健康診断は福利厚生費に計上できる!条件や注意点を解説 |HR NOTE

健康診断は福利厚生費に計上できる!条件や注意点を解説 |HR NOTE

健康診断は福利厚生費に計上できる!条件や注意点を解説

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「健康診断を福利厚生にできるのだろうか」

「健康診断を福利厚生費に計上するにはどうしたらいいか知りたい」

「従業員の健康診断の勘定科目がわからない」

上記の疑問をお持ちではないでしょうか。

健康診断は福利厚生費に計上できますが、内容次第では給与や役員報酬になることがあります。福利厚生費にする条件を理解しないで実施すると、経費にできないことがあるため注意が必要です。

本記事では、健康診断を福利厚生費にする条件や注意点を解説します。最後まで読むことで、健康診断を福利厚生費とするための知識を身につけ、適切に対応しましょう。

1. 健康診断の費用は福利厚生費にできる

会社が従業員に実施させる健康診断の費用は福利厚生費として計上できます。会社は労働安全衛生法によって健康診断の実施が義務付けられており、従業員の健康管理は健全な経営に大切な要素の一つです。

会社が健康診断の費用を負担しなければいけない決まりはないため、従業員の実費で受けさせることもできます。しかし実費では健康診断を受けない従業員もいるので、会社側が経費として負担するほうがよいでしょう。

参照:労働安全衛生法 | e-Gov法令検索

2. 健康診断の対象社員

健康診断の対象について、以下の4つの場合を解説します。

  1. 正社員
  2. 派遣社員
  3. アルバイト・パート
  4. 役員

2-1. 正社員

正社員は配属や勤務年数など関係なく全員が健康診断の対象です。年に1回、また雇用直前か直後に実施する必要があります。

ただし、新卒社員は入社前3ヵ月以内に受診した場合雇用時の診断を省略可能です。

2-2. 派遣社員

派遣社員の場合は派遣会社と労働契約を結んでいるので、派遣先の会社は健康診断実施の義務を負いません。

ただし、グループ会社からの出向社員などは健康診断の対象となることがあるので、出向元に確認しましょう。

2-3. アルバイト・パート

アルバイトやパートの場合、契約期間が1年以上であり、週の労働時間が正社員の4分の3以上である場合は健康診断の対象です。

勤務時間が4分3未満の場合は実施しなくても構いません。ただし、2分の1以上であれば健康診断実施の努力義務があります。

2-4. 役員

役員も基本的に健康診断の対象ですが、代表取締役や社長は従業員ではなく事業主であるため、実施の義務はありません

事業主は健康診断を受けなくても法律違反になりませんが、大病は会社の経営に支障をきたすため、定期的に受けることが望ましいでしょう。

3. 健康診断の種類

健康診断には大きく分けて以下の2種類があります。

  • 一般健康診断
  • 特殊健康診断

それぞれ実施項目やタイミングが異なるため、違いをよく理解しましょう。

3-1. 一般健康診断

一般健康診断とは業務内容や職種などに関係なく受診するものです。一般健康診断にはさらに以下の5種類があります

  • 定期健康診断(年1回)
  • 雇い入れ時の健康診断
  • 特定業務従事者の健康診断
  • 海外派遣労働者の健康診断
  • 給食従業員の検便

特定業務従事者とは、有害物質を扱う業務や深夜業などに従事する人のことです。海外派遣労働者の健康診断は6ヵ月以上海外に派遣される従業員に対して、出国時と入国時に実施します。

一般健康診断で実施するのは主に以下の項目です。

  • 既往歴および業務歴の調査
  • 自覚症状および他覚症状の有無の検査
  • 胸部エックス線検査および喀痰(かくたん)検査(定期健康診断では省略可能)
  • 身長・体重・腹囲・視力および聴力の検査(定期健康診断では体重・視力・聴力以外の省略可能)
  • 血圧測定
  • 貧血検査(定期健康診断では省略可能)
  • 血中脂質検査(定期健康診断では省略可能)
  • 肝機能検査(定期健康診断では省略可能)
  • 血糖検査(定期健康診断では省略可能)
  • 心電図検査(定期健康診断では省略可能)
  • 尿検査

