パート・アルバイトも福利厚生は利用できる!適用条件や種類を詳しく解説 |HR NOTE

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パート・アルバイトも福利厚生は利用できる!適用条件や種類を詳しく解説

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「パート・アルバイトでも福利厚生は利用できるの?」

「パート・アルバイトにも福利厚生を適用させたいけど、何がいいかわからない」

上記のような悩みをお持ちではありませんか?

パート・アルバイトでも特定の条件を満たせば、福利厚生を利用できます。ただし、福利厚生を導入する際はコストがかかるため、慎重に検討しましょう

本記事では、パート・アルバイトも福利厚生を利用できる理由や適用条件、種類を解説します。現在、パート・アルバイトに福利厚生を適用させたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

1. パート・アルバイトも福利厚生を利用できる

パートやアルバイトとして従事する従業員でも、所定の条件を満たせば、福利厚生を利用できます

とくに社会保険については、2016年以降段階的に適用が広がっており、パート・アルバイトも加入できるようになりました。2024年10月からは従業員が常時51人以上の企業にも適用が拡大する見込みです。

人材不足や働き方改革が叫ばれる近年、企業はあらゆる働き方を受け入れて人材を確保するための施策を講じなければなりません。社会保険を筆頭とした福利厚生を全従業員が利用できるようにすれば、より多くの人材確保と年金・医療の充実が期待できます

すべての従業員が働きやすい職場環境を整えるためにも、福利厚生の充実を目指しましょう。

2. パート・アルバイトに福利厚生の適用が拡大した背景

パート・アルバイトに福利厚生の適用が拡大した背景には、従業員を占めるパート・アルバイトの割合が増えていることがあります。

総務省の「労働力調査」によると、2024年4月時点の労働力人口は、パートが17.6%、アルバイトが7.8%だったそうです。合計で25.4%と、全体の1/4の割合を占めており、パート・アルバイトが企業にとって貴重な労働力であることがわかります。

上記のような傾向を受けて、政府は2020年にパートタイム・有期雇用労働法を施行しました。パートタイム・有期雇用労働法とは、同一労働・同一賃金の原則に基づき、正社員と非正規従業員との差別的格差を防止する法律です。

以降、企業においては、賃金以外に、福利厚生も正社員と非正規従業員で公平に利用できるように配慮することが望まれています。

参考:労働力調査(基本集計)|総務省統計局

3. パート・アルバイトの福利厚生の適用条件

パート・アルバイトの福利厚生の適用条件は、法定福利厚生と法定外福利厚生で異なります。法定福利厚生と法定外福利厚生の違いは、以下の通りです。

法定福利厚生

労働基準法などの法律で導入が義務付けられている福利厚生

法定外福利厚生

法律上の定めがなく、企業が任意で導入できる福利厚生

それぞれの適用条件を確認しましょう。

3-1. 法定福利厚生の適用条件

法定福利厚生の適用条件は、種類ごとに設定されています。法定福利厚生の種類は、以下の5つです。

制度の種類

概要

健康保険

従業員がケガや病気で医療機関を受診した際に、かかった医療費を一部負担する制度

厚生年金保険

すべての国民が加入している国民年金保険に上乗せして支給される公的年金制度

介護保険

従業員が要介護・要支援の認定を受けた際に、介護サービスの利用費用を一部負担してもらえる制度

雇用保険

失業時や休業時の給付金、育児休業給付金を受け取れる制度

労災保険

従業員の通勤中・勤務中に起きた事故やケガ、疾病、死亡に対して給付金を支給する制度

なお、健康保険と厚生年金保険は、原則として同時に加入させる必要があります。どちらか一方のみの適用はできないため、注意しましょう。

健康保険・厚生年金保険

パート・アルバイトの健康保険、厚生年金保険の適用条件は、以下の3つすべてに該当することです。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満であること
  • 月の賃金(基本給+諸手当)が8.8万円以上であること
  • 2ヵ月以上の雇用が見込まれること
  • 学生ではないこと(休学中や夜間学生は除く)

パート・アルバイトの従業員に健康保険、厚生年金保険を適用させた場合、保険料は給与から天引きします。保険料の負担は、労使折半です。

参照:パート・アルバイトのみなさま(社会保険適用拡大 特設サイト)|厚生労働省

介護保険

介護保険の適用条件は、健康保険・厚生年金保険と変わりません。ただし、満40歳以上65歳未満のパート・アルバイト従業員が対象です。

従業員が満40歳になると自動的に適用され、健康保険料とともに介護保険料を納めます。保険料の負担割合は、健康保険・厚生年金保険と同じく企業と従業員で1/2ずつです。

雇用保険

雇用保険は、雇用形態、希望の有無を問わず、以下3つの条件すべてに該当する従業員に加入させなければなりません。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • 31日以上の雇用が見込まれること
  • 学生ではないこと

上記の条件により、臨時的に働く短時間労働の従業員も雇用保険の対象となる可能性があります。なお、雇用保険料の負担割合は、事業の種類によって異なるため注意しましょう。

参照:雇用保険の適用について|厚生労働省

労災保険

労災保険は、パート・アルバイトを含むすべての従業員が適用対象です。雇用期間や給与額に関係なく、企業から賃金の支払いを受けている従業員であれば加入できます。保険料は、全額が企業負担です。

