企業は、契約社員にも福利厚生を提供する義務があります。法律で規定されている法定福利厚生を提供しなかった場合、法律違反として処罰されるため注意が必要です。
しかし「契約社員における福利厚生の扱いがよくわからない」といった悩みを抱えている人もいるでしょう。
そこで本記事では、契約社員と正社員の福利厚生の違いや見直し方について解説します。契約社員にも平等に福利厚生を提供したいと考えいる人は、ぜひ参考にしてください。
▼そもそも福利厚生とは何かを知りたい方はこちら
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1. 契約社員も福利厚生を受けられる
契約社員も福利厚生を受けられます。受けられる福利厚生は以下の2種類です。
法定福利厚生 |
・全社員が対象 ・法律で規定されており企業は必ず提供しなければならない |
法定外福利厚生 |
・企業によっては正社員だけの場合もある ・企業が独自に導入できる |
それぞれの福利厚生の詳細は以下の通りです。
1-1. 法定福利厚生とは?
法定福利厚生は全社員を対象として、企業は必ず提供しなければならないため、契約社員でも必ず受けられる福利厚生です。健康保険や介護保険、労災保険などが該当します。
1-2. 法定外福利厚生とは?
一方で法定外福利厚生は、法律で規定されておらず、企業が独自に導入できる福利厚生です。交通費やリフレッシュ休暇などが該当します。企業によって対象者は異なり、正社員のみを対象としているケースも珍しくありません。
2. 契約社員に適用される法定福利厚生
法定福利厚生とは、企業が費用を出して社員に提供する必要がある最低限の福利厚生のことです。
企業は全社員に提供しなければならないため、契約社員にも適用されます。法定福利厚生の種類は以下の通りです。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 雇用保険
- 労災保険
- 介護保険
- 子ども・子育て拠出金
法定福利厚生は、企業が所定の費用を負担しなければなりません。法定福利厚生を提供しない企業は法律違反として処罰されます。
提供しないことで損害などが生じた場合は、賠償金の支払いを命じられる可能性もあるため注意が必要です。
関連記事:福利厚生の最低ラインは?最低限必要な制度や整備のポイントを解説
3. 契約社員に適用される法定外福利厚生
契約社員に法定外福利厚生が適用されるかどうかは、企業の判断に委ねられます。法定外福利厚生とは、企業が独自に設けた福利厚生のことです。
以下のような制度が法定外福利厚生に該当します。
- 交通費
- 住宅手当
- 食事手当
- 資格手当
- 慶弔見舞金
- リフレッシュ休暇
法定外福利厚生は法定福利厚生とは異なり、必ずしも契約社員に提供しなければならないわけではありません。企業ごとの判断により、全社員に提供するかどうか定められます。
関連記事:福利厚生の家賃補助とは?平均相場がいくらかやメリット・デメリットも紹介
関連記事:福利厚生における食事補助とは?メリットや導入方法を解説
4. 契約社員と正社員の福利厚生の違い
以下の項目を例に、契約社員と正社員の福利厚生の違いを解説します。
- 休日・休暇
- 社会保険
- 退職金
- 各種手当
福利厚生を提供する際の参考にしてください。
4-1. 休日・休暇
休日・休暇は、契約社員も正社員と同様に取得可能です。年次有給休暇も法律により取得が認められているため、契約社員であっても問題なく利用できます。
しかし、契約社員よりも勤務年数が長くなりがちな正社員のほうが、有給休暇の取得日数が多くなる傾向にあります。
参照:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省
4-2. 社会保険
社会保険は、加入条件を満たしていれば、契約社員でも加入できます。社会保険とは、以下の5つの保険のことをいいます。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 介護保険
- 雇用保険
- 労災保険
2024年6月現在の社会保険の加入条件は以下の通りです。
- 従業員数101人以上の勤め先
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 所定内賃金が8.8万円以上
