監修 行政書士 細田加苗
慢性的な人手不足である現在、2019年4月より改正出入国管理法が施行されたことにより、企業は外国人労働者を受け入れる機会が多くなってくるものと思われます。
しかしながら、外国人労働者を受け入れることに不安があり躊躇されている採用担当者も少なくないのではないでしょうか?
そこで、今回は外国人採用の流れや外国人採用を補助してくれる機関・サービス、登録支援機関の活用方法などについてご紹介します。
【監修】細田 加苗 東京都行政書士会新宿支部所属 行政書士法人jinjer社員
目次
1|外国人採用の増加
まずは外国人採用を検討するに際して、現在の外国人採用の状況について理解しておきましょう。
1-1. 外国人労働者の増加
近年の少子高齢化に伴う人手不足を背景に、国は高度外国人人材や留学生・技能実習生の受け入れの推進や、雇用情勢の改善に伴う永住者や日本人配偶者など、身分に基づく在留資格者の就労が増加していることから外国人労働者数は年々増加傾向にあります。
厚生労働省発表の2018年10月末現在の「外国人雇用状況」の届出状況まとめによると、外国人労働者数は約146万人(前年同期比14.2%増加)※グラフ1参照であり、届出義務化以降、過去最高を更新しています。
グラフ1 [在留資格別外国人労働者数の推移]
※参照:厚生労働省/「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(平成30年10月末現在)
また、外国人労働者を雇用する事業所数は約216千ヶ所(前年同期比11.2%増加)となり、内訳は製造業が最も高い割合で、その次に卸売業、小売業、宿泊業と続いていることが分かります※グラフ2参照。
グラフ2 [産業別外国人雇用事業所の割合]
※参照:厚生労働省/「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(平成30年10月末現在)
1-2. 特定技能によりさらなる増加の予測
これまで国は高度な専門知識を持っている人に限定して外国人労働者の受け入れを認めていましたが、実際は人手不足の影響により本来認められていない単純労働の分野で外国人労働者を就労させている実態がありました。
偽装留学や形だけの技能実習生の受け入れなどその実態はさまざまでした。その歪みが、企業と外国人労働者の双方に負担がかけるようになってしまい、技能実習生の失踪などが相次ぐようになりました。
これをうけ、政府が2019年4月に改正出入国管理法を施行し、在留資格「特定技能」を創設しました。特定技能には2つの種類があります。それぞれをご紹介します。
特定技能1号
特定産業分野に属する相当程度の知識、または経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
・在留期間:1年・6ヶ月又は4ヶ月ごとの更新(通算で上限5年まで)
・技能水準:試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験等免除)
・日本語能力水準:生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験等免除)
・家族の帯同:基本的に認めない
・支援:受け入れ機関又は登録支援機関による支援の対象
特定技能2号
特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
・在留期間:3年・1年又は6ヶ月ごとの更新
・技能水準:試験等で確認
・日本語能力水準:試験等での確認は不要
・家族の帯同:要件を満たせば可能(配偶者・子)
・支援:受け入れ機関又は登録支援機関による支援の対象外
それぞれに認められている資格が異なります。特定技能2号は定義をされたものの、現時点ではこの資格の受け入れ門戸は開かれていません。
特定産業分野
具体的に、特定技能の資格を得た外国人は特定産業分野の業務に従事することができるようになります。
特定産業分野とは、日本人だけでは人材確保が困難な分野のことであり、以下14の分野があります。
・介護
・ビルクリーニング
・素形材産業
・産業機械製造業
・電気・電子情報関連産業
・建設、造船・舶用工業
・自動車整備
・航空
・宿泊
・農業
・漁業
・飲食料品製造業
・外食業
※特定技能2号は、建設、造船・舶用工業の2分野のみ受け入れ可能です。
2019年4月に始まった特定技能の許可を受けた外国人はまだ少数ですが、法務省は3ヶ月ごとに特定技能外国人の実態を調査・公表する予定のようです。特定技能が創設されたことで、外国人労働者の更なる増加が予想されます。
1-3. 今後の展望
2025年までの人手不足見込み数は約145万5千人であることから、国は「特定技能」創設に伴い、2019年度から2024年度までの間で最大、約34万5千人の外国人労働者の受け入れを見込んでいます。
特定産業分野別の5年間の最大受け入れ見込み数は次のとおりです。
・介護 60,000人
・ビルクリー ニング 37,000人
・素形材 産業 21,500人
・産業機械 製造業 5,250人
・電気・電子 情報 関連産業 4,700人
・建設 40,000人
・造船・ 舶用工業 13,000人
・自動車 整備 7,000人
・航空 2,200人
・宿泊 22,000人
・農業 36,500人
・漁業 9,000人
・飲食料品 製造業 34,000人
・外食業 53,000人
特に、介護・外食・建設・農業・宿泊の5分野については、受入上限数を大幅に超えた人手不足が予想されているため、採用後にも働きやすい環境を整えるなど、日本人同様に雇用確保対策が必要といえます。
2|外国人採用を支援する機関を紹介
ここでは、企業が外国人採用を検討する際に、活用するべき機関・サービスを紹介します。
2-1. 出入国在留管理庁【外国人採用には不可欠な機関】
外国人労働者を雇用するためには、出入国在留管理庁に対して申請をおこない、許可を得なければなりません。
元々は入国管理局でしたが、外国人労働者の受け入れ拡大に対応するため、2019年4月1日より法務省の外局として「出入国在留管理庁」が新設されました。また、出入国在留管理庁の下に地方出入国在留管理局(8局)、同支局(7局)、出張所(61ヶ所)及び入国管理センター(2ヶ所)が設けられています。
「出入国在留管理庁」の主な役割
・厳格な出入国管理と円滑な入国審査などの出入国在留管理行政
・外国人労働者の受け入れ環境整備に関する総合調整
ⅰ)特定技能外国人の適正な在留管理
ⅱ)不適切な受け入れ期間に対する指導
ⅲ)送出国における悪質ブローカーの介在防止
ⅳ)受け入れ対象分野における人手不足状況の把握と必要に応じた受け入れ停止措置 など
・外国人に対する支援
2-2. 外国人採用サービス【外国人採用を支援】
優秀な外国人を採用したいとき、集客や選考、採用についてお悩みの場合に、外国人採用サービスを利用することができます。
外国人労働者増加に伴い、外国人採用サービスをおこなう企業は、数多く存在していますが、支援内容は企業によって異なるので自社にあった外国人採用サービスを選択することがおすすめです。
外国人採用サービスの支援内容一例
・企業のターゲットにあった人材を紹介
・外国人にとっての魅力づくりや採用提案を支援
・外国人労働者の入社後のケアや研修をサポート
自社にあった外国人採用サービスを知りたい方にオススメ!
