未来を先取る組織づくり-ログラス開発チームが5名→30名と躍進できた秘訣 |HR NOTE

未来を先取る組織づくり-ログラス開発チームが5名→30名と躍進できた秘訣 |HR NOTE

未来を先取る組織づくり-ログラス開発チームが5名→30名と躍進できた秘訣

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ログラスの開発チームは2019年の創業から約5年で5名から30名規模へと拡大。これまでの組織マネジメントにおいて、大きな課題が出ることもなく、順調に成長を続けているとのこと。

その背景にあるのは、立ち上げから今に至るまでに「組織が当たる壁」について前倒しで打ち手を設けて対応してきたことです。

それでは、ログラスはどのような対応をしてきたのでしょうか。実際の組織運営の方法、組織づくりでこだわったポイント、意思決定プロセス、今後の展望などを深堀りして伺っていきます。

【人物紹介】飯田 意己|株式会社ログラス シニアエンジニアリングマネージャー

2015年に株式会社クラウドワークスに入社。エンジニア、スクラムマスター、プロダクトオーナーを経て、2019年から執行役員として開発部門の統括をおこなう。2020年に株式会社ログラスにソフトウェアエンジニアとして入社。プロダクト開発に携わったのち、1人目のエンジニアリングマネージャーとして組織設計、マネジメント体制の構築、エンジニア採用、採用広報・ブランディングの推進をおこなう。

「展示会への参加も前のめり」なログラスの開発組織とは

−本日はよろしくお願いします。まずはログラスの開発チームについてお伺いできればと思います。


飯田さん
現在の開発チームはエンジニアが30名ほどいるのですが、これまでは中途採用が中心で、開発経験が豊富なメンバーが多く在籍しています。直近1年では若手メンバーの採用も増やしている状況です。

チームの役割としては、「機能を開発・改善していくチーム」と「基盤の開発とイネーブルメントをしていくチーム」の2つに大きく分かれています。

飯田さん組織の特徴としては、ログラスの場合は企業カルチャーを重視しているのですが、『良い景気を作ろう。』というミッションに共感したうえで入社しているメンバーばかりだという点です。

当社が提供する『Loglass』は「経営管理」という一般的になじみのないドメインのプロダクトになりますが、そこに関心を持ってジョインしてくれているため、ビジネスへの理解や会社の仕組みについて解像度が高いメンバーが多くいます。

例えば、「展示会」ってありますよね。


−はい。各社がブースを出展して自分たちの商品やサービスを紹介するイベントですよね。


飯田さん
展示会は、セールスやマーケのメンバーが参加して、顧客にアプローチしていくのが一般的なやり方だと思うのですが、ログラスの場合はエンジニアを含むプロダクトサイドのメンバーも任意で展示会に参加しています。

そこでセールス・マーケのメンバーと一緒に集客をしたり、お客様にデモの案内をしたり、その場で名刺交換をして次のアポイントにつなげるところまで全体のKPIを意識して取り組んでいます。

参加したメンバーは「いろんな発見があってよかった」と、満足げに帰ってくるのですが、これらを特に抵抗なく受け入れられる開発チームは、これまで見たことがありませんでした。

−それはすごいですね。エンジニアさんが集客をするってあまり聞いたことがありません。


飯田さん
「マーケが創出した顧客リードがセールスの商談につながって、最終的に売上や継続利用になる」といったビジネス全体の解像度が高いからこそ、展示会のような取り組みにも積極的になれるのだと感じています。

1件の受注の裏側に多くの人がコミットしていることを体感できるのが展示会です。

「自分たちはよいプロダクトをつくるのみ」ではなく、全体最適で、組織横断でどうするのがよいかを考えられるメンバーが多いことがプロダクトの強みにもつながっていると考えています。


−ちなみに、ビジネスサイドとの連携において、展示会以外では何かしらの取り組みはされているのでしょうか?


飯田さん
まず、カスタマーサクセスとのやりとりについては、「開発レビュー」という、開発されたプロダクトがお客様の課題を解決できる使い勝手の良いものになっているかを確認する場があります。

そこでフィードバックをもらったり、新しい情報があれば意見交換をしたり、日常的に開発プロセスの中でやりとりするフローができています。

セールスとのやりとりに関しては、定例でMTGをすることはないのですが、お客様に許可をとって録画した日々の商談やMTGの動画が社内で共有されている状態なので、開発チームがその録画を見て、お客様の課題をキャッチアップして解像度を上げるようにしています。

チームでカレンダーを押さえてMTGの中で見たり、ランチを食べながら確認したりしています。

また、最近ではセールスが追っている売上や商談数の情報もログラスの社内利用によって可視化されています。定性・定量の両側面から情報を得られる環境になっています。

ログラスがこれまでに前倒しで実施してきた打ち手

−ここからは、これまで組織が急拡大する中で順調に成長することができた背景の「前倒し施策」について伺っていければと思いますが、具体的にどのようなことをされてきたのでしょうか?


