仕事ぶりも成果も合格点、でもどこか「自信がない…!?」 そんなメンバーの成長を促すマネジメントとは |HR NOTE

仕事ぶりも成果も合格点、でもどこか「自信がない…!?」 そんなメンバーの成長を促すマネジメントとは |HR NOTE

仕事ぶりも成果も合格点、でもどこか「自信がない…!?」 そんなメンバーの成長を促すマネジメントとは

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※本記事は、インタビューを実施したうえで記事化しております。

仕事ぶりもまじめ、成果もきちんと出す。マネジャーや組織にとってはかけがえのない社員。

しかし、その仕事ぶりには悲壮感や自信のなさが垣間見えることや、ちょっと叱る機会があったときには、「やっぱり私なんてダメなんだ・・・」と叱った側の想像以上に凹む、自分のせいにして背負い込むーー。

そんな社員の姿が頭に浮かばないだろうか。とくに能力や結果に大きな問題はないのに、もっと伸びるのに、もっと楽しく仕事をしたら本人も幸せなのに、、、と悩むマネジャーも多いのでは。 

今回は、「父性愛」が「強すぎた」人材についての解説と、社員本人にとっても組織にとっても、さらなる成長の源泉になるマネジメントについて、リザルトデザインの井上さんに話を伺いました。

【人物紹介】井上 顕滋 氏|リザルトデザイン株式会社 代表取締役 

経営者、経営幹部専門のエグゼクティブコーチ。20年以上の経営と部下育成の経験、更に世界最先端の心理学を各分野の第一人者から徹底的に学び、人が持つ能力を最大限に引き出す独自の能力開発メソッドを確立。理想の組織作りと営業成約率を飛躍的に向上させることを専門とするリザルトデザイン(株)を2004年に設立。

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父性愛の「欠如」の逆はどんな状態なのか?

前回の「父性愛」は、「厳しさの愛情」という解説から、組織で起こっている社員の問題やマネジメントの難問について解説をいただきました。 


井上さん
はい。まずは父性愛の「欠如」から解説させていただきました。

極端に自分の思いや感情を優先するという、「わがままな子供」のまま大人になったような人をつくり出しているのは、幼いころの「父性愛」の欠如です。

幼い頃に「社会や人間関係のルールを守る」という訓練ができていない、ということです。詳しくは前回の記事でご確認いただければと思います。

▶︎前回の記事:「優秀なのに活躍できない」理由とその対処法 |原因は、幼いころの親の関わり方?」
https://hrnote.jp/contents/b-contents-composition-resultdesign2-190521/

―今回解説をいただく、父性愛が「強すぎた」状態について教えてください。


井上さん
前回と違い、今回は、ぜひ組織の可能性として聞いていただきたいと思います。

父性愛が強すぎた状態とは、無条件に受容する母性愛が少し不足していた状態と言い換えることもできます。

「甘やかすのはいけない」「競争に勝ち抜かなければ生きていけない」と我が子を思えばこそではありますが、厳しさが中心の育てられ方をしたケースだと考えていただくとわかりやすいかもしれません。

社会のルールに従う。我慢をさせる。困難を乗り越えさせるなどの厳しさは、子どもの将来を考えると必要な愛情ですが、こちらに偏りすぎると問題も発生します。

幼少期には「父性愛」と「母性愛」の両方がバランスよく与えられることが望ましいのですが、どちらかに偏っているご家庭が非常に多いのも事実です。

ちなみに、父性愛は父親が与える愛情、母性愛は母親が与える愛情という意味ではありませんのでご注意ください。父性愛が強いお母さんも母性愛が強いお父さんもいらっしゃいます。

父性愛と母性愛の関係。いずれかが強すぎる状態とは

―それでは、「母性愛」というのは何なのでしょうか


井上さん
子どもに対する親の関わり方を大きく二分すると、下記のようになります。

  • 父性愛』:厳しさの愛情
  • 母性愛』:受容と承認の愛情

お子様がいる読者の方は、よくご理解頂けると思いますが、母性愛というのは、「無条件に愛しい」という愛情。

生まれてきてくれてありがとう、というような存在自体への愛情。どんなことがあっても、子どもの行動を理解する、受け入れる、守るといった行動が、母性愛による行動です。

それはともすれば、社会的にはちょっと許されないな、ということでも「しょうがないね」と受け入れてしまう。子どもがぶつかった困難を、親が取り除いてしまう、という行動になったりします。

こちらに偏りすぎると前回お話したような「父性愛欠如型社員」の状態になってしまいます。


―強すぎる父性愛についてもう少し詳しくお願いします。


井上さん
「厳しすぎる」お母さん、またはお父さんに育てられた子どもを想像してみてください。

具体的に言うと、いつも叱られてばかりで、やさしく接してもらうことが少なかった。失敗したり、何かができないと厳しい罰を与えられた。他人の子どもや優秀な兄弟姉妹と比べて否定され続けた、など。