▶外国人採用のメリット・注意すべき点とは?サービスも紹介【徹底比較】
2-3. 就労ビザ代行機関【ビザ取得を支援】
外国人を採用する場合に必ず必要になるのが就労ビザがですがビザ申請には時間がかかります。特に海外から外国人を呼んで採用する場合は、日本国内の外国人留学生を採用する場合に比べ、ビザの手続きがより複雑になります。
そのため、手続きを熟知している採用担当者でなければ、多くの時間と労力を要することとなります。
「ビザ申請の手続きが煩雑で困っている」「せっかく外国人を採用しても、ビザの許可が下りない」などのお悩みを抱える採用担当者には就労ビザ代行機関がおすすめです。
就労ビザ代行機関のサービス一例
・就労ビザ取得に必要な書類を企業に提示
・必要書類の作成・回収
・出入国在留管理庁へ就労ビザ申請とお問い合わせの対応
・在留資格認定証明書の代理受領・送信
・外国人雇用に関する総合的なアドバイス など
就労ビザ代行機関を活用するメリットはこちら▼
・短期間で申請可能
→それにより、許可までの期間が短縮
・専門家としてのノウハウを活かして書類を作成し、申請
→自社で申請するよりも許可率高い!
・採用担当者の工数削減することができる
・外国人労働者との契約内容などの齟齬を防止できる
就労ビザ取得についてもっと知りたい方にオススメ!
▶【外国人雇用】就労ビザ代行サービス15を比較!|金額・申請取得時間
2-4. 登録支援機関【在留の庶務をサポート】
特定技能1号を外国人人材を企業が受け入れる場合、外国人支援計画の作成、提出及び計画の実行が必要になります。そこで、出入国在留管理庁長官の認定を受けた「登録支援機関」に全ての支援内容を委託することもできます。
登録支援機関の活用方法に関しては次の章で詳しくご紹介します。
3.登録支援機関を活用するには
特定技能の資格で就労する外国人に対しては、受け入れ企業が日常生活におけるさまざなな支援をおこなうことが義務付けられています。
しかし、外国人採用を始めたばかりの企業や専門的知識を用していない企業などにとっては支援が難しいことがあります。そのようなときに、業務委託をできるの登録支援機関です。
登録支援機関とは、政府から認定を得た企業や機関であり、外国人が日本で就労をするにあたって必要なさまざまな場面における支援をおこないます。
登録支援機関は2023年4月21日時点で8,103箇所にものぼり、日々増加しています。
▶登録支援機関登録簿(法務省)
https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri07_00205.html
3-1. 企業が登録支援機関に業務を委託するフロー
企業が登録支援機関に支援を委託するフローは以下のようになっています。
登録支援機関を自ら選ぶ工数はかかってしまいますが、契約を結んだ後は支援を全面的に委託することが可能です。
- 採用する外国人と特定技能雇用契約を結ぶ
- 「登録支援機関登録簿」にて、登録支援機関を選んで問い合わせる
- 登録支援機関と支援委託契約を締結し、特定技能外国人支援の実施を委託する
- 登録支援機関が、出入国在留管理庁に対して支援の実施状況や変更事項などを随時届け出る
3-2. 登録支援機関がおこなうことのできる支援内容
企業が登録支援機関と契約を結んだ際に、登録支援機関がおこなうことができる具体的な支援内容についてご紹介します。衣食住の現実的な問題から日本で暮らすことへの不安の相談役など、その支援内容は多岐にわたっています。
特定技能外国人に対する支援内容
・外国人に対する入国前の事前ガイダンス(労働条件、活動内容、入国手続きなど)の提供
・入国時の空港等への出迎え及び帰国時の空港等への見送り
・保証人となることその他の外国人の住宅の確保に向けた支援の実施
・外国人に対する在留中の預貯金口座の開設、携帯電話の利用に関する契約手続き
・電気・ガス・水道等のライフラインに関する契約手続きに係る支援
・生活オリエンテーションの実施(生活ルールやマナー、金融機関・医療機関の利用方法、各種行政手続きなど)
・多言語対応スタッフによる言語面の支援
・生活のための日本語を学習する機会を提供
・外国人からの職業生活、日常生活又は社会生活に関する相談・苦情への対応
・外国人と日本人との交流の促進に係る支援(地域の自治会等の案内・就労または生活する地域の行事に関する案内など)
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。外国人労働者の受け入れが急速に進んでいる一方で、それに伴ったお悩みや課題もあがってきています。そのお悩みや課題を解決するため、支援機関も多様化してきました。
支援機関とひとくくりに言ってもそのサービスやサポート内容は機関によってさまざまです。
ぜひ、自社の方向性を踏まえながら、支援機関を上手く活用して外国人採用を進めていってください!