コーポレートミッションとして「感情報酬を社会基盤に」を掲げ、組織を変える行動を増やし組織課題を解決するHRテック事業「ピアボーナス®︎Unipos」を提供するUnipos株式会社。
今回は、2021年10月21日に同社が開催した『すごい仕事の舞台裏大賞2021』の内容をイベントレポートとして前後編に分けてお届けします。
本イベントは、Unipos導入企業の中から「すごい仕事」を生み出す過程でおこなわれたチーム・組織の知られざる工夫や挑戦を再発見し、表彰するアワードとなります。
後編となる本記事では、実際に受賞された企業の取り組み事例について、受賞企業4社が登壇したパネルディスカッション『組織文化を「知り、変え、進化させた」企業の秘訣とは―ウィニングカルチャーを形成したすごい組織の舞台裏―』の内容を再編してお届けします。
1. 『すごい仕事の舞台裏大賞2021』受賞企業4社がパネルディスカッションに登壇!
本日モデレーターを務めます、Unipos株式会社執行役員CPOの斉藤知明と申します。
パネルディスカッション内では、受賞企業各社の取り組みを実際に伺いながら、深掘りをしていく形で進行していこうと思いますのでよろしくお願いいたします。
『すごい仕事の舞台裏大賞2021』受賞企業一覧 |
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①最優秀賞 |
②組織風土賞 |
③理念浸透賞 |
④マネジメント賞 |
先の表彰でもご紹介させていただきました各社の皆様に、本日のパネルディスカッションにもご登壇いただきます。
登壇者紹介
早速ですが、パネルディスカッションのテーマは“組織風土醸成”です。
この1、2年はコロナが来たタイミングでもあり、様々な変化もあったタイミングでもありました。
まずは、コロナ禍で生まれた課題に対し、どのような施策を実施したのか、中竹氏の講演を元にウィニングカルチャーの具体的な事例に触れていきたいと思います。
中竹さんによる基調講演の中で「組織風土や組織文化を変えるためには、まず知ることから」といったお話がありました。
この組織風土というものに対して2つのクエスチョンを用意しましたので、早速ディスカッションに移っていきたいと思います。
2-A. 受賞企業が実践した取り組み内容と成果に迫る
1つ目のクエスチョンは、「すごい仕事の舞台裏」でのエピソードを元に、
②実施した取り組み
③取り組みの成果
を教えてください。
取り組みへの背景やきっかけから、実際得られた成果など、詳しいお話を順に伺っていきたいと思います。
部門を超えシナジーを生んだバディ制|伊勢丹新宿店中井さん
伊勢丹三越の中井です。よろしくお願いします。
私は、1997年に入社しバイヤーを経験した後、現在は「CS・ES推進部」担当として業務改革に携わっています。
伊勢丹新宿店はコロナ前で年間2500万人以上のお客様に来店いただいている百貨店で、従業員数も1万人を超えており日本を代表する百貨店です。
組織づくりに取り組んだきっかけは「部門の壁」
弊社の店舗営業部門は「外商部門」と「店頭営業部門」の2部門があり、外商部門のセールスには「店舗を利用してもらいたい」というニーズがあります。
対して、店頭での買物をサポートするストアアテンドは、店頭にいるポテンシャルの持ったお客様はポテンシャルを「識別化・外商顧客化したい」というニーズがありました。
このような、それぞれの異なるニーズに対して「one to oneだけでは限界がある」「部門の壁を超えた対応ができない」という課題が存在していました。
外商部門のセールスが個人商店化することなくお客様のニーズに応えていくためには、生まれてしまった矢印のずれを正しくする必要がありました。
「バディ制」の導入で、外商担当が提供する商品の幅を拡大
このような背景から、弊社では「バディ制」というものを導入することにしました。具体的には、「外商担当」と「店頭のストアアテンド」をバディとして組ませて、外商の顧客にサービス提供をおこなうということになります。
バディ制の導入により、外商顧客だったお客様が普段とは違った商品をお求めになった時でもストアアテンドが専門で持っている商品のセールスをできるため、CSの観点でサービス向上が実現しました。
さらに、チームを組むことで商品情報収集力や部門間連携の強化にもつながり、今まで以上に様々な関係性の矢印が生まれたことが非常に良かったと感じています。
そして、結果として、コロナ禍で非常に苦しい状況ではあったものの外商部門に関しての客単価は125%、全体では売り上げ106%という成果を出すことができました。
ありがとうございます。
お客様への提供価値を考えた末にコラボレーションが必要になったという点は、非常に素晴らしいきっかけだと感じました。
