CSFとは日本語に訳すと「重要成功要因」のことで、英語の原語を略したビジネス用語の一つです。CSFはKSF・KFSとほぼ同義で用いられます。ただし、CSFとKGIやKPIには意味の違いがあります。この記事では、CSFとは何か、混同しがちな用語との違いについて具体例を踏まえながらわかりやすく解説します。また、フレームワークを活用したCSFの設定方法も紹介します。
目次
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1. CSF(重要成功要因)とは?
CSFとは「Critical Success Factor」の略称で、日本語で訳すと「重要成功要因」になります。つまり、CSFとは、事業成功のために欠かせない重要な要素といえます。多くの場合、CSFは企業の経営目標や事業目標の達成のために策定されます。しかし、各プロジェクトや各プログラムの目標達成に向けた導入も可能です。ここでは、CSFと混同しがちな用語との違いを説明したうえで、CSFを設定する目的やメリットについて詳しく紹介します。
1-1. CSFとKFS・KSFの違い
CSFとよく似た用語に、KFS(Key Factor for Success)やKSF(Key Success Factor)があります。KFSやKSFも日本語にすると「重要成功要因」と訳すことが可能です。そのため、CSF・KFS・KSFは、ほとんど同義として用いることができます。
1-2. CSFとKGIの違い
KGIとは「Key Goal Indicator 」の略称で、日本語訳は「重要目標達成指標」になります。つまり、企業経営の最終的なゴールがKGIとなります。一方、CSFは企業目標を達成するために、最も重要となる要因のことです。そのため、最終目標であるKGIを達成するための重要な要素がCSFになります。このように、CSFとKGIは違う意味を持ちます。ただし、CSFとKGIに関連性があることをきちんと押さえておきましょう。
関連記事:KGIとKPIの違いとは?設定方法や具体例、メリット、注意点をわかりやすく解説!
1-3. CSFとKPIの違い
KPIとは「Key Performance Indicator」の略称で、日本語では「重要業績評価指標」と表されます。つまり、KPIとは、目標を達成するためのプロセスを計測・評価するための指標といえます。ビジネスにおいて、KGIが最終目標であるのに対し、KPIは中間目標になります。
最終ゴールであるKGIから、目標達成のために重要となる要因CSFを洗い出し、それを基に中間目標を設定して進捗状況を管理することで、効率よく目標達成を目指すことが可能です。このように、CFS・KGI・KPIには意味の違いがありますが、相互に関連し合うことを正しく理解しておきましょう。
関連記事:KPIとは?メリット・デメリットや設定のポイントをわかりやすく解説!
1-4. CSFの設定が重要な理由
最終ゴールであるKGIが設定できても、その目標が抽象的だと、従業員はどのような行動をすれば目標にたどり着けるのかがわかりません。また、行動に対する優先順位がないことで、後回しでもよいタスクに工数を割いてしまい、目標達成に時間がかかってしまう可能性もあります。
目標達成にはあらゆる要因が関係してきます。CSFを設定することで、KGI達成のために最重要となる要因を特定することが可能です。これにより、組織が一丸となって同じ方向を向いて仕事に取り組みやすくなります。また、CSFを基に自社のリソースを最適化することで、効率よく企業の経営目標を達成することができるようになります。
2. CSFのタイプ【具体例つき】
CSFには、次の5つのタイプがあります。
- 業界に関わるCSF
- 競合他社に関わるCSF
- 一時的なCSF
- 環境に関わるCSF
- 管理職に関わるCSF
CSFを検討する際、これらの5つのタイプを正しく理解しておくと、スムーズに設定することができるようになります。ここでは、それぞれの種類のCSFの特徴や具体例について解説します。
2-1. 業界に関わるCSF
業界に関わるCSFとは、自社が属する業界の流れを分析したうえで将来的な予測に基づき設定される重要成功要因のことです。業界に関わるCSFには、次のような具体例が挙げられます。
- 業界ナンバーワンの売上
- 業界水準を上回るサービス内容
- 業界で1番のカスタマーサービス
業界に関わるCSFは、その業界で生き残っていくためにも重要となります。時代や社会の変化に応じて変わりやすいので、積極的に調査・分析をおこなったうえで設定されることが求められます。
2-2. 競合他社に関わるCSF
競合他社に関わるCSFとは、自社と競合する他社との比較結果の分析などから設定される事業成功に重要となる要因のことです。競合他社に関わるCSFには、次のような具体例が挙げられます。
