こんにちは、HR NOTEの野上です。
引き続き売り手市場が続いている新卒採用。学生にどのようにして自社を知ってもらうのか、そこからどのようにして魅力づけをおこなっていくのか、さまざまな課題に対して頭を悩ませている採用担当者の方も多いのではないでしょうか?
今回は株式会社ジンズが、19卒採用から初めて取り組む「集中力採用」について取材をさせていただきました。
ジンズはJINS MEME(ジンズ・ミーム)という集中力を数値化できるメガネで、2017年に「HR-Solution Contest~働き方改革×テクノロジー~」の優秀賞を受賞しています。
また、同年の12月にはThink Lab(シンク・ラボ)という「世界で1番集中ができるワークスペース」をオープンさせています。
集中できる場所と、集中力を数値化できるメガネを兼ね備えているジンズならではの「集中力採用」とは、どういう採用手法なのでしょうか。概要や、狙い、今後の展望についてご紹介いたします。
人物紹介
飯塚 翼 | 株式会社ジンズ 人事戦略室 採用グループ マネジャー
井上 一鷹 | 株式会社ジンズ JINS MEMEグループ マネジャー
1983年生まれ。慶應義塾大学理工学部卒業後、戦略コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルに入社し、大手製造業を中心とした事業戦略、技術経営戦略、人事組織戦略の立案に従事。2012年にジンズに入社。社長室、商品企画グループマネジャー、R&D室マネジャーを経て、現在はJINS MEME Gr 事業開発担当。学生時代に算数オリンピックアジア4位、数学オリンピック日本最終選考に進んだ経験がある。
ジンズが取り組む集中力採用とは
-今回、新たに取り組まれる「集中力採用」とは、どのような内容なのでしょうか?
飯塚氏:「集中力採用」はその名の通り、「集中力が高い人を採用していこう」という取り組みです。
集中力を数値化できるメガネ「JINS MEME」を活用して、学生の集中力を可視化・スコアリングし、集中力の高い学生には一気に最終面接にまで進んでいただけるといった採用フローになっています。
【集中力採用応募ページ】株式会社ジンズ|2019年新卒採用ホームページ
-どのように「集中力採用」の集客を進めているのでしょうか?
飯塚氏:ジンズの新卒採用の集客は、リクナビやマイナビなどの媒体を活用した集客、自社のホームページからの集客の2つをメインに採用を進めています。これらの集客は全て同一のエントリーページへとつながるのですが、その中で集中力採用と通常採用を同じようにPRをしています。
なので、学生は通常の採用と集中力採用を好きに選べるようになっており、通常通り来ていただいても結構ですし、集中力に強みがあるという学生であれば集中力採用に応募していただけるようにしています。集中力採用でこれまで会ったことのない学生層にリーチできるのではないかと考えております。
-3月から集中力採用の募集を開始して数週間が経ちましたが、エントリーしてきている学生に特徴などありましたか?
飯塚氏:今の段階では、「アンテナが高い学生のエントリーが多いな」、という実感があります。学生のプロフィールなどを見ても、通常のエントリーではなかなか出会えないような学生が集まっているように感じています。
集中力採用においては、5月6月でエントリーが増加することを期待しています。というのも、学生が就職活動をはじめて、何度か面接を経験して、「うまく話せなかった」「思いを伝えられなかった」といった学生たちが「集中力なら」と感じてエントリーをしてくれるのではと考えています。
なぜ集中力採用に取り組もうと思ったのか?
-集中力採用に取り組むにあたって、これまでの採用に何か課題などがあったのでしょうか?
飯塚氏:毎年、経営層から「1年間で何名採用して欲しい」というオーダーを受けて、どうやって採用していくかを形にしていました。これまで採用人数は問題なくクリアしていたので、採用ができていない状態というわけではなかったんです。
ただ、しっかり通常採用ができている状態だからこそ、中長期的な視点で「新しいことを仕掛けられていない」という課題を感じていたんです。
なので、採用における新しい流れや、自分たちができる新しい採用方法は常に模索しないといけないなと、1年前から考えるようになっていました。
そこで思いついたのが、「JINS MEME」を活用した採用でした。ジンズにはJINS MEMEという集中力を数値化できる眼鏡があるのに、これまで採用活動に活用していなかったことに気付き、JINS MEMEと採用の観点で何ができるかを考えました。
-それが集中力採用を導入した最初のきっかけなんですね。
飯塚氏:そうなんです。まず、集中力が高い人の特徴を仮説立てて、そういう人がジンズを発展させていく中で必要な人材になるかどうかを模索していきました。
その結果、「集中力がある人」はジンズの企業成長にとって必要な能力の1つだという結論になりました。そこから、「集中力がある候補者は一気に最終選考まで進つことで、今までとは違う人材もしっかりと見極めていこう」ということになったんです。
これまで続けていた採用だと、一般的な手法と同様に履歴書やコミュニケーション主体の基準がほとんどでした。
しかし、集中力はポテンシャルに関わってくるので、どうしても面接の場で計測することができないんです。なので、JINS MEMEをかけて集中力を計測することで、その数値を定量的に合否に関わる基準として採用に活用していきます。
-集中力が高い人と、コミュニケーション力が高い人でパフォーマンスは変わってくるものなのでしょうか。
飯塚氏:ジンズが運営している「世界一集中できるワークスペース」Think Labを立ち上げるきっかけにもなっているのですが、企業としてイノベーションを生み出していくには「集中力」と「コミュニケーション力」の2軸が重要だと思っています。
