「コアバリューに紐づく設計が大事」RECOMO橋本さんが『社外CHRO』として実践する経営・現場視点での人事戦略

CEO、COO、CTO、CFOというポジションは日本においても良く見られるようになってきましたが、最近では『CHRO』という役職にも注目が集まっています。

では、このCHROはどのような役割を担っていて、どんな経験・スキルが求められるのでしょうか。漠然とした認識のみをお持ちの方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、多くの人事経験や事業経験を持ち、現在は『社外CHRO』として多くの企業を支援している、株式会社RECOMOの橋本さんに、

  • CHROが注目されている背景
  • CHROに求められる役割や経験
  • 実際に橋本さんが実践している支援内容

など、「CHROとは何か」詳しくお伺いしました。

【人物紹介】橋本 祐造 | 株式会社RECOMO 代表取締役社長/CEO 兼 CHRO

1978年生まれ。2002年に早稲田大学卒業後、NHKに入局。営業職として約3年間従事。その後、人材コンサルティング会社を経て、GMOインターネット株式会社にてグループ人事部として活躍。以来、いくつかの会社で人材採用の戦略や方針、実行および人材育成プログラムの策定に携わりながら、複数社の社外CHROとして活躍中。2019年4月に株式会社RECOMOを創業。働くモットーは「人の可能性・価値を最大化する社会を創ること」

ヒトの可能性や価値を最大にすることが「CHRO」の責務

―今回のテーマである「CHRO」というポジションが注目されてきていますが、橋本さんはどのような役割だと考えていますか?


橋本さん
CHROは、HR」という名称の前に「C」が付いていますよね。ですので当然、人事部の責任者ではなく、経営における責任を担っています。

その中で、大きく捉えると「ヒトの可能性や価値を最大化する状態をつくること」が、CHROの役割だと考えています。


―なぜ、この数年でCHROというポジションが求められるようになってきているのでしょうか?


橋本さん
そもそも、これまでの人事の役割をみると、経営と現場の板挟みになっている現状があるんです。

経営陣からは、「採用計画を達成してくれとか、離職率を○%に下げてくれ、エンゲージメントをここまであげてほしい、従業員データを可視化できるようにしてほしい」など、オーダーがきたりします。

一方で、現場の従業員からすると、人事部は自分たちの味方であってほしいんです。自分たちの想いをぶつけて受け止めてくれる存在が人事なんです。

そして、「その想いを経営に上げてもらって、会社を変えてもらいたい」と思っているわけです。

これらを鑑みたときに、「どっちにもいい顔したいけど、どっちにもいい顔できない」という、中途半端な存在になってしまい、最終的には板挟みで身動きが取れなくなっちゃうんですよね。

でもこれだと、人事部もつらいし、経営もつらいし、現場もつらいという状況が生まれてしまい、誰も幸せにならない現状が、大前提としてあるんですね。

そんな中でも人事は、「会社の成長や従業員の働きやすさを目指して、どんな人事戦略を描き、採用計画や評価制度をつくり、カルチャーを体感・浸透させるために、どんなメッセージを伝えたらいいのか」など、考えていかないといけないわけです。

しかしこれは、非常に難しいことだと思いますし、現状の体制では限界があります。

さらに加えて、「ヒト・モノ・カネ・情報」の4つの経営資源の中で、特に「ヒト」の重要性が増してきていると言われています。

それなのに、「モノ・カネ・情報」には、COO、CFO、CTOといったようなポジションが定着しつつある一方、ヒトのポジションはまだそこまで至っていないんですよね。

当然、これらのポジションはもともと存在していなかったところから、時代の流れに沿ってそれぞれ生まれてきています。

そして今は「ヒト」が大事な時代です。モノもカネも情報もつくり出しているのは、結局「ヒト」なんです。

事業の成長性と継続率を見ても、「ヒト」に注力している企業のほうが確実に生き残っているんですよね。

このように、「ヒト」が事業に与える影響力がいかに大きいかに気づきはじめた結果、CHROというポジションが注視されているのだと思います。

―実際、採用マーケットにおいてCHROポジションの募集は増えてきていますか?