コミュニケーションの促進はざっくり語られることが多い中で、伊勢丹新宿店様は明確に「ここ」と「ここ」がコラボレーションすべきであるという部分が見えていたからこそ成功したのではないかと思いますね。
それでは、次に大角さんお願いいたします。
自分たちで“組織づくり”を定義|SPS大角さん
はい、よろしくお願いいたします。
まず私たちの仕事は、全国の施設で顧客との接点を担う「おもてなし」です。
プロ意識が生んだコミュニケーションの課題
そこで生じていた課題は明白でした。
覚えなければいけない仕事が多い中で、勤務中は雑談を最小限にするために「コミュニケーションが希薄化」してしまっていたのが一番の課題でした。
そして、結果として離職者が増えて、新規で採用しなければいけないが定着も難しいという悪循環に陥っていました。
当初から、原因は「コミュニケーション不足にある」と考えていたのですが、「そもそも自分たちはどのような組織を目指すべきなのか」といったことから考える始めることが必要だという結論に至ったのです。
0から定義することから始めた組織づくり
課題が明確になり、対処をする上では、まず「安定運営」とは何かを定義するところから始めました。
そして、必要な要素を抽出し「自分たちですぐに始められることをまずやろう」ということで、コミュニケーション機会を増やす施策から手を付けました。
コミュニケーション」のシーンは、雑談・面談・相談・対話・議論というように、種類は様々です。
様々なコミュニケーションがある中で「面談」や「相談」の時間がより有意義なものになるためには、土台として日々の「雑談」が重要であるという結論に至りました。
ここでUniposさんのご協力をいただいて、日ごろのちょっとした感謝・賞賛・応援といったコミュニケーションが取れるようにしました。
また、昨年社内で策定したSPSバリュー(3つの価値観)を定めて、ハッシュタグとして設定し、などを用いUniposを使いながら自然と普段からバリューに親しむことができるという取り組みも始めました。
その結果として、年1回の社員意識調査でも結果が向上、クライアントからスタッフの優れたサービスに表彰を頂く機会にも恵まれ、従業員満足が顧客満足につながってきたと実感しています。
なるほど。ありがとうございます。
各社に共通項が見えてくるのが非常に面白いところだなと感じています。早く皆さんの事例を伺った後にディスカッションしたいですね。
では続きまして蓮井さんよろしくお願いします。
組織の拡大から理念再構築|HISAKA蓮井さん
はい。日阪製作所の蓮井です。
弊社は670人くらいの中堅の機械メーカーです。
理念再構築の決断に踏み切った理由
まずは、理念再構築にあたって背景からお話しできればと思います。
弊社は近年中途採用者を多く受け入れ、7・8年で従業員数が1.5倍ほどに増加しており、グループ会社も増えたことで異なる価値観が社内に入ってきたことや、個人主義が強くなったことで会社の求心力が低下している実感がありました。
そこで社長より「会社の意思決定を経営理念によるものとする」と宣言があり、全社員に理念浸透に関するアンケート調査をしました。
この結果として、実践度は非常に低くこのままではいけないと感じたことがきっかけです。
社員参画型で取り組んだ理念再構築
実際におこなった中でのポイントは、「上から下ろす」ではなく「最初から社員みんなに自分ごととして考えてもらう」という部分になります。
社員参画型と呼んでいるのですが、ステップとしては素案を部長クラスの部門で作成し、「理念体系構築PJメンバー」を募集する形を取りました。
今年度3月にこの「HISAKA MIND」という新しい理念体系ができたので、現在は「HISAKA MIND浸透PJ」と名前を変えて継続して「浸透」に取り組んでいます。
結果、5ヶ月で新理念体系完成。これから浸透のフェーズへ
成果としては、第1に素案段階でアンケート実施をしていたことでスピード感を持ってプロジェクトを進めた結果、5ヶ月間で新理念体系が完成できました。
また、策定段階から率直な意見交換ができたこと、社員へ周知できていたことで以前よりも格段に「わかりやすく、伝わりやすい」理念が出来上がりました。
ありがとうございます。
先に「知ること」が重要であるとは言いつつも、実際は耳が痛い思いをすることは間違いありません。
しかし、日阪製作所さんではこの苦しみに真摯に向き合う姿勢が感じられて素晴らしいなと思います。
では、最後になりますがハイフライヤーズ日向さんよろしくお願いします。
念願の離職率低下を組織づくりから|ハイフライヤーズ日向さん
はい、株式会社ハイフライヤーズの日向と申します。
弊社は、千葉県で13園の認可保育園「キートスチャイルドケア」「キートスベビーケア」を運営しています。
