「日本でHRTechを盛り上げるには、アメリカの真似をするな」自社の採用目的をぶらさないことが大切 | 人事部から企業成長を応援するメディアHR NOTE

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「日本でHRTechを盛り上げるには、アメリカの真似をするな」自社の採用目的をぶらさないことが大切

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※本記事は、インタビューを実施したうえで記事化しております。

ダイレクトリクルーティングの研究開発や、リファラルツール『GLOVER Refer』の企画・開発に携わってきたリクルートキャリア中山 好彦さんと、MOLTS寺倉 そめひこさん、HARES西村 創一朗さんによる対談記事の後編をご紹介。
後編では、HRTechツールや人事領域におけるデータに関する内容を中心にお話されています。

ひこさんプロフィール

中山 好彦(なかやま よしひこ)| 株式会社リクルートキャリア ビジネスディベロップメントスペシャリスト

大手メーカーでITソリューション営業に従事。その後リクルートに転職。主にIT業界のSI・ベンチャー企業向けの採用ソリューション営業に従事。現在は新規事業企画部門にてダイレクトリクルーティングの研究開発をおこなっている。リファラル採用管理ツール『GLOVER Refer』の企画・開発も担当。多数の企業でリファラル採用を成功に導く。
そめひこさんプロフィール

 寺倉そめひこ(てらくら そめひこ)| 株式会社MOLTS 代表取締役

経営コンサルティングファーム、広告代理店、藍染師を経て株式会社LIGに入社。入社1ヶ月半でマネージャーに就任。2015年3月より人事部長として人事部を発足。9月より執行役員に就任し、人事領域、メディア領域を担当。2016年3月に株式会社MOLTSを設立。Web集客、成果獲得に特化したサービスを提供しつつ、採用コンサルタントとしても活動。
西村さんプロフィール

西村 創一朗(にしむら そういちろう) | 株式会社HARES 代表取締役

2011年に株式会社リクルートキャリアに入社。法人営業、新規事業企画、採用担当を歴任。本業の傍ら「二兎を追って二兎を得れる世の中をつくる」をビジョンに掲げ、2015年に株式会社HARESを創業。2016年末にリクルートキャリアを退職し、独立。 プライベートでは三児のパパ。NPOファザーリングジャパン理事。地域の少年サッカークラブのコーチも務める。

リファラルツールをつくっているから言えることは、ツールだけじゃなにも変わらない

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西村さん
GLOVER Referをはじめ、テクノロジーを活用した採用ツールが多く出て来ましたが、ツールから人事や組織を変えることは可能なのか、お伺いさせてください。

 

そめひこさんたとえば、「リファラルの管理ツールがあれば効率化することができます」という部分だけで提供しても、本質は変わらないと思います。要は「良い会社」が採用成功するのであれば、ツール云々の前に「まずは良い会社にしていかないといけない」のではないでしょうか。

ただ、楽になるからとツールを導入しても、それで本当に組織が変わっていくのかは疑問があります。

 

中山さん僕もツールだけでは変わらないと思っています。僕は前職、日立製作所なのですが、そこで言われたことで覚えているのが、「学ぶ、変わる、変える」です。そして、この3工程を順番間違えたら何も変わらないということです。そして、「学ぶ」という人事に意思を持たせるための道具がツールだと思います。

つまり、データの可視化が無いと、正しい方向性がまず決められません。方向性さえ定められれば時間がかかるかもしれませんが、企業は成長していけると思います。

ツールを導入すれば、無条件で全部上手くいく、「変わる、変える」みたいなこともすぐにできるようになるのは大きな勘違いだと思います。「学ぶ」をしっかりしないとそこには続かないと思います。

ゴールセットをしないとデータをとっても結局ぶれる

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そめひこさん
あまり人事領域の情報を最近は仕入れていないのですが、HRTechが世の中を変えてくれるというような風潮はありますか。

