ニューノーマル時代の組織に求められる強いリーダー|修羅場でこそ身につく本物のマネジメント力

新型コロナウイルスの影響でリモートワークを導入した企業が増えていますが、「逆に生産性が下がった」「メンバーの様子が見えにくい」「一体感がなくなった」など、組織創りに関する悩みが増えています。

コロナ時代の新しい組織の在り方、働き方が問われる中で、組織を束ねるマネジャー・メンバーにはどのような対応が求められるのでしょうか?

今回は、コロナ禍で悩めるマネージャー・メンバーに対して何かしらの気付きを得るべく、リンクアンドモチベーションで取締役を務める川内さんに「ニューノーマル時代の組織創り、あるべきリーダー像」をテーマにインタビューしました。

 

【人物紹介】川内 正直さん | 株式会社リンクアンドモチベーション 取締役

2003年早稲田大学卒業後、 (株)リンクアンドモチべーションへ入社。採用、育成、人事制度構築、経営ビジョン策定・浸透プロジェクト推進と、一貫して組織課題の解決に向けたコンサルティング業務に従事。2010年に大手企業向けコンサルティング事業の執行役に就任し、2018年に取締役就任。現在は、組織開発本部にてコンサルティング・クラウド部門を統括。

コロナ禍で迷うリーダーたち

ーコロナ禍で、新しい働き方が求められていますが、各企業の現状はどのようになっているのでしょうか?


川内さん
やはり、さまざまな課題に直面し、悩んでいる企業が多いというのが率直な感想です。

コロナの影響で、「リモートワークなど、急激な環境変化の突入」「リーマンショック以来の本格的な不況」、この2つがダブルパンチで来ているため、各社とても悩ましい状況だと感じています。

リーマンショックは2008年のことですから、ここ10年以内に創業している企業にとっては、不況は初めての経験となります。

リーマンショックの頃を知っている世代にとっても、今回は「初めて」のことが立て続けに起こり、皆さん少々混乱しているように思います。

一方で、今回の混乱期が、「もしかしたら企業を大きく変えるチャンスなのでは」と前向きにとらえ、いろいろと仕掛けている方もたくさんいます。

ーコロナ前後で、リンクアンドモチベーションさんへのお問い合わせ内容に変化はありましたか?


川内さん
コロナ前後で内容が大きく変わったとは言い切れませんが、強いて言えば「従業員エンゲージメント」のテーマよりも、「組織の生産性をどうやって高めるか」というご相談が増えた印象があります。

コロナ前は、「従業員エンゲージメントを高め、離職率をどう抑えていくべきか」というご相談が大手企業を中心に多くありました。

しかし、コロナ禍に突入すると「離職を止める」という話よりも、最優先事項として「今ある限られた人材の中でどうやって生産性を高めていけばいいのか」という現実的な課題にシフトしているように感じています。


人員削減が生産性向上につながる一面もあると思いますが、「離職率低下」への課題意識は少なくなってきているのでしょうか?


川内さん
いえ、離職率や従業員エンゲージメントに関する問い合わせが減ったわけではありません。

ただ、その中でも特に、「企業にとってキーパーソンとなる人材をどのように引き留めていくか?」という点に注目が集まってきているように感じています。

  • 以前から「離職率低下」に関する課題を持っている企業が多かった
  • そこに、コロナ禍でどう生産性をどうあげていくか、リモートワークでのマネジメントをどうすればいいか、というテーマが増えてきた=新たな組織創り
  • 加えて、「優秀な人材を流出させないためにどう従業員エンゲージメントを高めるか」というテーマに注目が集まっている

川内さんこの3月~5月は現場は相当混乱されていたと思います。

リモート対応だけではなく、新入社員の受け入れ、社内で陽性者が出た場合の対応方法を議論したりと、緊急度・重要度が高い事項が一気に増え、同時進行でバタバタと動いていたように見受けられます。

6月に入り緊急事態宣言も明け、少し落ち着いてきたときに、あらためてニューノーマルの組織創りに本格的に取り組み始める企業が増えてきたように感じます。


ーニューノーマル時代において、生産性を高めるために必要なことは何でしょうか?


川内さん
まず最初に、「生産性の高さとは何か?」という点を考える必要があります。生産性を考えるときに、「集団」と「組織」を一緒くたにしてしまっているケースが多いです。

たとえば、同じ電車に人が乗っていても、それは集団であり組織ではありません。共通の目的・協働意思・コミュニケーションの3要素がそろったときにはじめて「組織」と呼ぶのです。

多くの企業で、この「組織化」ができていないために生産性が低くなっているケースが見受けられます。目指すべきものがそろっていなければ、生産性は向上しません。

意外と「私たちなんでこの会社で集まっているんだっけ?」と、曖昧になっているケースがあります。

ここでは、組織の共通目的という大きな旗を掲げられるかどうかが大切な要素となってきます。だからこそ、普段から企業理念やビジョンの浸透度合いを高めることが重要なのです。

コロナ禍でうまくいっている組織と苦戦している組織の差

ーコロナ禍において、うまくいっている組織と苦戦している組織、それぞれあるかと思いますが、なにか傾向はありますでしょうか?