園名でもある「キートス」はフィンランド語で「ありがとう」という意味を持っており、『ありがとうのあふれる保育園』を目指しています。
保育士不足・高い離職率から踏み切った「組織づくり」
弊園に限った話ではなく、保育士不足は大きな問題として取り沙汰されていますが、保育園は法律で「在籍する保育士の数に応じて利用者を受け入れることができる」と決まっています。
したがって保育士が足りていないと「キートスを利用したい」と言ってくださるご家庭を断らざるを得ないという事態になりました。
そこで、受け入れられる子供を増やすためにも保育士の待遇、組織環境の改善が急務だと考えたことが取り組みのきっかけでした。
取り組みとしてまず「保育士完全週休二日制」「自己負担ゼロの借り上げ社宅制度」「有給完全消化」を徹底しました。
しかし、待遇の面で改善しても離職率への大きな変化は一向にありませんでした。
次に、弊社はほぼ毎年新規開園をしていて新卒採用を積極的におこなっていたため、割合の高い20代の保育士が何を求めているのかを考えることにしました。
そしてSNS世代特有の承認欲求、『たがいに賞賛しあう』というのがエンゲージメント向上には不可欠ではないかと考え、Uniposを利用することに決めたんです。
さらに保護者からの感謝の声も保育士1人ひとりにUniposを使って伝えるようにしました。
また、新卒で保育士になったばかりの職員にとっては、日々の大量の業務の中で何をしたらいいかわからなくなってしまうことは珍しくありません。
そこで、職員には『1日1通以上のありがとうを送ること』を明確な仕事として徹底しました。
念願の離職率低下へ
この取り組みの結果として、長年悩まされていた高い離職率が34.7%から10.4%にまで低下しました。
これにより、当園への利用希望者を1人も断ることなくご利用いただくことができ、結果として売り上げも増加させることができました。
私たち自身離職しない職場には「上司からの適切な評価」が必要だと考えていたのですが、今回を機に『自然と生まれる感謝、ありがとう』こそがどんな福利厚生よりも職員のエンゲージメントを高めるのだと実感しています。
ありがとうございます。
皆さん共通して、この取り組みに向かうプロセスが非常に面白いなと感じています。
目覚ましい成果を上げたお話が伺えた反面、これまでの道のりには困難も数多くあったと思いますので、このあとさらにディスカッションの中で深めていきましょう。
2-B. 「すごい仕事の舞台裏」のさらに裏側とは
では続きまして、2つ目のクエスチョンに参りましょう。
これまでにご紹介いただいた取り組みはどれも素晴らしいものでしたが、そのエピソードの背景にはさまざまな困難やハードルがあったかと思います。
ここからは、各社が、役員、中間管理職、人事、現場社員などの様々なステークホルダーをいかに巻き込みながら、どのようにハードルを乗り越え、どのように取り組みを成功に導いたのか、伺っていきたいと思います。
では早速中井さんからよろしくお願いします。
地道な仕組みづくりと見える化|伊勢丹新宿店中井さん
まず、大きな課題だったのは「組織の壁」ですね。
各部門ごとに紐づいているところが根本的に違うことで、シナジーが生まれづらいというのは明確であったため、そもそもの部門間のつながり、組閣を変えていきました。
また「信頼関係の構築」も大きな課題でした。
これはバディ制を導入した際に起こった問題だったのですが、外商セールスの一部の方々はバディ活用へ腰が重くなっていました。
そこで「アテンドメンバーの“得意”を見えるようにした自己紹介リストの作成」「新施策へ前向きなセールスからの声かけ」「成果の可視化、満足度向上の周知」などの地道でベタなことを着実にやっていきました。
成功事例ができたことで、徐々に制度自体が浸透してきたという流れになりますね。
ありがとうございます。続いて、大角さんよろしくお願いします。
こだわり抜いた、理念“浸透”ではなく“涵養”|SPS大角さん
はい、私たちの取り組みはそもそも「ありたい姿」をみんなで話し合うことから始まっています。
全員が「組織を良くしたい」という思いは共通であったものの、各々の想い・解釈は少しずつ異なっていました。
そこで会社への不満や、現状の課題なども含め普段から思ってることを全て吐き出す場を設けることが重要だったと思います。
また、各種研修等もおこなったのですが「こう決めたから、こうしましょう」ではなく、それぞれのペースで「ジブンゴト化して、どうすればいいか考える」というスタンスを大切にしました。
この時に価値観の浸透ではなく「涵養」という表現を使って、各々に「噛み砕いて考えてもらうこと」が一番に意識したことです。
会議体の写真でもみんな笑顔で参加してくれています。(笑)
そして具体的な取り組みとしては、1つ目に「縦横ナナメの関係づくり」ということで、研修等は全て参加者の所属拠点をごちゃ混ぜにして実施しました。