中山さん
うーん、どうですかね。2012~13年ぐらいにシリコンバレーでホットだった情報が、今日本にきている感じですよね。

そめひこさん僕がGLOVER Referを使ってすごく良かったのは、社員協力数がデータで取れたところです。今まで手作業でやらないといけなかったことが、システムによって自動化されるので、その分意思決定に時間を使えるなど、高度なことができていくと思っています。

HRTech自体が流行っていって、データが一気に出てくるような世界観とか、アラートを出してくれる世界観になったら、人事はもっともっと業務範囲が広がっていくし、より求められるものが高まっていくし、人事業界自体が盛り上がっていくんじゃないかと。

海外では、HRTechが盛り上がることで人事のレベルがそれに伴って上がっていくということはあったんですか。

中山さん人事のレベルというより以前に、HRTech自体がまだハイプサイクル(ハイプ・サイクルとは、ガートナー社が提唱しているプロダクトライフサイクルにおけるイノベーション浸透のサイクル)の初期上昇局面であって、バズワードの域を出ていないかもしれません。

よって、まだまだそれを使いこなすような人事の方々が増えるといったステージには入っていないと思います。HRTechという言葉で、その中の移り変わりもとても早いものですが、昨今では、企業ブランドを社内に浸透させる「インナーブランディング」が、シリコンバレーではバズワードになっていると聞いています。

それこそ、評価をしないノーレイティングのようなものを取り入れて、1on1でいかにマネジメントサイクルを短くし、変えていくかという話です。このような仕組みを型にして、ツール化しているという動きが出てきている印象があります。いい人を採用するという文脈から、いい人、活躍する人を増やすという文脈にシフトしてきています。

どちらにせよ、日本でHRTechを盛り上げようとするのであれば、アメリカを真似するのではなく、日本企業のいいところをもとにプロダクトをつくっていく必要があると思います。「GLOVER Refer」は従業員総出で学生と実際に会う“全員採用“というリクルートキャリアの採用コンセプトを実現する手段としてつくったサービスです。そういうものが日本の企業中にまだまだたくさん埋まってると思うんですよね。

そめひこさんそういう感じなんですね。聞く人によって、「HRTechはこれから来るよ」みたいな感じで盛り上げている人もいれば、「HRTechと言っても、みんなが期待していることはほとんどできないよ」という人もいて、内情が気になっていたのですが、今日新しい視点が持てました。

中山さん結局は世の中の動きというよりも、「自社にとって優秀な人は誰なのか」を決めていかないと何も進まないということですね。

 

西村さんそうですよね。少し前まではピープルアナリティクスといった感じで、いかに従業員とか候補者のデータをためて分析するか。ビッグデータ、AIだと言っていましたが、そのゴールセットが無いデータは意味のないデータだということにどれだけ早く気付けるかが大切だと思っています。ゴールセットがないとタレントマネジメントをおこなったとしても意味ないんですよね。「自社にとっての優秀な人材って誰なんだっけ」「どうやったら育つんだっけ」ということを知る努力は必要ですね。

そめひこさん流行りに乗っかるってことはもちろん重要だし、それを選択肢として取り入れていくこともすごく重要ですが、昔から「これがうちのスタイルだ」「これが自分たちの会社に合っている」と決め込んでやっている人たちって強いですよね。

西村さん>自社の採用スタイルを持っている会社ってやっぱり強いと思います。そこにテクノロジーが乗っかってくると百人力だと思うんですけど、それを無くして、とりあえずなんか魔法の杖的にテクノロジーを活用することは難しいと思います。

採用決定における因子を見つけていきたい

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西村さん

 

最近はどういうデータに興味をもっているのですか。

 

中山さんたとえば、たまたま面接の際に「幼稚園が一緒だった」という情報が事前にあったとしたら、すごく盛り上がりますよね。「そこ住んでたの?」って。

仮にこういった偶然があったほうが、入社率が高まるとなれば、面接官のアサイン時に活用しない手はないですよね。このように採用決定に関わる因子を見つけて活かせないかを見ていきたいと思っています。

