従業員が残業をおこなった場合、会社は従業員に対して、残業時間に応じた残業代を支払う必要があります。
適切に残業代を支払うためには、それぞれの従業員がどれくらい残業をしているか正確に把握しなければなりません。
本記事では、従業員の労働時間と残業時間を管理する方法、残業管理をする際の課題などについて説明すると同時に、残業管理の具体例もいくつか紹介します。
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残業時間の削減するにも、残業時間を管理するにも、まず残業時間を可視化することが大切です。 そもそも残業時間が各従業員でどれくらいあるのかが分からなければ、削減しなければならない残業時間数や、対象の従業員が誰かが分からないためです。
現在、残業時間を正確に把握できていないなら、勤怠管理システムを導入して残業時間を可視化することをおすすめします。 具体的な残業時間数が把握できるようになったことで、残業の多い従業員とそうでない従業員を比較して長時間労働の原因をつきとめ、残業時間を削減した事例もあります。
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目次
1. 残業管理に関するよくある課題
残業時間の管理をする際の課題や問題点として、主に以下のようなことが挙げられます。
- タイムカード・出勤簿の不正打刻や記入漏れがある
- システムの使い方が周知されていない
- 従業員の生活残業が多い
- 定時で帰りにくい空気がある
- そもそもの業務量が適切ではない
- リモートワークなどで労働時間を適切に把握できていない
それぞれの課題について、説明します。
1-1. タイムカード・出勤簿の不正打刻や記入漏れがある
タイムカードや出勤簿で残業時間の管理をしている場合、不正打刻や記入漏れなどがあると、当然ながら従業員の業務時間を適切に管理することはできません。また、正しい労働時間を把握するために、従業員本人や上司に確認する手間も発生してしまいます。
遅刻しそうなときに同僚に打刻してもらう代理打刻や、残業代を多くもらうための不正な書き換えなども発生しやすいので、必要に応じて便利なシステムを導入するのがおすすめです。
1-2. システムの使い方が周知されていない
勤怠管理システムを利用すれば不正打刻などを減らせますが、システムを導入したばかりのタイミングでは、システムの使い方がわからず、適切に管理できないということも起こり得ます。
適切に管理するためのツールが揃っていても、それらのツールを使いこなせていなければ、残業時間の管理をおこなうのは難しいでしょう。システム導入による効率化の効果をしっかりと得るためにも、ツールを導入した際は従業員に対して使用方法の指導や導入意図の共有をおこないましょう。
1-3. 従業員の生活残業が多い
従業員のなかには固定給に満足していないなどの理由で、残業代で稼ごうという意識を持っている人もいます。このような生活費を増やすことを目的とした残業を「生活残業」といいます。
生活残業の多くは、不要に業務を引き伸ばすことで発生しているため、無駄な残業をしている従業員がいないか、随時チェックしておくことが大切です。生活残業が増えすぎると、無駄な人件費が発生してしまうので注意しましょう。
1-4. 定時で帰りにくい空気がある
会社は従業員を早めに帰らせたい、従業員自身も早めに退社したいと思っているにも関わらず、会社全体として残業時間が減らないような場合もあります。
このような状況が発生するのは、部署や職場全体に定時で帰りにくいような空気があることが大きな理由です。
上司が「残業=熱意」という古い価値観をもっていたり、上司が残業をしている場合に部下が先に帰宅することを好ましく思わない人であったりすると、部下が評価や体裁を気にして不要に残業をするという現象が発生することもあります。
いわゆる付き合い残業のような無駄をなくすためには、トップダウンで抜本的な手を打つことが望ましいでしょう。
1-5. 業務量が適切ではない
従業員の残業時間をなかなか削減できないことも、よくある課題の一つです。従業員の残業時間が長い原因として、従業員のスキルに見合わない難易度の業務が割り振られていたり、工数に見合わない膨大な業務が与えられていたりすることが挙げられます。
従業員本人による問題だけでなく、上司のマネジメントに問題があるケースもあるため、業務の再配分やプロセスの効率化を検討することも大切です。
1-6. リモートワークなどで労働時間を適切に把握できていない
リモートワークを採用している場合や直行直帰が多い場合は、労働時間を管理するのが難しくなります。たとえば、紙のタイムカードなどは出社を前提とした勤怠管理方法であるため、リモートワークや直行直帰には対応できません。
従業員自身が打刻できないため、始業時刻と終業時刻に電話やメールで上司に報告するなど、別の方法で労働時間を記録する必要があります。ただ、従業員数が増えると連絡を受ける上司の負担が大きくなったり、連絡漏れが発生したりすることもあるでしょう。
2. 残業管理を徹底する必要性
残業管理を徹底することは、正確な残業代を支払ったり、従業員の心身の健康を維持したりするうえでとても重要です。ここでは、残業管理の必要性について確認しておきましょう。
2-1. 残業時間の上限規制を遵守する必要がある
1日8時間・週40時間という法定労働時間を超えて残業させる場合は、36協定の締結が必要です。36協定を締結した場合、残業時間の上限は原則として月45時間・年360時間となります。基本的にはこの上限規制を遵守する必要があるため、企業は従業員ごとの勤怠状況を正確に把握しなければなりません。
