人事制度改革とは、組織の経営目標を達成するために経営資源の一つである「ヒト」に関する制度や仕組みを時代や社会のトレンドにあわせて変更することです。人事制度改革は、適切なタイミングや時期に実施することが大切です。この記事では、人事制度改革の目的や進め方、メリット・デメリット、見直しのポイント、失敗事例をわかりやすく解説します。
目次
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1. 人事制度改革とは?
人事制度改革とは、組織の人材に関係した制度や方針を見直し、時代や社会のニーズにあった人事制度へと改革することを意味します。ここでは、人事制度とは何か説明したうえで、人事制度改革の目的について詳しく紹介します。
1-1. 人事制度とは?
人事制度とは、計画的かつ合理的に人材を管理し、円滑に組織を運営するために設計される会社のルールや仕組みのことです。人事制度は、主に等級制度・評価制度・報酬制度から構成されます。また、人事制度の中には、採用や人材育成の方針や福利厚生制度なども含まれます。人事制度を正しく整備することで、透明性のある配置や評価を実現し、従業員のモチベーションを維持しながら組織の目標達成を目指すことが可能です。
1-2. 人事制度改革の目的
人事制度改革の目的は、時代や社会の移り変わりにあわせて人事制度を見直し、アップデートさせることで、経営戦略や事業目標を達成しやすくすることです。近年では少子高齢化により人材確保が困難になっており、限りある人材の価値を高められるような人事制度が必要とされています。
また、グローバル化や技術発展により、ビジネス環境は目まぐるしく変化しており、経営目標を達成するためには、人事制度を改革し、個人と組織ともにパフォーマンスを最大化させることが求められています。このように、時代や社会が急激に変化している現代において、競合優位性を獲得し、組織の成長へとつなげるために人事制度改革は不可欠です。
2. 人事制度改革に適したタイミング・時期
人事制度改革は現代のトレンドの一つです。しかし、どのようなタイミングや時期に人事制度を改革すべきかわからない人も少なくないでしょう。ここでは、人事制度改革に適したタイミング・時期について詳しく紹介します。
2-1. 組織の方針を変更するとき
人事制度は、経営理念や事業目標といった組織の方針を基に作成することが一般的です。経営目標が変わったのにも関わらず、従来のままの人事制度で放置していると、組織と従業員との間で重視する基準に差が生まれ、円滑に組織を運営できなくなる恐れがあります。
たとえば、国内からグローバルへ事業戦略を変更した場合、多国籍の人材を採用し、多様化した価値観や考え方にあった人事制度に改革することで、経営目標の実現に向かって組織を効率よく運営することができるようになります。このように、組織の方針を変更するタイミングで、人事制度改革を検討してみましょう。
2-2. 従業員数が大幅に増加したとき
従業員が増えると現在の人事制度では対応できなくなる恐れがあります。たとえば、部長1人に対して評価対象の従業員が5人だった状況から従業員が大幅に増加し、何十人もの評価が必要になり、現状の人事制度だと管理しきれなくなる可能性があります。このように、従業員数が大きく増加もしくは減少し、組織規模に大きな変革が生じる場合も、人事制度改革を検討すべきタイミングの一つといえます。
2-3. 採用や人材育成が上手くいかないとき
組織の方針や規模が変わるタイミングだけでなく、実際に人事制度を運用していて、採用や人材育成などの人事施策が上手くいっていないときも、人事制度改革の時期といえます。ただし、人事制度は経営戦略や事業目標に基づき設定しているので、人事制度を変更しただけでは効果が出ない可能性もあります。そのような場合、人事制度の根源となる経営目標の見直しもおこなうことが大切です。
2-4. 外部環境が大きく変化したとき
企業方針の変更が必要な場合や、従業員数が増加して組織規模が大きくなる場合など、内部環境が変化するタイミングだけでなく、消費者や取引先のニーズが変わったり、法改正があったりなど、外部環境に変化が生じたタイミングで人事制度を改革することも推奨されます。
たとえば、労働基準法の改正があったにも関わらず、人事制度をアップデートしなければ、法律に違反する労働時間の管理を実施し、違法となり罰則が課せられる恐れもあります。そのため、外部環境を常にチェックし、変化にあわせて人事制度の改革も検討しましょう。
3. 人事制度改革によるメリット
人事制度改革により、さまざまなメリットが得られます。ここでは、人事制度改革によるメリットについて詳しく紹介します。
3-1. 公平な評価を実現できる
昨今では人事制度のトレンドは、年功序列から成果主義へと移り変わりつつあります。自社も成果主義の評価体系を取り入れたいと考える場合、人事制度改革が必要です。時代や社会の変化にあわせて、人事制度を改革し、実態にあった制度に変更することで、公平な評価を実現することができるようになります。
3-2. 従業員のモチベーション向上につながる
人事制度を改革し、現代の従業員の価値観や考え方を考慮した人事制度にすれば、働きやすい会社の構築につながり、従業員の仕事に対するモチベーションは向上します。また、会社から大切にされていると実感できることで帰属意識も高まり、従業員エンゲージメントが向上します。結果として、離職率の低下や定着率の上昇につなげることが可能です。
関連記事:従業員エンゲージメントとは?向上施策や調査方法とその手順をわかりやすく解説!