2つ目は「スモールステップでほめる」ということです。
半年に一回の面談でほめるのではなく、Uniposさんも活用させて頂きながら「できたことを適宜ほめる」というのを繰り返しました。
また、ほめ方のワークショップもおこないましたね。
そして最後に、「定期的な振り返り」ということで、社員へ向けたアンケート実施や定期検診等で効果測定をし「もっと良くするためにはどうすればいいか」も細かくヒアリングしました。
この取り組み自体は2年間継続してきて、同じメッセージを伝え続けた結果、各個人の目標設定にまで反映させることができ始めています。
ありがとうございます。
続いて、日阪製作所さんではいかなる取り組みをされているのでしょうか。
蓮井さんよろしくお願いします。
最初から巻き込む「自分ごと化」|HISAKA蓮井さん
はい、私どもは一言でいうと「自分ごと化」をテーマにして進めてまいりました。
プロセスの段階から社員を巻き込むためにおこなったこととして3つご紹介します。
まずは第1にリーダーのアサインです。
当時役職を持っていなかった女性社員をプロジェクトリーダーに抜擢しました。
全社的なプロジェクトにおいては初の試みで、注目度・心理的安全性が向上したと感じています。
これにより全社員の4分の1がプロジェクトへの参加意欲を示してもらえるという結果になりました。
2つ目にプロジェクトメンバーの多様性です。
年齢・性別・職種が異なるだけでなく、国内外の関係会社への出向者もプロジェクトメンバーにアサインすることで本当に多くの視点から意見を集めることができました。
3つ目にオブザーバーの積極的関与です。
プロジェクトメンバーに入れなかった応募者にもオブザーバーとして関わってもらうことで、新理念の名称等の変更もオブザーバーの意見により変更が実現しました。
作成段階から関わることで新理念に関心を持つ社員の割合が増えて、浸透への追い風になりました。
そして、現在、完全に浸透のフェーズに入ってからのお話もできればと思います。
具体的にはUniposを活用して毎月の表彰を始めました。
月毎にピックアップした1つの行動指針について参加型でMVP投稿の表彰をおこなっています。
他にも、評価制度への反映や、役員・本部長向けワークショップ、五感で理念を自分ゴト化する仕組みなど様々な浸透への方策をとっていきます。
ありがとうございました。
では最後にハイフライヤーズ日向さんよろしくお願いします。
目指す組織へ向け妥協しない|ハイフライヤーズ日向さん
はい、実のところ弊社ではそもそも乗り越えるべきハードルはありませんでした。
そのため、制度の浸透という意味では自然と進んでいったのですが、1つ懸念はありました。
弊社にはSNS世代だけではなく、50〜60代の保育士の方もいるので、「Uniposをうまく使ってくれるのだろうか」という心配を当初は抱えていたのを覚えています。
しかしながら、この心配は杞憂に終わり、結果としては誰もがUniposを抵抗なく利用してくれるようになりました。
当然のことですが「ありがとう」を言われて嫌な人は世代に関係なくいないんだと実感しましたね。
そこで、今回は浸透させた先に「いかにもっとUniposを活用するか」という取り組みについてお話しします。
具体的には2つの取り組みを始めています。
1つ目は「Unipos 投稿数No.1 を毎月表彰」しています。
何か商品や賞金があるわけではないのですが、全社に「今月はこの人がNo.1でした!」と紹介しています。
また、2つ目には「ユニポス有給の付与」をおこなっています。
これは毎月、月間30投稿以上している人には翌毎月1日の有給休暇を付与するというものです。
今では160人の社員の内、100人以上がユニポス有給を取得しています。
これらの取り組みの成果として、Uniposの活用率はさらに向上し投稿については9割以上の方がおこなってくれるようになりました。
人が定着するためには、心理的安全性というのは非常に重要になると思っています。
私たちが目指すのは「子ども・保護者はもちろん社員もまた明日も来たい保育園」であるので、これからももっと良い組織を目指していきたいと思います。
ありがとうございます。
すごく実践的なTipsも交えてお話しいただきましたね。
今回基調講演でいただいた言葉にも、組織文化を「知り、変え、進化させた」とありました。
皆さんの取り組みの中には、一度知って終わりではなく何度も「知る場面」「変える場面」が登場しました。
組織文化へのアプローチは「知り、変え、進化させる」というサイクルを回し続けることに一番の意味があるのだと思います。
Unipos株式会社としても、改めて変化し続ける組織を助ける存在でありたいと再認識した所存です。
パネルディスカッションにご登壇いただいた皆さま、本当にありがとうございました。