厳しすぎる、または高すぎる基準でしつけや教育を受けた子どもです。このタイプの子は、何かを頑張ったり、成績などの結果を生んだりもします。

しかしそれは、大好きなお母さん、お父さんに認めてもらったり、愛情をもらうことが目的であって、「頑張らなければ、結果を出さなければ」自分は愛されないという強迫観念のようなものが行動の動機になっている可能性が非常に高いと言えます。

無条件の愛情ではないので、心のなかは不安定な子どもになりやすいとお考えください。そして多くの人はその不安定さを持ったまま大人になっていきます。

心が安定していて、かつ社会で活躍する大人になるためには、まず母性愛=無条件の愛情をしっかり与えられ、そのうえで、社会に適応するための父性愛を適度に与えられることが望ましいと言えます。

それぞれ両方あることが重要なのです。

父性愛が強すぎた人の特徴と対処法

―では、社内を見渡して父性愛が強すぎた社員はどんな状態の社員なのでしょうか。


井上さん
わかりやすい特徴としてはこのようなものがあります。

ポジティブな側面

  • 与えられた仕事を懸命に遂行する
  • 求められた成果を出そうと頑張る
  • 空気や人の顔色に敏感でよく気が利く
  • 上司の指示に従順
  • わがままを言わず、相手の気持ちを優先する
  • 常識的
  • まじめ

ネガティブな側面

  • 自信がなく、過度の自責傾向
  • 過度の義務思考で心が不自由
  • 空気や人の顔色に敏感で本人は疲れる
  • 自己主張が苦手で、自分の意見を言わない=Yesマン
  • 業務の失敗=自分はダメな人間だと拡大解釈してしまうことがある
  • [トラウマが強い場合]叱責や評価が下がることへの恐怖から、都合の悪い報告を隠す
  • 反抗的な態度、ひねくれた態度をとるタイプ(少数)

また、注意が必要な特徴として、最後に申し上げた「都合の悪い報告を隠す」と「反抗的またはひねくれた態度をとる」についてですが、父性愛が強すぎた人も、欠如した人も、ともに都合の悪い報告を隠したり、反抗的な態度で指示されたことを「やらない」というような、行動になることがあります。

しかし、その理由に大きな違いがあります。父性愛の「欠如」の人は、そもそも出来ないというニュアンスに近いとお考えください。

相手の気持ちや都合を考えて意思決定したり、「指示された=やらねばならぬことをする」という訓練が不足している状態であり、「やりたくないからやらない」という自分の思考や感情を優先してしまうので、素直に指示に従うことが「出来ない」というイメージです。

しかし父性愛が「強すぎた」人は、指示されたことに素直に従うことは全く問題なく出来ますが、「自分には価値がない」「自分は必要とされていない」という極端な自己否定の思い込みの反動として、このような態度になることがあります。

そして、とくに幼少期のトラウマがきついケースでは、自分ではコントロールできない「恐怖」の感情から都合の悪い報告を隠してしまうこともあります。

同じ行動のように見えますが、その行動をする深い理由が異なれば、対処は大きく異なります。

いかに、行動を生み出している真因を知ることが大切かをご理解いただけるかと思います。私が第一回から解説させていただいた、「無意識のブレーキ」にも、父性愛の強弱(母性愛とのバランス)は大きく影響を及ぼしています。


―父性愛が強すぎた社員に対しては、日常的にはどういった対応をとればいいのでしょうか。


井上さん
まずご理解いただきたいのは、父性愛に極端に偏った社員にとって、幼い頃の親との関わりは、悲しみや恐怖などの「痛み」の感情を伴う記憶だとお考えください。

当然ですが、無条件の愛情は受けられず、厳しい関わりばかりされるわけですから、悲しい、寂しい、怖いという状況が想定されます。

第1回でも解説しましたが、幼い子どもは、そのネガティブな状況を「自分が悪いから」「自分は大切じゃないから・価値がないから」こうなった、などと解釈し、その解釈をそのまま鵜呑みに受け止めてしまううえに、無意識の領域に押し込んでしまいます。

ゆえに、本質的な解決を望まれる場合は専門家の手に委ねてください。しかし、日常的に行動の動機を理解しながら、よりスムーズに気持ちよく行動してもらうための対処方法はあります。

父性愛が強過ぎる親に育てられた人の代表的な特徴と対処法

状態(1)

自信がなく、過度の自責傾向
業務の失敗=自分はダメな人間だと拡大解釈

原因

  • 失敗して叱られることを恐れて、初めてのことや勇気が必要なことに挑戦しなかったため、叱られることを避けられた代わりに、大切な能力の獲得が遅れ、自信がなくなった。
  • 親が失敗を恐れる、失敗は恥ずかしいと考え、過剰にネガティブな反応をしていた。
  • ありのままの自分を親に受け入れてもらえず、自分には存在価値がないと思い込んだ。
  • 何かができる自分には価値があるが、できない自分には価値がない。
  • 自分よりも弟や妹の方が大切だと思い込んだなど。

