入社直後に転職を想定?新社会人の転職サイト登録が11年で30倍になったワケ|doda副編集長 桜井 貴史 |HR NOTE

入社直後に転職を想定?新社会人の転職サイト登録が11年で30倍になったワケ|doda副編集長 桜井 貴史 |HR NOTE

入社直後に転職を想定?新社会人の転職サイト登録が11年で30倍になったワケ|doda副編集長 桜井 貴史

  • 採用
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※本記事は、doda副編集長の桜井貴史さんより寄稿いただいた記事を掲載しております。

「入社したらまずは3年働きなさい」、という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。しかし、転職が当たり前となりつつある今、もはや3年も待たずに転職するのは珍しいことではありません。

そんななか、転職サービス「doda」は、興味深い調査結果を公表しました。

2023年に新卒で入社した社会人のうち、入社直後の4月に転職サイト「doda」へ登録した人は、調査を開始した2011年と比較して約30倍※1に。調査開始以来、過去最多を記録しました。
※1:https://www.persol-career.co.jp/pressroom/news/research/2023/20230614_02/

新卒1年目の4月というと、会社や業務内容について右も左も分からない段階。「4月は研修がメインで、本格的な業務はまだ経験していない」という人も少なくないはずです。

離職防止に向けた働き方改革が進み、労働環境も改善されつつあるなか、一体なぜ新社会人は転職サイトに登録するのでしょうか。実際に若手社会人の声を聞きながら、彼らの「はたらく価値観」を紐解いていきます。

【執筆者】桜井 貴史|パーソルキャリア株式会社 doda副編集長

新卒で大手人材会社に入社し、一貫して学生のキャリア教育や就職・転職、幅広い企業の採用支援事業に携わる。2016年11月、パーソルキャリア株式会社に中途入社。株式会社ベネッセホールディングスとの合弁会社、株式会社ベネッセi-キャリアに出向、新卒オファーサービス「dodaキャンパス」の立ち上げをけん引し、初代dodaキャンパス編集長に。その後、パーソルキャリア株式会社 新卒事業部 エグゼクティブマネジャー、株式会社ベネッセi-キャリア 商品サービス本部 本部長として、キャリア講座やアセスメントをはじめとした、大学生向けサービスの責任者を務める。2023年4月、doda副編集長 兼 クライアントP&M本部 プロダクト統括部 エグゼクティブマネジャーに就任。年間約60万人以上の若者のキャリア支援に携わっており、Z世代の就職・転職動向やキャリア形成、企業の採用・育成手法に精通している。

実際に登録した人に聞いてみた「なぜ転職サイトに登録?」

まずは、実際に入社直後に転職サイトへ登録した経験を持つ若手層に、「なぜ転職サイトに登録したのか」「転職に対してどのような考えを持っているのか」聞いてみました。

事例1:自分の市場価値を確かめたい。さらに成長できる環境ではたらきたい

昨今は年功序列ではなく、自分の実力でキャリアアップする時代になりました。同時に日本では労働人口の減少や経済成長の停滞などが課題となっています。予測不能な社会状況のなか、自分自身のスキルを磨いてキャリアを形成する必要性を強く感じていました。

と話してくれたのは、EC・マーケティング支援を手がけるAnyMind Groupではたらく井上さん。

新卒では、社会で通用するスキルを培いたいと思い、ベンチャー企業に入社。しかしいざ入社してみると、ベンチャー企業ということもあり、全員が目の前のことだけを見てがむしゃらにはたらいている状況でした。教育体制や評価体制も十分ではなく、きちんとした評価できる上司がいなければ、定量的な目標設定もなかったため、自分の成長に向けたPDCAサイクルを回そうにも『自分の能力は客観的にどうなのか』『今の自分に足りないものはあるのか、それは何か』『当初と比較してどれほど成長できたのか』などが全く分からない状況にありました。

そんななか、あるとき他社からスカウトを受けました。そのスカウトは結果的にお断りしたものの、これまでの自分の頑張りが評価されたようで嬉しかったことは今でも覚えています。スカウトを機に、『自分の市場価値を確かめたい』『もっと視野を広げて自分が成長できる環境を探したい』という気持ちが高まり、転職サイトに登録しました。