3-3. 生産性が向上する
現代にマッチしていない人事制度だと、組織の求める姿を提示しても、従業員は付いてこない可能性があります。人事制度改革を実施して、時代や社会のニーズにあった人事制度を整備し、組織と従業員の方向性を一致させることで、個人のパフォーマンスを高めながら、組織の目標達成に向けて一丸となって取り組むことが可能です。これにより、企業全体の生産性向上も期待できます。
3-4. 効果的な人材育成につながる
人事制度改革により、トレンドを取り入れた人事制度を整備することで、効果的な人材育成を実現することができます。たとえば、ネットワークやクラウドの技術の発展により、ITツールが普及しつつあります。オンライン上で研修・教育を実施すれば、従業員の負担を減らして、人材育成をおこなうことができるかもしれません。
また、従来の集合研修だけでなく、eラーニングも取り入れれば、従業員の学びたいタイミングで学習できるため、業務への支障を減らして、人材育成を実施することができます。このように、人事制度改革をおこない、人材育成の方針ややり方も変更することで、これまで以上に従業員のスキルアップや成長を促進することが可能です。
3-5. 優秀な人材を確保できる
経営戦略や事業目標にあわせて人事制度改革を実施し、より一貫性のある人事制度にアップデートすることで、経営目標を達成するために必要な人材を集めやすくなります。たとえば、グローバル化に対応するため、外国籍の人材の採用・育成を推進するような人事制度に改革すれば、海外からも自社とマッチする人材を獲得することが可能になります。このように、人事制度改革は、優秀な人材を確保するためにも役立ちます。
4. 人事制度改革によるデメリットや注意点
人事制度改革をおこなう場合、メリットだけでなく、デメリットが生じる可能性もあります。ここでは、人事制度改革のデメリットや注意点について詳しく紹介します。
4-1. コストがかかる
人事制度改革には、現状の人事制度の問題点・課題の洗い出し、現状の従業員の能力やスキルの把握、新たな人事制度の設計、従業員への周知など、多くの工程が必要になります。また、現状を正しく理解せず、誤った人事制度改革を実施すれば、かえって従業員の不満につながり、逆効果になる恐れもあります。
このように、人事制度改革にはリスクがあり、時間やコストがかかることを押さえておきましょう。あらかじめ予算を明確にし、費用対効果を検証しておくと、途中で施策を断念することなく、スムーズに人事制度改革を実施することができます。
4-2. 従業員の不満や混乱につながりやすい
人事制度改革を実施すると、社内に大きな変革が生じます。従業員の中には変化を好まない人もいるかもしれません。たとえば、「年功序列」「終身雇用」に魅力を感じて入社した従業員にとっては、「成果主義」「能力主義」といった評価体系は受け入れ難い可能性もあります。このような事態を生じさせないためにも、目的やメリットを周知し、従業員の理解を得たうえで、人事制度改革を進めることが大切です。
4-3. 制度定着までに時間がかる
人事制度は社内に定着するまでに時間を要します。頻繁に人事制度を改革すると、何が基準になっているのかわからなくなり、従業員の混乱を招き、人事制度が遵守されなくなる恐れもあります。人事制度改革をおこなう際は、時期やタイミングをきちんと見極め、慎重に進めることが大切です。
5. 人事制度改革における見直しのポイント
人事制度改革は正しく実施しなければ、メリットでなく、デメリットが生じる恐れがあります。そのため、人事制度改革の見直しのポイントを押さえておくことが大切です。ここでは、人事制度改革における見直しのポイントについて詳しく紹介します。
5-1. 見直しの時期を見極める
定期的に人事制度改革は実施する必要がありますが、頻繁におこなうものではありません。何度も人事制度を改革すると、変更した内容が従業員に正しく伝わらず、社内に人事制度が定着しない恐れがあります。人事制度を改革する際は、見直しのタイミングや時期を見極め、慎重に進めることが大切です。
5-2. 人事データを活用する
人事制度の見直しを実施して改革をする場合、現状を正しく理解し、課題を洗い出すことが大切です。人事担当者のみの主観で人材や組織の情報を洗い出し判断すると、誤った解釈につながる恐れがあります。
