いきなり「変えよう」では変わらない。“勝てる”組織文化を創る良質な問い|チームボックス中竹 竜二【UniposAwardレポート#1】

コーポレートミッションとして「感情報酬を社会基盤に」を掲げ、組織を変える行動を増やし組織課題を解決するHRテック事業「ピアボーナス®︎Unipos」を提供するUnipos株式会社。

今回は、2021年10月21日に同社が開催した『すごい仕事の舞台裏大賞2021』の内容をイベントレポートとして前後編に分けてお届けします。

本イベントは、Unipos導入企業の中から「すごい仕事」を生み出す過程でおこなわれたチーム・組織の知られざる工夫や挑戦を再発見し、表彰するアワードとなります。

前編となる本記事では、株式会社チームボックス代表取締役の中竹竜二氏による基調講演『組織文化は戦略に勝る―ウィニングカルチャーをつくる組織の本質―』の内容を再編してお届けします。

中竹 竜二|株式会社チームボックス 代表取締役

1973年福岡県生まれ。早稲田大学卒業、レスター大学大学院修了。三菱総合研究所勤務後、2006年に早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任し、自律支援型の指導法で大学選手権二連覇を果たす。 2010年より日本ラグビーフットボール協会において初めてとなる「コーチのコーチ」、指導者を指導する立場であるコーチングディレクターに就任。2012年より3期にわたりU20日本代表ヘッドコーチも兼務。2019年度から2020年度は理事を務めた。 2014年には、企業のリーダー育成トレーニングを行う株式会社チームボックスを設立。2018年、コーチの学びの場を創出し促進するための団体、一般社団法人スポーツコーチングJapanを設立、代表理事を務める。 ほかに、一般社団法人日本車いすラグビー連盟 副理事長 など。 著書に『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』(ダイヤモンド社)など多数。

1. 「独自の組織文化」なくして「すごい舞台裏」は生まれない

皆さま、おはようございます。株式会社チームボックス代表の中竹と申します。

私は、「すごい舞台裏」には必ず背景があり、舞台裏を含めたチームが全員で成し遂げたこと、さらにはみんなが一丸となれる「独自の組織文化」が重要だと考えています。

そのため、今回は「組織文化」に焦点を当ててお話をしていきます。

また、この授賞式の場も“みんなで”創り上げていきたいと思いますので、私からたくさんの「問い」を投げかけます。

双方向でやっていければと思いますので、ぜひ一緒に考えながら聞いてみてください。

では、早速皆さまに「組織文化」に関する問いを5つ、聞いてみたいと思います。

Q1. 「組織文化」という言葉を使ったことがある方はどのくらいいるか?

《視聴者のアンケート結果》
約70%の方が会話の中で「組織文化」という言葉を使っている
Q2. 「組織文化」を大切だと思う方はどのくらいいるか?

《視聴者のアンケート結果》
約95%の方が大切だと回答
Q3•4. 「組織文化」を明確に定義できるか?/「組織文化」を普段から意識しているか?

《視聴者のアンケート結果》
意識している人が57%、意識していない人が43%と別れる結果に。
Q5. 「組織文化」を変えたことがある方はどのくらいいるか?

《視聴者のアンケート結果》
約3割が「変えたことがある」と回答(普段は約1割程度)

皆さま、回答いただきありがとうございました。「組織文化」に対する考えを聞くことができて、とても面白かったです。

ここで、皆さまに改めて考えてみて欲しいことがあります。

組織の中で「目に見えるもの」「目に見えないもの」のどちらを重要視しているでしょうか?

もちろん資本主義ですから、成果や数字などの目に見えるものばかりを見て判断することが決して悪いことではありません。

しかし、ここではあえて趣向を変えて、目に見えない「愛」という言葉に関する質問をしたいと思います。

Q6. 「愛」という言葉を普段の会話で使ったことがある方はどのくらいいるか?

《視聴者のアンケート結果》
「使ったことがある」と回答した人は約3分の2、反対に「使ったことがない」と回答した人は約3分の1
Q7•8. 「愛」は大切だと思うか?/「愛」を明確に定義できるか?

こちらは投票は取りませんが考えてみてください。

Q9. 「愛」を普段から意識している方はどのくらいいるか?

《視聴者のアンケート結果》
「意識している」と回答した方は53%、意識していないと回答した方は47%

多くの方が「愛は大切だ」と思いながらも、実際の生活の中では意識できていないという結果は非常に面白いですね。

「組織文化」と「愛」は両者とも大切です。

そして、公言することをためらってしまったり、扱いづらかったり、答えがなかったりするという点で共通している部分が多いのではないでしょうか。

2. 真のリーダーは、戦略だけでなく‟組織文化”を創る

マネジメントの父ピーター・ドラッカーの言葉に「文化は戦略に勝る」というものがあります。

世の中にあまり広がっていませんが、事実としてマネジメントや戦略の重要性を説いたドラッカーも組織文化を重要視する思想が根強かったと言われています。

そして、これらはリーダーシップ開発においても同様のケースが多く、たとえば、優秀なリーダーのストーリーやナラティブを紐解くと「何か重要な戦略を明確に立てた」というよりも「組織の文化を掘り起こしてきた」という場合がよくあるのです。