現職では先輩や同僚から学ぶ機会が多く、まだまだ自分の実力が足りないことを実感しています。しかしこれまでとは異なり、客観的に自分の立ち位置を把握することができ、さらに目指すべきゴールから逆算したフィードバックをもらうことで、課題や課題解決に向けたネクストアクションを把握できるようになったことで、成長へのPDCAサイクルを回せるようになりました。自分の能力を高めるために、転職は良い選択だったと感じています。

事例2:家族と一緒に生活しながら、自分らしい「はたらく」を叶えたい

あらゆるWebシステム活用をアシストするDXプラットフォーム「テックタッチ」を開発するテックタッチではたらく吉野さんは、「新卒で転職サイトに登録した理由は、“自分らしいはたらき方”を叶えたいと思ったからです」と言います。

私は新卒で就職直後に結婚しました。しかし地方支店への配属となったため、もともと東京ではたらいていた妻とは離れ離れに。会社には内定の段階から事情を説明し、東京支店への配属をお願いしていました。その際には『福利厚生が整っているので安心して入社してほしい』という言葉もいただいたため、入社を決めたのですが…。

それでも、せっかく入社したのだから頑張ってみようと思い、仕事に励みました。仕事自体は非常に楽しく、やりがいを感じていたのですが、やはり頭の片隅にはいつも家族の姿がありましたね。

『家族と生活したい!』という想いは日に日に増していく一方でした。そして、私にとっての自分らしいはたらき方とは、“家族と一緒に生活をしながらはたらくこと”であると気が付いたのです。改めて自分らしいはたらき方ができる仕事を探そうと転職サイトに登録し、転職しました。

入社直後の転職サイト登録を後押しする3つの要因とは

お二人の転職サイトへの登録理由からも分かるように、就職活動や入社間もない時期から転職を意識する、いわゆる“転職ネイティブ世代”は、上の世代とは「転職」に対する考え方がまるで異なるようです。

では、何が転職サイトへの登録を後押ししているのでしょうか。考えられる要因として、以下の3点が挙げられます。

  1. 転職がより身近に
  2. 社会全体の転職のイメージの変化
  3. 若い世代の「はたらく価値観」の変化

1.転職がより身近に

転職活動の手段は時代とともに利便性が高まり、より気軽におこなえるようなっています。

昔の転職活動といえば、新聞や電話帳くらい分厚い求人誌を買って企業に応募するという手段がメインでした。

次第に、有料求人誌からフリーペーパーに移行。1990年代になるとインターネットが登場し、求人媒体は紙からWebへと移り変わりました。

Web上での転職活動が主流になったことで求人サイトが急増し、転職希望者はより多くの情報を得られるように。

そして、さらに転職活動が身近なものとなるきっかけとなったのがスマホの登場です。パソコンを開かずとも、いつでもどこでも手元で情報を集めることができるようになりました。

いまや手書きの履歴書や職務経歴書を郵送する必要すらなく、スマホ1台で情報収集から応募まで気軽におこなうことができるのです。転職活動が簡単で身近なものになったことで、転職に対するハードルがぐっと下がったと考えられます。

2.社会全体の転職のイメージの変化

以前は転職者に対し、「仕事が長続きしない人」「我慢ができない人」などネガティブなイメージが持たれることが多かったのが実情です。しかし転職に対するイメージは、転職者側、企業側ともに変化しています。

まずは転職者側からみていきましょう。これまで転職者の転職理由としては、人間関係や就業環境が要因として挙げられることが多くありました。

一方、「doda」が公表している「転職理由ランキング2022※2」によると、2021年7月~2022年6月に転職したビジネスパーソンの転職理由は、1位が「給与が低い・昇給が見込めない」で全体の32.8%。2位が「昇進・キャリアアップが望めない」で全体の25.2%を占めています。以前よりも、個人の将来を見据えた理由での転職にシフトしているといえます。
※2:https://doda.jp/guide/reason/

