飲食業で悩みの多い「人材集め・定着・キャリアアップ」 うまくやっている会社は何をしているのか? |HR NOTE

飲食業で悩みの多い「人材集め・定着・キャリアアップ」 うまくやっている会社は何をしているのか? |HR NOTE

飲食業で悩みの多い「人材集め・定着・キャリアアップ」 うまくやっている会社は何をしているのか?

  • 採用
  • アルバイト・パート採用手法

※本記事は、インタビューを実施したうえで記事化しております。

次々と人気のカフェをつくりだすカフェ・カンパニー株式会社と、新しいアルバイト求人サービスを運営しているスポットメイト株式会社の2社にインタビュー。

近年「人材」という部分で苦労の声が絶えない飲食業界ですが、採用・定着・キャリアアップにおいて、うまくやっている会社は何をしているのか。

カフェ・カンパニー流の人材採用・育成に対する考え方や、多くの飲食店の採用に携わっているスポットメイトから見たアルバイト採用のイマを語っていただきました。

【人物紹介】田口 弦矢 | カフェ・カンパニー株式会社 執行役員CHO

インテリジェンス、サイバーエージェントで、人事責任者および子会社にて代表および事業企画部長を経験後、独立。数社のスタートアップやベンチャー企業や上場企業の役員を歴任。現在、数社の顧問や社外役員およびパーソルキャリア子会社執行役員CSO及びカフェカンパニー執行役員CHOを担う。

【人物紹介】田中 佑馬 | スポットメイト株式会社 代表

慶應義塾大学経済学部卒、三菱商事株式会社にて金融事業の新規事業開発を担当。2016年、Draper Nexus Ventures日本オフィスに参画。主に日本国内のB2B SaaS ベンチャー投資案件を担当。その後、スポットメイト創業。

変わってきたアルバイトの志向性

ー最近、アルバイト人材難の声を多く聞きますが、事業会社・求人サービス会社のお二人から見て、どのような変化を感じていますか?

まず、アルバイトを探す方の「情報のキャッチアップ方法」が変わってきているように感じています。

たとえば、従来は「能動的に検索して探す」だったのですが、今は「自分が欲しい情報をキュレーションして受動的に効率的に受け取る」といったやり方が増えてきている印象を受けます。

そのような時代の流れの中でアルバイト採用市場を見ると、長年変わらない旧態依然のビジネスモデルなんですよね。

ここ数年、特に飲食業界の方とお話をしていると、「人が採用できない。でもこれ以上お金をかけられない、どうしよう」と、すごく悩まれている方が多くいらっしゃいます。

その中で我々としては、従来の「媒体から求人を検索する」やり方ではなく、「アプリから働きたい人が空き時間で好きに働ける」という思想のもと、スポットメイトを提供しています。

これは、アルバイト領域にシェアリングエコノミーの概念を持ち込んだもので、新しいアルバイト採用の形だと思います。

スポットメイトを通して、「人手が足りない」という課題解決策のひとつになれば良いと思っていますし、そこで働き手と店舗でお互いにウマが合えば、長期採用につながる可能性もあるじゃないですか。


ーありがとうございます。田口さんはいかがですか?

まず、あきらかに雇用の部分に関しては、求職者の働く選択肢が増えましたよね。

アルバイトひとつをとっても、どのアルバイトをするか、アルバイトに何を求めるか、働き手の求める価値観の変化が、昔と比べて一番大きいように感じています。

今までは、「たまたま誘われて・・・」とか、「時給が高いから」「自分の家の近くで都合が良いから」みたいな理由が多かったと思うんです。

それが、「このコミュニティでどんな経験が得られるのか」「成長につながるのか」「その人たちと働きたいのか」「このサービスを取り扱いたいのか」など、より明確な目的を持つようになって、その目的の種類も多様化してきています。

たしかに多くの企業様からお話を聞くと、定着しているアルバイトの方は、「時給よりも、そのコミュニティが好きかどうか」を重要視している傾向があるとおっしゃっていますね。

カフェ・カンパニーが採用で意識している2つのこと

ーアルバイトの志向が変わってきているとのことですが、カフェ・カンパニーではどのようなことを意識してアルバイト採用をされていますか?

