今回は、株式会社モザイクワークの代表である杉浦氏に、前職でもあり現在も携わっている、三幸製菓の採用の取り組みや、モザイクワークで実現したい世界観に関してお話いただくインタビュー記事の後編をご紹介。
杉浦 二郎(Facebookページ) |株式会社モザイクワーク 代表
【後半】
- 面接では判断できない。どうやって見極めを行っていくべきか
- 「日本一短いES」「35の質問」「カフェテリア採用」の組み合わせでマッチングを図る
- 客観的に評価でき、どんな能力を持っているか可視化できる世界をつくりたい
目次
面接では判断できない。どうやって見極めを行っていくべきか
-現在の三幸製菓の採用手法に至るまでに、次はどのようなことをされたのでしょうか。
杉浦氏:色々採用を行っていく中で、「人が人を判断するって、結構限界だな」っていうのを感じたんですよね。
「面接って意味あるのかな」と、その頃から思い始めてて、ずっと面接に対してはモヤモヤ感があったんですよ。
ぼくも面接官トレーニングを結構なお金をかけて受けたり、面接官の本を買ったりしてましたけど、もう自分が面接のプロだって言えない状態がずっと続いてるわけですよ。
何なんだろうと思ったときに、「そもそも自分よりも優れた能力と、自分の持ってない能力を持っている人の判断ってできないな」と気づきました。
逆に言えば、残念ながら、人って自分が持ち得る能力までしか人を判断できないんですよね。それ以上のもの持ってると途端にわからなくなるわけですよ。
もう1つは好き嫌い。
結局人と人が出会うので好き嫌いが生まれて、これはアセスメントする上ではすごい危険だなと思って。面接はちょっとやだなと思ったんです。やりたくないなと。面接をせずになんとか選考できないかって考え始めたのがそのあたりなんですよ。
-そこから日本一短いESや、カフェテリア採用にある、出前全員面接会、おせんべい採用、ガリ勉採用、新潟採用などさまざまな選考方法が生まれてきたのでしょうか。
杉浦氏:やり始めたのはその頃ですね。
面接せずに何したらいいかなって考えたときに、「そうだ!足が速いやつとりたいんだったら走る選考をやろう」と。
「料理が上手なやつがとりたいんだったら料理をさせよう」、みたいな。
そんな感じで選考を考えていたわけです。
例えば、「出前全員面接会」だと何を求めたかというと、「巻き込む力みたいなものとか、調整能力みたいなところを見たい」ってなったときに、どんな選考あるか考えたら、「巻き込むということは周りを巻き込んでいくから、人を集められるとか、人をつなげるみたいなのがあるな」って思って。
「調整能力、巻き込み力を見たいので、友だち5人集めて、場所も調整して、我々と日程を調整してください。そうしたらぼくら、あなた方のところまで行きます。」というのが出前全員面接会なんですね。
そういう感じで1個1個、どういう適性をぼくらは求めていて、「そのために学生が自身の強みやその適性を発揮できるためには、どういう選考が必要だろうね」っていうのを考えて選考を作っていって。
当たり前なんですけど、会社って求める人物像は1つではなくて、社内を見渡すといろんなパターンがあるわけですよ。
そのいろんなパターンがあるのに、面接3回で全部見きれるかというとそれは無理で。
今までやってたことは、足が速い人も料理が上手な人も、料理もさせずに走らせずに面接で決めるということを平気でしていたわけです。そうじゃないなと思って。
こういう適性が欲しければこれをしてもらおうと、それぞれ選考をちゃんと分けてあげて、その能力が発揮できる仕組みにしようと。
これを選べる形にしようというのが「カフェテリア採用」の考え方なんです。カフェテリア採用では、それぞれの特性にあわせて17種類の選考内容があります。
・愛とPR力のつまった新卒採用活動「おせんべい採用」(coogo)
・「せんべい愛」「ガリ勉」…採用試験選んでね(朝日新聞デジタル)
・一流大学生に人気、地方中小企業の「17種類採用法」(ダイヤモンドオンライン)
「日本一短いES」「35の質問」「カフェテリア採用」の組み合わせでマッチングを図る
-いろいろな施策を行ってきているかと思いますが、現在、三幸製菓で取り組まれていることは何ですか。
杉浦氏:「日本一短いES」「35の質問」「カフェテリア採用」、この3つを掛け算でやっています。
日本一短いESというのは、メールアドレスだけを入れてもらうようにしているんですけど、「日本一短いESの前に」というのを作っていまして、何を聞いているかというと、「おせんべいが好きかどうか」と、「新潟で働けるか」という、この2つを聞いています。