そのため、社内に蓄積されている人事データを活用することが推奨されます。能力やスキルなどの人事データを収集・分析することで、客観的に評価し、正確に現状を把握することが可能になります。人事データを効率よく活用するためにも、人事管理システムやタレントマネジメントシステムなどのITツールの導入も検討しましょう。
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5-3. 評価基準を明確に示す
人事制度を改革する場合、従業員が理解しやすいよう、評価基準を明確に示すことが大切です。基準を明確にすることで、従業員は何が評価につながるのか正確に理解でき、行動につなげやすくなります。また、公平な評価にもつながり、正しく評価されていると感じられることで、従業員の仕事に対するモチベーションは向上します。
5-4. 従業員にきちんと周知する
人事制度改革を実施し、経営戦略や事業目標に基づき、時代や社会に適応した一貫性のある人事制度が設計できても、従業員に理解し、遵守してもらわなければ、意味がありません。そのため、人事制度を改革したら、研修やセミナーなどを通じて正しく周知することが大切です。
5-5. 定期的に人事制度をチェックする
人事制度は頻繁に改革するものではありませんが、時代や社会のニーズに合致しているものかどうか、定期的にチェックすることが大切です。最新のニュースやトレンドに対して情報感度を高めておくことで、いざという時に素早く人事制度を見直し、改革することができます。これにより、競合優位性を獲得し、効率よく組織の価値を高めることが可能です。
6. 人事制度改革の進め方の手順
人事制度改革の進め方の手順を理解しておくことで、スムーズに人事制度を改革することができるようになります。ここでは、人事制度改革の進め方のステップを紹介します。
6-1. 企業方針の確認
最初に企業方針を確認しましょう。企業方針と一致しない人事制度は、従業員の混乱につながり、上手く機能しません。企業方針に沿った人事制度改革にすることで、一貫性のある人事制度を設計し、効率よく人事施策をおこなうことができます。
6-2. 現状の把握
次に現状の把握です。企業の状態がわからないと人事制度改革が必要なのか、不必要なのかの判断がしにくくなることが考えられます。現状を客観的に正しく把握するためにも、人事データで数値化して検証しましょう。また、人事担当者のみで進めるのでなく、現場の従業員の声も取り入れることで、実際に何が課題になっているのかリアルな意見を人事制度に反映させることができます。
6-3. 課題のリスト化
現状を把握できたら、組織目標を達成するために何が不足しているのか、課題のリスト化を実施します。課題をリスト化することで、現状の人事制度の問題点が導き出され、改革すべき点が明確になります。また、リスト化することで、優先順位を検討しやすくなるというメリットもあります。
6-4. 人事制度の変更
実際に課題が明確になったら、それに基づき人事制度の変更をします。すべての課題を解決するのが難しい場合、優先順位を決めて取り組むようにしましょう。また、人事制度を変更する場合、就業規則の変更も必要になることが多いです。就業規則を変更した場合、再度、労働基準監督署へ届出も必要になるので注意が必要です。
(作成及び届出の義務)
第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。(省略)
6-5. 従業員への周知
最後は、従業員への周知です。人事制度が変更になることを急に知らされると、従業員は混乱してしまう恐れがあります。人事制度改革が決定した段階で早めに周知しておきましょう。また、労働基準法には法令等の周知義務が定められているので、正しい方法で従業員へ周知することが大切です。
(法令等の周知義務)
第百六条 使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、(省略)に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。
