働き方改革を受けて、残業時間を削減することが必要になりました。
そんな中で「残業禁止」の制度を取り入れる企業も増えています。
残業禁止は長時間労働を防ぐ手段のひとつですが、計画的におこなわなければ、逆効果となってしまう可能性もあるため、導入する際には注意が必要です。
本記事では、残業禁止にする際に注意すべき点を実例とあわせて解説します。
関連記事:残業とは|残業の割増賃金の計算方法や残業規制による対策法も
そもそも残業時間が各従業員でどれくらいあるのかが分からなければ、削減しなければならない残業時間数や、対象の従業員が誰かが分からないためです。
現在、残業時間を正確に把握できていないなら、勤怠管理システムを導入して残業時間を可視化することをおすすめします。
具体的な残業時間数が把握できるようになったことで、残業の多い従業員とそうでない従業員を比較して長時間労働の原因をつきとめ、残業時間を削減した事例もあります。
システムが便利なのは分かったけど、実際に効果があるのか知りたい」という方に向け、当サイトでは勤怠管理システム「ジンジャー勤怠」を例に、システムでは残業管理をどのように行えるかをまとめた資料を無料で配布しておりますので、ぜひダウンロードしてご確認ください。
1. そもそも残業を禁止する理由とは
そもそも残業を禁止することは目的ではなく手段のひとつです。何が目的で実施するのかを明確にしておかなければなりません。ただ考えもなく残業を禁止しても、現場に混乱を招くだけになる場合もあります。
残業を禁止することの目的は、決して人件費削減のためではありません。従業員の労働環境の改善や、労働力人口減少にともなう企業競争力の維持のため、生産効率を上げることなどがあると考えられます。
また、2019年に施行された働き方改革をきっかけに残業禁止を推進しているというケースも考えられます。このケースに関しては、残業や法改正の内容を正しく理解していないことが原因で起きてしまいます。
当サイトでは、上述したような残業に関する正しい知識(定義や上限時間、法改正など)をまとめた資料を無料で配布しております。残業に関して不安な点があるご担当者様は、こちらから「残業ルールBOOK」をダウンロードしてご確認ください。
2. 残業禁止をすると起こるかもしれないデメリットとは?
「残業を明日から禁止にしよう!」と労働環境をいきなり変化させたところで、現場は混乱してしまうだけです。
残業禁止を取り入れる際の懸念点・不安点を洗い出し、それを1つずつ取り除いて、残業削減に向けた整備を整えていくことが大事になります。以下に残業禁止にあたり、考えたい点をいくつか挙げてみました。
残業禁止にすると仕事がまわらなくなってしまう/結局家で仕事をすることになる
効率よく仕事をおこなう以前に、1人当たりの仕事量が多すぎる場合、いくら残業を減らしたところで成果は上がりません。
「残業をしないと仕事がまわらない」といった経営状態で残業を禁止した場合、経営は破綻してしまうでしょう。「労働時間も減らしたけれど、成果も減ってしまいました」では意味がないですよね。
残業禁止令が出たけど作業量は減らないわけで家で仕事ですよ┐(´д`)┌
— K.Sasaki (@KZT33K) 2016年11月30日
残業禁止令がでたから仕事を家にもちかえるのだ
— クロウ (@scarecrow2423) 2016年11月13日
このように残業禁止にしたことで仕事が終わらずに結局家に持ちかえって仕事をしている人もいるようです。
社内コミュニケーションがなくなる可能性がある
残業禁止にして無駄と思われる仕事を削った結果、社内コミュニケーションがなくなり仕事に支障をきたす可能性があります。
一方的な深夜残業禁止令で業務が圧迫され過ぎてフロア全体が余裕無くギスギスしていった結果、10年一緒に働いてる先輩が挨拶程度の最低限のコミュニケーションすら拒否しだす始末で、なんかもうこれどうしましょうかね。
— コータロー (@kotaro_oneimo) 2016年11月4日
このように社内コミュニケーションが減ると組織力の低下にもつながり、仕事の生産性はむしろ下がってしまうでしょう。
休憩時間も仕事をしてしまうことになる
勤務時間が減ることで時間が足りなくなり、休憩時間も働かなくてはならないという可能性もあります。
残業禁止なら、休憩時間を削るしかないじゃないか。目標とノルマは全く違う意味言葉なんだけどな
— Shin (@jade8883) 2014年1月31日
人件費節約で残業禁止→仕方なく休憩時間削ってサービス労働・・・嫌になるなぁ。。。
— 北の貧乏おじさん (@kitanoossan) 2013年7月10日
生産性を上げるためにも休息は必要です。休憩時間は休み、仕事中はしっかり働くというメリハリが重要だと思います。生産性を上げるために残業禁止を取り入れていたにもかかわらず、休憩時間を削って仕事をしていては生産性を上げることはできないのではないでしょうか。
教育に時間をつくれず、マネジメント放棄となってしまう
残業をなくすことで、業務時間内での仕事量が多すぎて、新人の育成を後回しにしてしまうというケースもあるようです。
「指摘や指示をしたくても、その時間すらもったいない・・・」そのような思考になってしまうのでしょうか。その場合は、長期的な目で見た際、企業の不利益につながってしまうことでしょう。
RT> いらない仕事をなくしたのは良かったけれど、いきなり残業禁止ではうまくいかないのかもしれない。あと、新人教育は省いていいのだろうか?