子宮頸がん検査、乳がん検査などはオプション検査となり、原則従業員の自己負担です。

3-2. 特殊健康診断

特殊健康診断は、人体にリスクのある業務に従事する従業員が受診します。例えば以下の業務などです。

  • 高気圧業務
  • 放射線業務
  • 特定化学物質業務
  • 石綿業務
  • 鉛業務
  • 四アルキル鉛業務
  • 有機溶剤業務

特殊健康診断は、上記の業務への雇い入れ時や配置換え時、また6ヵ月以内に1度のタイミングで実施する必要があります。一般健康診断の定期健康診断とはタイミングが異なるので注意しましょう。

特殊健康診断の項目は従事している業務によって異なります。業務の内容に合わせて必要な項目を手配しましょう。

4. 健康診断を福利厚生費にする条件

健康診断を福利厚生費にするには、次の3つの条件を満たす必要があります。

  1. 健康診断の対象者全員が同じ内容で受診できること
  2. 会社が直接医療機関に費用を支払うこと
  3. 常識の範囲内の金額であること

3つすべての条件を満たさなければ福利厚生費に計上できないため、それぞれの内容をよく理解しましょう。

4-1. 健康診断の対象者全員が同じ内容で受診できること

役職や勤務年数に関係なく、健康診断の対象である従業員が全員同じ内容で受診できるようにしなければいけません。例えば、役員だけ胃カメラの検査を会社負担で受けられるなどの差別がある場合は福利厚生費の対象から外れます。

正社員とアルバイト・パートで内容に健康診断の項目を変えるのも不可です。立場に関係なく、全員が同じ内容の健康診断を受けられるようにしましょう。

4-2. 会社が直接医療機関に費用を支払うこと

オプション検査を除き、健康診断の費用は会社が直接医療機関に払わなければいけません

従業員が自費で払い、領収書を提出して会社が還付する方法は不可です。必ず会社が直接医療機関に費用を払いましょう。

4-3. 常識の範囲内の金額であること

常識範囲内の金額であることも福利厚生費にする条件の一つです。

健康診断の費用は医療機関によって異なります。しかし、一般的には5,000円から15,000円程度で、通常は2万円以下です。2万より高い場合は常識の範囲外と判断され、福利厚生費にできない可能性があるため注意しましょう。

5. 健康診断を福利厚生費にする場合の注意点

健康診断を福利厚生費にする場合の注意点は以下の4つです。

  1. 配偶者の健康診断は福利厚生費の対象外になる
  2. 消費税がかかる
  3. 結果の記録は会社も保管する必要がある
  4. 福利厚生費ではなく給与や役員報酬になることがある

5-1. 配偶者の健康診断は福利厚生費の対象外になる

従業員の配偶者の健康診断は福利厚生費の対象外です。法律で義務付けられているのはあくまでも従業員のみで、従業員の配偶者は義務に含まれていません。

会社によっては配偶者の健康診断も負担していることがありますが、「福利厚生費」ではなく「給与」扱いであり、所得税の対象です。源泉徴収を忘れないようにしましょう。

5-2. 消費税がかかる

健康診断の費用を福利厚生費に計上する場合、消費税がかかります

軽減税率は適用されないため、標準税率である10%が課税されることに注意しましょう。

5-3. 結果の記録は会社も保管する必要がある

健康診断結果の記録は、従業員の同意のもと個人票を作って保管する必要があります

保管期間は5年です。書面か電磁データのどちらかで保管しましょう。

5-4. 福利厚生費ではなく給与や役員報酬になることがある

以下のような場合は福利厚生費には計上できず、給与や役員報酬になることがあります

  • 役員のみを対象に健康診断を実施した
  • 役員のみを対象に人間ドックを実施した
  • 宿泊付きなど常識の範囲内に当てはまらない高額な人間ドックを実施した

人間ドック自体は必ずしも福利厚生費外にはなりませんが、従業員全員が対象ではない場合や、非常に高額な人間ドックの場合は給与や役員報酬扱いとなります。

6. 健康診断を福利厚生に取り入れて社員の健康を守ろう

健康診断は福利厚生費に計上できます。勤務状態によっては正社員だけでなくアルバイトやパートも健康診断の対象です。

健康診断を福利厚生費に計上するには条件があるため、実施前に医療機関へ金額や項目を確かめましょう。福利厚生費にできない場合、給与や役員報酬に該当します。

健康診断は従業員の健康を守るために大切です。対象の従業員全員がきちんと受診できるよう、しっかり体制を整えましょう。

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