- 競合他社よりも自社ブランドの認知度を高める
- 競合他社よりも業界シェア率を高める
- 競合他社よりも丁寧なサービスを提供する
競合他社に関わるCSFを設定することで、競合他社との差別化につなげ、自社の競争力を高めることができるようになります。
2-3. 一時的なCSF
一時的なCSFとは、目標達成へ恒久的に影響を及ぼすことはないが、継続的に事業を成功させるために重要となる可能性がある成功要因のことです。たとえば、災害や感染症などを考慮して設定されるものが、一時的なCSFに該当します。一時的なCSFも設定しておくことで、持続的な企業の発展につなげることが可能です。
2-4. 環境に関わるCSF
環境に関わるCSFとは、経済情勢・政策変更・法改正など、外的要因の分析や予測から設定される事業成功に欠かせない重要要因のことです。環境に関わるCSFには、次のような具体例が挙げられます。
- 円安に伴う輸出製品のラインナップの充実化
- 法改正に伴うサービス内容の変更
環境に関わるCSFを設定することで、外的要因への対応力が向上し、自社の継続的な生存と成長につながります。
2-5. 管理職に関わるCSF
管理職に関わるCSFとは、部長や課長、係長、主任などの管理職を対象として設定される重要成功要因のことです。管理職に関わるCSFには、次のような具体例が挙げられます。
- 管理職の業務遂行能力の向上
- 管理職の対人関係能力のアップ
- 管理職の論理的思考や戦略思考の強化
管理職に関わるCSFは、経営に重要な影響を与える権限が付与されているマネジメントクラスを対象に設定されるため、経営目標の達成にも大きな影響を与えます。また、組織の運営や管理において重要な役割を担う管理職の課題の明確化やスキルアップにも役立ちます。
3. CSFの設定方法
CSFの正しい設定方法を理解しておくことで、スムーズに重要成功要因を洗い出して設定をおこなうことができます。ここでは、CSFの設定手順について詳しく紹介します。
3-1. KGIを設定する
CSFを設定するには、自社がどのようなことを実現したいのか、最終ゴール(KGI)をまず設定することが大切です。KGIは、認識齟齬を生じさせないためにも、定量的で具体的に設定することが重要です。また、最終ゴールの達成が難しすぎると、従業員はモチベーションを失ってしまいます。そのため、現実的に達成可能なKGIを設定するようにしましょう。
3-2. 現状を分析して課題を洗い出す
KGIを達成するために、自社が現在どのような状況に置かれているのか現状を分析することが大切です。この際、主観が混じったり、判断材料に抜け漏れが発生したりすると、正しく現状を分析できない可能性があります。データを活用するなどして、客観的に現状を分析することが重要です。また、「SWOT分析」や「3C分析」といったフレームワークを活用するのも一つの手です。現状が洗い出されたら、目標と現状のギャップが解決すべき課題となります。
3-3. 課題解決のアプローチを検討する
課題が明確になったら、それを解決するためのアプローチを検討しましょう。この際、KJ法を活用するのがおすすめです。KJ法とは、ブレインストーミングなどで洗い出された断片的な意見やアイデアを論理的に整理するために用いられる手法です。具体的には、カード状にした紙や付箋などに洗い出された一つひとつの意見・アイデアを記載したうえで、並び替えやグルーピングを実施して整理をおこなっていきます。複数の考えが結びつくことで、新たな課題が発見されたり、より効果的な課題解決のアプローチが生まれたりする可能性があります。
関連記事:KJ法とは?できるだけ簡単なやり方やブレインストーミングとの関係を紹介
3-4. 最適なCSFを設定する
KJ法などを用いて、課題を解決するためのアプローチが明確になったら、最も効果があるものをCSFに設定しましょう。CSFの設定後は、それに対する行動を明確にするため、KPIを設定します。KPIは進捗状況を把握するために用いられるので、定量的に設定することが重要です。
3-5. 【ポイント】KPIツリーとは?
KPIツリーとは、KGI・CSF・KPIの関係性をツリー状にして可視化したものを指します。KPIツリーを作成すれば、KGI・CSF・KPIがきちんと関連し合っているかどうかを一目で把握することが可能です。そのため、関連性がない場合や、不足項目がある場合、正しくCSFやKPIの設定をし直すことができます。また、KPIツリーにより目標やその進捗状況が可視化されることで、情報共有もスムーズになり、効率よく目標達成を目指すことが可能です。このように、KGI・CSF・KPIを設定したら、KPIツリーを活用して、情報を可視化し、共有してみるのもおすすめです。
関連記事:KPIツリーとは?メリットや作り方のポイント、運用上の注意点を解説!
