タイムカードは使用者の指示を受けて業務を開始した時刻と、その業務を終えた時刻に打刻する必要があります。適切な打刻ルールを設定したうえで従業員に周知しておかなければ、正しい運用ができなくなるため注意が必要です。
本記事では、タイムカードの打刻タイミングについて解説します。また、タイムカード使用時の打刻漏れ・不正打刻を防止するための方法や、定めて周知しておくべき打刻ルールについても紹介します。
タイムカードによる勤怠管理で頭を悩ませるのが、打刻漏れです。毎月締め日に漏れを確認し、従業員に問い合わせるだけでも多くの時間がかかってしまい、人事業務を圧迫していませんか?
勤怠管理システムでは打刻漏れがあった際にアラートが上がる仕組みになっており、すぐに打刻修正を行えるため、打刻漏れを減らし確認作業にかかる時間を減らすことができます。
実際、4時間かかっていた打刻漏れの確認作業がシステム導入によりゼロになった事例もあります。
「システムで打刻漏れを減らせるのはわかったけど、実際にタイムカードでの労働時間管理とどう違うのかを知りたい」という人事担当者様のために、タイムカードの課題を勤怠管理システムでどのように解決できるのかをまとめた資料を無料で配布しておりますので、ぜひダウンロードしてご覧ください。
目次
1. タイムカードを打刻すべきタイミング
タイムカードを利用して始業時刻や終業時刻を記録するのは、従業員が働いた時間を正確に把握するためです。したがって、タイムカードを打刻すべきタイミングは、従業員が労働を開始した時刻および終了した時刻となります。
ここで問題となるのが、「何をもって労働時間を開始・終了したとみなすか」です。厚生労働省がまとめた「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、労働時間の考え方について以下のように定義しています。
労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たること
なお、労働時間に該当するか否かは、従業員との間で交わした労働契約や就業規則などの定めによって決まるものではなく、あくまで客観的に労働者の行為が会社から義務づけられたものであるかどうかが焦点となります。たとえば、以下のようなケースは、使用者から義務づけられた業務とみなされるため、労働時間に該当します。
- 始業前に会社の制服に着替える時間
- 業務上参加が義務づけられている研修や講習を受講した時間
- 就業時間中に発生した手待時間
手待時間とは、使用者の指示があった場合にすぐ業務に従事でき、かつ労働から離れることが保障されていない状態で待機している時間のことです。
たとえば、取引先から連絡があったときにすぐ対応できるよう、他の仕事に従事せずそのまま待機することを命じられた場合や、昼休みに電話番を命じられた場合などは、手待時間となり労働時間に該当するので注意しましょう。
1-1. 始業時の打刻タイミング
以上のような労働時間の定義を踏まえたうえで、始業9時、終業18時と規定している会社の打刻タイミングを考えてみましょう。
まず始業時刻ですが、規定の始業時間までは自由に過ごしていて、9時になった時点で業務に従事した場合、始業の打刻タイミングは規定通りの「9時」となります。
一方、始業前の8時50分から朝礼をおこない、9時から業務をスタートさせている場合、朝礼は「業務上参加が義務づけられている労働時間」とみなされるため、打刻のタイミングは8時50分とする必要があります。
1-2. 終業時の打刻タイミング
規定の終業時間である18時に業務が終了し、その場ですぐ退社できる場合、終業時の打刻タイミングは規定通りの18時として問題ありません。
一方、18時ぴったりまで仕事をおこなった後、ロッカールームで制服から私服に着替えた場合、制服の着用は使用者が義務づけた服務規律とみなされるため、私服に着替えて退社した時間が打刻のタイミングとなります。
関連記事:タイムカードを押すタイミングはいつ?タイムカードに関する疑問を徹底解説!
