「7つの習慣が軸」日本人0名でも自走できる、海外現地スタッフ200名の組織の立ち上げ方 |HR NOTE

「7つの習慣が軸」日本人0名でも自走できる、海外現地スタッフ200名の組織の立ち上げ方 |HR NOTE

「7つの習慣が軸」日本人0名でも自走できる、海外現地スタッフ200名の組織の立ち上げ方

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※本記事は、インタビューを実施したうえで記事化しております。

個人・企業・学校向けのオンライン英会話サービスを主軸事業として展開する株式会社レアジョブ

講師の採用・育成を中心に、事業の根幹機能としてフィリピンに4つの子会社を持ち、600名以上の現地スタッフが在籍しています。

そんなレアジョブの海外子会社の立ち上げは、創業からわずか1年後の2008年のこと。

注目すべきは、立ち上げ当初は日本人スタッフが駐在せず、現地スタッフのみの運営で成功をおさめ、現在の規模への拡大をしたという点です。

マネジメントが難しいイメージがある海外拠点の立ち上げ。レアジョブではどのようにして組織を立ち上げていったのでしょうか?

今回は、レアジョブの中村様に当時のフィリピン子会社の立ち上げエピソードをインタビュー。企業の海外進出のコツや、現地スタッフの採用・人材育成に関するノウハウをたっぷり伝授していただきました。

【人物紹介】中村岳 | 株式会社レアジョブ 代表取締役社長

東京大学工学部・東京大学大学院 情報理工学系研究科を卒業しNTTドコモの研究所へ入社。2008年にオンライン英会話サービスを展開する株式会社レアジョブの最高技術責任者、代表取締役として就任。2015年同社の代表取締役社長に就く。

新卒採用を中心に、自走できる組織づくりに着手

—本日はよろしくお願いします。今回は「海外拠点のマネジメント」がテーマとなりますが、海外子会社の1つであるRareJob Philippines(以下、RJPH)はどんな役割を担っているのか、また立ち上げ当初、どのうような思想のもと運営されていたのでしょうか?


中村さん
RJPHは講師マネジメント会社として2008年に立ち上げました。RJPHのメインの役割は、講師の採用・育成、教材開発、講師周りのシステム開発、講師給与支払いです。

最初は、私と共同創業者、および、フィリピンの共同創業者の3名で会社を立ち上げ、フィリピンのスタッフが自走できるように仕組みをつくろうと考えていました。

最初から駐在は考えておらず、基本は日本にいながら、必要なときに出張ベースで対応できるような組織をイメージしていましたね。

グループ全体の企業規模の拡大フェーズを迎えた2015年ごろからは、日本で採用したスタッフが赴任するようになり、専門性をもってレベルを引き上げるために一部の部門をみるようになりました。


—現地スタッフの採用はどのようにされていたのか教えてください。


中村さん
現地の社員採用は、基本的に講師として働いている人の中から採用をしていました。「レアジョブ英会話」の受講者にレッスンをおこなう、いわゆる先生ですね。

もうすぐ卒業を控えている大学4年生の中で、真面目そうにやってくれそうな方に声をかけて、新卒採用の形で迎え入れていました。

採用する上で、どれだけ真面目に働いてくれるのか、というのを面接だけで見極めるのは難しい場合があります。

そこで、私たちは、講師の普段の出席状況や、遅刻回数、生徒様からの評価などを元に、活躍が期待できる優秀層のみを狙って採用していきました。

「7つの習慣」を軸にした組織づくり

—社内のカルチャーをつくりあげていくうえでの工夫についても教えてください。


中村さん
特に注力していたのは2つです。

1つ目は、日本側と同じようにビジョン・ミッションを設定し、浸透させたこと。

2つ目は、7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー著を使いながら、社内のカルチャーをつくったことです。

第二言語として英語が広く使われているフィリピンには、英語を教えるスキルのある人がたくさんいました。しかし、英語教師としてスキルを発揮するための市場が小さく、非常にもったいない状況だったんです。

そこにインターネットが普及したことで、オンライン英会話という市場が確立しました。

英語を学びたい日本人に対し、彼らは英語講師としての仕事をできるようになった。活躍のチャンスから、雇用を生み出すことにつながったのです。

フィリピン人には英語を生かして仕事を得るというチャンスを、日本人は英語を習得することで活躍の幅が広がるというチャンスを得る。

そんな想いから、私たちはグループビジョンとして“Chances for everyone, everywhere.”と掲げています。

このグループビジョンは、日本人と海外子会社の全員に対し、しっかり浸透させるために常に発信を続けています。

 

中村さんまた、社内のカルチャーづくりに関しては「7つの習慣」という本を使って、人材育成をしていきました。

【参考】7つの習慣 人格主義の回復|スティーブン・R・コヴィー著

  • 第1の習慣 主体的である
  • 第2の習慣 終わりを思い描くことから始める
  • 第3の習慣 最優先事項を優先する
  • 第4の習慣 Win-Winを考える
  • 第5の習慣 まず理解に徹し、そして理解される
  • 第6の習慣 シナジーを創り出す
  • 第7の習慣 刃を研ぐ

