【実践編②】「あなたが上司ならどうする?」1on1のやり方を部下のタイプ別にご紹介|NEWONE連載#3 |HR NOTE

【実践編②】「あなたが上司ならどうする?」1on1のやり方を部下のタイプ別にご紹介|NEWONE連載#3 |HR NOTE

【実践編②】「あなたが上司ならどうする?」1on1のやり方を部下のタイプ別にご紹介|NEWONE連載#3

  • 組織
  • 人材育成・研修

※本記事は、株式会社NEWONEの桐山恭子さんより寄稿いただいた記事を掲載しております。

急速に広がるテレワーク・リモートワークにより、働き方自体が大きく変わりつつあります。

これまで以上にメンバー同士の対話の機会が減る中で、どのようにすれば効果的に「1on1」を機能させることができるのか。

今回も、具体的な1on1の実践方法について、幅広く人材育成や研修サービスを提供する株式会社NEWONEのココラボ責任者である桐山さんに寄稿いただきました。

メンバーのタイプ別対応実践編第2弾となる本記事では、「有能感の欲求」が高いメンバーの対応ポイントについてご紹介します。

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「人的資本経営」「ウェルビーイング」「DEI」といったトレンドワードが、HR領域だけでなく社会全体に拡がり始めた昨今。自社組織に漠然と"停滞感"を感じ、うちは取り残されていないだろうか?」「何かやらないといけないのでは・・・といった不安や悩みを抱える人事・経営者の皆様も多いのではないでしょうか。

本カンファレンスでは、HR領域の有識者の皆様に、様々な組織課題を解決するためのアプローチ方法について解説いただきます。強い組織を育む企業が実践している事例には、組織強化に必要な考え方や人事が果たすべき役割について学べるポイントが多くあります。ぜひ有識者の皆様と一緒に、組織を強化する「共通原理」について考えてみていただければと思います。

「有能感の欲求」が高いメンバーへの対応方法

【執筆者】桐山 恭子 | 株式会社NEWONE ココラボ責任者

大学卒業後、採用コンサルタントとして多種多様な企業の新卒採用企画及び新人研修をプロデュース。採用セミナー講師、キャリアカウンセリングなどの経験を経て、2006年より人材開発コンサルタントとして主に企業の人材育成・人材開発の研修プログラム開発責任者として従事する。新人研修から管理職研修まで幅広い階層にてファシリテーターとして活躍する他、アセスメント研修での幹部候補・役員候補のアセッサーや、360度研修などのグループコーチ、個別面談におけるコーチングなども多数実施。3人の子供の育休からの復帰経験あり。今までのノウハウをHRTech領域にて活かすべく2020年よりココラボ責任者に就任。米国CCE.Inc.認定キャリアカウンセラー。

前回に続き、実際に1on1を実施するイメージを湧かすために、メンバーを9つのタイプに分類して、それぞれ「優先順位」「期待値」は何かを考えていきたいと思います。

前回もご紹介しましたが、社会心理学者のエドワード・デシによれば、人間には自律性の欲求」「有能感の欲求」「関係性の欲求という3つの基本的欲求があり、これらが満たされることで、やる気を高め、主体性を生み出すと言われています。

この3つの欲求を更に細分化し、それぞれタイプ別に分けたのが、上記の9つの意向です。

今回は、この中の「有能感の欲求」が高いメンバーに対する1on1での具体的な対応ポイントについて考えていきたいと思います。

「とにかく成長したい」Dさんの場合

ケース④

入社して半年のDさんは、成長意欲が高く、難しい仕事に対しても怖気づかずに積極的に挑戦しようとする姿勢があります。

意欲的で行動力もあるので、研修期間中に同期の中で最初に成果を出していたのは、いつもDさんでした。少々負けず嫌いで、年次の近い先輩に対しても「自分のほうができる」といった意識が強く、最速でリーダークラスを目指そうと努力しています。

一方で、思考が短期的なため自分にとって成長につながらない仕事を嫌い、納得しないと動きません。「何のためにやるのか?」という質問が口癖です。

そんなDさんに対して「やりづらい」と不満を持つメンバー・アシスタントさんの話もよく聞きます。

そんなある日、アシスタントリーダーから、「Dさんが日頃から業務上のルールを守ってくれず、仕事に支障をきたしている。アシスタントの仕事を軽んじているのではないか。Dさんに仕事の改善をしてもらいたい」と、Dさんに対する抗議を受けました。