また、特別条項付きの36協定を結ぶことで、月45時間・年360時間を超えた残業を命じることが可能ですが、以下の要件を守る必要があります。
- 年720時間以内
- 複数月平均80時間以内(休日労働を含む)
- 月100時間未満(休日労働を含む)
- 月45時間を超えるのは年間6ヵ月まで
2-2. 残業管理により正確な残業代を支払う必要がある
法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて従業員を働かせる場合は、残業代を支払わなければなりません。残業代は、残業時間と割増率をもとに計算するため、総労働時間だけではなく残業時間についても正確に把握しておく必要があるのです。残業管理が適切におこなわれていないと、正確な残業代を支払うことができず、労使間のトラブルが発生する可能性もあるので注意しましょう。
2-3. 残業管理により従業員の健康を維持することが大切
残業管理は、従業員の心身の健康を維持するうえでも大切です。過剰な残業が続くと精神的にも肉体的にも疲労がたまり、心身の不調につながってしまう可能性もあります。適切な残業管理を通して、残業が多すぎる従業員はいないか、業務の偏りはないか、といったポイントをチェックするようにしましょう。
3. 残業の管理方法を具体的に解説
労働時間や残業時間を管理するためには、タイムカードや出勤簿・勤怠管理システムなどを用いるのが一般的です。
会社としては、従業員の労働時間をなるべく法定労働時間の範囲内におさえることで、支払うべき残業代を少なくしたいところです。そのためにも、労働時間および残業時間は適切に管理しなければなりません。
3-1. 各従業員が自分の残業時間を閲覧できるようにする
従業員の残業時間を減らすためには、従業員自身にどれくらい残業しているかを把握してもらうというのも、効果的な方法の一つです。
実際、金融業を営むA社では、各従業員が自分の勤務実績や残業時間をシステム上で確認できるようにしています。このような工夫により、残業時間を減らそうという意識が従業員のなかに芽生えやすくなります。
勤怠管理システムを活用すれば、現在の残業時間をリアルタイムで把握できるため、必要に応じて導入を検討するとよいでしょう。
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また、労働基準法による残業に関する規制も図表を用いながら解説しています。こちらから【残業ルールBOOK】を無料でダウンロードしていただけますので、適切な残業管理の方法をもっと詳しく知りたいという方はぜひご覧ください。
3-2. 残業に対する評価や意識を見直す
帰りにくい環境や、残業が評価されるような状態が発生している場合には、従業員に対して研修をおこない社内環境を一新する必要があるでしょう。
残業で仕事の熱意が測られるような評価制度になってしまっている場合、上司の主観で評価基準が変わる人事評価制度になっている可能性もあるため、評価項目を見直すことも効果的です。
少ない残業で成果を挙げた従業員に対してインセンティブを支給するなど、報酬制度を改める方法もあります。
3-3. エクセルで残業管理をおこなう
エクセルを使って残業時間を管理している企業も多いでしょう。多くの従業員が使い慣れたソフトであるため、簡単に導入できます。関数を設定しておけば、残業時間の合計を計算する手間もかかりません。
ただし、情報共有しにくい、入力漏れや入力ミスが発生しやすいなどのデメリットもあるため、残業管理を効率化したい場合は次に紹介する勤怠管理システムがおすすめです。
3-4. 勤怠管理システムを導入する
勤怠管理システムを活用すれば、部署やチームごとの残業時間の把握も容易におこなえます。基本的な勤怠状況だけではなく、休日出勤や残業時間といったデータも即時に集計できるため、管理者側は従業員の勤務時間をいつでも確認することが可能です。
勤怠管理システムのなかには、残業時間が多くなるとアラートを出してくれるシステムもあります。部下の勤務状況をリアルタイムで把握できるので、残業が起きている原因を特定し、従業員に対する是正指導や業務の再配分を実施できます。
4. 残業管理ルールを設定するときのポイント
残業時間を適切に管理するために定めるべき有効なルールとしては、主に以下のようなことが挙げられます。
- 残業申請制を導入する
- ノー残業デーを設ける
- 朝方勤務を推奨する
- 残業管理ルールを従業員に周知する
それぞれのルールについて、説明します。
4-1. 残業申請制を導入する
残業申請制を導入することで、不要な残業を排除でき、従業員がどのくらい残業をおこなっているか把握しやすくなります。
残業申請制を導入する場合は、誰にどのように申請して、誰が承認するのかといった運用方法や、申請・承認の期限などをきちんと決めておきましょう。
規定を定めたら従業員に周知します。運用ルールを徹底してもらうことで、残業時間の管理がおこないやすくなるでしょう。
4-2. ノー残業デーを設ける
1週間のうちのどこかに、絶対に残業せずに帰るいわゆる「ノー残業デー」を設けることも効果的です。
ノー残業デーでは必ず定時までに仕事を終えなければならないことから、従業員が自然と業務効率化の工夫をするケースもあります。結果としてノー残業デー以外の日の残業時間も減るでしょう。パソコンを強制的にシャットダウンしたり、オフィスの消灯をおこなったりする企業もあります。
関連記事:ノー残業デーの効果とは?メリット・デメリットや成功のコツをわかりやすく解説!