昔は、求人媒体に掲載すればある程度は採用できたと思うのですが、今は単純にそれだけでは応募が来ない現状があります。

その中で意識していることは2つあります。

1つ目はオープンであること。働くリアルなイメージが湧くように情報を詳しく載せることが大事です。そのために、会社としてどこまでの情報をオープンにできているのか、オープンにして良いのか、常に考えています。

ですので、積極的に「カフェ・カンパニーはこういう会社です」という情報を、自社ホームページや今回のような取材を通して対外的に発信していくことを心がけています。

あと、今の若い世代の方々は「社会貢献」を気にする傾向があるように感じていて、会社のCSR活動もアピールポイントになり得るため、そこもたくさん打ち出しています。

2つ目は、自分が働くコミュニティを具体的に体感させられるかどうかですね。どういう人たちが働いていて、どういう環境なのかを知ってもらう。

サービス業は店舗があるので働いてる様子が見えてイメージがつきやすいです。ただ、どこの業界だとしても、そういった詳細をできるだけ細かく伝えられるかが重要だと思います。

アルバイトとして採用されることがゴールではなく、入社後の自分はどうなっているのか、具体的なイメージ・体験ができることを求めています。


ー店舗自体が採用媒体にもなり得るということですね。

そうですね。一つひとつの店舗がどんなコンセプトでどんな想いを持ってどういうチームでやっているのか。そういったことを明確にして伝えられるようにしていくべきだと思いますね。

カフェ・カンパニーでは、「カフェのある風景を創る」という理念があり、「CAFE」は人と人とのコミュニティを創造する不可欠なインフラだと考えているため、なおさらそこのこだわりは強いですね。

また同じように、HR事業部でも「一人ひとりの人生の新しい風景を創る」というコンセプトを持っています。

なので、社員に対してもアルバイトの方に関しても、カフェ・カンパニーを通して人生の選択肢を広げてもらい、未来につながるきっかけをつくってもらいたいという想いがあります。

「社員とアルバイトはフラット」カフェ・カンパニーの組織づくり

ー実際にどのような組織運営をされているのでしょうか?

たとえば、当社はマニュアルはないんですよね。

私たちは「お客様に寄り添った地域のコミュニティになる」という思想からはじまっているので、考えるべきは「お客様が笑顔になるために、どのような関係性を創るか」です。

「なんかまたこの人に会いたくなる」「この店にまた来たくなる」をゴールとして考えると、きちんとマニュアル通りにテキパキと仕事をすることが、ベストなやり方ではないんですよね。

また、お客様とのコミュニケーションは、場所、時間、気温、天気など数え切れない多様な状況によって、その瞬間瞬間で変わっていくので、「こうあるべき」というものがありません。

なので、店舗ごとにカルチャーや接客方法も全く違ってくるため、「これが正しい」というマニュアルをつくることはできないんですよね。


ーその地域に合わせた店舗づくりをされているのですね。ちなみに入社後の研修・育成に関して何か制度はあるのでしょうか?

もちろん入っていただいたアルバイトの方も含めて、最初に全体研修・店舗研修はあります。

さらに育成でいくと、これも当社は強いこだわりがあり「社員もアルバイトも基本的に役割も立場も変わらない」という思想があります。

ですので、会社のイベントはすべて、アルバイトの方も参加可能です。

たとえば「カフェ校」という、会社や自分の未来について経営陣やゲストと一緒に語るイベントが定期的にあるのですが、それにも参加することができます。

また、サービスやメニューを開発して提案できる「カフェコンテスト」があるのですが、こちらもアルバイトの方は参加できます。

今年は、全体の20%くらいの割合でアルバイトの方がメニューの開発提案をしてくれて、そこからそのままメニューになるものもありました。

このように、社員とアルバイトはフラットなんです。アルバイトの方々にとって、カフェ・カンパニーが将来の目的につながるきっかけになってくれると嬉しいですね。

「カフェ・カンパニーで体験してきたことが、すごく活きています」と多くのアルバイトの方に言われるような、そんなプラットフォームにしていきたいと考えています。

「店舗が魅力的かどうか」ここに尽きる

ーアルバイトさんにとってかなり魅力的な環境だと感じたのですが、リファラル採用の割合は多いのでしょうか?