対処法

  • 自分自身の過去の失敗からの学びやその経験から得たものなど、ポジティブな側面を話し、挑戦しての失敗はポジティブなものだと伝え続ける
  • 「あなたがいることで、私は安心して自分の仕事ができる」など存在に対する感謝や称賛をする
  • 小さな挑戦を見逃さず褒める
  • メンタルヘルスの問題を抱えやすい傾向があるので、周りが注意する必要あり。
  • 専門家に委ねる

 

状態(2)

人を褒めるのが苦手。悪いところを指摘するのは得意。

原因

  • 自分自身が親からそのように関わられてきたので、他人に対しても同じように接してしまう。
  • 褒められてきていないので、褒め方がわからない。褒めても気持ちが乗らない。
  • 指摘ばかりされてきた「悲しみ」を「怒り」として表現しやすく、怒りっぽくなるケースあり。

対処法

まずは、たくさん褒めてあげて、褒められる体験を増やしてあげる。その上で、人のいいところ、素晴らしいところを見つける訓練。日々の良かったこと、感謝できることを書き留める訓練も有効。

 

状態(3)

過度の義務思考で心が不自由(ストレス過多)
自己主張が苦手で、自分の意見を言わない=Yesマン

原因

  • 幼少期から、わがままを言わず、従順に従うことで「愛情」もしくは「叱られない状態」を手に入れてきたので、自分を押し殺すことが日常化している
  • 「やりたいこと」よりも「やるべきこと」への意識が強すぎる

対処法

  • 本当はどう考えているのか、どうしたいのか尋ねてあげる
  • メンタルヘルスの問題を抱えやすい傾向があるが、本人に自覚がないことが多いので、周りが注意する必要あり。
  • 専門家に委ねる

 

状態(4)

ごまかしの嘘をつく。
都合の悪い報告を隠す

原因

父性愛欠如でも起きる現象であるが、父性愛が強すぎた場合は、叱られないように幼少期からごまかす訓練をしてきている状態(嘘をつく目的が違う)

対処法

  • 無意識にやってしまうので、重要な意思決定に関係する場合はウラをとって正確な情報か確認した方が安全。
  • 正直に自分に不利な情報を伝えてきた時は、その勇気を称えて賞賛する。
  • 上長は感情をコントロールし、否定をするのではなく、分析を促すコミュニケーションをとる。

 

状態(5)

反抗的な態度、ひねくれた態度

原因

  • 父性愛欠如でも起きる現象であるが、父性愛が強すぎた場合は、「自分には価値がない」「自分は必要とされていない」という極端な自己否定の思い込みの反動の可能性が高い
  • 父性愛、母性愛ともに不足していた可能性も考えられる

対処法

  • 本人の態度を咎めるのは逆効果なので、そういう態度をとりたくなった気持ちに寄り添い、理解を示す。これを繰り返しながら信頼関係を深めていく。一人の人間として「愛情」を注いであげる。
  • 父性愛、母性愛ともに不足していた場合は、自暴自棄になり、思いもよらない行動を起こす可能性があるので要注意
  • 専門家に委ねる

父性愛が強すぎた社員は、対応方法次第で素晴らしい戦力に

井上さんここまで、ネガティブな側面に対する原因と対処法についてお話させていただきましたが、父性愛が強すぎる環境で育った人は、そうでない人と比べて、子どもの頃にたくさんの「悲しい」「苦しい」「つらい」「こわい」「さみしい」経験をしてきています。

そしてその経験があったからこそ、人の気持ちが人一倍理解できたり、共感する能力に長けているなど、多くの素晴らしい能力を持っている人が多く、メンタルも鍛えられて強くなっています。

強いからこそ、我慢しすぎ、抑圧しすぎてメンタルヘルスの問題に発展するのであって、父性愛欠如型の人と比べると、比較にならないほど強いのです。

そして、何よりも「人にやさしい、あたたかい」人が多いということを忘れてはいけないと思います。

人としてあたたかく、仕事面では、成果を出すために言われたことをやる、約束を守る、などの行動に問題はないどころか、しっかりと遂行します。そういう意味では、組織にとって非常に大切な存在です。

真の原因を知ることで、まずは企業の皆さんが安定した組織環境をつくり、多くの人が持てる能力や人間性を生かして働ける社会を実現していただきたいと強く願っています。

そして再三にわたって話に出ているとおり、幼少期に大きな理由がつくられています。小さなお子さんがいらっしゃる方は、とくに子育てにおいて、転ばぬ先の杖として、これらの知識を生かしていただければ幸いです。

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