4-3. 朝方勤務を推奨する
残業が常態化しているのであれば、始業前に少し早く来てもらう朝方勤務を推進するというのも一つの方法です。
本来の業務時間の前に仕事をするか後に仕事をするかの違いではありますが、朝はまだ頭がフレッシュな状態なので、仕事が捗りやすい場合もあります。結果的に、残業で同じ時間働くよりも仕事を効率的にこなせるケースが多いです。
ただし、始業時間前の勤務に対しても時間外労働の規定は適用されます。朝の勤務時間を含めた労働時間が法定労働時間を超過した場合は、該当時間に対して割増賃金を支払う必要があるので注意しましょう。
4-4. 残業管理ルールを従業員に周知する
残業管理ルールを作成するだけではなく、従業員全員に周知することも大切です。残業申請の方法やシステムの使い方といった実務的な部分はもちろん、残業管理の重要性など、本質的な部分まで周知しておくことで、残業に対する意識が変化していくでしょう。ルールを設定した後もきちんと運用されているか確認し、ルールに違反している部署や従業員への指導をおこなうことも重要です。
5. 残業管理に勤怠管理システムを導入するメリット
残業管理を効率よくおこなうためには、勤怠管理システムを導入するのがおすすめです。ここでは、勤怠管理システムのメリットを紹介しているので、ぜひチェックしておきましょう。
5-1. 残業時間をリアルタイムに把握できる
勤怠管理システムを導入すれば、従業員ごとの残業時間をリアルタイムに把握できます。また、部署やチームごとの残業時間を把握することも可能です。
もし残業が過剰に多い場合は、人員に対して業務量が多すぎる、業務の進め方に無駄があるなどの問題が発生しているかもしれません。勤怠管理システムを活用すれば、データをもとに課題を把握し、適切な対策を講じることができるでしょう。
5-2. 残業時間の上限を超えそうな場合にアラートを出せる
従来のタイムカードなどで勤怠管理をおこなっていると、集計するまで残業時間の合計を把握することはできません。その結果、知らないうちに無駄な長時間労働が発生していたり、残業時間の上限規制をオーバーしていたりするケースもあるでしょう。
勤怠管理システムであれば、日々の勤怠状況を自動的に集計し、残業の上限を超えそうなときにアラートで知らせてくれます。労働基準法を遵守しながら業務を進めるためにも、勤怠管理システムの導入がおすすめです。
5-3. 残業代の計算を効率化できる
勤怠管理システムを導入すれば、残業代を含む、給与計算業務を効率化できます。タイムカードなどで勤怠管理をおこなっていると、集計に手間がかかるだけでなく、エクセルに転記する際にミスが発生することも多いでしょう。
勤怠管理システムであれば、勤怠データを給与計算システムに連携させることで、計算を効率化しつつ、ヒューマンエラーを防止できます。また、勤怠管理から給与計算まで一括でおこなえるシステムもあるため、ぜひ導入を検討しましょう。
6. 残業管理を適切におこなって従業員のエンゲージメントを高めよう
今回は、残業管理において発生しがちな課題や、具体的な方法について解説しました。残業時間を管理するためには、タイムカードや出勤簿、勤怠管理システムなどのツールを用いるのが一般的です。ただし、そのようなツールがあったとしても適切に運用できなければ、残業時間の管理が正確におこなわれずに、残業代がきちんと支払われないということも考えられます。
残業代を適切に支払わないと、労働基準法違反とみなされ、罰則を受ける可能性もあります。残業時間を適切に管理するためのルールを制定して、法律を遵守しつつ、会社に対する従業員からのエンゲージメントを高められるように意識しましょう。

残業時間の削減するにも、残業時間を管理するにも、まず残業時間を可視化することが大切です。 そもそも残業時間が各従業員でどれくらいあるのかが分からなければ、削減しなければならない残業時間数や、対象の従業員が誰かが分からないためです。
現在、残業時間を正確に把握できていないなら、勤怠管理システムを導入して残業時間を可視化することをおすすめします。 具体的な残業時間数が把握できるようになったことで、残業の多い従業員とそうでない従業員を比較して長時間労働の原因をつきとめ、残業時間を削減した事例もあります。
「システムで実際に効果があるのか知りたい」「システムではどう管理するのか知りたい」という方に向け、当サイトでは勤怠管理システム「ジンジャー勤怠」を例に、システムでは残業管理をどのように行えるかをまとめた資料を無料で配布しておりますので、ぜひダウンロードしてご確認ください。