飯田さん
これは開発組織だけではない会社全体のお話しですが、1つはミッションやバリューの策定ですね。

「前倒しも何も、どの会社も最初につくるものではないか?」と感じる方もいると思うのですが、ログラスでは策定におけるコストのかけ方やつくり込み方にかなりこだわっていました。

例えば、ミッションやバリュー策定のタイミングでは10名に満たないくらいの会社規模でしたが、そのタイミングであれば、代表や経営陣がトップダウンで決定していくやり方が多いと思います。

しかし、そうではなく、当時のメンバーのエッセンスを集約して、コピーライターの力を借りて、そのエッセンスから言葉を抽出していくことにかなり力をかけて、つくりあげていきました。


−立ち上げの段階でコピーライターまで入れてミッション・バリューをつくりこんだ話はあまり聞いたことがありません。


飯田さん
なぜそこまでやったかというと、特にバリューがその後の評価制度に大きく関わってくるためです。

組織が大きくなるにつれて、いかにミッション・バリューを形骸化させずに浸透させていくかが重要なポイントだと思っています。

そのため、次におこなったこととしては、バリューを組み込んだ評価制度をつくっていったり、バリューを体現している人をアワードで表彰していくコンテンツづくりだったり、バリューと評価をひもづけて浸透させていく施策づくりです。

これも「まだそこまでやらなくてもよいのではないか」というタイミングで、早期からコストと時間をかけてつくりあげていきました。

飯田さんまた、組織が大きくなっていく過程で、ボードメンバーが全員を見ることが難しくなるので、中間にマネージャーを置く必要性が出てきます。

マネージャーを経営とメンバーの結節点としていかに機能させるかが、組織全体のスケールにつながる。そういう考えのもと打ち手をつくっていきました。

何をしたかというと、当時は全体でもまだ50名以下だったと思いますが、早い段階から等級制度の検討を開始してリリースまでもっていきました。これは、マネージャーの育成もそうですし、それぞれのポジションの役割を明確化させることが狙いです。

会社が立ち上がってまだ間もないタイミングでしたが、この段階で評価制度、報酬制度、等級制度をきちんとそろえる意思決定をし、前倒しで対応してきました。

また、このタイミングでやってよかったことは、マネージャーとしての責務や、リーダーとしての責任をきちんと言語化したことです。やるべきことはもちろん、やらないことも全部言語化しました。

マネージャーといっても、各社で役割や定義は異なります。なので、「ログラスの中ではこういう役割です」という定義をつくり、それを共通認識化する作業は、早期にやってよかったポイントだったと思います。

あと、マネージャーを増やすうえで意識していたのが、「マネージャーが楽しそうに仕事をする」ということです。


−たしかに、マネージャーが大変そうにしているのを見て「昇進したくない」って思われてしまうケースはあるあるですね。


飯田さん
「エンジニアとして常に手を動かして開発してる方が楽しいのに、マネージャーになると組織のややこしい課題が振ってきて、手を動かす時間がなくなって楽しくなさそう」みたいなイメージになってしまうと、アサインがしにくくなって、自分の首が絞まっていく状況になりかねません。

組織の中におけるマネージャーのブランディングに気を配って、「やる価値がある仕事だからチャレンジしたい」という空気感をつくれたこともよかった点ですね。

もちろんですが、マネジメントではないスペシャリストのキャリアも存在します。消去法ではなく、どちらも魅力的なキャリアの選択肢となる組織作りをしたいと考えていました。

前倒し施策は非常にコスパがよい

飯田さんこのように前倒しで仕組みを整えていったことは、結果として後々のことを考えたときに、非常にコスパがよかったなと感じています。


−コスパがよいとはどういうことでしょうか?


飯田さん
まず前提として、バリュー浸透も、人事評価制度も、チームビルディングの取り組みも、組織が大きくなったタイミングで問題が起きてから仕組みをつくって対応することは、すごく難しいことだと考えています。

というのも、30名〜50名ぐらいの規模のときに仕組みをつくって全社に落とし込んでいくことと、100名〜150名規模になってから落とし込んでいくのとでは、かかるコストが大きく変わってきます。

前倒しであるからこそ、まだ組織規模が大きくない段階で、最小限の労力で組織に浸透させることができます。

例えば、離職率やエンゲージメントの部分で課題があったとします。でもその課題が発生したから「カルチャー浸透を強めます」「チームビルディングをやります」と言っても、現場は「ああなんか対症療法的な感じでやりはじめたんだね」みたいな、若干冷めた目で見られると思います。

でも、事前に仕組みをつくれていたら、もうそれが当たり前になっているので、何かしらの問題が発生したとしても、既存の仕組みをチューニングすれば済むかもしれませんし、「今さら感」もないので、納得感があって浸透もしやすいはずです。

経営陣には長期の課題に集中してもらう

−ちなみに、前倒しで打ち手を実施するようになった背景には、なにかしらの原体験があるのでしょうか?