人材の考え方もThink Labのように、集中力とコミュニケーションの関係性が必要なのではないかと思ったんです。コミュニケーションだけではなく、集中ができる人材を採用していくことで、新しい人材の掛け合わせが発生し、もっとイノベーションが起きやすくなるかもしれないと考えたんです。
そしたら井上が、「集中力は、学生の将来にも、とても影響してくる」という話をしてくれたんです。
集中力が高い学生は経験値が違う
井上氏:新卒採用において「コミュニケーション力」はもちろん重要なのですが、それ以上に「集中力」を見ることも同じぐらい重要なんです。なぜなら、集中できる人って1つの経験に対する深さ、すなわち経験値の深さがとても深いんです。
同じ事象を見ても、なにかに集中できる人って経験を深く持つことができるんです。そうすると10年後20年後には集中力がある人とない人でかなりの経験値の差がついているはずなんです。なので、深い経験値を積み重ねた人は、環境の変化が会っても自分の経験を組み合わせて対応できる人材になります。つまり、「集中力の高さ=成長スピードの早さ」ですね。
集中がとても深い人を採用することで、3年先の未来も見えないような時代の中でも、なんとかできそうな人材になるのではないかと思っていました。
今いるジンズの社員はコミュニケーション能力が高い人がそろっているので、同じようなキャラクターが多くいるんです。コミュニケーション能力が高い人だけの組織ではなく、「集中力がとても高い」といった異色の人材が組織にいることで、いい刺激になるのかなと思っています。
飯塚氏:今年の集中力採用で、集中力が高い学生がいい人材であることがわかれば、翌年以降の通常採用の試験の中に集中力の計測をしてみてもいいかなと思っています。
-井上さんの中でもJINS MEMEを採用に活用していこうという考えはもともとあったんですか?
井上氏:昨年にJINS MEMEが賞をもらうなどして、目立つようになってから、周りの方たちからは「採用に使わないのはもったいないよね」という話をよくいただいていました。
日本の人事の方は、人事という市場の中で、採用にかなりのお金を使っているんですよ。今は働き方改革もあるので、タレントマネジメント向けのサービスが多くなってきたような気もするんですが、やはり市場が大きく動くのは採用なんですよね。
これまでは、生産性を上げるためのツールとしてJINS MEMEがフォーカスされていましたが、この集中力採用をきっかけに、「ポテンシャル=集中力を計測するツール」になったら良いなと思っています。
-実際に詳しい選考内容を教えていただけませんでしょうか?
飯塚氏:通常の採用であれば、3回の面接をおこなって学生の内定出しをおこなっています。ジンズにおける新卒のキャリアスタートは、店頭からスタートになるので、販売員として適性があるかどうかの線引きを一次選考でします。二次選考では、過去の経験、描いている未来の考え方、価値観などを、会社の価値観と照らし合わせます。そして、最終選考は意思確認をおこなうというフローです。
一方で、集中力採用では、学生にJINS MEMEを付けていただいた状態で、Think Labでワークをしていただき、ワークの点数と集中力のポイントを出していきます。このスコアと、履歴書を加味してJINSとして欲しい人材かどうかを総合的に判断し、最終選考に進める学生を絞っていきたいと思っています。
集中力採用の今後の展望
-集中力採用の今後の展望をお伺いしてもよろしいでしょうか。
飯塚氏:まずはやってみないとわかりませんが、集中力採用でJINSが求めている学生にたくさん出会えたらいいなと思っています。
でも採用というのは、最終的には候補者と面でぶつかっていくことが重要だと思っています。何百人っていう採用になると最終選考する数だけで2倍以上いたり、二次選考だけで1000人と出会ったりと、結構大変なんですよね。
もし、集中力採用で本当にいい学生を見極めることができたら、少ない母集団で、選考の行程も短くなるので、採用手法として集中力採用がメインでできる世界があるんじゃないのかなと思っています。
300人必要だったら、300人会って300人採れたら一番スマートですし、学生にとっても負担がないと思うんです。だから、これからの新卒採用はこの考え方が重要じゃないのかなって。
井上氏:今回はJINSだけでおこなっているんですけど、別の企業にツールとして導入してもらったり、TOEICやSPIテストのスコアのように、履歴書に「集中力が何点」と書けるようになれば面白いんじゃないかなって思っています。
今回の集中力採用であれば、試験をしている時の集中力だけを計測して判断しているんですけど、もう少し学生の日常の集中力を計測したいですね。
試験をしている30分だけの集中力じゃなく、JINS MEMEというライフログという価値を発揮させるなら、1年間の生活をJINS MEMEで計測をしてみて、学生がどんな生活をしてきて、いつのタイミングで集中していたのかを計測することができたらいいですよね。
飯塚氏:採用選考において、企業が知りたいのは大学生活で何を経験してきたのかです。そのために何回も質問をして、時間をかけて判断しています。学生生活の集中していたポイントをJINS MEMEで知ることができたらすごくいいと思いますね。
井上氏:採用担当者のスキルというのも、やはりその人のテクニカルな部分がどうしても抜けないので、面接で見極められることは非常に属人的なんです。
かといって、機械やAIが学生の採用を決めるっていう世界観が本当に好ましいかどうかも難しいと思っています。
やはり採用は、人の人生を決めることなので、最終的には人が見極める必要があると思うんです。JINS MEMEが出すスコアが、採用を決めるのではなくて、採用の補助の1つでしかないんですよね。
飯塚氏:そうですね。JINSはずっと人を大事にしてきた企業風土があるので、その部分を一番大事にして今回の集中力採用をこれから進めていきたいと思っています。