
大企業では、既にICカードやパソコンを活用した勤怠管理システムを導入している企業も多いかと思います。一方、中小企業のなかには、現在もタイムカードや紙の出勤簿などを使って勤怠管理をおこなっている企業も多く存在します。
しかし、紙ベースのアナログな勤怠管理では、集計に手間がかかってしまい、打刻漏れやチェックミスといった問題も起こりやすいでしょう。
すでに、勤怠管理システムを導入している会社の満足度はかなり高いようです。近年では、指紋認証機能付きの勤怠管理用のデバイスやシステムなどが安価に導入できるようになってきています。
本記事では、指紋認証を含む勤怠管理システムで活用できる打刻デバイスと、それぞれのメリット・デメリットを紹介します。
数多くある勤怠管理システムの中から、自社に見合うシステムを探す際、何を基準にして選べばいいのか、悩まれる方も多いのではないでしょうか。
そのような方のために今回、社労士監修のもと、「勤怠管理システムの比較表」をご用意いたしました。資料には以下のことがまとめられています。
・勤怠管理システムの5つの選定ポイント
・社労士のお客様のシステム導入失敗談
・法対応の観点において、システム選定で注意すべきこと
お客様の声をもとに作成した、比較表も付属しています。これから勤怠管理システムの導入を検討されている方はぜひご活用ください。
目次
1. 指紋認証による勤怠管理は可能?

勤怠管理システムを活用すれば、指紋認証により出退勤時刻を記録することが可能です。従業員の指紋を登録しておくことで、面倒な操作をすることなく、手を使ってスムーズに記録できます。タイムカードの紛失や、他の従業員に打刻してもらう代理打刻を防止することも可能なため、より正確で効率的な勤怠管理を実現できるでしょう。
1-1. タイムカードや出勤簿による勤怠管理ではミスが起こりがち
タイムカードは、出勤時刻と退勤時刻をレコーダーに差し込んで印字する、一般的な打刻システムです。
メリットとしては、タイムレコーダー本体の価格が安価なので手軽に導入しやすいこと、昔から馴染みのある打刻方法でありパソコンやインターネットを使わず簡単に操作できること、IT系のシステムが苦手な人でも安心して利用できることなどが挙げられます。
一方のデメリットは、勤務時間を手作業で集計するため、従業員の数が多いと管理部門の作業量が膨大になってしまうことです。また、タイムカードを紛失する可能性や、代理打刻などの不正行為がおこなわれる可能性もあります。
タイムカード以外にも、手書きの出勤簿やエクセルの出勤簿を作って社員に提出してもらう方法もあります。これらの管理方法に関しても、コストがかからないことがメリットとして挙げられますが、やはり集計は手作業になってしまうので莫大な労力が必要になるでしょう。
関連記事:タイムカードの計算方法は?電卓やエクセルによる方法を紹介
2. 指紋認証を含む生体認証による勤怠管理システム

指紋や指の静脈などを利用した生体認証は、個人を識別して打刻するシステムです。紙のタイムカードやICカードと比べて、なりすましをほぼ確実に防ぐことができます。また、ICカードやスマートフォンなどの端末を紛失する可能性もないので、運用・管理の負担を軽減することが可能です。
主な生体認証には以下5つの種類があります。概要や特徴は以下の表で確認してください。
種類 |
概要や特徴 |
指紋認証 |
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静脈認証(指の静脈) |
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静脈認証(手のひらの静脈) |
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顔認証 |
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虹彩認証 |
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生体認証は、接触が必要なタイプと非接触タイプの2つに分類されます。また基本的には、専用機器に手や顔などの特定の部位を当てたり、かざしたりして人物の違いを判別します。それぞれの生体認証方法の詳細は以下の通りです。
2-1. 指紋認証
指紋認証タイプは、生体認証のなかでも機器が比較的安いため、導入しやすいでしょう。専用の機器に指を当てることで指紋を読み取り、従業員の出退勤時刻を記録します。
簡単に利用できますが、指のむくみや肌荒れなどの影響で、うまく読み取れないケースもあります。指紋認証タイプを導入する場合は、どの程度の精度で読み取れるのか確認しておきましょう。