飯田さん
これは、過去にさまざまな会社や組織を経験する中での失敗や他社のCTOやマネージャーと話す中で得られた教訓をもとに、同じことを繰り返さないために早めに手を打ってきた結果だと思っています。


−過去の失敗事例でいくと、どのようなものがあたるのでしょうか?


飯田さん
過去うまく乗り越えることができず、苦しんだものとしては、「評価制度の形骸化」だと感じています。

あくまで、私自身に形骸化させないマネージャーとしての力量が足りなかったというエピソードですが、これが進行すると組織崩壊にもつながります。

例えば、

  • しっかり成果を出したのに給与アップにつながらない
  • 時間をかけて目標設定したのに、評価時のフィードバックが非常に薄い

そうすると「頑張っても無駄だ」「目標設定する意味がない」と不満がたまっていきますし、目標・成果・報酬がつながらないと、高い目標を追う健全な組織にはなっていきません。

スタートアップで急成長していくために組織やメンバーにパフォームしてもらう仕組みをどうつくるか。そのためには適切な制度運用が必要になってきます。

現場のメンバーの働きに対して、どう会社として報いていくか。そのスタンスや戦略をメッセージとして明確に示すことは非常に大事なことです。

やったアクションに対して報われない状況が生まれてしまうと、それがモチベーションの低下や離職の要因につながってしまいます。


−一方で、前倒しで動くというものの、目の前の業務が優先されて後回しになりがちだと思うのですが、ログラスさんではそのあたり意識していることはありますか?


飯田さん
全社のルールや影響範囲の大きいプロジェクトについては、「なぜそれをやるべきなのか」という温度感を経営陣も含めて認識を合わせることが大事だと思います。

そこがずれていると、自分1人で進めていても続かないですし、「なんでそれを今やる必要があるんですか」と言われてしまいます。

経営陣で、「大事なことだ」と認識がそろっていれば、「あの件、どうなりました?」といった感じで自然にトラッキングされていくので、その目線合わせは前提として重要なことです。

今は組織が大きくなり、経営会議のような場でしっかりイシューを管理していく体制になりましたが、基本的に議事録は社内にオープンになっているため、今何がイシューとされているのかはメンバーも知ることができます。


−なるほど、その中には中長期目線で対処すべき項目も含まれているのですね。


飯田さん
はい。さらには、権限移譲がうまくワークしており、経営陣はなるべく目先の業務を持たないようにしています

例えば、「目の前の売上を上げなければいけない」「◯◯の機能を開発しなければいけない」といった話を経営陣がずっと持ち続けることは、スケールの観点でよくないという考えがあります。

適切にマネージャーを増やし、マネージャーにその責任を渡していく。それにより、経営陣はより抽象度の高い、中長期の経営課題をミッションとして追っていけるように意識しています。

経営陣が扱うべき課題にしっかりと向き合えるように、現場の執行は現場に任せていく。そのようなスタンスがあるからこそ、前倒しで取り組めているのかもしれません。

組織づくりの打ち手は、必要性が顕在化してからでは遅い

−最後に、組織づくりに日々向き合っている読者の方々に向けて、メッセージをお願いしてもよろしいでしょうか。


飯田さん
当社も日々試行錯誤を繰り返しているので偉そうなことは言えませんが、1つお話したいのは、制度の仕組みや文化を形成することは、すごく時間やコストがかかるものだということです。

「それが必要になった時に導入しよう」と動くとなると、効力を発揮するまでにさらに時間と労力がかかってしまいます。

それを見越して前もって制度や文化をつくれれば、コストをできる限り下げられるというメリットを当事者が理解することが大事ですし、ステークホルダーに対して理解してもらえるかどうかもポイントです。
そういった目線合わせを早い段階でできるとよいですね。


−ありがとうございます。今後、ログラスの開発チームをどうしていきたいか、将来の展望も伺ってもよろしいでしょうか?


飯田さん
クオリティを保った状態でいかに組織を大きくしていけるかがテーマとしてあります。
どんどん組織が大きくなっていく過程で、帰属意識が薄れていったり、生産性が下がっていったりするのは、よくある話かなと思います。

そこに対して、組織が大きくなっても今と変わらないクオリティを出せるチームであり続けることが、チャレンジの1つとしてやりたいと思っています。

あとは、遠い将来の話になるかもしれませんが、日本国内だけでなく、世界から見た時にも「ログラスは強い開発チームだ」と言われるくらいになりたいですね。そのくらいがチャレンジの大きさとしては面白いので、そこを目指してやっていきたいと思います。

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