— ちびお (@chibio6) 2016年10月17日
「企業は人となり」という言葉があるように、企業は人で成り立っています。人をないがしろにしている企業は衰退してしまうのではないでしょうか。
残業禁止する前よりも、疲弊してしまうことがある
残業できない環境のため、ものすごく集中していつもは10時間かかる仕事を6時間で終わらせたとしましょう。しかし、生産性を上げて仕事を早く終わらせたら、その空いた時間に新たな仕事が与えられることも考えられます。
ものすごく集中して仕事をした結果、生産性があがったが仕事量が増えて、残業禁止する前よりも疲れるようになってしまう場合があります。それでは何のために残業をなくしたのか意味がなくなってしまいます。
完全な成果主義でない以上、モチベーションの高い従業員でなければ、同じ時間で仕事をするのであれば楽な方を選んでしまいがちです。
生産性の高い従業員と低い従業員の評価や給与体系の違いを明確にして、モチベーションを保たせるなど工夫する必要があります。
3. 実際に残業禁止を取り入れて弊害が生じた例
ここからは実際に残業禁止を取り入れて、弊害が生じた例を2つ紹介していきます。
実例その1
1人当たりの仕事量を変えずに勤務時間だけを減らした結果、この企業では下記のような状況に陥りました。新人育成の放棄や有給消化率の低下などは長期的に見た場合、企業の成長を大きく損なうことになるでしょう。
勤務時間を減らしさえすれば、仕事は効率化されるというわけではないという良い例でしょう。
残業禁止のルールが導入されて半年。弊社は恐怖のブラック企業と化していた。
・早出の常態化→残業をとがめる人はいても、会社に早く来ることをとがめる人がいないため。
・昼休みの消滅→時間が足りないのでカロリーメイト片手に仕事を続行。
・新人の放置、業務の固定化→仕事を教えあう時間がないので、同じ業務を同じ人が固定的にするようになり風通しが悪くなった。
・有給消化率の低下→上記に関連して、休んだ時に仕事を代わりにできる人がいないので休めなくなった。
実例その2
この企業ではサービス残業、休日出勤、持ち帰り残業など時間外の仕事全てを禁止としました。定時退社を1年間続けた結果下記の通りとなりました。
まとめると、①会社の意思決定を完全にトップダウンにしないといけない、②部下は命令されたこと以外はやらないものと心得なければいけない、③その仕事がはたして定時に終わるか考えながら上司は命令しなければいけない、④会議・ミーティングは時間の無駄だから減らさなければいけない、ができないと定時退社制度は失敗して、ただのサービス残業強要になってしまうだろう。
定時退社制度は会社の文化を変えるということだ。本当に変える意識がある会社がどれだけあるだろうか。
この1年を通じて勤労意欲は激減した。他人の仕事を進んで手伝う事もしなくなったし、突発的な仕事や他人から頼まれる仕事を憎むようになった。新しい仕事の企画も考えるだけ無駄なので考えなくなった。(もちろん正式な仕事として割り振られれば別だが。)しかし、ある意味会社は誠実に社員を部品や機械として扱うようになったのだともいえる。
ブラック企業は、実際には社員を部品や機械にしか思ってないくせに、まるで経営陣であるかのように働かせようとする。こうした企業に比べると、わが社は極めて誠実と言える。
4. まとめ
いかがでしたでしょうか。
ただ残業を禁止しただけで生産性が上がるわけではありません。
根本の原因を治療せずに残業を禁止にしても、残業があったときとはまた別の弊害が起こります。原因を見つけて対処しても、それで全てが改善されるということはなかなかありません。
変化を加える場合は以前よりベターにするということを意識しておこない、随時改善していくという考え方が得策でしょう。
残業禁止にした場合に起こりうるケースを予測し、不安要素を1つずつ取り除いていく必要があります。何に時間がかかっているかを把握し、その原因に対しての改善策として残業削減をおこなうという考え方で取り組んでいきましょう。
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具体的な残業時間数が把握できるようになったことで、残業の多い従業員とそうでない従業員を比較して長時間労働の原因をつきとめ、残業時間を削減した事例もあります。
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