最初に何を聞かなきゃいけないかっていうと、三幸製菓として絶対に譲れないものの確認ということで、どんなに優秀でもこの2つがダメだったらダメ、ということで、これをまず聞くようにしてます。
次に何を聞かなきゃいけないか考えていったら、連絡先だけでよかったんですよね。「別に名前もいらなくない?」みたいな話になりました(笑)。
-名前は合否に関係ないですもんね。
杉浦氏:そんなことよりも、どういう能力を持っていて、どういうタイプの人なんだということを知りたいわけです。
それがどんな名前だろうが、男だろうが女だろうが関係ない。「じゃあ、ここで適性検査が必要だね」ってなりました。
適性検査も「35の質問」というのを自分たちで作ってるんですけど、ぼくらが見なきゃいけないのは入社後のパフォーマンスだと。
採用は何のためにやってるのかというと、会社の業績を良くするため。会社の業績を良くする人ってどういう人かというと、パフォーマンスが高い人。そのパフォーマンスが高いかどうかを見極めなきゃいけないのに、採って終わりじゃないよねって。
入社後のパフォーマンスと今までの採用データをつき合わせていったら、相関性が取れなくて、どうしようか考えていたら、「だったら自分たちで作るしかないか」って話で「35の質問」を作ったんですね。
入社後のパフォーマンスも「入社2年後のパフォーマンスが上位であるかどうか」にしようと考えました。
2年以上経っちゃうと、弊社の場合、採用のデータだけじゃなくて、上司がどうだったかとか、アサインされた仕事がどうだったかとか、どうしてもそういう問題のほうが関与が高くなってしまうと思ったので。
なので入社2年前後の人たちのパフォーマンス分析をして、そのあたりから必要な能力の要素を取り出して、それを「35の質問」に入れて、厳密に7適性とってます。7適性とってて、1適性に対して5問ずつ問題を作ってます。
-「35の質問」で適性を取ったあとは何をされるのですか?
杉浦氏:「35の質問」で取った適性に対して、カフェテリア採用を実施していきます。
例えば「達成性」というのがあるんですけど、コツコツとやり続ける、やり抜くみたいなのが「達成性」なんですね。
何を作ったかというと、「日本一短くないES」というのを作りまして。30日間毎日エントリーシートを書くっていうのをしたわけですよ。
入力欄があって、毎日毎日書いていって。1回書くと次。1日24時間、1日でも書かないで日付をまたいじゃうと、1に戻るっていう。そういう仕組みになっているんですね。
何を書いてもいいんです。1文字でもいいわけです。大事なことはログインをして何かを入力するっていう動作が大事であって。文章がどうだとか中身がどうだというのは見てないんですね。
-項目もないんですか。
杉浦氏:ないんですよ。それってただの文章能力を見ることになるので、何が書いてあるかとか、どういうことが書いてあるかっていうのは文章表現力だから、ぼくらは見ないと。
「達成性」で大事なのは何か決まった動きをある一定期間やり続けることが大事なので、中身ではなくてやる過程をみているというのはあるんです。
-カフェテリア採用から、次は最終面接になりますが。
杉浦氏:そうです。ここでようやく名前だとか個人情報が必要になってきます。
さすがに「3番の方お願いします」とか、番号とかアルファベットで学生を呼ぶわけにはいかないので(笑)。
最終面接は経営とのフィット感だとか、そもそも新潟で働けるのかっていう確認をして、志望動機はそこまで重要視していません。ただ、最終面接でハチャメチャな人たちはいっぱいいます。商品のことよくわかんないとか(笑)。
最初の頃とか、役員からすごい怒られるわけですよ。「あの学生全然知らないんだけど」って。
「いや、一緒じゃないですか、みんなそこまで深く知って入ったわけじゃないですよね・・・」ってごまかすみたいな。
-そういう人たちが入社後のハイパフォーマーになっていると。
杉浦氏:そうそう。大事なことは会社のことを知ってるかどうかじゃなくて、その人が活躍できる能力を持ってるかどうかのほうなので。
-企業理解のミスマッチで退職してしまうということはないのでしょうか。
杉浦氏:理解のミスマッチって、いわゆる志望理由の話というよりも能力だと思ってるので。その人が活躍できない、パフォーマンスを発揮しにくい環境かどうかを選考で見るわけですよ。
その人の嗜好性、興味だとか関心みたいなところはあまり関係ないと思ってるので。
みんなが欲しいドラフト1位候補なんてぼくら採れないわけですよ。ドラフトに選ばれなかったけれども、将来の3割バッターをどう探すかが、ぼくらの腕の見せ所なわけです。