橋本さん
そうですね。めちゃくちゃ増えてきてますね。それこそ、私も最終的に独立して会社をつくりましたけど、幸いなことにその前後で非常に多くの会社からオファーをいただきました。

ただ募集は増えているものの、CHROといわれる方々ってなかなか市場にいないんですよね。

深い人事経験があり、事業・経営の経験もあって、マーケティングや広報の知識まで求めてしまうと、一人の人材要件としては、求めるレベルがかなり高いものになってしまいます。

ですので、「欲しいんだけど採れない」という状況が生まれているのだと思います。


―ちなみに、各経営者の方々とお話されていく中で、CHROの採用に踏み切る背景としてどのようなものがありますか?


橋本さん
「CEOが本来やりたいことに時間が使えていない」という背景が大きくあると感じています。

たとえば、「CEOの仕事、できていますか」と聞くと、みなさん「できてない」と答えるんです。

「じゃあ、どんな仕事がCEOの仕事なんですか」とたずねると、「会社の未来を考え、ビジョンを策定してもっと発信していきたい」「新しい事業を立ち上げていかねばならない」など、このあたりに集約されます。

さらに、「1カ月間の中で、どれぐらいCEOの時間を使えてますか?」と聞くと、「10%くらい」と返ってくるんです。

それ以外の時間は何をしているかというと、営業したり、メンバーの育成やフォローに対して時間を使っていたり、組織体制や仕組みづくりを考えたり、会議ばっかりみたいなケースが多いんですよね。

特に昨今は、会社のあり方とかや働き方が急速に変化しているフェーズなので、リモートワークをはじめ、今の状況にあわせた体制づくりが求められています。

そういったことに時間をとられた結果、やりたいことができない。そこを解消するためにCHROのような役割を担える人材を欲しているんですよね。

CHROに求められる業務や経験スキルとは何か?

―次に、CHROがやるべきことについて、お聞かせください。


橋本さん
CHROがまずやるべきこととして、大きく4つあると思っています。

自社の「ヒストリーテラー」になる

1つ目は自社を理解することです。

経営者が今までどんな人生を歩んできたのか。なぜ会社を設立するに至ったのか。まさにその企業の存在意義、アイデンティティーを理解できていないケースが散見されます。

これはベンチャー企業にありがちなのですが、「自分たちの会社がどのように成り立ってきたのか」という、歴史を語る「ヒストリーテラー」があまりいないんですよね。

「最初の2~3人のところから、苦労しながらなんとか情熱だけで頑張って、少し成功したんだけどそこから挫折した経験を経て、今があるんだよ」などといった経緯を誰も知らないんです。

目先の事業の状態を語れる人たちは多いのですが、これまでどうやって乗り越えてきたのかは語れないのです。

ここをしっかりと把握することが大事で、いろいろと過去を知ると、現状の課題と紐付いて見えてくるものがあるんです。「それがなぜ今起きているのか」という課題の本質や原体験の理解につながるのです。

未来の視点を持つ

次に2つ目。過去の話だけではいけません。「自分たちは一体何者なのか」がわかったら、次にどこに向かっているのか、未来を描いていくことが求められます。

売上、組織体制、社会的なポジションなど、それらをいつまでに達成したいのか、未来のありたい姿をCEOと一緒に考えていきます。

誰も未来を見据えずに、「自分たちが一体どこに向かっているのか」を知らないまま走り続けるのは、苦しいものです。

視点としては、10年とか、20年とか、30年。もしくはもっと見れるのであれば、100年先の未来を描いてみてもいいかもしれません。

自分たちはもうこの世にいないかもしれませんが、100年先の未来における自分たちの会社や組織がどうありたいのかまで経営者と一緒に議論していくことで、持続可能な成長につながると思います。

解決したい社会課題はなにか?