7. 人事制度改革が失敗する原因
人事制度改革に失敗してしまう事例もよくあります。あらかじめ失敗事例を確認しておくことで、リスク対策を実施したうえで慎重に人事制度の改革を進めることができます。ここでは、人事制度改革が失敗する原因について詳しく紹介します。
7-1. 評価項目が細かすぎる
人事制度改革の際、評価基準を明確にすることが大切です。しかし、評価項目を細かく設定し過ぎることで、管理が煩雑になり、人事制度が上手く機能しないために失敗につながる可能性があります。評価項目や基準を設定する際は、人事制度改革の目的を達成するために何が必要か明確にし、シンプルかつわかりやすく定めることが重要です。
7-2. 従業員への周知が足りない
人事制度改革を実施しても、従業員への周知が不足すると、変更内容やポイントが伝わらないために目的を達成できず、失敗につながる恐れがあります。また、従業員の理解が得られないままだと、会社への不満につながり逆効果となる可能性もあります。このような事態を生まないためにも、人事制度を改革する際は、あらかじめ従業員が何を求めているか確認し、同意を得たうえで慎重に施策を進めましょう。また、人事制度改革を実施した後も、その内容をきちんと従業員に周知することが大切です。
7-3. 人事制度が管理者の負担になる
人事制度改革により、労務管理制度や評価制度などが変わり、管理者の負担が増える可能性があります。管理に時間や手間がかかり、コア業務に集中できなくなり、売上や利益が下がり、組織の衰退につながる恐れもあります。そのため、管理者に配慮した人事制度改革も重要です。また、実際に会社の経営を動かしている経営陣や管理職の意見を参考にしながら、人事制度改革を進めることも大切です。
8. 人事制度改革の成功事例
ここでは、人事制度改革の成功事例を紹介します。他社の事例を参考に、取り入れられるものがあったら、ぜひ自社の人事制度改革に活かしてみてください。
8-1. A社|定期的なフィードバック
人事制度改革の事例の1つ目は、定期的なフィードバックを取り入れたA社です。当初、A社では従業員へのフィードバックの機会として年に一度の面談を実施していたものの、面談後に離職する従業員が多くいる状況でした。面談で「1年間努力してきたが、企業から正当な評価が得られない」と感じる従業員が大勢いたためです。企業が期待することと従業員の働きにミスマッチが生じている状態でした。
そこでA社は人事制度改革として、年に1回ではなく3カ月おきの定期的なフィードバックを実施します。面談する機会を増やしたことで、従業員は企業から何を期待されているのか明確に理解でき、それに応じて自身の能力を発揮したり、アピールしたりできるようになりました。適正な評価を受けられること、コミュニケーションの機会が増えたことで帰属意識が生まれ、離職率の低下を実現しました。
8-2. B社|KPI評価シートの公開
人事制度改革の事例の2つ目は、KPI評価シートを公開したB社です。B社は、目標に対する従業員の進捗状況が不明瞭でした。そこでKPI評価シートを公開し、全社員がいつでも確認できる仕組みに変更したことで、途中経過の透明化を実現しています。その結果、所属部署内で目標を共有しながら、目標設定を明確におこなうことができるようになりました。また、全社員がKPI評価シートを確認できるようになることで、透明性のある評価基準を実現し、従業員満足度も向上しました。
関連記事:KPIとは?メリット・デメリットや設定のポイントをわかりやすく解説!
9. 人事制度改革を成功させて組織を活性化させよう!
人事制度改革は、ビジネス環境が目まぐるしく変化する現代において、組織を効率よく運営するためにも不可欠です。しかし、慎重に進めなければ、かえって従業員の不満につながり、逆効果になる恐れもあります。人事制度改革の進め方や見直しのポイントを正しく押さえ、自社のニーズにあった人事制度を作り出しましょう。
2023年から人的資本の情報開示が義務化されたことにより、人的資本経営に注目が高まっています。今後はより一層、
人的資本への投資が必要になるでしょう。
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