4. CSF分析に役立つフレームワーク
適切なCSFを設定しなければ、目標達成から遠のいてしまう恐れがあります。CSFの設定に役立つのがフレームワークです。ここでは、CSF分析に役立つフレームワークについて詳しく紹介します。
4-1. SWOT分析
SWOT分析とは、「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4つに区分し、内部要因と外部要因を掛け合わせて分析を実施したうえで、戦略を立案するためのフレームワークを指します。CSFを設定する際、内部要因と外部要因の両方の視点から検討することが大切です。SWOT分析であれば、内部と外部の環境について同時に分析するので、効率よくCSFを設定することができます。
4-2. 3C分析
3C分析とは、「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの観点から、自社の取り巻く環境を分析するフレームワークのことです。3C分析を活用することで、客観的に外部の状況や自社の強み・弱みを把握することができます。また、シンプルなフレームワークであるため、取り入れやすいというメリットもあります。3C分析を用いて、自社の状況を客観的に整理したうえで、CSFを適切に設定しましょう。
4-3. PEST分析
PEST分析とは、「Politics(政治)」「Economy(経済)」「Society(社会)」「Technology(技術)」の4つのマクロ的な観点から、企業を取り巻く外部環境を分析するフレームワークのことです。PEST分析を用いることで、自社でコントロールが難しい外部因子を客観的に把握し、効率よくビジネスチャンスやリスクを洗い出すことができます。
CSFの設定には、内部要因だけでなく、外部要因の分析も必要です。新しい商品・製品の開発や新規事業への参入を考えている場合、とくに外部要因の影響を受けやすいです。PEST分析を活用し、客観的に正しく外部環境を把握したうえで、CSFを検討することが推奨されます。
4-4. バリューチェーン分析
バリューチェーン分析とは、自社の事業活動を工程ごとに区分して、それぞれの付加価値を分析するためのフレームワークです。バリューチェーン分析を活用することで、自社のどの部分に強みがあるのか、課題があるのかを特定することが可能です。これにより、企業目標を達成するために、取り組むべき重要な因子を見つけて、適切なCSFを設定することができるようになります。
4-5. ファイブフォース分析
ファイブフォース(5F)分析とは、次の5つの観点から企業を取り巻く競争要因を分析するためのフレームワークを指します。
- 買い手(顧客)の交渉力
- 売り手(サプライヤー)の交渉力
- 業界内の競争
- 業界への新規参入企業
- 代替品の存在
ファイブフォース分析を用いることで、業界における収益構造を明らかにしたうえで、市場での自社の立ち位置を客観視することができるようになります。ファイブフォース分析による結果を利用すれば、収益性や参入障壁の高さ・低さを考慮したCSFの設定が可能になります。
4-6. STP分析
STP分析とは、「Segmentation(セグメンテーション)」「Targeting(ターゲティング)」「Positioning(ポジショニング)」の3つの観点から、市場や競合の環境を分析するためのフレームワークを指します。STP分析を用いることで、顧客ニーズや効果的なアプローチ方法、競合他社との差別化ポイントを効率よく分析することが可能です。STP分析により、自社が有利に立てる市場や環境を把握したうえで、CSFを設定するのも一つの手です。
4-7. 4P分析
4P分析とは、「Product(商品・サービス)」「Price(価格)」「Place(販売場所・提供方法)」「Promotion(販促活動)」の4つの観点から、具体的な戦略・施策を立案するためのフレームワークです。4P分析を用いれば、商品・サービスの特徴だけでなく、価格や販売方法なども踏まえて、総合的な視点から分析をおこなうことができます。そのため、マーケティングに関係する判断材料を抜け漏れなく洗い出したうえで、目標達成のためのCSF(重要成功要因)を設定したい場合に、4P分析はおすすめのフレームワークといえます。
5. CSFを設定する際の注意点
CSFの設定には気を付けるべきポイントがいくつかあります。ここでは、CSFを設定する際の注意点について詳しく紹介します。
5-1. CSFは定期的に見直しが必要
時代や社会の変化とともに、CSF(重要成功要因)は変わります。KGIは変わらなくとも、CSFだけ変化するケースもあります。CSFが変化しているのにもかかわらず、設定を見直さないままでいると、行動も変わらず、想定しているよりも目標達成に時間がかかってしまう恐れがあります。このように、CSFは定期的な見直しが必要であることを押さえておきましょう。
5-2. CSFの優先順位付けを実施する
CSFを一つに絞り込めないこともあるかもしれません。そのような場合、顧客や従業員などにアンケートやヒアリングをしてみるのがおすすめです。CSFの優先順位付けがなされることで、目標達成に向けてどの要因から着手すべきかが明確になります。
5-3. 目標管理ツールの導入も検討する
KGI・CSF・KPIが適切に設定できても、その進捗状況を正しく管理できなければ上手く機能しません。目標達成のためのプロセスを効率よく管理したい場合、目標管理ツールの導入も検討しましょう。
目標管理ツールであれば、目標の達成状況を一元管理することができます。また、データ分析やグラフ化する機能も搭載されているため、目標に対する進捗状況を可視化して、情報共有をスムーズにおこなうことも可能です。ただし、目標管理ツールにはさまざまな種類があるので、料金や機能、使いやすさなどの観点から複数のシステムを比較して、自社のニーズにあったものを導入しましょう。
6. CSFを適切に設定して効率よく事業を成功させよう!
CSF(重要成功要因)とは、最終ゴールであるKGIを達成するために、最も重要となる要因のことです。CSFの設定後は、KPIを設定して、進捗状況を管理することが推奨されます。CSFは時代や社会のニーズによって変化する恐れもあるので、定期的な見直しが必要です。KGI・CSF・KPIの設定や運用に課題を感じている場合、新たにフレームワークを活用したり、目標管理ツールを導入してみたりするのも一つの手です。
福利厚生を充実させることは採用・定着にもつながるため重要ですが、よく手段としてとられる賃上げよりも低コストで従業員満足度をあげられる福利厚生サービスがあることをご存知でしょうか。
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