3つ目は、「解決したい社会課題は何か」を定義することです。自分たちは社会の中でどうありたくて、何の課題を解決するために存在するのか。

そこまでくると、理想の未来や目指すべき方向性がだいぶクリアになってきます。

そして、自社の現状や未来、存在意義を確認をしていくと、最終的にどこに行き着くのか。ここが一番大事なポイントになるのですが、独自の価値観であり、つまり「コアバリュー」です。

結局、自分たちは何者で、どこに向かっていて、どうありたいのか。これはコアバリューに集約されてくるんですよね。

コアバリューにもとづいた戦略設計

そして4つ目として、そこからコアバリューに紐付いた戦略を考えていくわけです。

コアバリューにもとづいた行動指針を策定しどのように浸透させていくのか。コアバリューに共感し、合致している人たちの採用。コアバリューに沿った研修の実施、評価制度の設計、フィードバックの実施などなど。

こういった観点から全体像を捉えて、経営の視点から「ヒト・モノ・カネ・情報」のヒトの部分のリソースを最大限に引き上げていくことがCHROの役割です。

―人事領域における幅広い経験が求められるのですね。


橋本さん
そうですね。当然ですが、多くの経験や知見がCHROに求められます。しかし、それらを一人だけで実行するにはあまりにも幅広すぎます。

ですので、各分野における経験豊富なメンバーを集め、チームを組成して対応していくこともCHROの役割だと思います。

その中で、CHROがメインで対応することは、中長期における経営体制をはじめとした人材戦略の策定です。CEOが見ている先の未来を実現するための採用・人事戦略を組み立てていく。

CEOが見ている世界観まで自分の視点を引き上げられるか、そこがCHROに求められる一番のポイントだと思います。

RECOMO(リコモ)が実践する『社外CHRO』という支援のかたち

―橋本さんが立ち上げたRECOMO(リコモ)では、どのような形で企業を支援されていくのでしょうか?


橋本さん
現在は『社外CHROサービス』といった形で支援させていただいております。

企業の成長フェーズによっていろんな問題が出てくると思います。たとえば資金調達のシリーズで、シード、アーリー、シリーズA・B・C、IPOとか、さまざまなフェーズがあるじゃないですか。

そして、それぞれのフェーズごとに会社の規模も変わります。最初は数人だったところから、30人、50人、100人と組織が大きくなっていきます。

すると、「30人の壁」「50人の壁」と言われるような組織におけるさまざまな歪みが生まれてきます。これにより、せっかく順調にきたのに一気に経営にブレーキがかかってしまうことは良くあります。

この組織のフェーズごとに出てくる課題に対し、経営者と一緒に並走しながら解消し、事業のスピード感を落とさず、むしろ加速させるために何をすべきか、「ヒト」という側面から支援しています。

橋本さんちょっと想像してほしいのですが、小学校の1クラスって30人くらいが在籍していて、そこに担任の先生が1人つきますよね。

先生1人が生徒30人を見て、トラブルを解消したり、学びを提供したり、通信簿で評価をしたりします。でも、この人数が50人になったときに、全員を見ることができるかと言われると、難易度が一気にあがります。


―たしかに、30人でも相当苦労しそうなのに、50人となると見きれないですよね。


橋本さん
企業も同様に、社長が一人ひとりをケアしながら自分の想いを届けていけるのって、たいていは30人ぐらいが限界だと思うんですね。

でも、50人を超えてきても「自分の想いは届けていける」と経営者の方々は思っているんです。

そして、徐々にサービスが軌道にのり、100人、150人の規模になってきたときに、いよいよ気付くんです。「なんか最近、勢いを感じないな」と。

このタイミングで、社員からは「うちの会社って何のために存在してるんですか」「私たち、どこに向かってるんですか」「大事にしている価値観って何なんですか」みたいな声があがってくるんですよ。