2-2. 静脈認証(指の静脈)
静脈認証は、指の静脈を読み取るタイプと手のひらの静脈を読み取るタイプに分けられます。指の静脈を読み取るタイプは、指をかざすだけで、非接触で認証することが可能です。
指紋認証とは異なり、指のむくみや肌荒れなどに影響されることはありません。精度の高い認証が可能ですが、その分、機器が高額になるため予算に合っているか確認しておきましょう。
2-3. 静脈認証(手のひらの静脈)
手のひらの静脈を読み取るタイプは、指の静脈を読み取るタイプより高精度な認証を実現できます。手のひらは、指よりも静脈の本数が多いからです。また、素早く認証して出退勤時刻を記録できるため、従業員数が多くても混み合うことは少ないでしょう。
2-4. 顔認証
顔認証タイプは、目や鼻など、従業員の顔の特徴を識別して出退勤時刻を記録します。指紋認証や静脈認証とは異なり、荷物を持っていても打刻できることが大きなメリットといえるでしょう。
ただし、部屋が暗い場合はうまく認証できないケースもあります。また、マスクを付けた状態では認証できないこともあるため、認証が面倒だと感じる従業員もいるかもしれません。
2-5. 虹彩認証
虹彩認証タイプは、瞳の周囲にある虹彩を利用して従業員を識別します。顔認証とは異なり、暗い部屋でも認証可能です。また、基本的にはメガネやコンタクトレンズなどを付けていても認証できます。
さまざまなメリットがありますが、高額な専用機器が必要となるため注意しましょう。
3. 生体認証以外の勤怠管理システム
生体認証以外の方法で勤怠管理をおこなうことも可能です。ここでは、ICカードやパソコンを使った勤怠管理の方法を紹介しますのでチェックしておきましょう。
【無料DL:タイムカードと勤怠管理システムの違いとは?】 ▶︎勤怠管理システムを使用した タイムカードの課題解決BOOK
3-1. ICカードリーダーでの打刻

専用のリーダーにICカードをかざすことで、出勤時刻と退勤時刻を打刻するシステムです。
社員専用のICカードを使って打刻をするので、代理などの不正行為を防ぎやすくなります。また、勤怠情報がデータとして自動集計されるため、勤怠情報の管理者の工数を大幅に短縮することができます。
3-2. スマートフォン・タブレットでの打刻

スマートフォンやタブレットに専用のアプリをダウンロードして使える打刻システムです。
従業員ごとにアカウントを発行して個人識別をすることで、なりすましを防ぐことができます。直行直帰など、外出先からでも打刻をすることが可能です。
また、パソコンやスマートフォンが貸与されないような職種であれば、職場にタブレットを1台準備すれば打刻をすることができます。
3-3. パソコンのブラウザからの打刻

自分のパソコンからブラウザを立ち上げて勤怠管理システムにログインし、出退勤時刻を打刻するタイプです。特別なリーダーなどを設置する必要がなく、初期投資を抑えて手軽に導入することができます。勤怠管理システムを活用すれば、打刻から集計、給与計算までを一括でおこなえます。
また、勤怠管理システムのなかには、GPS打刻という機能が搭載されているものもあり便利です。
このGPS打刻は、とくに「直行・直帰が多い」「一時的な勤務場所で働く従業員が多い」などの特徴を持つ職業では幅広く活躍します。
気になる場合は、以下の記事で詳しく確認してみてください。
※参考:『GPS打刻』をもっと詳しく! ▶︎GPS打刻とは|GPS機能の勤怠管理システム・アプリのメリット
4. 最新のデバイスで勤怠管理をするメリット

勤怠管理システムの導入を考えていくなかで、デバイスを用いての打刻管理には本当にメリットがあるのか、不安を感じる担当者も多いでしょう。
実際に得られるメリットは、勤怠管理システムの種類によって異なります。ここでは、上記で紹介をした打刻デバイスそれぞれのメリットを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
4-1. ICカードリーダーを活用した打刻のメリット
ICカードリーダーでの打刻を考える際に、「ICカードやカードリーダーにコストがかかるのでは?」と疑問を抱く担当者も少なくないでしょう。ですが、ICカードに対してコストがかかることは一切ありません。
会社から貸与している会社のセキュリティーカードやICカードの社員証、また通勤時に電車やバスで利用できる「FeliCa」搭載のICカード、電子マネーカードなどでの利用が可能です。
スマートフォンにも「FeliCa」が搭載されているものが増えてきたので、多くのデバイスでの利用が可能になります。ICカードと社員をシステム内で紐付けることができるので、わざわざ打刻専用のICカードを準備する必要はありません。