確かに、以前からアシスタントの業務を軽んじている部分があることが少し気になっていたあなた。

この機会にDさんと1on1を実施することにしましたが、Dさんにどのような言葉をかけるのが良いでしょうか。

Dさんの特徴

9つのタイプの中で、Dさんは「成長につながる仕事」の意向が最も強く、「自分の成長につながる仕事かどうか」を特に重視しています。

成長意欲・挑戦意欲が高く、難しくても学びの機会が多いことを望み、成長を予感したいという気持ちが強い傾向にあります。

一方で、自分の成長に紐づけられないと、モチベーションが下がる可能性があり、また、やや短期思考に陥る可能性もあります。

1on1などで関わる際のポイント

Step1:良い面をフィードバックしましょう

成長意欲があるタイプには、日々の事実行動を思い出し、変化しているシーンを捉えるようにしましょう。

「以前と比べて、〇〇な点が良くなったね」というようなポジティブなフィードバックを伝えてあげると良いかもしれません。

Step2:現状に関してヒアリングしましょう

今の仕事に対する率直な満足感を聞いてみましょう。

その上で、今が満足感の高低に関わらず、今後の成長を通じて、

  • どのような自分でありたいか
  • どのようなことを成し遂げたいと思っているのか

といった「ありたい姿」を両者で明らかにするようにしましょう。

この「ありたい姿」が両者で合意できると、この後のさまざまななフィードバックをおこなう中で関連付けて説明しやすくなります。

Step3:より良い環境が生まれるようにフィードバックしましょう

1つ1つの仕事のことだけでなく、先の「ありたい姿」に意識が向くようなフィードバックをすることが大事です。

また、「ありたい姿」に対するギャップ(改善点)をしっかりと伝えてあげることはプラスになります。ただ、その際は、「ありたい姿」に対して、心から期待を込める形で伝えるようにしましょう。

今遂行している仕事に意味づけができていない場合は、この仕事から得られる能力や、任せている意図などを伝えながら、仕事を通じて少しでも成長できるイメージをわかせましょう。

「皆に自分の成長を後押ししてほしい」Eさんの場合

ケース⑤

入社5年目のEさんは、4月に部署異動であなたのチームに配属されました。

Eさんについて前の上司に話を聞いたところ、真面目で成長意欲が高く、言われたことに対しては何でも実直に行動し、成果を出すことのできるとても優秀な人材だということです。

一方で、やや依存的で、自分からというよりは、周りの後押しがあって動く傾向があり、次のステップとして「主体性を身に付けていかないと、やや厳しいかもしれない」ということでした。

確かに異動してきてからその優秀さは理解していたものの、何となく物足りないと感じていたあなた。

優秀な作業者からの脱却をはかり、リーダーとして育てていきたいと思い、Eさんと1on1を実施することにしましたが、どのような1on1をおこなえば良いでしょうか。

Eさんの特徴

9つのタイプの中で、Eさんは「成長を後押しする環境」が最も強く、「自分が成長していくことを後押しする環境かどうか」を特に重視しています。

挑戦や視野が広がる機会、また後押しやフィードバックを求めるとともに、真面目で、成長意欲が高い傾向があります。

一方で、“自分で”よりは”周りが”という意意識が強く、やや環境に依存する傾向があります。

また、成長すること自体が目的となり、自身の目指す姿が曖昧になる可能性もあります。

1on1などで関わる際のポイント

Step1:良い面をフィードバックしましょう

成長意欲のあるタイプには、日々の事実行動をから「以前と比べて、〇〇な点が良くなったね」というようなポジティブなフィードバックを伝えるようにしましょう。

その上で、「さらに、◇◇を意識するともっと良くなるよ」と、更なる成長のためのフィードバックをおこなうと良いでしょう。

Step2:現状に関してヒアリングしましょう

今の仕事や自身の成長度合いについて率直な満足感を聞いてみましょう。

その上で、今が高くても、低くても、成長を通じて、

  • どのような自分でありたいか
  • どのようなことを成し遂げたいと思っているのか

というようなありたい姿を両者で明らかにしましょう。

「ありたい姿」が両者で合意できると、その後、様々なフィードバックを行うときに、関連づけやすくなります。

Step3:より良い環境が生まれるようにフィードバックしましょう

自らの「ありたい姿」に対して、自身や周囲の方と関わり方のスタンスを合意できると良いでしょう。

たとえば、「〇〇分野を伸ばしたいので、厳しくてもフィードバックが欲しい」といったように、具体的な形で落とし込めると良いかもしれません。

また、周囲の方に関係性について周知しておくと良いでしょう。

周囲との関係性を重視するので、定期的に期待を込めて「ありたい姿」を伝え、フィードバックをおこなうことが大事です。

「強みを発揮しもっと頑張りたい」Fさんの場合

ケース⑥

先日、1年間の育児休暇を終えて復帰したばかりの入社7年目のFさん。初めての育児と仕事の両立に不安を感じていたため、上司のあなたは、Fさんならある程度仕事をセーブしながらでもできる部内の業務改善の仕事を渡すことにしました。