だからドラフト1位でほぼ間違いなく活躍するだろうっていう人も欲しいんですけど、とれないので、それはぐっと我慢します。あきらめます。そういう人は日本のためにもっと大きいところで活躍していただければと思います(笑)。
それが僕らの採用なんですよね。
-今後の三幸製菓の採用でやっていきたいことはありますか。
杉浦氏:雑味が多いデータがまだあるので、最終的には「35の質問」だけでほぼほぼ採用できるようにしたいです。
でも今はまだ「35の質問」の精度が4割ぐらいしかないんですね。
これが7割か8割ぐらいまで精度が高まれば、ほぼほぼ「35の質問」で完結できるわけです。
-あとの選考プロセスはどちらかというと合意形成の場になると。
杉浦氏:まさしくおっしゃる通りなんですけど、ぼくのやりたい世界は今言ってくれたように、デジタルジャッジのあとは合意形成ですと。
僕らはこのデジタルジャッジのあとはの人と人が会うフェーズというのは、選考じゃなくて合意形成にしたいと思っています。
客観的に評価でき、どんな能力を持っているか可視化できる世界をつくりたい
-杉浦さんは4月にモザイクワーク社を設立されましたが、設立経緯からお伺いしてもよろしいでしょうか。
杉浦氏:モザイクという社名の由来が、いろんな人たちが活躍できる世界が作れたらいいなと思っていまして。
選考手法1つとっても今までみたいな面接なやり方ばかりだと、ある特定の学生は評価されるけれど、そうじゃない学生たちは評価されないみたいな話が出るわけじゃないですか。
でもそれってアセスメントの仕方が間違ってるだけの話だと思っていて、その人が悪いわけではない。
「全ての人たちが客観的に評価されて、どういう能力を持っているかを可視化できる」、そういう世界を作っていきたいなと思っていますし、日本の総労働力がこれからどんどん減っていく中で、少ない労働力をどう各企業でわけながら活用していくのか、となると、今までみたいな採用の仕方なんてできるわけがないと思っています。
人がいない中で採用するってどういうことってなると、なかなか採用されにくかった人の能力をちゃんと見極めていかなきゃいけないし、そもそも採用されなかった人っていうのはその人がだめなんじゃなくて、採用側に大きな問題点があるので、そのアセスメントをもう少し考え方を変えていきたいと思っています。
そういった形で、多様な人たちが多様な形でモザイクのように働ける世界観をつくりたいということがまずあります。
もうひとつは、個人が1つの会社にフルコミットする時代はそろそろ終わって、1人がいろんな仕事をする。
個人にとってもモザイクのような仕事をしてて、世の中的にもいろんな人たちが活躍するっていう、そういう世界観を作っていきたいということで、モザイクワークの名前を作ったんですね。
-今はどういう活動をされていますか。
杉浦氏:スタートしてまだ間もないので、基本的には採用支援業務がメインで、採用のプランニングですね。
どちらかといえば100人規模ぐらいの中小企業で、しかも若干採用難易度が高い、うまくいっていないという企業様の採用プランニングをしていくというところがメイン業務です。
アセスメントの部分もやるんですけど、どうやって母集団を集めていくのか、どう見せていくのか、どうブランド形成していくのか、そこも含めてプランニングしています。
-今後の展望はありますか?
杉浦氏:アントレプレナーファクトリーさんと一緒に、8月から隔週土曜日に「採用TV」というのをやり始めて、採用についていろいろ語るオウンドメディアみたいなこと発信していきたいと思ってます。
基本的には採用担当者とか、大学の先生とか、採用学研究所の服部先生にもゲストで来てもらったんですけど、とにかくおもしろい採用やってたり、採用についてとことん考えてる人たちに来ていただいて、「採用って大事なんだな、そこまで考えないといけないんだな」っていう、感化されるような番組にしていきたいと思ってるんですね。考えるきっかけになるといいなと思っていて。
採用はすごく大事だと思っていて、社会とのゲートキーパーだと思ってるんですね。ということはゲートキーパーが間違ったナビゲーションをしてしまうと、その人の人生をだめにしてしまう可能性もあるわけです。
入ってすぐやめたなんてのは、採用側の責任だと思ってるので。
採用する以上ちゃんと考えないといけないし、その人の人生をだめにするだけじゃなくて会社もだめにしてしまうので、採用する人たちはちゃんと考えて、自社なりの採用を確立して欲しい、という思いがあるんですね。
なので、採用TVもそうだし、モザイクワークの活動もそういった事に関わっていきたいと思っています。
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