3-2. 法定外福利厚生の適用条件

法定外福利厚生は、企業の裁量で自由に設けられるため、適用の条件や対象も企業ごとに異なります

ただし、前述の通り、正社員と同じような働き方をするパート・アルバイトにも公平に利用の機会を与えなければなりません。雇用形態の違いで、福利厚生の利用の可否が分かれる場合は、就業規則に合理的な理由の記載が必要です。

4. パート・アルバイト向けの福利厚生4種類

パート・アルバイト向けの福利厚生は、以下の4種類です。

  1. 健康診断
  2. 従業員割引
  3. 食事補助
  4. 正社員登用制度

それぞれ詳しく確認しましょう。

4-1. 健康診断

健康診断は、代表的なパート・アルバイト向けの福利厚生の一つです。

そもそも健康診断は、労働基準法などの法律により、企業が従業員に実施することが義務付けられています。対象となる従業員の条件は、以下の通りです。

  • 1年以上雇用していること、または雇用期間を定めていないこと
  • 1週間の所定労働時間が正社員の3/4以上であること

上記2つの条件に当てはまる従業員には、雇用形態にかかわらず、健康診断を受けさせなければなりません。

しかし、条件を満たしていない場合でも、週の所定労働時間が正社員の1/2以上なら「実施が望ましい」とされています。最近は健康経営が注目を集め、対象外の従業員にも健康診断を実施する企業が増えていることが現状です。

すべてのパート・アルバイトが健康診断を受けられるようにすれば、従業員の健康管理、維持・増進が図りやすくなるでしょう。また、従業員が自身の健康状態を知り、管理することで、急な休みや退職を防ぎ、長く働いてもらえる可能性が高まります。

参考:パートタイム労働者の健康診断を実施しましょう!!|厚生労働省

4-2. 従業員割引

従業員割引も、パート・アルバイトに喜ばれやすい福利厚生です。自社の商品やサービスを通常よりも安く購入できることで、従業員満足度が高まるでしょう。自社の商品やサービスの魅力について理解を深めるきっかけにもなります。

自社に従業員割引を適用できる商品やサービスがない場合は、レジャー施設や宿泊施設の割引クーポンを支給することも効果的です。

割引クーポンがあれば、従業員が気軽に休暇を楽しめ、リフレッシュできます。プライベートが充実するため、従業員のモチベーションや業務の生産性の向上も期待できるでしょう。

4-3. 食事補助

食事補助は、パート・アルバイトも利用しやすい福利厚生といえます。食費を節約できることは、パートやアルバイトにとって大きなメリットです。

飲食店の場合、まかないとして、余った食材を使って料理を作ったり、お店のメニューを提供したりするケースもあります。食事補助には、食堂や弁当、社食サービスなど、さまざまな種類があるため、自社に合った方法を選びましょう。

4-4. 正社員登用制度

福利厚生に正社員登用制度を導入すれば、将来正社員として働く道すじが明確になり、長く働いてもらえる可能性が高まるでしょう。パート・アルバイトの経験やスキルをそのまま正社員へいかせるため、育成に時間をかけずに組織力を向上できる点もメリットです。

入社後のミスマッチも起きにくいことから、スムーズに人材を確保し、定着率を高めたい企業にはメリットの大きい制度といえます。

5. パート・アルバイトも含めた非正規雇用者への福利厚生適用状況

パート・アルバイトも含む非正規雇用者の福利厚生の適用状況は、全体的に従業員規模の大きい企業で適用が進んでいる傾向にあります。

厚生労働省の研究データによると、従業員300人以上の企業で最も適用が進んでいる施策は「食堂」で、96.9%とのことです。従業員30人未満の企業の適用率は69.2%と、大規模の企業と比べると低いことがわかります。

一方で、リフレッシュ休暇制度、ボランティア休暇制度については、従業員規模の小さい企業のほうが高い結果となりました。

福利厚生の導入にはコストがかかるため、すべての施策を正社員と同等に適用させることは現実的ではありません。従業員規模の大きい企業は、資金も潤沢にあるケースが多いため、福利厚生を複数導入できますが、小規模の企業では難しいでしょう。

福利厚生は、法律上必要な施策を導入しつつ、自社の予算に応じて費用対効果が見込めるものを適宜採用したほうが効果的といえます。

参考:企業における福利厚生施策の実態に関する調査|独立行政法人 労働政策研究・研修機構

6. パート・アルバイトの福利厚生を充実させる2つのメリット

パート・アルバイトの福利厚生を充実させるメリットは、以下の2つです。

  1. 職場全体の生産性が向上する
  2. 採用活動でアピールできる

6-1. 職場全体の生産性が向上する

パート・アルバイトの福利厚生を充実させると、職場全体の生産性が向上するメリットがあります。

従業員のモチベーションは、企業の生産力の根源です。福利厚生が行き届いた環境なら、従業員のモチベーションが上がり、企業が期待する働きをしてくれるでしょう。

また、パート・アルバイトを含むすべての従業員が公平な待遇を受けられれば、企業への帰属意識も高まります。従業員一人ひとりが貢献意欲をもって働くようになることで、業務の質が上がり、さらなる業績アップが期待できるでしょう。

6-2. 採用活動でアピールできる

採用活動でアピールできることも、パート・アルバイトの福利厚生を充実させるメリットです。

人材が企業を選ぶ時代へと変わりつつある今、福利厚生は、企業選びにおいて重要な基準の一つとなっています。人材獲得競争を勝ち抜き、より多くの人材を確保するためには、福利厚生で他社との差別化を図ることが欠かせません。

福利厚生を充実させれば、他社よりも待遇がよいことをアピールでき、多くの求職者が集まる可能性が高まります。

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