2. タイムカードの打刻タイミングで悩みがちなケース
ここでは、タイムカードの打刻タイミングについて、悩みがちなケースと正しい対応方法を紹介します。
2-1. 休憩時の打刻
休憩時は、無理に打刻する必要はありません。従業員ごとの休憩時間は基本的に固定されており、始業時刻・終業時刻さえわかれば、労働時間を算出することができるからです。
ただし、休憩時間がしっかりと確保されているかどうかを把握するために、打刻を義務付けている企業もあります。また、労働時間に応じて適切な休憩時間を付与することは企業の義務です。労働基準法を遵守しつつ、従業員の健康を守るためにも休憩時の打刻ルールを設定しておくとよいでしょう。
関連記事:労働時間に休憩は含む?休憩時間の計算方法やルールを解説
2-2. 直行直帰の際の打刻
直行直帰する従業員はタイムカードの打刻ができないため、別の方法で始業時刻や終業時刻を記録しなければなりません。電話やメールで上司に報告するなど、労働時間を適切に管理できるようなルールを検討することが重要です。
クラウド型の勤怠管理システムを導入すれば、スマートフォンからでも打刻できるため、直行直帰する従業員が多い企業においても効率よく勤怠管理を実施できます。
2-3. 出張時の打刻
出張時の打刻ルールについても明確にしておくことが重要です。直行直帰の場合と同様、電話やメールで報告してもらう、勤怠管理システムを導入するなど、適切な管理方法を検討しましょう。
3. タイムカードで打刻管理するリスク
タイムカードは、簡単な操作で始業時刻や終業時刻を簡単に記録できる便利なツールです。しかし、タイムカードによる勤怠管理にはデメリットやリスクもあるので、これから導入・運用を考えている場合は注意しましょう。
ここでは、タイムカードで勤怠管理をおこなう場合に想定されるデメリット・リスクについて詳しく紹介します。
3-1. 集計作業に手間と時間がかかる
タイムカードは従業員1人につき1枚使用するため、毎月の締め日になったら、従業員全員分のタイムカードを回収し、集計作業をおこなう必要があります。
タイムカードの集計作業はエクセルや手計算でおこなうのが一般的ですが、1ヵ月分の打刻データを手作業で入力したり計算したりするのは手間と時間がかかります。
従業員が多い企業ほど、タイムカードの集計作業には膨大な時間がかかります。また、決められた期日までに全員分の労働時間を把握し、給与計算に反映させなければならず、短期間に作業が集中するため、担当者が負担を感じることもよくあります。
3-2. 二重打刻や打刻漏れなどが発生する
従業員がタイムカードの打刻を忘れていたり、二重打刻などの打刻ミスが発生したりすると、正確な勤務時間を把握するために、当該従業員に事実確認をおこなう手間が発生します。
そのため、勤怠管理担当者は締め日以降、タイムカードの集計作業に追われることが多く、人手が足りないと残業や休日出勤が常態化するおそれがあります。
打刻忘れや打刻ミスが多い従業員に対しては、始末書などのペナルティを設けることも有効です。手間のかかるペナルティを設けることで、打刻に対する意識を高めることができます。
ただし、打刻忘れを欠勤扱いにしたり、「平均賃金の1日分の半額、1賃金支払期の賃金の総額の10分の1」を超過する減給をおこなったりすることは違法であるうえ、従業員とのトラブルにつながる可能性もあるため、金銭的なペナルティを設けることはあまり推奨されていません。
関連記事:労働基準法第91条に基づく減給の制裁規定の制限とは?違反した場合の罰則も解説!
3-3. 給与の未払い・過払いが起こりやすい
膨大な数に上るタイムカードの打刻情報を手作業で入力・転記していると、どうしても入力漏れや打ち間違いなどのミスが発生しやすくなります。
始業時刻や終業時刻に打ち間違いがあると、給与計算に反映される労働時間にも誤りが生じ、正確な給与を算出することができません。
その結果、給与の未払いや過払いなどが発生しやすくなり、修正作業に追われたり、従業員から苦情を受けたりするリスクが高くなります。
3-4. 不正打刻のリスクがある
タイムカードは一般的にタイムレコーダーのそばにまとめて収納されているため、誰でも自分以外のカードを取り出しやすい状態にあります。
遅刻や早退、あるいは欠勤した従業員のタイムカードを、他の従業員が代わりに打刻しても事実が発覚しにくく、不正打刻が横行するおそれがあります。
とくに終業時刻をわざと遅らせて残業時間を水増しされた場合、会社側は本来なら不要な時間外労働の割増賃金を支払わなければなりません。
不正打刻が横行すると会社側の損害が増えるのはもちろん、社内の風紀秩序が乱れる原因にもなります。
3-5. リアルタイムで勤怠状況を把握できない
タイムカードを利用している場合、リアルタイムで勤怠状況を把握しにくいため、気づかないうちに残業時間の上限規制をオーバーしてしまう可能性があります。36協定を締結した場合でも、残業時間の上限「月45時間・年360時間(一般条項)」が設けられています。
特別条項付きの36協定を締結せずに、この上限を超えると労働基準法違反となります。法律を遵守した形で勤怠管理をおこないたい場合、リアルタイムで勤怠情報を確認できる勤怠管理システムの導入がおすすめです。
4. タイムカードの不正打刻を防止するための対策
不正打刻は企業に損失をもたらしたり、従業員の不満につながったりするだけでなく、従業員の労働時間を適切に把握することができなくなるリスクもあります。
正しい労働時間の把握は労働安全衛生法で定められた企業の義務でもあるため、不正打刻がおこなわれないよう対策をおこないましょう。
4-1. 本人以外による代理打刻の防止方法
本人以外の従業員による代理打刻は、タイムカードでの勤怠管理において起こりやすい不正打刻の一つです。不正打刻が起きると、本来遅刻しているのに始業時刻から勤務していることになってしまったり、残業時刻を水増しされたりして人件費が圧迫されます。
タイムカードを鍵付きのケースで管理することや、生体認証・ICカードを利用した打刻方法にすることで不正打刻を防止しましょう。
4-2. 未打刻による残業代の水増しの防止方法
すでに業務は終わっていて、雑談や業務以外のことをしているにも関わらず、退勤の打刻をおこなわずに残業代を水増しすることも不正打刻にあたります。
従業員が打刻をおこなっているか即時で確認できるシステムを用いたり、残業を承認制にしたりすることで、不要な残業や未打刻による残業代の水増しといった不正を防止することができるでしょう。
関連記事:勤怠が改ざんされた場合の罰則とは?具体的な手口や予防策も解説!