また、マネジメントの場面でも、「組織文化は戦略なくして作れない」といったことがよく言われています。

2-1. 組織文化を創る第一歩は「良い問い」を立てること

それでは、組織文化を創るためには、具体的にどのようにしたら良いのでしょうか。

冒頭から数多くの問いを皆様に投げてきた私ですが、組織文化を創るために必要なことも、まさにこの「問いの力」ではないかと思います。

普段の生活の中で「良いアイデア」が生み出されるとき、その背後には必ず「良い問い」が隠れています。当たり前ですが、「問い」と「答え」はセットであり、密接な関係にあります。

ノーベル賞を受賞した方や起業して成功している方が共通して実践していることは、「答えを求めること」よりも多くの「問いを立てること」です。

組織文化についての「問い」としては、次のようなものが挙げられるでしょう。

  • 組織文化はどのくらい大切ですか?
  • そもそも組織文化とは?
  • 組織文化とはどんな位置付けなのか?
  • 組織文化と事業戦略の関係は?
  • どうすれば勝ちグセがつくのか?     etc

私は、長年ラグビーをはじめとするさまざまなスポーツのコーチをしています。

また非常にややこしいのですが、その「コーチのコーチ」をしたり、今は「コーチのコーチ」を育てるコーチもしています。

その中で、実体験として「“良質”な問い」と「“良質”な考え」も密接な関係があると感じるようになりました。これは、ビジネスシーンに限った話という訳でもありません。

日常生活の中でも、「この人と一緒にいると楽しい」と感じる時は、良質な問いが投げられている証拠です。対して、「あまり面白くないな」と感じた時は、問いの質が乏しいことが考えられます。

良い問いを投げかけることができる人は、必然的に良い関係性を築いていくことができるということです。

2-2. 「組織文化」は、“目に見えるもの”と“目に見えないもの”の間にある

私はスポーツに加え、サラリーマンや研究者なども経験し、これまでのキャリアの中でリーダーシップ、フォロワーシップ、コーチングなどを「人材育成」の領域に長く携わってきました。

また同時に、新たなフレームワークを作りチームへ導入するなど「マネジメント」の領域にも長く携わってきました。

この二つの領域での経験を活かし、人を育ててフレームワークの中でうまく生かすことができれば大体のことはうまくいくのではないかと思っていたのです。

しかし、“目に見えるもの”である「人」「コト」の間には、‟目に見えない”ものである「文化」があり、目に見えないものをしっかりと扱っていかないと「人」や「コト」が生かされないと気付いたことで、「組織文化」について考え始めました。

「組織文化とは何か」という問いに対しては、過去に様々な賢者が答えを出してくれており、たとえば山本七平さんは著者『「空気」の研究』の中で「組織文化とは空気である」と言い切っています。

また、経営学者の楠木建さんは「組織文化とは、好き嫌いである」、また別の人は「組織文化は、暗黙の問いである」などという方もいます。

このような言葉がある中で、私は「その組織がなんとなく共有している価値観、雰囲気、考え方の癖」を組織文化であると定義しました。

こちらの図もご覧ください。

1つ目の軸が「目に見えるもの」と「目に見えないもの」、そして2つ目の軸が「個別」と「集合」という分け方をした図になりますが、今回取り上げている「組織文化」は「目に見えないもの」かつ「集合」の左下の象限を指していることがわかります。

また、別のモデルでも考えてみましょう。

私がよく使うピラミッド型のモデルですが、上に行くほど目に見えやすく、下に行くほど目に見えにくいものになっています。

しかし、最上位にある「成果」は、「組織文化」をはじめとした目に見えにくいもので成り立つ土台があるからこそ実を結ぶという仕組みになっていると考えています。

3. 文化が変わるための3つの“フェイズ”

最近、C.C.O.(Chief Culture Officer)という形でお仕事をいただく機会が増えてきましたが、その中で私が具体的に実践している「3つのフェイズ」についてご紹介します。

その3つとは、「知るフェイズ」「変えるフェイズ」「進化フェイズ」です。

「3ヶ月でうちの文化を変えてくれないか」といったことを経営者の方からよくご相談いただきますが、初めから「変えるフェイズ」をやろうとしてはいけません。まず重要なのは、「知るフェイズ」です。

そして、一度変えることのできた文化も、定期的にメンテナンスしながら、進化させていくことが大切です。

また、人間には「意識的に感じることのできる領域」「無意識的に感じている領域」があります。

この無意識的な領域は、簡単には目に見えないからこそ「知るフェイズ」で深く調べたり、「今のあなたのチームにはどんな組織文化がありますか?」といった問いを立てて聞いたりすることが必要になるんですね。