昇給やスキルアップが転職理由のトップを占めるようになった背景には、新型コロナウイルスが影響しているでしょう。

コロナ禍では、倒産や縮小を余儀なくされた会社も少なくありません。そのなかで自分のキャリアに不安を抱える人は増加しました。

リモートワークの普及で転職先の選択肢が広まったこともあり、若者を中心に、キャリアアップを目的とする転職が増加傾向にあります。

また、20代の転職へのイメージもポジティブなものに変化しています。パーソル総研の「働く10,000人の就業・成長定点調査2022※3」によると、20代前半は、7割以上の人が転職を「新しい人脈が広がる」「人材としての市場価値が高まる」「積極的にしていくほうがよい」ものと回答しています。

他世代よりも転職はポジティブなものであり、自らの理想の「はたらく」を叶えるための1つの手段として捉えていると考えられます。
※3:株式会社パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査2022」

一方、企業側も転職者に対して前向きな姿勢を見せています。

「doda」がまとめた「doda転職求人倍率」によると、2023年7月は2.29倍※3。求人数は前年同月比で129.3%※3となりました。

業種問わず、どの企業においても労働力不足が深刻化しています。少子化に加えてフリーランス人口が増加するなど、人材確保は難化する一方。

そんななか、即戦力となり得る中途社員は企業にとって大きな存在です。企業は中途採用に対してこれまで以上に注力しており、オファー金額も上昇傾向にあります。

中途採用者に対する入社前後のフォローも手厚く、優秀な転職者を歓迎する流れとなっています。

※3:https://www.persol-career.co.jp/pressroom/news/research/2023/20230824_01/

3.若い世代の「はたらく価値観」の変化

ここ10年ほどで、「はたらく価値観」が大きく揺さぶられる出来事が数々起こりました。

働き方改革の推進やビジネスのDX(デジタル・トランスフォーメーション)化、そして新型コロナウイルスによる経済の混乱。

さらに2018年~2019年ごろから経済界のトップが唱えていたように、「終身雇用」はもはや崩壊しつつあり、1つの会社に自分の人生を委ねることに対する危機感が高まっています。

2020年には政府が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を改定して副業・兼業によるスキルアップを促進するなど、はたらく個人には自らの市場価値を高めることが求められています。

以上のように「はたらく価値観」がこれまでと180度変化していく様子を、先を見通せない時代にファーストジョブに就く転職ネイティブ世代は目の当たりにしてきました。そのため、彼らは変動する社会に対応できるスキルの習得やキャリアアップに対する意識を非常に高く持っているのです。

また、近年は「個」を重視する社会の実現も叫ばれるようになりました。企業においても「ダイバーシティ経営」や「人的資本経営」などを取り入れ、多様な人材の価値を引き出すことで組織成長を図る傾向が強くなっています。

このような社会のなかで育った転職ネイティブ世代は「多様性」や「自分らしさ」を大事にしている傾向が強く、「自分らしいはたらき方をしたい」という価値観を強く抱いています。

自分に本当にふさわしい企業や仕事に巡り会えるよう、早い段階から行動する傾向にあるといえます。

自分らしい「はたらく」を求め、これからも転職サイトの登録は増える

社会や価値観の変化を受け、転職ネイティブ世代は新卒入社を“ゴール”とは捉えなくなっています。「自分らしく」はたらきたいという気持ちを強く抱き、中長期的な視点で自らのキャリアを考えているのです。

そして自分らしくはたらくためには、成長できる環境でスキルを磨いて経験を積み重ねていくことが不可欠。そのため入社当初から、あらゆる可能性に挑戦することに対して意欲的です。

今すぐ転職するわけではなくとも、早い段階から情報収集をしたり、キャリアアドバイザーに相談しながら自らのキャリアを考えたりするために、転職サイトへの登録が加速しているといえるでしょう。

転職ネイティブ世代に限らず、「転職」に対するイメージはポジティブなものへと変化しています。「自分らしいはたらき方」の実現に向け、新社会人の転職サイトの登録は今後もますます増えていくことが予想されます。

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