年末調整の「勤労学生」に該当する人は、勤労学生控除を受けられます。
しかし、すべての学生が勤労学生控除を受けられるわけではありません。
勤労学生として認められるには、所得制限などの条件をクリアする必要があります。
この記事では、年末調整における勤労学生の定義や対象者、扶養控除等(異動)申告書の書き方を解説します。
目次
1. 年末調整の「勤労学生」とは?
年末調整は、原則として給与所得者全員に対しておこなう必要があります。国税庁の「年末調整のしかた」でも、「年末調整は、原則として給与の支払者に給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出している人の全員」に実施するものとしています。(※1)
高校や大学、専門学校など、学校に通いながら給与所得を得ている人も例外ではありません。一定の条件を満たす場合は「勤労学生」として、所得控除を受けることもできます。
1-1. 学生でも給与所得を得ている場合は年末調整の対象となる
国税庁の「年末調整のしかた」によると、以下のいずれかの条件に該当する人は年末調整の対象となります。
(1)1年を通じて勤務している人
(2)年の中途で就職し、年末まで勤務している人
(3)年の中途で退職した人のうち、次の人
① 死亡により退職した人
② 著しい心身の障害のため退職した人で、その退職の時期からみて、本年中に再就職ができないと見込まれる人
③ 12月中に支給期の到来する給与の支払を受けた後に退職した人
④ いわゆるパートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、本年中に支払を受ける給与の総額が103万円以下である人
(4)年の中途で、海外の支店へ転勤したことなどの理由により、非居住者となった人
つまり、児童や生徒、学生、訓練生などに該当する人であっても、給与所得を得ている場合は所属先で年末調整を実施し、所得税の徴収または還付を受ける必要があります。
ただし、災害被害者に指定された場合や、日雇い労働者など雇用主が一定しない雇用形態の場合は例外的に年末調整の対象となりません。
1-2. 年末調整の「勤労学生」は所得控除を受けられる
勤労学生とは、所定の学校に通いながら給与所得を得ている人のうち、所得制限を満たした学生のことです。年末調整の対象者のうち、勤労学生に該当する人は一定の所得控除を受けられます。
納税者自身が勤労学生であるときは、一定の金額の所得控除を受けられます。これを勤労学生控除といいます。
勤労学生控除の控除額は27万円です。勤労学生控除を受けることで、2つのメリットを得られます。
- 基礎控除や給与所得控除と合算すると、130万円までの給与所得が非課税になる
- 所得控除を受けることで、翌年の住民税の負担も軽減される
ただし、年末調整における勤労学生として認められるには、一定の条件を満たす必要があります。
学校に通いながらアルバイトをしている場合は、勤労学生控除が受けられないか確認してみましょう。
2. 勤労学生控除の対象者とは
国税庁の「年末調整のしかた」によると、勤労学生控除の対象者は、以下の3つの条件を全て満たす人に限られます。
(1)次に掲げる学校等の児童、生徒、学生又は訓練生であること。
① 学校教育法に規定する小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学、高等専門学校
② 国、地方公共団体、学校法人、準学校法人、独立行政法人国立病院機構、独立行政法人労働者健康安全機構、日本赤十字社、商工会議所、健康保険組合、健康保険組合連合会、国民健康保険団体連合会、国家公務員共済組合連合会、社会福祉法人、宗教法人、一般社団法人、一般財団法人、医療事業を行う農業協同組合連合会、医療法人、文部科学大臣が定める基準を満たす専修学校又は各種学校を設置する者の設置した専修学校等で、職業に必要な技術の教授をするなど一定の要件に該当する課程を履修させるもの
③ 認定職業訓練を行う職業訓練法人で、一定の要件に該当する課程を履修させるもの
(2)合計所得金額が75万円以下であること。
(3)合計所得金額のうち給与所得等以外の所得金額が10万円以下であること。
ポイントとなるのは所得制限です。年間の所得金額の合計が75万円以下で、かつ給与所得以外の所得金額が10万円以下の場合のみ、勤労学生と認められます。
なお、3番目の条件の「給与所得等」とは、「自分の勤労に基づいて得た事業所得、給与所得、退職所得又は雑所得」を指します。(※1)株式投資で得た利益が10万円を超える場合、勤労学生控除を受けられません。
3. 勤労学生控除の書き方
勤労学生控除を受けるためには、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を作成し、所属先の企業や店舗に提出する必要があります。扶養控除等(異動)申告書は所属先から配布されることが一般的ですが、国税庁のホームページから様式をダウンロードすることも可能です。
扶養控除等(異動)申告書の書き方を4つのステップに分けて説明します。
3-1. 所属先(給与の支払者)の情報を記入する
「給与の支払者の名称(氏名)」「給与の支払者の法人(個人)番号」「給与の支払者の所在地(住所)」の3箇所に記入します。
通常、これらの項目は所属先が記入することが一般的です。
3-2. 申告者本人の情報を記入する
「あなたの氏名」「あなたの生年月日」「あなたの個人番号」「あなたの住所又は居所」の4箇所に記入します。個人番号(マイナンバー)は、マイナンバーカードや個人番号通知書などで確認できます。
3-3. 世帯主・続柄・配偶者の情報を記入する
「世帯主の氏名」「あなたとの続柄」「配偶者の有無」の3箇所に記入します。「世帯主の氏名」には、住民票に登録した世帯主の氏名を記入することが一般的です。
「あなたとの続柄」は、申告者本人からみた世帯主との関係のことを指します。たとえば、世帯主が自分からみて父親の場合、「あなたとの続柄」には「父」と記載します。
3-4. 「勤労学生」にチェックし、補足情報を記入する
申告書の中段に「障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」という欄があります。「勤労学生」のチェックボックスにマークしましょう。右側の「障害者又は勤労学生の内容」には、その年の所得金額や学校名、入学年月日などの補足情報を記入します。
4. 年末調整で勤労学生控除を受ける場合の注意点
勤労学生控除を受ける際に注意したいのが扶養控除の上限です。勤労学生控除を受ける場合、130万円までの給与所得が非課税となります。
しかし、給与所得が103万円以上の場合、親などの扶養から外れ、被保険者の税負担が増加します。給与所得が103万円にボーダーラインを超えそうな場合は、親などの扶養者と相談しましょう。
5. 年末調整の「勤労学生」は27万円までの勤労学生控除を利用できる
年末調整の「勤労学生」とは、高校や大学、専門学校などに通いながら給与所得を得ている人のうち、合計所得金額が75万円以下(給与所得等以外所得が10万円以下)の学生を指します。
勤労学生に該当する場合、27万円までの勤労学生控除を受けられます。基礎控除や給与所得控除と合算すると、130万円までの給与所得が非課税になります。ただし、年間所得が103万円以上になると、親などの扶養から外れる点に注意しましょう。