労働基準法では、従業員に深夜時間に労働させた場合、割増賃金の支払うことを事業者に義務付けています。
ここでは、割増賃金を支払う必要がある時間帯や、割増賃金の計算方法を解説していきます。
【社労士監修】HR関連法改正トレンドBOOK 2024年版
2023年は一部企業を対象に人的資本開示が義務化されたほか、HR関連での法改正に動きが見られました。
2024年では新たな制度の適用や既存のルールの変更・拡大がおこなわれます。
人事担当者として知っておきたいHR関連の法改正に関する情報ですが、その範囲は幅広く、忙しい業務の中でなかなか網羅的に把握することは難しいのではないでしょうか。
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1.労働基準法で定められた深夜時間帯の規定
まず、深夜労働の定義を確認しましょう。
1-1.深夜労働とは
労働基準法第37条では労働者の健康を保護するため深夜の労働に対し規制を設けています。[注1]
深夜労働を22時〜翌5時までの時間帯における労働と規定し、従業員を上記の時間帯に労働させた場合には雇用者は割増賃金を支払う必要があります。
関連記事:深夜労働に該当する時間はいつ?割増手当の計算方法や年齢の制限も解説
1-2.深夜労働をさせる際の注意点
先述した通り、深夜労働をさせた従業員に雇用者は割増賃金を支払う必要があります。
また、深夜労働は全ての従業員にさせられるものでは無く制限があるため注意が必要です。
労働基準法第61条では満18歳以下の従業員を22時〜翌5時の深夜時間で労働させることを雇用者に禁止しています。[注2]
更に、妊婦についても同法66条で、妊婦本人が雇用者に要求した場合、深夜労働をさせてはならないと定めています。[注3]
2.深夜労働の割増賃金の計算方法
従業員に深夜労働を行わせた際の割増賃金は、労働基準法第37条によって定められており、労働時間または労働日の賃金に25%の割増率をかけて計算します。[注1]
(例)
時給1,000円の労働者が20時~0時の時間で労働した場合
22時~0時は深夜労働となるため
深夜労働における割増賃金は 1,000円×2時間×1.25=2,500円
よって2500円と計算できます。
関連記事:深夜手当の計算はどうすれば良い?時給・月給・日給別に詳しく解説
3.深夜手当以外にも割増の条件に当てはまる場合がある
前述した労働基準法では第37条には、深夜労働以外にも賃金を割り増して支払う必要があるケースが規定されています。[注1]
割増賃金を支払うケースと割増率は以下の2つです。
割増条件 |
割増率 |
時間外労働 |
25% |
休日出勤 |
35% |
3-1. 時間外労働とは
時間外労働とは、法定労働時間を超過しての勤務のことです。法定労働時間は、労働基準法第32条に定められている、従業員を1日8時間、週40時間を超えて労働させてはならないという基準です。[注4]
本来は法定労働時間を超えての勤務はNGですが、従業員と雇用者が事前に36協定を結んでいる場合は、時間外労働の割増手当を支払うことで残業させることが可能になります。
ただし、時間外労働に対して割増賃金が発生するのはあくまで法定労働時間を超えての勤務についてです。
「会社が定める所定労働時間が7時間で、1時間の時間外労働をした」というような場合については、合計の労働時間は8時間で、法定労働時間を超過しないため、1時間分の残業に対して割増賃金を支払う必要はありません。
3-2. 休日出勤とは
休日出勤とは、法定休日に労働することです。労働基準法の第35条では、従業員に対して週1日以上、もしくは月に4日以上の休日を与えるよう規定されています。これを法定休日と言います。[注5]
休日出勤に関しても、割増賃金を支払うこと、また、別日に休日を設けることで勤務が可能になります。
ただし、この場合も企業が定める所定休日の場合の勤務については、割増賃金を支払う必要はありません。
3-3.深夜労働と時間外労働の両方に該当するの割増賃金
深夜労働に該当する時間に時間外労働をさせた場合は更に上乗せした賃金を支払う必要があります。この場合の割増率は加算で計算します。
25%(深夜労働の割増率)+25%(時間外労働の割増率)=50%
よって50%の割増率で計算する必要があります。
(例)
所定労働時間が9時~18時(休憩時間1時間)、時給が1000円の従業員を9時~23時で労働させた場合
時刻 |
割増率 |
計算式 |
給与 |
9:00~18:00 |
0% |
1,000×8 |
80,000円 |
18:00~22:00 |
25% |
1,000×4×1.25 |
5,000円 |
22:00~23:00 |
50% |
1,000×1×1.5 |
1,500円 |
【合計】 14,500円 |
3-4.深夜労働と休日出勤の両方に該当する際の割増賃金
時間外労働と同様に、休日出勤時に深夜労働を行わせた場合も割増率は加算で賃金計算を行う必要があります。
25%(深夜労働の割増率)+35%(休日出勤の割増率)=60%
(例)
時給1000円の従業員が法定休日に15:00~23:00で勤務した場合(18:00~19:00の一時間で休憩を取得)
時刻 |
割増率 |
計算式 |
給与 |
15:00~22:00 |
35% |
1,000×6×1.35 |
8,100円 |
22:00~23:00 |
60% |
1,000×1×1.6 |
1,600円 |
【合計】 9,700円 |
このように使用者は深夜労働、休日労働、時間外労働のいずれかが発生した際には、従業員に対して割増手当を支給する必要があります。条件によって割増率は変動するため、計算には注意が必要です。
当サイトでは、割増率の適切な計算方法や、深夜手当にあたる時間帯、深夜0時をまたぐ際の暦日の考え方をおさらいできる資料を無料で配布しております。
労働基準法に準じた休憩時間の取り方などもあわせて解説しておりますので、深夜労働の適切な管理方法を確認したい方は、こちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
4.深夜時間に労働させる際は注意が必要!
深夜労働とは22時〜翌5時の時間帯での労働のことです。
従業員に上記の時間に労働させる際は、雇用者の年齢と割増賃金に注意しましょう。
特に、割増賃金の計算は深夜労働の条件と時間外労働、休日出勤など他の条件が重複している際に計算が複雑になります。
深夜時間の規定と一緒に、法定労働時間、法定休日についても正しく把握しておきましょう。
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