役割がますます重要になってきており、従来の人事業務からの脱却が求められてきているのです。人事は経営者の右腕となり、経営を支えていく立場になってきているのです。
そうした背景があり、人事から企業成長を支えるための「戦略人事」というキーワードが注目を浴びてきています。
とはいえ、戦略人事をどのように実践していけばいいのか、悩まれている人事担当者は多いかと思います。
それは当然のことで、これまでの人事業務は「勘」と「経験」を中心に、いわば属人的な業務になりがちなことが理由として挙げられます。
しかし、これからの人事に求められるのは、企業成長のための人事戦略です。そのためには、現状の課題や将来に対する打ち手を明確化し、スピーディーかつ客観的で根拠のある判断が求められます。
そこで重要なものとしてひとつあるのが、従業員データの収集・蓄積です。
そのような、戦略人事の実現に向けてHRTechのサービスが大きく貢献でき、注目されているのです。
4. HRTechにはどのようなサービスがあるのか?そのメリットとは?
それでは、HRTechにはどのようなサービスがあるのでしょうか。そのメリットとともに、次の代表的な5つの領域に分けて紹介していきます。
- 1、採用管理システム
- 2、人材管理システム(タレントマネジメントシステム)
- 3、労務管理システム
- 4、勤怠管理システム
- 5、教育・育成管理システム(LMS)
4-1. 採用管理システム
HRTechの領域において採用業務に関連するサービスは、「採用管理システム」または「応募者管理システム(Applicant Tracking System:ATS)」と呼ばれています。
採用管理システムの特徴は、応募者の履歴書管理や選考プロセスの進捗把握、面接評価データの収集管理、応募者とのメールのやり取りなどの採用業務をシステム上で一元管理できることです。
履歴書のデータ、選考の進捗状況、合否の理由などがリアルタイムに分かり、さらに条件ごとに応募者を分類・抽出したりすることもできます。
もちろん、選考通過率や内定承諾率、採用目標の進捗といった採用全体のデータも把握可能です。
最近では、求人票の採点サービスやAI技術を活用したマッチングサービスなども出てきており、新しい採用のカタチが次々に生まれています。
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4-2. 人材管理システム(タレントマネジメントシステム)
人材管理に関するHRTechサービスは、「タレントマネジメントシステム」とも言われており、従業員情報や人事評価のデータを一元で管理することができます。
従業員がいつ入社して、どこの部署に配属されていたか、評価はどうか、いつ異動したか、いつ退職したか、退職理由は何であったか、といった情報をシステムで管理します。
平均勤続年数や年次ごとの離職数も把握できるため、離職の要因分析にも役立てられます。
さらに、さまざまな切り口でセグメント分けができるので、組織ごとの人員構成を俯瞰して見ることも可能です。適材適所の人材配置のほか、組織ごとの傾向や問題の発見にもつなげられます。
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4-3. 労務管理システム
労務領域におけるHRTechサービスは、「労務管理システム」と呼ばれており、社会保険、雇用保険、給与計算などの各種手続きを支援します。
各種手続項目を可視化し、シンプルに進捗管理することで漏れなく手続きを完了させることができます。また、多くのサービスはウェブで入力するだけで、オンラインで各書類を作成可能です。
年末調整やマイナンバーなどの申告業務も簡素化できるため、人事部と従業員の運用工数を大幅に削減できます。
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4-4. 勤怠管理システム
勤怠管理システムを導入することで、「大量のタイムカードの集計が大変」「当月の勤怠状況の把握が月末にならないと分からない」「給与ソフトに勤怠データを入力する作業が手間が掛かる」「シフト作成に時間が掛かる」といった業務が改善され、担当者の負担を軽減します。
また、さまざまな打刻方法に対応できるため、多様化する勤務体系においても、正確な勤務時間を計測できます。
タイムカードの不正打刻や残業時間の超過も防止でき、企業のコンプライアンス遵守にもつながります。
勤怠管理システムの機能としては、次のようなものが挙げられます。
- PC、スマートフォン、ICカード、GPS、指紋認証などによる打刻
- リアルタイムでの従業員の勤怠管理
- 勤務シフトの作成と管理
- 給与計算ソフトウェアとの連携
- 休暇、残業、出張などの申請管理の簡素化
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4-5. 教育・育成管理(LMS)
教育・育成に関する領域をさらに分解すると、内定者研修、新卒入社研修、中途入社研修、リーダー研修、マネージャー研修などあります。
この領域のHRTechサービスは、「学習管理システム(Learning Management System:LMS)」と呼ばれており、学習教材の配信、受講状況、成績などを統合して管理するシステムのことです。
学習管理システムの機能としては、次のようなものが挙げられます。
- テスト、アンケート、レポート課題などの学習教材の作成
- 学習教材を対象者ごとに適切な配信。教材データの保管、蓄積
- 学習の進捗情報、受講履歴一覧のリアルタイムでの確認
- 受講者の成績管理
- スマートフォンやタブレットなどさまざまなデバイスでの受講に対応
- 受講者と管理者でのコミュニケーション機能(チャットなど)
- ライブ配信機能や録画した動画内容の配信
これにより、従業員のスキルアップを戦略的に支援できるだけでなく、教材費や会場費用といったコスト削減、効率化にもつなげられます。
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5. 最後に
HRTechサービスに共通していえることは、いずれのサービスも人事関連データを簡単に収集・活用でき、かつリアルタイムな状況把握を可能にしています。
そうすることで、人事業務の効率化はもちろん、勘と経験によってブラックボックス化してしまった人事データを「数値化」「可視化」でき、人事戦略の最適解を導けるようになります。
従業員データを可視化することで、個別最適な人事施策が可能になり、人事業務の向上、さらにはその先にある企業経営の支援につながります。
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