そうですね。基本的にリファラル採用は多いですね。

「ここのアルバイトおもしろいよ」「こういうことも学べるよ」「アルバイトと社員の垣根がないよ」「アルバイトにここまで任せられるよ」などと感じてもらえる環境づくりが大事で、それができているからだと考えています。

そのためには会社全体での仕組みづくりも重要ですが、「一つひとつの店舗が魅力的かどうか」がすべてだと思います。それぞれの店長が、自分たちの想いを持って取り組めているか、ここに尽きますね。

店舗単位での魅力づくりは大事な要素ですよね。ただ、そういった魅力を伝えていくための手段がまだまだ少ないように思います。

従来の求人媒体だと画一的な情報しか載せられないですし、うまくやっている会社はWantedly活用やオウンドメディア運用をしていますが、そこまでのリテラシーがあって工数をかけられる会社は本当に一部です。

アルバイトを探している方は、たくさん応募をして最初に「採用です」と言われたところに決める割合が高いと思います。お金が欲しくて仕事を探している側面もあるので、早く働きたいじゃないですか。

そんな状況で、現場のリアルな魅力など「リッチな情報」をどう届けていくか。その方法のひとつとして、スポットアルバイトがあると思うんです。2~3時間でも良いから一度現場を体験してみようと。

ーたしかに実際に働くことが一番の「リッチな情報」になりますね。

実際に一緒に働いてみて五感で感じてもらって、「ここで働きたいな」と思ったら本格的に応募すれば良いと思っています。

スポットでも良いので、一度働くことでお互いの期待値がわかるじゃないですか。とある企業様がおっしゃっていたのが、スポットメイトは「デートに似ている」と。

スポットメイトで何度かマッチングして、嫌だったら応募してこないし採用しないし、それを何回か繰り返して、お互いが良ければ長期的なアルバイトとして迎え入れる、みたいなイメージですね。

また、LINEを交換しておいて、「今度ポジションが空いたときに声をかけるね」といったようなコミュニケーションが生まれるきっかけにもなります。

入り口はスポットで入って、そこからお互いに魅力を感じれば、本格的にマッチングして定着する人材が増えると考えています。

最初に力を入れて研修やオンボーディングを実施しても、「なんか違ったな」って離職されたら、それまでの労力がもったいじゃないですか。そういうことも減らしていけると思います。


ーちなみに、「はじめての店舗にいきなり行くのが怖い」「見知らぬ人をスポットで採用するのが怖い」という懸念の声はあるものですか?

まだそういった声はありますね。そこを払拭するために「まずは無料で1回やってみてください」と言っています。

1回試していただくと、「本当に応募が来てちゃんと働いてくれるんだ」と実感してもらえます。さらに1ヶ月で10人~15人から応募があって出会えるので、すごく感動してくれる企業様もいますね。

恐れずにまずはとりあえずやってみてほしい、ということが我々が伝えたいことです。

カフェ・カンパニーはどのようにスポットメイトを活用しているのか?

ーカフェ・カンパニーさんでは、どういったきっかけでスポットメイトを活用されたのですか?

私たちの実現したかった思想に寄り添って使えるサービスがスポットメイトだったんです。

我々のようなサービス業は、必ず店舗があってシフトが存在しています。このシフト管理に関してどの会社も非常に課題があるんですよ。

まず、アルバイト・社員のシフトを組みます。そうすると必ず空きが出ます。「じゃあこの空きをどう埋めるか」が、頭を悩ませるところです。

最初はもちろん、店舗内のアルバイトや社員間でうまく埋め合わせをします。それがもし難しかった場合は、他店舗の方々にヘルプを頼みます。このヘルプでもまだ埋まらなかった場合をどうするかが、課題なんですよね。


ーどのように埋めていくのでしょうか?

まず過去に働いたことがあるOB・OGにアプローチすることです。OB・OGはすでに経験値があるので、研修の必要もありません。

OB・OGのコミュニティをつくってアプローチできる仕組みをつくりたい、という思想がもともとあったのです。

それでも埋まらない際は、スポット的に新規のアルバイト採用をおこなっていきます。ここで欲しいのは「通年で出している求人に応募する人」ではなく、あくまでも「たまたま空いてしまった空きシフトを埋めてくれる人」です。

かつ、その人が似たような業種でのサービス経験を持っていたら、話は早いじゃないですか。

そういう発想でスポットメイトさんを見つけて、活用させていただくことにしました。


ーOB・OGにだけアプローチするといったような、クローズドのコミュニティをつくる機能もあるのですか?

