労働基準法に従い生理休暇を設けていても、制度を利用する従業員は少ないかもしれません。しかし、生理休暇は女性従業員の正当な権利であり、企業側は積極的に取得を促す必要があります。
本記事では、労働基準法による生理休暇について解説しております。生理休暇への理解を深め、従業員の働く環境を整備する際にお役立てください。
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例外や特例なども含めて法律の内容を理解しておくと、従業員に何かあったときに、人事担当者として適切な対応を取ることができます。
今回は、労働基準法の改正から基本的な内容までを解説した「労働基準法総まとめBOOK」をご用意しました。
労働基準法の改正から基本的な内容まで、分かりやすく解説しています。より良い職場環境を目指すためにも、ぜひご一読ください。
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1. 労働基準法による生理休暇の規定
まずは、労働基準法で定められている生理休暇について解説します。[注1]
1-1. 労働基準法における生理休暇とは
労働基準法による生理休暇の規定は以下のとおりです。
(生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置)
第六十八条 使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。引用:第五十六条|労働基準法
1-2. 生理休暇の対象者
生理休暇に雇用形態は関係ありません。労働基準法では「生理日の就業が著しく困難な女性」とあるため、企業に雇用されている者であれば誰でも取得可能です。
つまり、正社員をはじめパートやアルバイト、非正規労働者の誰もが生理休暇を取得する権利があります。また、役職や年齢、勤続年数などによる制限も一切ありません。
1-3. 生理休暇は本人の申請があれば付与しなくてはらならない
生理休暇は、生理によって体調が優れない従業員本人の申請があった場合、就業を免除し休暇を取得させる制度です。労働基準法に定められているため、いかなる理由があっても休暇を付与しなくてはなりません。
企業の中には、就業規則などに生理休暇の規定がないため休暇を付与しないケースがあります。しかし、これは労働基準法に違反する行為です。生理日で就業が困難な従業員から休暇の申請があった場合は必ず休暇を付与しなくてはならないことを覚えておきましょう。
1-4. 生理休暇の取得率
厚生労働省の調査では、生理休暇を取得した女性の数はわずか0.9%にとどまっています。たとえ生理休暇があることを知っていても、なかなか取得できないのには以下のような理由があると考えられます。
- 休みを取りにくい職場環境
- 上司に生理であることを言いにくい
- 同僚から生理の辛さを理解してもらえない
そのため、生理のつらい症状があっても薬を服用して我慢して就業したり、生理休暇ではなく有給休暇として休暇を取得したりする人も少なくないようです。
企業側は生理休暇を就業規則に策定することによって女性がより働きやすい環境にすることに加え、生理休暇を取得しやすい雰囲気に変えていく必要があります。
2. 労働基準法による生理休暇の日数[注1]
就業規則などに生理休暇を含める場合、気になるのがその日数です。ここからは生理休暇の日数について解説します。
2-1. 生理休暇に上限はない
生理休暇の日数については上限がありません。極端な話をすれば、従業員から生理休暇を取得したいという申し出があれば、そのすべてに付与する必要があります。
労働基準法に「生理日の就業が著しく困難な女性」とだけ規定されていて、とくに日数に関する制限が設けられていないためです。
2-2. 就業規則における生理休暇の日数制限は可能?
労働基準法に従って就業規則の生理休暇を定める場合、先述したとおり日数制限はできないことになります。日数制限を設けない主な理由は、生理は人によって症状などが違うことが挙げられます。
生理期間の長さや症状の程度、就労の可否などは個人差が大きく、一般的な基準が存在しません。そのため、生理休暇はあくまでも従業員本人の申請に対して付与するというスタンスになっているのです。
なお、人によっては生理の前から頭痛や腹痛などの症状に苦しむ人もいます。このような人をPMS(月経前症候群)と呼びますが、これは生理日には該当しないため生理休暇を付与する必要はありません。
ただし、PMSはこれから来る生理が原因で起こる症状であるため、人によっては生理日以上の苦痛を感じる人もいます。そのため、労働基準法による定めはないものの、企業の就業規則によって生理休暇と同様の扱いにすることも可能です。
2-3. 生理休暇の取得単位
生理休暇の取得は必ずしも1日単位とは限りません。出社してから腹痛がひどくなるケースなどもあるため、半日単位や時間単位での取得を認める必要があります。
鎮痛剤などを服用し、症状が軽くなってから出社するということも可能になるので、より柔軟な働き方ができるように配慮することが大切です。
2-4. 生理休暇の給与について
生理休暇時の賃金について、労働基準法では定めがありません。そのため、有給・無給にするかは企業と従業員の話し合いによって決めることができます。ちなみに、生理休暇を無給としても問題はありません。
生理休暇の給与に関するルールの一例をご紹介します。
- 1ヵ月で生理休暇を有給とするのは1日まで、2日目以降は無給とする
- 生理休暇は何日取得してもすべて有給とする、有給日数がない場合は無給とする
なお、就業規則などで生理休暇を有給とした場合は、従業員が生理休暇を取得したら必ず賃金を支払わなくてはいけません。
2-5. 生理休暇の申請方法
生理休暇の申請方法はシンプルに口頭で受け付けます。生理日やその症状は予測が難しく柔軟な対応が必要なので、当日の申請も可能とするのが好ましいでしょう。
企業の中には、生理休暇の取得条件として医師の診断書を必要とするケースもあります。しかし、このような条件を課すと、就業が困難であるにもかかわらず通院したり、費用をかけて診断書を入手したりと本人の負担が大きくなります。その結果、生理休暇を取得しないという選択をせざるを得ない状況になり、生理休暇の必要性がなくなってしまいます。
従業員に対し、生理休暇をいかに取りやすくするかに重点を置いて導入することが大切です。
2-6. 生理休暇の不正取得について
生理休暇は従業員本人の申請をすべて承認して休暇を付与するため、性善説に基づく制度とも考えられます。そのため、生理日ではなかったり、生理日でも就業に影響がなかったりする場合でも生理休暇を取得する従業員が出てくる可能性があります。
企業側としては、従業員を疑って生理の症状などを聞き出すようなセクハラ行為は避けなくてはなりません。しかし、本来なら必要のない休暇を与えることは避けたいはずです。
このような生理休暇の不正取得に備え、企業も以下のような方法で対策を講じる必要があります。
- 就業規則などで生理休暇を完全無給とする
- 生理休暇を有給にできる日数を制限し、超えた分は無給とする
- 不正取得者に対する懲戒ルールを定める
生理休暇を導入する以上、従業員による虚偽申告は一定数あるものと想定し、事前に対策することをおすすめします。
3. 労働基準法による生理休暇に関する罰則[注1]
あまり知られていませんが、従業員が生理休暇を請求したにもかかわらず、会社側がこれを認めなかった場合は労働基準法に基づいて罰則が課されます。
- 労基法第120条1号 30万円以下の罰金に処する
この処罰はそれほど厳しいものではないかもしれません。しかし、女性が持つ当然の権利を認めないという態度は、社会的信用を失いかねません。従業員や社会からの信頼大切に対処しましょう。
[注1]労働基準法|e-Gov法令検索
4. 労働基準法による生理休暇について知っておこう
生理休暇は働く女性が行使できる当然の権利です。生理の辛さは本人にしかわからないため、企業側は申し出があれば絶対に休暇を付与しなくてはなりません。万が一生理休暇を認めない場合は罰金を課せられることもあるので注意が必要です。
しかし、生理休暇の給与や不正取得については企業側で調整できるため、就業規則などを策定する際は業務や企業活動に影響が出にくいように検討するとよいでしょう。
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