川内さん
正直なところ、うまくいっている組織は、そもそもコロナ以前から従業員エンゲージメントが高かった印象があります。

コロナとは関係なく、変化に対応できる組織は、有事の際にも非常にスピーディーに「運動神経良く」対応ができています。

一方で、もともと組織コンディションが芳しくなかった企業は、このコロナ禍で状態の悪さが一気に露呈したように思います。

そのため、「コロナ禍においてうまくいく・いかない」というよりは、もとから組織状況が良かったか、そうでなかったかの差が大きいと思います。

ご相談いただく企業の話をよくよく聞いてみると、「その問題は、コロナのせいではなさそうだな」と感じることもあります。


ーなるほど、そもそもコロナ以前の組織コンディションによるところが大きそうですね。


川内さん
そうですね。また、コロナが終わったら、もとの組織体制にやり方を戻さなければならない」と考えている企業は、苦戦するのではないかと思います。

リモート化で良かった点を最大限に活かしながら、新しい組織・働き方の形を創ろうと柔軟に頭を切り替えられるかどうかが、ポイントになると思います。

リモート化が加速したタイミングで、各企業から「メンバーの様子が見えにくくなった」「なんとなく組織の一体感がなくなった気がする」というご相談をいただくことがあります。

私が気になるのは、「そもそもリモート前はメンバーの様子が見えていたのか?メンバーの様子を何で見ていたのか」ということです。

「リモート化のせいで一体感がなくなった」と相談をいただくものの、正直もとから一体感があったわけではない企業もいらっしゃるということです。

つまり、「リモートのせいでなんとなくうまくいかなくなった」という印象論でとらえてしまうことは危険なことで、「リモートになって何か変わったのか?」を、1度冷静に自問自答して突き詰めていくことが重要なのです。

リモート環境で大きく変わった2つのこと

ーリモート環境に切り替わった中で、川内さんはどのような変化を感じていらっしゃいますか?


川内さん
リモート環境で大きく変わったものは2つあります。

1つ目は「非言語情報」が激減したこと。2つ目は「無意識的なコミュニケーション」が減ったことです。

たとえば、オフィスにいるメンバーがパソコンに向き合っているとき、背筋の伸び具合や歩く速さで「調子良さそうだな」「ちょっと元気なさそうだな」と判断することがあります。

会話や文字ではない「非言語情報」が、リモート環境になり欠落してしまったことで、メンバーの状態を理解しにくくなったことは大きな変化と言えます。

2つ目の「無意識的なコミュニケーション」ですが、例を挙げてご説明します。たとえば、お客様先に訪問する行き帰りの電車で、上司と部下がいろいろと話をするシーンを思い浮かべてください。

もちろん世間話もすると思いますがたいてい「さっきの先輩の質問の仕方すごかったです!」とか、「今日の君の提案は○○を意識した方がいいね」という提案の振り返りや相談をすることが多いのではないでしょうか。

このカレンダーや予定表に組み込まれていない何気ない会話中で、仕事への理解が深まることがあります。

これらの変化に対応するために、たとえば、お客様とのWEBミーティングの後、15分間ほど社内用の時間を取ってフィードバックの機会をつくるのは良いかもしれません。

リモートになれば、「アポ前後の移動がなくなり効率的」という見方もありますが、移動時間の中に(移動以外の)他の効果的な要素がなかったのかきちんと分析することが重要です。

ここに気付かないと、「何かすり合わないな、アウトプットがうまくいかないな」と、生産性の低下につながってしまうケースもあります。

最近では、非言語情報を取得するために、決まった時間に部署全員をオンラインで集めて、全員の顔が見れる状態で朝礼や夕礼を実施する企業も増えています。

一方で、オフィス環境は情報が多すぎて集中力が欠けやすかったとも言えます。

つまり、リモート下で情報が減った分、集中力を上げることができる利点があります。個人単位でやりきることができる業務内容であれば、生産性は上がるという見方も可能です。

ただし、「リモートで集中して生産性を上げられる」という論理は、未経験者や新入社員には通用しないでしょう。

未経験者・新入社員には、先ほどのすり合わせ時間を意識的に設けながら、フォローアップをしていくことをおすすめします。

アポの行き帰りの時間、休憩スペースでの雑談のような場を、リモートでも創出していくことが重要です。

ニューノーマル時代の組織に求められる「強いリーダー」

川内さんリモート対応が進んだ後、うまくいく企業とそうでない企業の明暗を分けたのは、「強いリーダーがいるかどうか」という点だと考えています。

企業規模問わず、強いリーダーがいる企業は、コロナ後の変化にも柔軟に対応し、新しいものを取り入れながら前に進めています。


ー強いリーダーとは、どのような人物なのでしょうか?


