近年、「CHRO」というワードが注目を集めています。
本記事では、CHROという言葉の意味をはじめ、具体的な業務内容や、注目されている背景などもまとめていますので、ぜひご一読ください。
目次
1. CHROとは?
まずは、CHROという言葉を正しく理解することから始めましょう。
1-1. CHROの読み方
CHROは(Chief Human resource Officer)の略称です。アルファベットをそのまま一音ずつ「シー、エイチ、アール、オー」と読みます。
1-2. CHROの意味とポジション
CHROは最高人事責任者と訳されます。他にも、CPO(Chief People Officer)と呼ばれることもあるようです。
一部の企業では、CHROを「取締役人事部長」「執行役員人事部長」「人事担当執行役員」などという呼び方をしています。
CHROは欧米の企業でよくみられる役職ですが、日本への外資系企業の参入やグローバル化に伴い国内企業でも2000年代に入ってから導入する企業が増えてきました。
アメリカでは経営と執行が分離されているため、事業部門や機能部門を統率する立場の執行役として人事戦略の責任者であるCHROが存在します。
最高人事責任者というと人事部門の頂点というイメージを持つかも知れませんが、経営的な視点から生産性を向上させるために、社員をどう動かしていけば良いのかを戦略的に考えるCEO(Chief Executive Officer/最高経営責任者)の片腕的な役割を担うため、経営陣の1人として人事的観点から経営に携わります。
1-3. CHROとHRBPの違い
CHROと似たポジションに「HRBP」があります。HRBPは「Human Resouses Business Partner」の略称で、HRビジネスパートナーと呼ばれます。
CHROとHRBPは経営者と近い立場にあり、人事面をサポートする役割を担っているのは共通する点です。しかし、CHROは経営者の一員として人事領域の指揮を執るのに対し、HRBPは人事業務を統括し、人事の専門家として課題を解決する役割を担います。
2. 日本におけるCHROの現状と必要とされる背景
2016年10月18日にIDC Japan株式会社が発表した調査による、国内企業でのCHRO設置率は10.8%であり、41.3%の企業で人事部長がCHROの役割を担っていることがわかりました。
多くの企業では人事部長が人事戦略を担っていますが、CHROの役割を遂行できているのでしょうか。
管理部門を統括するポストに経理財務出身者が就くことが多いですが、経営のリソースである「ヒト」「モノ」「カネ」のうち、「ヒト」が動かなければ経営計画を達成することはできません。
CHROは事業を遂行する際に「誰が」を中心に考えます。
新規事業を立ち上げる時に「誰が」マネジメントをすれば成功するのか、「誰を」リーダーに置くかを、社内の人材だけでなく社外の人材も含めて検討をすることで、最適なチームを創り上げます。
そして新規事業が動き出せば、経営計画を達成するために必要であれば評価方法の見直しや、人事異動、新たな人材の投入等を迅速におこなうことで新規事業が円滑に機能し、利益を生み出せるようにコントロールします。
これはCHROが人事に関して絶対的な力を持っているから成せることであり、グローバル化やITが進化していき、仕事にスピード感が求められてきている現在、経営に必要な人事戦略・人事マネジメントを円滑におこなうために、CHROが求められてきていると考えられるでしょう。
3. 「人事部長じゃダメなの?」CHROに求められる役割とスキル・能力
日系企業における人事部長の役割は、人事採用・教育、労務管理、福利厚生、社員満足度等の管理業務が円滑に機能しているのか監督することであり、企業の成長や企業価値を伸ばすことが目的です。
人事に限らず、部長の役割は、経営方針に基づいて部下を動かして成果を出し、組織が円滑に機能するように環境を整えたり、部門の長期的な戦略を立てて部下の教育をおこなうことです。
そのため、自ら経営陣に働きかけるのではなく、経営陣から指示を受けて人事採用の計画を策定し、給与の見直しをおこないます。
一方で、CHROは先にも述べた通り、経営陣の1人でありCEOの片腕的な存在です。
CHROも人事採用・教育、労務管理、福利厚生等の業務にも携わりますが、戦略的人事を遂行するために、経営的観点から見た人事的観点の課題の洗い出しと課題解決策の実施がメインの業務になります。
3-1. CHO/CHROの主な業務
3-1-1.事業結果(生産性)の予測
人事的観点からみた事業結果の予測を立て、事業結果に与える人材の確保・人員配置、リーダー達がビジネス環境の変化に対応できるのか、部門をまとめられるのかなどを予測します。