西村さん
情報の粒度
もそうですよね。

 

中山さん粒度なんですよ。西村さんは八王子出身だよね。たとえば、同じ東京都八王子市の話をしていても、「東京都?」と言うのと「八王子?」って言うのとでは全然違うんですよ。同じエリアの話をしているのに、全然違う情報になっているということがあります。

西村さん

共通した情報が珍しければ珍しいほど、一致した時の「ワオっ!」が大きいんですよね。

 

中山さん色んなコミュニケーションが面接では発生しているので、そこが分析できるといいんだろうなと思っています。それが「リファラル採用で紹介者の推薦コメントがあった方が、採用決定率が高い(※前回の記事を参照)」という話ともつながりがあるのではと思っています。

あとたとえば、関東の出身の人たちの中で「関東出身」同志だよねってなっても親和性が生まれないのですが、東京にきている関西の出身の人たちの中で「関西出身」っていうと急に親和性が生まれるとかですね。そういう違いで何かが起きる。コミュニティにおけるコンテキストと言われるものかと。そういうものをどうやって表現するか研究しています。

会社という概念自体もどんどんボーダレスになってくる??

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中山さん転職について考えると、昔と比べ転職はかなり一般的になっていると思います。働けること自体に対して喜べる人はあまりもういなくなっていて、会社にジョインした時に喜びを感じるかどうかという状態になっているように感じています。

そしてこれからは、リクルーティングというものの考え方を少し変えた方がいいのかなと思っています。雇用契約でなくて、共同体にジョインする時にどういう心理状態で契約するのかということが重要ではないかと。

「会社の際(きわ)、境界線」というものの存在が変わってきていると思います。ファン、アンバサダーじゃないですけど、社内外関わらずエンゲージがどれぐらい広いかという戦いになってきている中で、さまざまな雇用形態も生まれてきていますし、どうそれらを活かすかだと思います。

 

西村さん会社という概念自体もどんどんボーダレスになっているのかなと思っています。出入りというのも自由だし、社員かどうかの境界線がそれこそ曖昧になっています。

たとえば、そめひこさんが至るところでメルカリさんの「Go Bold」を言っています。それってそめひこさんはメルカリの社員ではないですし、勝手に広めてくれる人がいるという状態は、確かに社員じゃないかもしれないけども、確実に仲間じゃないですか。そういうグラデーションをデザインできる会社っていうのが、多分これからの採用で勝っていくんじゃないかと思います。

リクルートグループのとある役員の方が言っていたのは、「リクルートという会社をもっと公園みたいな会社にしたいんだよね」と。公園は色んな面白い遊具があって、「これ面白そう」って思った時に入って、遊び終えたらまた出ていって、また面白いと思ったら来てみたいな。こういう出入り自由な公園みたいな会社にしたいんだよねと。

会社と社員が従属的な関係だと、面白いもの生まれないし、面白がって働けないよねと。だったら面白がってジョインしてきて、プロジェクトをやって、また別に面白いものができたら外に行って、また面白いものがここにあれば戻ってくるという、こういう関係性にした方が結果的に面白いビジネスがつくれるのではないかと言っていました。

最後に

いかがでしたでしょうか。

特に印象的だったのは、HRTechサービスは世の中に数多くリリースされてきており、人事領域におけるデータ活用が注目されてきていますが、「何のために使うのか」「何を実現したいのか」といった導入目的を明確にせずに利用しても、あまり効果がないのではということでした。

HRTechサービスを有効活用する以前に、自社の採用方法や人事制度の見直しをおこなう必要があり、求人票の内容や求職者への対応など、細かいけれど、当たり前にできていないといけない部分を凡事徹底できているか。そのような土台がしっかりできているうえで導入・活用していく必要があるのではないでしょうか。

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