カードリーダーに関しては会社で準備をする必要がありますが、エントランスやフロアに数台設置をするだけで問題なく打刻することが可能です。
初期費用が少しかかりますが、勤怠管理データの管理や入力にかかる時間や、タイムカードの購入にかかるランニングコストなどを考えると、カードリーダーには多くのメリットがあるといえるでしょう。
しかし、従業員が情報を紐付けているICカードを忘れてきた際には打刻ができないというデメリットがあります。従業員が通勤で必ず使うICカードで打刻ができるようにするなどして、打刻漏れを防ぐ対策をとる必要があるでしょう。
4-2. 指紋などの生体認証を活用した打刻のメリット
勤怠管理を効率化するため、指紋などによる生体認証打刻を取り入れる企業も増えてきました。生体認証は、不正打刻の防止には一番効果的な打刻方法といえるでしょう。
指紋認証を含む生体認証のメリットは以下の通りです。
- 不正打刻を防止できる
- 管理の手間を削減できる
- ICカードのような持参忘れがない
- 外国人の従業員でも使いやすい
- 入退室管理と連携することでセキュリティ対策ができる
また、4つの生体認証のそれぞれのメリットは以下の通りです。
種類 |
メリット・デメリット |
指紋認証 |
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静脈認証(指の静脈) |
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静脈認証(手のひらの静脈) |
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顔認証 |
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虹彩認証 |
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指紋認証に関しては、スマホの指紋認証と同様に、皮膚の状態や指先の怪我などにより正確に本人認証ができず打刻ができない場合があります。
しかし、指の静脈を利用した打刻方法であれば、指紋認証のように指の状態に左右されることなく打刻をすることが可能です。スマートフォンやICカードを取り出す必要もないため、スムーズに打刻できるでしょう。
4-3. スマートフォン・タブレットを活用した打刻のメリット
スマートフォンやタブレットを活用した打刻方法も普及してきています。
アプリでの打刻の最大の懸念点は、「遅刻ギリギリになって遠方からの打刻が可能になる」などの不正が起こることです。しかし、最新の勤怠管理アプリであれば、スマートフォンのGPS機能と連動をすることで、従業員の所属する営業所や店舗からの距離を指定して打刻が可能な範囲を制限することができます。
さらに直行直帰などのイレギュラーな打刻であれば、事前にアプリ内で申請をおこなうことで、打刻した場所を管理者が確認することも可能です。
少人数の企業や、飲食店、小売店であれば社内に1台のタブレットを設置することで、全従業員が同じタブレットから打刻をすることができます。
スマートフォンやタブレットでの打刻は業種、職種を問わずに多くの企業に対応できメリットも多いので、ぜひ導入を検討しましょう。
4-4. パソコン・ブラウザを活用した打刻のメリット
パソコンを活用した打刻のメリットは、新たな機器を導入する必要がないことです。タイムカードや生体認証用のリーダーなどを準備する必要もないため、コストを抑えて導入できます。
また、勤怠管理システムによっては、社内で利用しているコミュニケーションツールと連携をして打刻ができるサービスも普及しており、「chatwork」や「Slack」などに対応できる打刻システムもあります。
「chatwork」のようなコミュニケーションツールを活用している会社であれば、連携できるシステムの導入を検討してみるのもいいかもしれません。今流行りのリモートワーカーには使いやすい打刻方法といえるでしょう。
また、打刻だけではなく、集計や管理までパソコン上で完結することも勤怠管理システムの大きな魅力です。紙のタイムカードを利用すると多くの時間がかかっていた集計業務も、システムの導入で大幅に効率化できるでしょう。
※参考:『スマホ・アプリで勤怠管理』をもっと詳しく! ▶︎タイムカードアプリで勤怠管理|導入メリットや最新システムを比較
5. 指紋認証などの勤怠管理システムを導入する際のポイント
先ほど紹介した通り、生体認証には指紋認証以外にもさまざまな種類があります。ここでは、生体認証を導入する際のポイントを紹介します。
5-1. 職場環境を考慮して選ぶ