- 2カ月を超える雇用の見込みがある(フルタイムで働く方と同等)
- 学生でない
2024年の10月からは社会保険の対象者が、従業員数101人以上の企業から、51人以上の企業に変更になります。社会保険を導入していない企業は、適用範囲の拡大により自社が該当するかどうか確認しておきましょう。
関連記事:福利厚生と社会保険の関係性とは?2024年10月より適用される社会保険の概要を解説
4-3. 退職金
退職金が支給されるかどうかは、企業によって方針が異なります。退職金制度は法定外福利厚生に分類され、必ずしも取り入れなければならない制度ではないことから、導入していない企業もあるためです。
退職金制度を導入している場合、契約社員も正社員と同じ条件で原則支給されます。しかし、業務内容や責任の度合いなど合理的な理由があり、契約社員に支給しないケースも珍しくありません。
4-4. 各種手当
交通費やリフレッシュ休暇などの各種手当の支給は、企業によって方針が異なります。企業によっては、正社員のみを対象にして支給する手当もあるでしょう。
たとえば住宅手当を導入している場合、転勤がある正社員には支給して、原則転勤がない契約社員には支給しないケースがあります。
5. 契約形態のみを理由に福利厚生に待遇差があると違法
契約形態のみを理由に、正社員と契約社員との間に福利厚生の待遇差があると違法です。均等待遇の原則に反する理不尽な待遇差とみなされます。
均等待遇とは、雇用形態にかかわらず同じ業務をおこなっているのであれば、同じ賃金や待遇を与えることです。正社員と派遣や契約社員で、業務内容や人事異動の条件が同じケースでは、待遇や賃金を一律にする必要があります。
福利厚生に理不尽な待遇差があっても、法律上の罰則は規定されていません。ただし、見直しをせずに放置した場合、行政からの指導対象になったり、民事裁判を起こされ損害賠償請求を受けたりする可能性があります。
契約社員と正社員の福利厚生に待遇差を作らないように注意が必要です。
参照:不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(業界別マニュアル)|厚生労働省
6. 契約社員に福利厚生を提供するメリット
契約社員に福利厚生を提供する主なメリットは次の通りです。
- モチベーションが向上する
- 企業のイメージアップにつながる
- 節税効果を期待できる
それぞれのメリットについて順番に見ていきましょう。
6-1. モチベーションが向上する
モチベーションが向上することは、福利厚生を充実させる大きなメリットです。正社員だけではなく、契約社員に対しても同様の福利厚生を提供すれば、働く意欲や帰属意識が向上するでしょう。
積極的に働いてくれるようになれば、協力体制の強化や生産性アップも期待できます。
6-2. 企業のイメージアップにつながる
企業のイメージアップにつながることも、福利厚生を充実させるメリットのひとつです。給与だけではなく働きやすさを重視して職場を選ぶ人も多いため、福利厚生の充実度は人材を募集する際の重要なアピールポイントになります。
契約社員も利用できる福利厚生をさせ、採用活動においてアピールすれば優秀な人材確保につながるでしょう。
6-3. 節税効果を期待できる
福利厚生を導入することは、節税にもつながります。一定の条件を満たしていれば、福利厚生のためにかかった費用を、非課税対象である福利厚生費として計上できるからです。
福利厚生費として計上するためには、従業員全員が利用できること、常識的な金額であることなどの条件を満たさなければなりません。また、福利厚生の種類ごとの金額上限もあるため、節税を検討している場合は注意しましょう。
関連記事:福利厚生は非課税?要件・事例・経理処理を詳しく解説
7. 契約社員に福利厚生を提供するときの注意点
契約社員に福利厚生を提供するときは、次のような点に注意しましょう。
- 費用がかかる
- 不合理な差をなくす
- ニーズをしっかりと把握する
それぞれの注意点の詳細は以下の通りです。
7-1. 費用がかかる
当然ですが、福利厚生を導入するためには費用がかかります。初期費用はもちろん、長期的に運用するための人件費やシステムのランニングコストなども発生するでしょう。
福利厚生は一度導入すると廃止するのが難しいため、長期的に運用できるかどうか、予算に合っているか事前に把握しておくことが大切です。