また、予測した結果を客観的に評価して、適切な指数を設定するのも重要な業務です。社員のパフォーマンスは数値化しにくいため、今まで使用されていた指数が不適切だと思う場合は、新たな評価方法を導入するようにCEOに提言します。
3-1-2.事業目標を達成できなかった要因の分析
人事的観点からみて、なぜ事業目標を達成できなかったのかを分析します。
優秀な人材が競合他社へ流出していないか、社員の不満から生産性が低下していないか、組織が円滑に機能しているか、部門間のコミュニケーションに問題がないかなど、あらゆる方向から人に関する問題を洗い出します。
また、社員だけでなく経営陣のマネジメントスキルやリーダーシップについて評価するのもCHROの役割です。
事業目標を達成するべくアクションを起こしていたのかチェックをおこない、時には役職を退いてもらうための働きかけもおこないます。
3-1-3.戦略的人事の遂行
CHROは経営陣の1人として、新規事業の構築や事業計画を立てる段階から参加し、戦略的人事を遂行するための組織の改編や採用計画の立案をおこないます。
また、優秀な人材の定着率を上げるために評価や報酬の見直しをおこなうこともあります。
3-2. CHROに必要なスキル・能力
CHROとして絶対に必要なスキルや資格、能力があるわけではありません。しかし、以下のようなスキルや能力を持ち合わせた人物なら、より会社への貢献度が高まるでしょう。
スキル・能力 | 概要、具体的なスキル・能力 |
経営の知識・スキル |
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ヒューマンスキル |
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人事の経験・スキル |
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人事マネジメントの経験 ・スキル |
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戦略立案のスキル |
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課題解決のスキル |
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コミュニケーション能力 |
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4. CHROを育成するポイント
企業にとって重要なポジションであるCHROを育成することは簡単ではありません。従業員の中からCHROに相応しい人物を洗い出し、以下の2つのポイントに沿ってしっかりと育成しましょう。
4-1. さまざまな部署に配置して経験を積ませる
CHROには人事以外にも経営的な視点が必要です。そのため、さまざまな部署に配置して経験を積ませましょう。さまざまな部署を経験することで視野が広がり、多角的な視点を持つことができます。
また、多くの人と関わることで人脈が広がり、従業員同士で連携がとれれば、スムーズな業務遂行につながるでしょう。
4-2. アジャイル思考を身につけさせる
アジャイル思考とは、小さな単位で修正を繰り返しながらクオリティを上げていく手法です。さまざまな場面でこの思考を身につければ、CHROとして的確な判断力に基づいた迅速な行動力が可能となるでしょう。
5. CHRO導入企業の事例紹介
国内でいち早くCHROを導入した「株式会社サイバーエージェント」の事例を紹介します。
CHRO導入の目的 | 企業文化の浸透 |
CHROが導入した新制度 |
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得られた効果 |
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6. CHROは経営戦略的な人事業務を担う重要なポジション
いかがでしたでしょうか?
ITやSNSの普及に伴い世界の動きが瞬時に伝わる現代、経営の現場では迅速な決断と業務の遂行が求められます。
今までのように、業務担当から課長、課長から部長、部長から経営陣へ稟議を回して決裁をもらわなければ業務を遂行することができないのでは、情勢の変化に対応できません。それは人事業務にも同じことがいえます。
CHROは企業の経営陣の一角として、経営戦略に直結した戦略的な人事業務を遂行できるポジションです。
人事として経営に沿った、人員の配属やマネジメント、そして採用などにおいて、迅速に決断し、対応できるCHROは、今後ますます注目されるようになるでしょう。
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