5. タイムカードの打刻ずれを防止する方法
ここでは、タイムカードに打刻された時刻と、実際の労働時間のずれを防止するための対策法を3つ紹介します。
5-1. 打刻ルールの周知徹底を図る
タイムカードの打刻された時間と実際の労働時間にずれが生じるのは、不正や故意だけでなく、単純に打刻ルールを知らないためとも考えられます。
「出社時刻=始業時刻」と勘違いしている従業員がいる可能性もあるので、「いつが始業時刻となるのか」「いつまでが勤務時間に該当するのか」といった打刻ルールの周知徹底を図りましょう。
たとえば、朝礼などの時間帯に打刻ルールについて確認をおこなう、社内の目立つところに打刻ルールを記載した貼り紙を掲示するなどです。
打刻ルールが浸透すれば、勘違いによる打刻のずれも生じにくくなり、正確な労働時間を把握できるようになります。
5-2. 時間外労働は事前承認制にする
早出や残業、休日出勤といった時間外労働をすべて事前承認制にし、それ以外の打刻のずれを認めないという方法もあります。
事前承認を得ないまま、規定の始業時刻より早い時間もしくは、終業時刻より遅い時間に打刻した場合、ずれた部分は時間外労働としてカウントしないようにすれば、わざと早めに出社したり、遅く退社したりする行為を防止することが可能です。
ただし、従業員が早出・残業していることを知りながら、あえて見て見ぬフリをするのは、暗黙のうちに指示を出す「黙示の指示」があったとみなされます。
厚生労働省のガイドラインでは「使用者の明示的・黙示的な指示により労働者が業務をおこなう時間は労働時間」と定義されています。
そのため、打刻ずれ防止のために時間外労働の事前承認制を採用するのならば、従業員が承認のない早出・残業をおこなわないよう、注意や呼びかけを徹底することが必要です。
参照:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン|厚生労働省
5-3. 勤怠管理システムを導入する
不正打刻を防止したいのなら、ICカードやスマートフォン・タブレットを使用して打刻できる勤怠管理システムの導入がおすすめです。
ICカードは従業員が個人で管理するものなので、第三者が不正に打刻をおこなうリスクを減らせます。また、スマートフォン・タブレットのカメラ機能を利用した打刻なら、なりすましによる不正打刻も防止できます。
打刻データは自動でシステムに入力・集計される仕組みになっているので、タイムカードを使った勤怠管理よりも手間がかからず、入力ミスの防止にもつながります。
6. タイムカードを打刻するタイミングや運用方法はきちんとルール化しよう
今回は、タイムカードの打刻タイミングや、打刻漏れ・不正打刻を防止する方法などを解説しました。タイムカードは従業員の労働時間を正確に把握するために利用するツールです。打刻するタイミングは使用者の指示を受けて業務を開始した時刻と、終了した時刻となります。
タイムカードと実際の労働時間のずれを防止したいのなら、タイムカードの運用ルールを設定し、社内で周知徹底を図ることが大切です。ただし、タイムカードは第三者のなりすましによる不正打刻が起こりやすい管理ツールであるともいえます。適正な勤怠管理をおこなうため、本人しか打刻できない仕組みを採り入れた勤怠管理システムの導入を検討しましょう。
タイムカードによる勤怠管理で頭を悩ませるのが、打刻漏れです。毎月締め日に漏れを確認し、従業員に問い合わせるだけでも多くの時間がかかってしまい、人事業務を圧迫していませんか?
勤怠管理システムでは打刻漏れがあった際にアラートが上がる仕組みになっており、すぐに打刻修正を行えるため、打刻漏れを減らし確認作業にかかる時間を減らすことができます。
実際、4時間かかっていた打刻漏れの確認作業がシステム導入によりゼロになった事例もあります。
「システムで打刻漏れを減らせるのはわかったけど、実際にタイムカードでの労働時間管理とどう違うのかを知りたい」という人事担当者様のために、タイムカードの課題を勤怠管理システムでどのように解決できるのかをまとめた資料を無料で配布しておりますので、ぜひダウンロードしてご覧ください。