女性の健康経営に男性社員や年配層を巻き込むには?―共感とデータで職場に「理解文化」を育てる― |HR NOTE

女性の健康経営に男性社員や年配層を巻き込むには?―共感とデータで職場に「理解文化」を育てる― |HR NOTE

女性の健康経営に男性社員や年配層を巻き込むには?―共感とデータで職場に「理解文化」を育てる―

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※本記事は、mederi株式会社様より寄稿いただいた内容を掲載しております。

働く女性の約8割が、生理やPMS、更年期といったホルモン変動による不調を経験しています。これらの不調は、欠勤や早退、集中力の低下といった形で業務に影響を及ぼし、社会全体では年間約4,911億円の労働損失が生じていると推計されています。

にもかかわらず、職場では今なお、女性特有のことだから」「デリケートな話題だからといった理由から、十分な共通理解が進みにくい現実があります。実は、女性の健康課題を職場に根づかせるうえで鍵を握るのは、女性社員だけではありません。

男性社員、管理職、そして年配層の社員をどう巻き込めるか。ここに、施策が形骸化するか、文化として定着するかの分かれ道があります。本稿では、組織全体で理解を広げるためのアプローチに焦点を当てます。

数字で納得する層、専門家の言葉を重視する層、体感によって共感する層ーーそれぞれに響く方法を使い分けることで、企業文化そのものを変えていく視点をお伝えします。

寄稿者坂梨 亜里咲mederi株式会社 代表取締役

明治大学卒業後、大手ファッション通販サイト及びECコンサルティング会社にてマーケティング及びECオペレーションを担当。2014年より女性向けwebメディアのディレクター、COO、代表取締役を経験した後に、自らの不妊治療経験からmederi株式会社を起業。オンラインピル診療サービス「mederi Pill(メデリピル)」、企業向け健康支援・福利厚生サービス「mederi for biz(メデリフォービズ)」を展開。

男性社員には「数字とデータ」で伝える

女性の健康課題を職場で共有する際、まず意識したいのは伝え方の設計です。

男性社員や管理職に対して、「つらさ」や「配慮の必要性」だけを伝えても、理解が十分に深まらないケースは少なくありません。それは決して無関心だからではなく、多くのビジネスパーソンが、事実や構造、再現性のある情報をもとに判断する経験を重ねてきたためです。

そのため、生理やPMSといったテーマも、感情論としてではなく、経営や組織運営の文脈で整理して提示することが重要になります。たとえば、経済産業省の試算によれば、生理・PMSに関連する労働損失は年間約4,911億円にのぼります。

注目すべき点は、その多くが欠勤ではなく、「出勤しているが本来の力を発揮できていない状態」 いわゆるプレゼンティーズムによるものであるという点です。

この事実を共有したとき、 「個人の体調の問題」から 「組織全体の生産性や持続性に関わるテーマ」へと、 認識が切り替わる管理職は少なくありません。

研修や社内説明の場では、たとえば次のような視点が有効です。

  • 生理・PMSによる生産性損失に関するデータ
  • 欠勤率・離職率との関連性
  • 健康投資とROIの考え方
  • 海外企業におけるフェムテック導入事例

数字は、共感を否定するものでも、置き換えるものでもありません。「なぜ今、企業として向き合う必要があるのか」を理解するための入口です。

その理由が共有されることで、性別を問わず、多くの社員がこのテーマを自分ごととして捉え、建設的な議論に参加できるようになります。

年配層には「医師の言葉」と医学的根拠を届ける

一方で、年配社員やベテラン層に対しては、数字だけでは届かないケースもあります。

「自分たちの時代は、そんな話を職場でしなかった」
「女性も我慢して働いていた」

こうした価値観は、決して悪意から生まれたものではありません。当時の社会環境や教育背景によって形成されたものです。

その“世代の壁”を越えるうえで効果的なのが、産婦人科医など専門家による勉強会です。社内の誰かが説明するのではなく、第三者である医師が医学的事実として語ることで、受け止め方が大きく変わります。

  • PMSは気の持ちようではなく、医学的症状であること
  • 症状には大きな個人差があること
  • 更年期も治療や支援によってパフォーマンスを維持できること

こうした知識が共有されることで、認識は「配慮」から「理解」へ 「我慢」から「支援」へと静かに更新されていきます。

ブロックタイトル

勉強会後に職場での対応ポイント」「管理職向けチェックリスト」「相談フローなどを配布することで、「聞いて終わり」にしない仕組みづくりも重要です。

“生理痛のつらさを体験”するワークショップ

理解のアプローチとして最後にご紹介するのは、体感による共感です。近年、多くの企業で取り入れられはじめたのが、生理痛体験を含む体験型ワークショップです。

たとえば、

  • 生理痛体験装置(低周波刺激など)を用い、専門スタッフの管理下で腹部に違和感を与えた状態で業務を行う
  • 痛みや不快感がある状態で、判断力や集中力を要するタスクに取り組む

といった疑似体験を通じて、 「もし自分が毎月この状態で働いていたらどう感じるか」を、頭ではなく身体で理解してもらうというものです。

なお、安全面への配慮は最優先事項です。体験は必ず専門スタッフ立ち会いのもと、事前説明と同意を得たうえで実施し、刺激の強さは個人の体調や希望に応じて調整します。途中での中断や不参加も自由とし、無理のない形で行いましょう。

ここで重要なのは、不調や痛みを抱えたままでも、「周囲に理解されないまま」「普段と同じ成果を求められながら」働くことの難しさを実感することです。

こうした生理痛体験を含むワークショップの実施後には、

「部下への声かけが自然に増えた」
「体調相談を受け止める心理的ハードルが下がった」
「管理職の対応が変わった」

といった具体的な行動変化が見られるようです。

おわりに

数字で理解し、専門家の言葉で納得し、体験を通じて共感する。 この三つのアプローチを段階的かつ適切に組み合わせていくことが、職場の空気を変え、人の無意識の前提を揺さぶり、行動そのものを変えていくでしょう。 

本稿で紹介したような取り組みを、より体系的に、より実践的に知りたい方には、拙著『女性に選ばれる会社の新・健康経営 ― 職場改革は生理・PMSケアから始めよう』(合同フォレスト刊)にて、制度設計の考え方から現場への浸透ポイントまでをまとめています。

何かあったら配慮する職場ではなく、何かが起こりうることを前提に設計された職場へ。 その一歩が、日本の生産性と女性の人生を同時に変えていくと、私は確信しています。 

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