社長からすると、いろいろな場面でずっと伝えてきたんですよ。でも、全然伝わっていないという状況が生まれるんですね。

この状態だと、せっかく資金調達をして「いよいよこれからだ!」というときに、組織が崩壊してしまいブレーキがかかってしまうんです。

30人くらいのフェーズであれば、社長の想いが全員に行き届いていて、社員もそれを汲み取っているんですよね。

しかし、その後に入社してくる社員は違っていて、事業やサービスに魅力を感じて入社している人たちが多いわけです。これが徐々に大きな歪みとなっていくのです。

こうなると時すでに遅しで、大量の離職者がでるなど、一度大幅に組織の血の入れ替えをしないといけない場合もあります。

―組織が崩壊した会社で良く聞く話ですね…。


橋本さん
そうならないように、早い段階から支援させていただき、CEOの原体験から会社設立の想い、会社の在りたい姿、解決したい社会問題などからコアバリューを策定し、戦略に落とし込んでいきます。

それがカルチャーとなり、社長の代わりにそのメッセージを伝えていける社員が増えていく状態をつくれたとしたら、一気にスケールさせることが可能です。

そこから具体的に、例えば半年後〜1年後までにどんなビジョンがあって、そのための組織体制はこうで、そのために誰を採用すべきで、どんな社内文化となるのか、どう仕組みで変えていくかなど、詳細を詰めていきます。

採用であれば、「このポジションがこのフェーズで必要になるので、今のうちから採用に動きましょう」とか、「社外からプロフェッショナルを顧問として迎え、その下に引き上げたい社員をつけて1年後にリーダーにしましょう」など、戦略が取れるわけですよ。

事業成長か組織強化か、究極の2択を迫られる前に考えたいこと

―最後になりますが、人事や組織で課題を抱えている経営者・人事の方に向けて、お伝えしたいことがあればお願いします。


橋本さん
課題が起きること自体は、むしろ組織の成長痛にも値するところなので、課題を恐れることは不必要なことだと感じています。

別に難しく考えなくてもよくて、200人規模になれば一人ひとり見られなくなるだろうし、課題がでないほうがおかしいんですよね。

ただ、それを最小限にするために、初期の一人ひとりの顔と名前と性格が一致している状態から、将来的に起きる壁に対して準備をしていくべきです。そうすることで、その先の持続的な成長が見込めると思うんです。

最近、相談をいただく中ですごく多いのが、「事業と組織の成長、どちらに注力すべきか2択を迫られている」という内容です。

最初は当然、事業成長に注力していきます。とにかく事業を立ち上げないとマネタイズできませんから。

そこから100人とか150人ぐらいになってきたときに気づくわけです。「なんか事業成長に対して組織体制が追いついてないな」と。

そして、このまま事業成長を優先させた方がいいのか、一度事業を足踏みして組織体制をつくったらいいのか、この2択を迫られるわけですよ。

事業成長の方を優先させると、当然ですけどエンゲージメントが一気に落ちるので、離職につながります。そうなると、いつまでも100人前後の規模をいったりきたりするような状況が生まれます。

一方で、組織体制に注力すると、今度は事業が立ち行かなくなり、従業員を抱えるだけのキャッシュがなくなっていく可能性があります。

そこに対して、「ミドルマネジメント層を育成しなきゃ」みたいな感じでやるのですが、残念ながらそんな簡単な話ではありません。最初からできていたら誰も苦労しないわけですよ。

ですので、自分たちのカルチャーやコアバリューにもとづいて、事業、組織をどうつくっていくのか、その本質から入っていかないと、結局何も変えることができないのです。


―コアバリューなしに企業経営はできないのですね。


橋本さん
そうですね。そこがないと、結局何のためにやっているのか見出だせなくなり、みんなブレていくんです。

「評価制度を変えれば良い」「リーダーをつければ良い」という話ではなく、本質的なところから見直していくことが重要だと思います。

そこを我々は、経営者と一緒にプロジェクトを結成して進めながら、機能化/体制化をおこない、内製化できるまでサポートしていきます。

RECOMOという存在を通して、ヒトの可能性を広げ・価値を発揮できるきっかけであり続けたいと考えています。そして未来に希望を感じられる社会づくりに貢献していきたいですね。

組織成長に課題を感じている経営者の方は、まずはお気軽にご相談いただけると嬉しいです。

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