産休前のFさんはバリバリ仕事をこなし、誰からも頼られる存在であり、部内への推進力も責任感も申し分なく、社内外から高い信頼が寄せられていました。そのため、徐々に両立に慣れた後、もともと強みでもある推進力を活かして、以前のようにバリバリ働いてもらおうと考えています。

しかし、復帰して間もなく、Fさんが以前のような推進力を発揮することもなく、モチベーションも下がっているのを感じたあなた。

それとなく周囲のメンバーにFさんの様子を聞くと、業務改善の仕事に対して「自分じゃなくても誰でもできる仕事。もう自分は必要とされていないのかな」と落ち込んでいるという話を聞きました。

フォローする必要があると感じたあなたはFさんと1on1を実施することにしましたが、どのような話をすれば良いでしょうか。

Fさんの特徴

9つのタイプの中で、Fさんは「能力発揮の実感」の意向が最も強く、「自分らしさや強みを発揮することができるかどうか」を特に重視しています。

自分ならではの強みを活かして、十二分の力を発揮したいという気持ちが強いのに加え、仕事をすること自体に前向きで、貢献に対する積極性が高い傾向にあります。

一方で、「誰でも良いのでは」と感じてしまうような仕事だと意欲が下がる可能性があったり、多少力を出せていたとしても「まだまだ」と現状を厳しく見たりする可能性があります。

1on1などで関わる際のポイント

Step1:良い面をフィードバックしましょう

前向きさや貢献に対して積極性があるタイプのメンバーには、日々の事実行動を思い出し、本人の強みが活かされているシーンを捉えることが大事です。

「〇〇の場面、△△さんの◇◇の強みのおかげで、本当に助かったよ」というようなポジティブなフィードバックを伝えましょう。

Step2:現状に関してヒアリングしましょう

今の仕事に対する率直な満足感を聞いてみましょう。

その上で、どのような時に満足感が高まり、どのような時に低くなるのかを聞くことで、どのような力を発揮している時に満足感が高いのか、両者で明らかにしましょう。

会話の中で、「確かに◎◎な部分は強みだよね」「☆☆なところを大事にしているよね」と適宜フィードバックしていくと、より前向きになっていくでしょう。

Step3:より良い環境が生まれるようにフィードバックしましょう

現状の仕事に対して、本人の強みを活かして、このように貢献してほしいと期待を伝えましょう。

また、可能な場合は、少し挑戦できる役割を付与し、さらに力を引き出せる環境を作ってあげましょう。

一方で、不安を感じることはあるので「いつでもサポートするから」と言った後押しが大事です。

現状の仕事に対して、あまり変更ができない場合は、「強みを活かして、次は◎◎な仕事をお願いしていきたいと思う」というような未来に対する発言をすることで、動機づけをおこなうようにしましょう。

最後に

今回は「成長につながる仕事」「成長を後押しする環境」「能力発揮の実感」を重視するタイプに対する1on1の実践方法についてご紹介しました。

タイプによって、重視するポイントや調整するポイントが異なり、それぞれ見極めて対応する必要があります。

「メンバーが働く上で何を重視しているのか」といった点は、なかなか上司としても聞く機会の生まれない問いであるかと思います。関係性によっては、面と向かって聞くこと自体が憚られる場合もあるのではないでしょうか。

その難しさを乗り越えるために、NEWONEでは、管理職の7つ道具(ココラボ)として、1on1の支援ツール「カルテ(https://cocolabo.club/karte)」を用意しております。

カルテは、全40問を回答すると、仕事やチームへの意向として9つのカテゴリーに関する“今・現在”の優先順位が出るサービスになります。

メンバーの診断結果を踏まえて1on1を実践するだけで、1on1がとてもやりやすくなります。無料のツールになるので、ぜひご活用ください。

次回の記事では、違う3つのタイプの1on1対応方法についてまとめていきたいと思います。

【豪華ゲスト多数登壇!】変化に負けない「強い組織」を育むためにHRが果たすべき役割を考える大型カンファレンス『HR NOTE CONFERENCE 2024』

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本カンファレンスでは、HR領域の有識者の皆様に、様々な組織課題を解決するためのアプローチ方法について解説いただきます。強い組織を育む企業が実践している事例には、組織強化に必要な考え方や人事が果たすべき役割について学べるポイントが多くあります。ぜひ有識者の皆様と一緒に、組織を強化する「共通原理」について考えてみていただければと思います。

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