中村さんたとえばメンバークラスのスタッフには「Habit(習慣)1から3までを必ず実施してね」とし、一方でリーダークラスには「Habit(習慣)4以上を目標にしてね」というように、『7つの習慣』を育成基準として使用しました。

新しく入ってきたスタッフにもこの本を配り、一緒に読み会を実施することもありました。その結果、『7つの習慣』の実践が全員の共通カルチャーとなり、社内に根付いていきました。


—リーダーたちにはどのようなミッションを与え、日本人メンバーとはどのように役割分担をしたのでしょうか。


中村さん
まず、現地のマネジメントは現地のスタッフの方がうまくいくので、日本人ではなく現地スタッフに任せるよう心がけていました。

日本人は現地スタッフで足りていない部分を埋めること、また、日本人だからこそできることをやります。

例えば、日本との連携は日本人だからこそ強みのでる部分です。また、大きな変化を生み出すことも優位性がありますね。

日本人を現地リーダーとして任命するケースもあると思いますが、どうしても、「本音で話してもらえるか?現地メンバーの気持ちを汲み取れるか?」という点でうまくいかないことがあります。

日本人が直接部門をマネジメントする場合は、その日本人が圧倒的に現地スタッフよりも実力で勝ることは必須です。

具体的な施策も、現地の事情をわかっているので、現地の方に任せてしまった方がうまくいくことが多いでしょう。


リーダーたちのマネジメントにおいて工夫された点はありますか?


中村さん
リーダーにも7つの習慣』を意識したマネジメントを推進してほしいと働きかけていました。

また、マネジメントにおいてジョブディスクリプションを明確にすることを大事にしていました。

一般的に、日本ではジョブディスクリプションに書いていないことも「空気を読んで」「察して」働く文化が根付いています。

一方、海外ではジョブディスクリプションを非常に重視するケースが多く、スタッフに対しても明確な基準に沿ってマネジメントする方が良いと考えています。

日本との違いという点で注意すべきは、外国人スタッフは、ジョブディスクリプションに明記されていることは徹底的におこないます。

逆に、書かれていない業務は一切おこなわない傾向が強いです。業務の管掌領域や責任を明確にするというスタンスに基づく行動なので、ここに良し悪しはありません。

つまり、チームリーダーは、チームリーダーの仕事であれば責任を持って全うしてくれるので、そこは信頼して任せていました。

海外子会社では、日本側ほど異動は多くありません。

そのため、メンバーレベルのスタッフにはメンバー向けの、リーダーにはリーダー向けのジョブディスクリプションを作り込み、各ポジションがどのような業務をすべきなのか、対応範囲を曖昧にしないように気を付けていました。

カルチャー形成がうまくいけば、マネジメントの難易度は日本と変わらない

—組織が拡大していく上で、つまずいたことはありましたか?


中村さん
そうですね。スタッフの入れ替わりや離職もそれなりにはありましたが、一般的なフィリピンの企業より離職率は低かったと思います。

要因としては先ほどご紹介したように、日本人ではなく現地スタッフにマネジメントを任せたことや、『7つの習慣』と当社のグループビジョン“Chances for everyone, everywhere.”を浸透させて、カルチャーづくりを強化したことの成果だと思います。

その他の取り組みとしては、福利厚生としてランチを無料で食べられる、フリーランチの制度や、チームリーダーとチームメンバーのスタッフの1on1を兼ねたバディランチなども導入しています。

カンパニートリップやクリスマスイベントなど、横のつながりが強くなるような施策は、現地メンバーの発案ベースでいろいろ試してきましたね。

イベントは毎回、非常に盛り上がりますし、普段はなかなかコミュニケーションが取りにくいスタッフ同士が交流できるようになり、毎年なくてはならない一大イベントになりました。

とはいえ、まだまだ問題はあります。たとえば、フィリピンは道路がまだまだ整備されておらず、激しい交通渋滞が社会的な課題です。

採用するときにも「通勤に片道1時間以上もかかるけど本当に大丈夫?」と聞いて確認するものの、やはり通勤時間の負担から、結局数週間で辞めてしまう…ということはありますね。

こうしたネックを解消するために、RJPHではドミトリーを作りました。スタッフは月~金の間は泊まることが可能です。

そこまで部屋数は多くないですが、渋滞がひどい状況で通勤するのは本当に大変なので、少しでもメンバーが長く働けるような施策は随時導入しています。


—組織面以外で苦労される部分はあるのでしょうか?


中村さん
法律や税務面で苦労をしたことはあります。

フィリピンは、まだまだ法整備が曖昧な部分があることは否めません。

たとえば、オンライン英会話サービスはフィリピンではまだ新しい産業のため、税金や労働法の解釈が各所で異なることがよくあります。

曖昧なルールのもとでプロジェクトを進めていく必要があるため、時間がかかったり、管理面では手間がかかることがよくありますね。

面接時の「YES」を鵜呑みにせず、短期インターンで判断する

—採用方法や、採用後の目標設計など人事制度はどのように構築したのでしょうか?