どの生体認証を選べばいいのか迷う場合は、職場環境に合わせて選ぶのも1つの方法です。
職場環境の特徴・傾向 |
最適な生体認証の種類と理由 |
従業員の出勤・退勤時間が重なる場合 |
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人員の入れ替えが激しい場合 |
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機密情報の取り扱いが多い場合 |
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外国人の従業員が多い場合 |
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生体認証を導入する場合は、専用機器を設置する必要があります。そのため、設置環境についても事前に確認しておきましょう。具体的には、設置スペースの有無や、ホコリ・熱などの影響を受けにくい場所を用意することなどが挙げられます。
5-2. デメリットがあることも忘れずに
生体認証にはデメリットがあることも忘れてはいけません。生体認証の導入は、デメリットも考慮したうえで総合的に判断しましょう。具体的なデメリットは以下の通りです。
5-2-1. 機器が高額
生体認証の種類によっては、高額な専用機器を設置しなくてはなりません。複数の拠点に同時に導入する場合は、初期費用が高額になるので注意が必要です。
ただ、生体認証は長く利用できるので、かかったコストは回収できるでしょう。また、打刻管理の手間が省け、給与システムなどと連携することで給与計算の手間も削減できるなどの効果も得られます。
5-2-2. 在宅ワークや出先から打刻できない
生体認証は、基本的に出社する従業員を対象にしたシステムです。そのため、営業担当者や在宅ワーカーなどの勤怠管理には向いていません。
さまざまな勤務形態を採用する企業の場合は、生体認証以外の方法も検討したほうがよいでしょう。いつでもどこでも打刻できるスマートフォンやアプリを利用すれば、指紋認証の問題を解消してくれるでしょう。
6. 指紋認証などによる勤怠管理システムの選び方
指紋認証などによる勤怠管理システムを導入するときは、以下のような点に注意して選びましょう。
6-1. 必要な機能が搭載されているか確認する
まずは自社の課題を明確にしたうえで、解決のために必要な機能が搭載されているか確認することが大切です。搭載されている機能や特徴は、勤怠管理システムによって異なります。
打刻するのに時間がかかり、従業員の行列ができている場合は、素早く認証できるタイプがおすすめです。また、不正打刻が多く発生している場合は、認証精度の高いタイプを選ぶとよいでしょう。
6-2. 既存のシステムと連携できるか確認する
既存のシステムと連携できるかどうかも、勤怠管理システムを導入するときの重要なチェックポイントです。たとえば、給与計算システムと連携できれば、記録した勤怠データをもとに従業員ごとの給与を自動で算出できます。
多くの作業を自動化することで担当者の負担を軽減できるため、連携性については必ずチェックしておきましょう。
6-3. 法改正に対応できるか確認する
法改正に対応できるかどうかも確認しておきましょう。従業員の労働環境や労働時間に関する法律は、定期的に改正されます。自社内で独自のシステムを利用している場合などは、法改正に合わせて設定を変更することが必要です。
しかし、法改正があった際に自動でアップデートされる勤怠管理システムであれば、手作業で設定を変更する必要はありません。気づかないうちに法違反をしてしまうことを防止できるため、自動でアップデートされるシステムを選ぶとよいでしょう。
7. 不正打刻を防ぐためには指紋認証打刻も有効
今回は、指紋認証による生体認証を中心とした勤怠管理用の打刻デバイスの種類を紹介しました。同じ種類のデバイスでも、提供している勤怠管理システムによってはサービスの内容や打刻方法が異なってくることもあります。
導入を検討するにあたって、まずは会社の業種、業務形態が利用したい打刻方法に適しているかを考慮し、従業員が使いやすい打刻方法を選ぶことが重要です。
その後に、「勤怠集計を楽にしたい」「勤怠管理にかかるコストを削減したい」などの現状の課題を洗い出し、自社に最も適したものを選ぶようにしましょう。
アナログからデジタル化への移行がますます激しくなっていくなかで、管理者の工数削減のためにも勤怠管理システムの導入は有効です。従業員の使いやすさにも考慮した打刻デバイスを検討してみてください。
※参考:国内ほぼ全ての勤怠管理システムを網羅!料金・機能・メリット徹底比較|2022年最新版