はい。スポットメイトはオープンのコミュニティはもちろんありますが、クローズドのコミュニティもつくることができます

また、オープンのコミュニティの中でも、カフェ好き・ワイン好きといった自分の興味・関心コミュニティを選んで加入できるようになっています。

そういった、オープンのコミュニティの中で、マッチングも将来的に盛り上がってくれば良いですね。

クローズドのコミュニティだと実際にいろんな活用方法がありますね。カフェ・カンパニーさんだと会社単位、OB・OG単位のコミュニティですね。

それ以外だと商店街内でのコミュニティや、商業施設内のコミュニティなど、さまざまなテーマでつくることができます。

そうやって、近しいコミュニティ単位で人材不足を解決できたら一番良いなと思っています。(※コミュニティ機能は現在検証中のため、サービス提供開始は2019年夏を予定)


ーコミュニティをつくれる仕組みはすごくおもしろいですね。ちょっとした同窓会みたいな雰囲気にもなりますね。

あると思いますね。店舗に行ったら「○○さんの時代に働いていたの?」みたいな話になったり、共通の知り合いがいたり、そういうのは良いですよね。

セグメントごとにコミュニティを分けられるのは、お互いにとってものすごくメリットがありますね。

あとは、スポットメイトに登録されているユーザーのスキルや経験がWEB上でわかるのが良いですね。

何が得意でどんなアルバイト経験があるのか、他社で働いた際の評価も見ることができます。紙面上だと、ここまでわからないじゃないですか。

それがわかると、お互いにミスマッチが減りますし。そういうスキル・経験がはっきりとわかるのは助かりますね。

「店長ではない、コミュニティリーダーだ」新しい店舗づくり、店長のあり方とは?

ー最後に、飲食業の今後について、ヒトの観点からお考えの部分があれば教えてください。

アメリカでも中国でも無人店舗ができていますよね。このように、自動化、効率化が進んで「人がやる部分やらない部分」がはっきりしてくると思います。

では、「人は何をするのか」という話になりますが、ただサービスを提供するだけでなく、その先の会社・店舗が掲げるビジョンやサービスの伝道師になっていくべきだと考えています。

自店舗の魅力をどんどんお客様や外部に発信していく役割ですね。

今後はそういった部分が重要視されるのであれば、より慎重に採用すべきです。本当にお互いのフィーリングが合った人を仲間に迎え入れる仕組みが求められてくるのではないでしょうか。

そこにスポットメイトが貢献できると嬉しいですね。

我々は、各店長・スタッフに投げかけている問いがあって、「これから多くのマーケットでIT化が進みツールが変わってきます。その中でどういうお店にしたいですか?」と聞いています。

さらに店長に向けて、「店長の仕事って今とどう変わっていくと思いますか?」ということをかなり言ってるんですよ。

その店舗をどうしたいのか、そのあり方の方向性次第で、バイトだろうが社員だろうが働き方は変わっていくと思います。

これからは、店長になるというキャリアがすべてじゃないですし、店長の業務自体も違ってくると考えています。

特に飲食業においては、店長に求められる行動は、お客様とのコミュニティをつくるコミュニティリーダーであることと、店舗というチームにおけるチームリーダーである、この2つだと思うんですよ。


ー店長はコミュニティリーダーであるって良いですね。仕事への取り組み方も変わってきますね。

店舗という単位でだけ考えるのではなく、その店舗がどういうエリアのどういう町にあるのかを考え、その店舗とそこで働くことの存在価値は、その地域のコミュニティリーダーになることだと思います。

「業務内容」ではなく「存在」というものが大事になっていく感じですね。

ITでカバーできるところはIT化し、よりクリエイティブな仕事に注力していくことが求められ、働き方も変わっていくと思います。

そのためにスポットメイトさんのようなサービスと、未来を見据えて一緒に手を組んで「新しいあり方」をつくっていきたいですね。

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