7-2. 不合理な差をなくす
正社員と契約社員の不合理な差をなくすことも重要です。従業員の満足度を向上させるために福利厚生を導入したにもかかわらず、利用できない従業員の不満が高まってしまうと意味がありません。
契約社員でも利用できるように配慮したり、利用できない場合は合理的な理由を伝えたりすることが必要です。
7-3. ニーズをしっかりと把握する
福利厚生を導入する際は、事前に従業員のニーズを把握しておくことが大切です。せっかく費用をかけて福利厚生を導入しても、利用されなければ意味がありません。
アンケートやヒアリングを実施して、従業員のニーズを把握したうえで、自社に最適なサービスを導入しましょう。
関連記事:良い福利厚生の基準とは?従業員に人気の待遇ランキングや最低ラインの必須項目を紹介
8. 契約社員に対する福利厚生の見直し方3選
契約社員に対する福利厚生の見直し方は以下の3つです。
- 福利厚生の決定基準と待遇差を把握する
- 待遇差の合理性を検討する
- 理不尽な待遇差がある福利厚生を正す
福利厚生を見直し、理不尽な待遇差を解消しましょう。
8-1. 福利厚生の決定基準と待遇差を把握する
契約社員の福利厚生を見直すときは、決定基準と待遇差を把握しましょう。比較対象である労働条件がもっとも似ている正社員と一緒に、以下のような違いをまとめます。
- 労働契約期間
- 勤務時間
- 職務内容
- 役職の有無
決定基準や待遇差に問題がないか確認をおこないます。
8-2. 待遇差の合理性を検討する
福利厚生の決定基準や待遇差を把握したら、待遇差の合理性を検討しましょう。もし待遇差が見つかり、違いの根拠となる理由が述べられなかった場合は、見直すべき福利厚生に該当します。
たとえば正社員の役職者には役職手当が支給されているのに、契約社員の役職者には支給されていなかったとします。
勤務時間や仕事内容が同じであるにもかかわらず、契約社員にだけ支給していないのは、理不尽な待遇差といえるでしょう。
しかし福利厚生の合理性を判断するのは難しいため、社内で共有しながら慎重に検討してください。
8-3. 理不尽な待遇差がある福利厚生を正す
待遇差の合理性を検討したら、理不尽な待遇差があった福利厚生を正します。しかし理不尽な待遇差を解消するために、比較対象に選んだ社員の待遇を引き下げる行為は避けたほうがいいでしょう。
引き下げる場合は、対象社員へ説明して合意してもらう必要があります。何も説明せず合意なしで待遇を引き下げると、労使間でのトラブルに発展する可能性が高いです。
福利厚生を正す場合は、社員への説明を必ず実施しましょう。
9. 契約社員に福利厚生の待遇差の説明を求められたら説明義務がある
契約社員に福利厚生の待遇差の説明を求められたら、企業は待遇差の内容や理由を説明する義務があります。短時間・有期雇用労働者法第14条で定められている法的義務です。
待遇差について説明する際は、比較対象として労働条件がもっとも似ている正社員と比較した説明資料を用意しましょう。資料をもとに、口頭で説明するのが基本です。
説明資料には、職務の内容や経験・能力・今までの成果など、合理的な待遇差の理由となり得るものはすべて記載しましょう。待遇差に合理性があると伝わるように、説明内容を網羅した理解しやすい説明書類の準備が必要です。
参照:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律|e-Gov法令検索
10. 契約社員にも適切に福利厚生を提供しよう!
今回は、契約社員に対する福利厚生について解説しました。正社員と同様に、契約社員に対して福利厚生を提供すれば、モチベーションや帰属意識の向上などを期待できます。企業全体の生産性向上にもつながるでしょう。
ただし、福利厚生を充実させるためにはコストがかかります。せっかく導入しても利用率が低いと、大きな効果は期待できません。まずは従業員のニーズを把握したうえで、最適なサービスを導入しましょう。正社員と契約社員の不合理な差をなくす努力も必要です。
福利厚生を充実させることは採用・定着にもつながるため重要ですが、よく手段としてとられる賃上げよりも低コストで従業員満足度をあげられる福利厚生サービスがあることをご存知でしょうか。
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