中村さん
リファラル、Facebook、ジョブストリートの活用を中心に採用活動をしていました。その中でもリファラルが多かったです。

面接で意識していたのは、フィリピン人はできないことでも「イエス!できます!」と言ってしまう傾向があるので(笑)、面接での「イエス」を鵜呑みにしないこと。

きちんと実技のテストをして、しっかり適性を見てから23日の短期インターンシップをおこない、現地スタッフが採用の可否を判断していました。

また、過去に何度か中途メンバーを採用したものの、既にできあがっている当社のカルチャーに合わず、辞めてしまったというケースがありました。

そこで、『7つの習慣』をはじめ、RJPHのカルチャーをきちんと受け入れたうえで活躍してほしいという思いから、現在は若手の採用をメインでおこなっています。

採用後の目標設計について、フィリピン人は、目標が明確にセットされていれば、しっかりコミットしてくれる方が多いです。

そのため、期初に必ず適切な目標を立てられるかどうかが、成果を出すためのポイントです。逆に、最初の段階に設定しなかったことはやらないので、目標設定はマネジメントの要ですね。


—現地のことは現地に任せるという姿勢を徹底してきた中で、日本人スタッフはどのような振る舞いを意識されてきたのでしょうか。


中村さん
オンライン英会話レッスンを提供する上で、フィリピン現地と日本側での連携は必ず必要になってきます。

フィリピンでは、組織は縦割りの性格が強いのが特徴です。与えられた仕事は全うしますし、「自分のチームをもっと良くしていこう!」という意識リーダーは持っています。

一方、日本では自分のチームだけでなく、他部署と連携して横軸も見ていく傾向がありますね。

ミッション達成という観点では、縦割り文化のフィリピンの方がより与えられたミッションをやり抜く力があると言えるかもしれません。

この文化の違いを理解しながら、日本とフィリピンそれぞれに役割を与え、レアジョブグループというひとつの組織としてよりよい運営ができるよう心がけています。

海外進出成功のポイントは、現地に飛び込めるマインドを持てるかどうか

—最後に、これから海外進出を考えている企業や、現地採用を検討している人事の方へメッセージをお願いします。


中村さん
海外進出においては、経営陣が本気で「グローバルに展開したい」と思うことが非常に重要です。それだけの本気度がなければ、絶対にうまくいきません。やめた方が良いです。

そして、実際にグローバル展開するうえでは、現地の事情や文化を経営陣が理解していなければ、成功させるのは難しいです。

というのも、海外の事情と日本の事情は違うのにも関わらず、現地を理解せずに「なんでこんな判断してるんだ?」という指摘をしたり、的外れな日本側からの口出しをすることで、日本と海外法人がまとまらないケースが出てしまいますから。

また、海外子会社の運営においても、日本人が赴任するケースもあれば、現地の人材をトップに採用するケースもあるでしょう。

前者の場合は、赴任したスタッフが主体的に「自分は現地でどういった価値を残せるか?」と、しっかり考えることが重要だと思います。

また、駐在員を派遣する場合は、現地の生活水準に合わせた生活も経験してみることをおすすめします。

現地の方にとっては破格の高級マンションに住んだり、不便ない生活ができるように物資が支給されたりするケースもありますが、現地の実情を知ることでこそビジネスに役立つ経験ができます。

たとえばフィリピンでは、タクシーではなく、トライシクルというバイク型のタクシーや、ジープニーという乗合バスがあります。

こういう乗り物は、乗客がたくさん乗るまで出発しなかったり、時間通り停留所に来なかったり、とんでもなく渋滞することがよくあります。

こうした現地の文化を実体験し、現地に溶け込み、現地の人を理解する。そのうえで“一緒に働ける仲間”として見てもらえなければ、現地のスタッフから距離を置かれてしまいますよね。

現地のもの、文化に入り込むマインドセットがあることは、成功への近道になるはずだと思っています。

せっかく海外に行くのであれば、現地と日本の違いを楽しんで「なぜこれが起こっているのか?」と、背景を考える方が建設的ですよね。

「日本はこうだから」と決めつけるのではなくて、「日本だとこういう文化の背景があるから~なんだよ」と伝える。そのうえで、お互いの違いや背景を理解して向き合うと良いのではないでしょうか。

最後に、グローバル人材を育成するのであれば、言うまでもなく英語力は身につけている方が良いです。

現地の言語を流暢に使いこなせるのであれば良いですが、英語力の違いはそのまま、自分たちに入ってくる情報量を大きく左右することにもつながります。

あとは、現地の文化に飛び込めるマインドセットですね。せっかく英語が話せても、現地では日本人同士のコミュニティで固まってしまう人もいます。

きちんと現地のコミュニティに入り込み「現地から情報を仕入れるぞ!」というマインドセットが大切です。

編集後記

一般的に外国籍の人材は、商習慣が全く異なり管理が難しい印象を持つ方が多いのではないでしょうか。

しかし「現地のことは現地に任せる」方針や、ジョブディスクリプションを明確に設定することで海外現地の組織化がうまくいくと聞いて非常に勉強になりました。

中村さんが仰る通り、固定概念を捨てて海外に飛び込むことができ、相互理解ができる人材の方が、現地で活躍する可能性があるのだと聞いて、とてもわくわくしました。

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