川内さん
そもそも、今回のテーマでもある「ニューノーマル」について、私の見解を先にお伝えします。

ノーマルというものは、なんとなくつくられてきた従来までの暗黙の了解でした。

ただ、ニューノーマルを考えると、今までの当たり前をリセットして、もう一度ゼロから「これが私たちのやり方だ」という新たな意思決定をしていく必要があります。

ここで思い切って新たな当たり前をつくっていける人と、「前のもいいな…元に戻そうかな」と悩んで動きが鈍くなってしまう人で差が出てきます。

「私たちはこうしていく」とリーダーが強く決断していける組織が強いと考えています。

この混乱下でも「企業が方針をしっかり決めてくれる、意思決定してくれる」ことが従業員の安心感につながり、従業員エンゲージメントが高まる側面もあります。

コロナ禍において、今までのノーマル(当たり前)はなくなりつつあります。企業にとってのノーマルは日々変わり続けていきます。

変化を受け止めながらニューノーマルをつくりあげていく、そんなリーダーシップのある人材が求められているのです。

また、それ以外にリーダーに必要な要素としては、最適解を考え続けるということです。情報収集は大事ですが、バズワードといった世の中の情報に流されては意味がありません。

たとえば最近では、「ジョブ型雇用が必要だ」という議論が盛り上がっていますが、このワードに流され、慌ててジョブ型を取り入れてしまうと、かえって失敗に終わる企業もでてくると思っています。

「周りがやっているから自社もやらなくては」と不安になり、判断を誤ってしまわないように注意が必要です。


ーこういった状況だと一層、周囲に流されやすくなりますよね。自分たちの最適解を導くためには、どうすれば良いのでしょうか?


川内さん
最適解を導いていくためには、現状を正確に把握していくことが大切です。

感覚で把握するのではなく、従業員エンゲージメントスコアのような組織偏差値や、事業指標を見ながら、組織状態を細かく可視化していきます。

もう1つのポイントは、「組織の目指す姿」をしっかり決めることです。そして、その目指す姿が納得できるものかどうか、腹落ちできるものかも非常に重要な要素でしょう。

“自分たちらしさ”を活かした組織の在り方をしっかり定めて、理想と現実の差分を埋めていくことです。

そして、目標達成に向けて重要なことは、ファーストステップを決めることです。

ゴールまでの第1歩目に関しても、さまざまな選択肢があるので迷うと思いますが、リーダーとして決断すること、そしてその決断に納得してもらうために丁寧に説明を繰り返すことが必要だと思います

川内さん繰り返しになりますが、現在のマネジメントに求められる力は「意思決定できる力」「最適解を考え続ける力」です。

そして生産性が低い組織とは、無駄が多い状態、または投資対効果が悪い状態の組織です。

たとえば、Aを実施して投資対効果が悪ければ、すぐにAをやめてBをやる。頭で考えればけっこう簡単なのですが、Aを頑張ってきた人の感情を無視して、「即Bをやるよう指示を出す=意思決定」をすることは、なかなか難しいものです。

しかし無駄を省くために、投資対効果を軸に、覚悟を持って意思決定できる力がマネジメントには必要不可欠となります。

強い決断力とともに、マネジメントには「組織に意味をあふれさせることができるか」という視点も重要だと考えています。

今の時代、私たちは食べるために働くわけではありませんよね。特に若い層を中心に、「自分は何故この仕事をしているのか、自分は何の役に立っているのか」と考える方が増えてきました。

昭和時代の働く欲求とは明らかに変わってきた今だからこそ、自分たちの取り組んでいる仕事の意味・意義を、飽きずに語り続けられるかどうかがポイントではないでしょうか。

これは1度や2度、伝えただけでは意味がありません。毎日、毎週、何度も繰り返していくこと。かつ、「光の当て方」を変えながら伝えていくことが大事です


ー光の当て方とはどのようなことですか?