「無意識的に感じている領域」には、普段気にも留めない「習慣」が隠れています。なので、最初にやるのは「無意識的な悪習慣」を徹底的に洗い出して「知ること」です。

そして、その次に「無意識的な良習慣」に変えるためのアプローチを考えます。

「組織文化」は自分たちだけで気付くことができない場合も多く非常に厄介ですが、弊社チームボックスでは組織サーベイツールTB Scanというものを提供しており、サーベイの結果から33の項目で組織の特性をスコアリングすることが可能です。

このように様々な手法が最近は特に充実してきているため、何らかの方法を用いて自らの組織文化を紐解くことが非常に有効だと思います。

4. 組織文化は「細部」に宿る。使用する言葉の1つから

また、1つの面白い手法として「使用する言葉」によって組織文化を見えるようにすることもできます。

実際の例なのですが、行政の方でお仕事をいただいた際に人材育成において掲げるキーワードで「自立・自律・自走」が良いのではないかと確認したところ、担当の方からこのように言われました。

「うちはこの言葉じゃダメなんですよ。“主体性”という言葉にできませんかね?自律と言ってしまうと勝手にやってしまうのではないかと思い、使うのが怖いんです。あと、今まで使ってこなかった言葉なので」

この話のように、組織によって「使える言葉」と「使えない言葉」があるということですね。

また、もうひとつ例をご紹介しましょう。

今度は外資系の民間企業の例なのですが、マネジメント層に向けて「‟リーダーシップ”という言葉は使いたくない。」というオーダーをいただいたことがあり、この時に使って欲しいと言われた言葉は「自己成長」でした。

理由は「うちの組織におけるリーダーシップという言葉は、本当にトップの人たちを対象に使う言葉なんです」ということで、縦割りの文化が強いんだなと感じました。

また、先ほど打ち合わせの際に、Uniposさんでは代表の田中弦さんのことを「ゆづるさん」と呼ぶことに気付きました。

田中社長が「社長と言われたくない」ということのようですが、まさにこれも組織文化だなと思います。

呼び方についても、「役職で呼ぶ」「名前で呼ぶ」「ファーストネームで呼ぶ」といった違いによってコミュニケーションの取り方が変わってきますので、組織文化の根底にあるものの1つです。

呼び方も、一度慣れてしまえば自分たちで気付くことはほとんどない、という組織文化の面白い部分が表れている例でしょう。

5. 組織文化を変えるためには「外からの目線」が必要

このように、組織文化について自分たちだけではなかなか気付くことはできません。そのため、組織の文化を変えるためには「外からの目線」が必要となります。

しかし、外からの目線で「本当のこと」を言われると、心がざわつくことでしょう。

そのため、まずは自分たちの組織文化がどのようなものか、「知るフェイズ」を意識することが非常に重要なんですね。

このとき、ただ現状を知りたいと思ったとしても難しいため、「理想の組織文化」と「最低な組織文化」を同時にイメージすることが有効だと思います。

「本当に目指したい組織文化はどのようなものか」「絶対にその状態になりたくない最悪の組織文化はどのようなものか」など、改めて考えてみてください。

6. ラグビー界の組織文化が180°変わった転機

最後に「日本ラグビー界」を例に「組織文化がどのようにして変わるのか」という実例をご紹介しようと思います。

転機は、エディ・ジョーンズというオーストラリアから来た監督が就任した時でした。外から来た外国人監督が、組織の文化を一気に変えたんですね。

エディ監督就任前の日本のラグビー界には明確に「負け癖」が蔓延していました。

このような状況下で、もちろんエディ監督も「知るフェイズ」から始めたのですが、その上ではっきりさせたのは「琴線」と「麻痺」の2つでした。

エディ監督は、「自分たちは一体何に琴線が触れ、何に麻痺しているのか」という部分にポイントを当てることで、その境界線を明確にすることをおこないました。

エディ監督の就任当初、フランス選抜との試合後の記者会見において、当時の主将は「照れ笑い」を浮かべながら試合の総括をしました。

ここでエディ監督は、会見の場にも関わらず、テーブルをひっくり返すくらいの勢いで怒鳴り上げました。

「フランスに負けるのは当たり前だよね」といった、組織の中にいてはなかなか気付くことのできない“麻痺”を見えるようにしたのです。

重要だったのは「フランスに試合で負けた」という事実ではなく、この事実に対して「どんな“感情”を持っていたか」でしょう。

7. 組織文化を創る皆様へ、最後の問い

「勝ち癖のある組織をつくる」ための具体的な方法が気になる方も多いと思いますので、最後に『ウィニングカルチャーを創るための“問い”』を明確にして終わりにしたいと思います。

勝ち癖のある組織では、「どうすれば勝てるのか?」という問いは生まれません。優先されるのは『そもそも「勝ち」とは何か?』『なぜ勝ちたいのか?』という問いになります。

これを実際に考え続けることは大変だと思いますが、苦しいながらに『Why』を考え続けられる組織こそ強いことは明白でしょう。

このあと、受賞企業の事例から「変えるフェイズ」の具体例についてお聞きすることができると思います。

「知るフェイズ」の後にやるべきことは何か考えながらお聞きいただければと思います。

皆様、ご静聴いただきありがとうございました。

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