川内さん
働いている意味・意義について表現を変えながら伝えていく、ということです。わかりやすく、「赤鼻のトナカイ」という歌を例に挙げてみます。

歌詞に出てくるトナカイは、自分の赤鼻をからかわれて、自信をなくし落ち込んでいました。

あるとき、サンタのおじさんが「暗い道ではピカピカに光る君の赤い鼻が役に立つんだよ」と言ったことで、トナカイは、自分の赤い鼻のとらえ方が変わったのです。

「ほかの人とは違う」ことをバカにされる世界から、「君の赤い鼻はとっても素敵だよ」と伝えることで、トナカイの人生は一変しました。

今の時代は、サンタのおじさんのように、光の当て方を変えて意味を溢れさせることが大切になってきているように思います。

これは、多様性を活かすためにも求められることです。今後のリーダーは、異なった才能を持つ人材に対し、あらゆる角度から光を当て、活かしていく力が必要だと思っています。

今だからこそ、本物の力を身につけることができる

ー今までお話いただいたようなリーダー・マネージャーを育成するために重要なことを教えてください。


川内さん
リーダー・マネージャーの育成において重要なことは、人間力です。

とある大企業の次世代経営者育成プロジェクトに関わった際、「次の世代に求めるものは何ですか?」とトップに尋ねると、「スキルよりも人間力がある人」と回答がありました。

もちろん、一定のスキルがあることは大前提だと思いますが、「リーダー・マネージャーには人間力が必要不可欠だ」という答えに行き着くのです。

ここで話している人間力とは、縦だけではなく横を広げることができる人です。

縦とは、視座の高さのことです。企業の中で1つ2つ上のポジションを見据えながら、マクロ視点で物事をとらえることができる力のこと。

横とは、さまざまな人を受け入れてマネジメントできる幅の広さを指します。

自分と同じタイプの人をマネジメントすることは簡単です。しかし、マネジメントをしていると、自分とは全く異なる考えを持つメンバーを管理していかねばなりません。

自分と他人は違うと言ってしまえば、そこまでの世界で終わってしまいます。

自分とは全然違う真逆の人に対しても興味を持ち、受け止める力があること。

これは若いうちから社内外を通じて、どれだけ人間の幅を広げることができるか意識していくことが重要です。

あらゆる人に共感でき、共感を得ていけるか、あらゆるタイプの人材に意味・意義を提供できることが、今後求められる横の力なのです。


ー逆に、生産性が高い組織を実現するために、メンバー側に求めたいことはありますか?


川内さん
生産性の高い組織のメンバーには、「フォロワーシップ力」と「発言力」、この2つが求められます。

たとえばリーダーが発信をしたら、メンバーは感想や共感のリアクションを必ず出すことです。

どれだけ決断力を持つリーダーも、自分たちの意思がメンバーに伝わっているか不安に感じることは多いはずです。

メンバーは発信の量を増やしながら、リーダーに対して「私たちは理解しているよ」とポジティブに伝えることが大切です。

このフォロワーシップが機能すれば、リーダーはより思い切った意思決定を実行することができます。お互いが相乗効果を生み出し、生産性の高い組織を創っていくことが重要です。

もう1つ、メンバーは分からないことがあれば、きちんと声をあげることが大切でしょう。リーダーにとって当たり前のことでも、メンバーから見ると理解が追いつかないこともあります。

何が今分からないのかきちんとリーダーに伝えることで、またリーダーは自信を持って意思決定がしやすくなります。

これらのサイクルが回れば、疑問点が減り、無駄な時間が減る。そして生産性が高まっていくと考えています。

逆に言うと、日本企業では組織のノイズが生産性向上の大きな阻害要因になっており、早急に解決すべき問題だととらえています。


ー最後に、ニューノーマルの時代において最前線で戦っている経営者や人事の方々へ、一言お願いできますでしょうか。


川内さん
本物のリーダーシップ、マネジメント力は、有事でしか身につかないと考えています。

よく「修羅場を経験して成長を促せ」と言いますが、今回のコロナ禍は、リーマンショック以来の10年ぶりの修羅場と言えるでしょう。

この大きな環境変化を機会ととらえ、どのように活かしていくのか。ここを乗り切れば、本物の力がつくはずです。

ニューノーマルをつくっていく今、ビジネスにおける本物の力をつけるための10年に1度のチャンスが訪れています。これは誰でも経験できる機会ではありません。

もちろん、このコロナ禍の状況は人命に関わることなので、簡単に好機と表現してはいけないという側面もあります。

しかし「10年後には思い出話として語れる」とポジティブに捉え、信じて、焦らず、諦めず、進んで行くしかありません。

今、リーダー・マネージャーのポジションを務めている方で、この10年に1度の経験ができるということは非常に貴重な機会と受け止めることができます。

みなさんの周りでも「リーマンショックの頃はこうだった」と、自慢げに語っている人たちがいるかもしれません。

その話を何度も聞いて、うんざりしすることもあったかもしれませんが、今のコロナの話も、10年後には貴重な経験談として語れることに絶対なっているはずです。とにかく信じて、諦めずに乗り越えていくしかありません。

本物のマネジメント力をこの修羅場で磨きながら、10年後に語り合えるように、私自身も試されていると感じながら、組織のリーダーとして進んでいきたいと思います。

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