「要員管理と人員計画との違いは?」
「要員管理に役立つツールやシステムの特徴は?」
企業の労務担当者・経営者の中には、このような疑問を抱えている方も多いでしょう。要員管理は、企業の生産性の向上や余分な人件費の削減に有効です。
そこで本記事では、要員管理の目的や人員計画との違いについて解説します。また、要員管理のメリット・デメリット、運用方法、要員管理に役立つツールやシステムについて紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
1. 要員管理とは
要員管理とは、企業がプロジェクトを効率的に遂行するために、必要な人材を適切に配置する管理手法です。従業員の能力を最大限に活用できれば、企業の生産性は向上します。
例えば、大きな企業や大規模なプロジェクトを遂行するときには、労働力の過不足が生まれることが一般的です。そのようなときに、適切なタイミングでリソースを割り当てる要員管理は重要になります。
2. 要員管理と人員計画の違い
要員管理と人員計画の違いは以下の2つです。
要員管理 |
人員計画 |
|
人材 |
組織にすでにいる人材 |
組織にすでにいる人材とこれから採用する人材 |
範囲 |
把握、配置、教育 |
計画立案 |
要員管理は社内の人材の把握から配置、教育までをおこないます。一人ひとりのスキルや資質を考慮して配置し、能力を発揮できるよう教育などのサポートをすることがメインです。
一方で、人員計画は新たに採用することや異動も含めて、社内の人材の具体的な計画を立てることを指します。部署やプロジェクトごとにどのような人が必要なのかを検討し、プランニングすることがメインです。
3. 要員管理の3つのメリット
要員管理のメリットは3つです。
- 効率的な人員配置ができる
- 余分な人件費を削減できる
- 従業員のモチベーションを高められる
3-1. 効率的な人員配置ができる
要員管理することによって、効率的な人員配置ができます。プロジェクトごとに必要なスキルを持った従業員を割り当てることで、タスクの重複やリソースの浪費を防ぐことが可能です。
例えば、専門的な技術が必要なプロジェクトには、その分野に精通した従業員を優先的に担当させます。結果として、プロジェクトの進行スピードを早めること、サービスの品質を向上させることが可能です。
3-2. 余分な人件費を削減できる
要員管理は、余分な人件費を削減することが可能です。必要なタイミングで必要な人数を揃えることで、過剰な残業代の発生や外注費の拡大を防げます。
企業にとって、従業員の人件費は大きなコスト要因です。要員配置により企業の経費を抑えられると、将来的な事業の投資計画に余裕を持たせられます。
3-3. 従業員のモチベーションを高められる
要員管理は、従業員のモチベーションを高められるメリットがあります。従業員が自分のスキルを活かせる環境を得られるためです。
能力が評価されると、仕事に対する意欲もさらに高まるでしょう。従業員の離職率を低下させ、長期的に企業に貢献してもらえる人材を育てることにもつながります。
4. 要員管理の2つのデメリット
要員管理のデメリットは以下の2つです。
- 従業員のスキルや能力を把握するコストがかかる
- 定期的に配置の見直しが必要になる
4-1. 従業員のスキルや能力を把握するコストがかかる
要員管理のデメリットとして、従業員のスキルや能力を把握するコストがかかる点が挙げられます。従業員一人ひとりのスキルや能力、得意分野を正確に把握する業務は、時間や労力がかかるためです。
例えば、従業員数が100名以上の大規模な企業が、全従業員の能力を詳しく把握することは容易ではありません。定期的にデータを収集し、評価システムを導入して、担当者の負担を減らす工夫が必要です。
4-2. 定期的に配置の見直しが必要になる
要員管理では、配置や評価の定期的な見直しが必要です。状況に応じて適切に人員配置するためです。
一般的に、従業員が持つ知識やスキルはプロジェクトごとに変化します。
企業の生産性を最大化するためには、人員配置を常に再評価することが重要です。配置の見直しは、従業員の混乱や業務の中断を招く可能性があるため、労務担当者は慎重な判断が求められます。
5. 要員管理の運用手順
要員管理を進める方法は、以下の4つのステップからなります。
- 人的資源マネジメント計画の立案
- プロジェクトチームの編成
- プロジェクトチームの育成
- プロジェクトチームのマネジメント
5-1. 人的資源マネジメント計画の立案
全体の方向性を決めるうえで大切なのが、人的資源マネジメント計画の立案です。
プロジェクトや業務に必要な人材を明確にし、どのようなリソースが必要かを具体的に決定します。以下は項目の具体例です。
項目 |
内容 |
要員調達 |
要員の調達先、時期、コスト |
資源カレンダー |
作業時期、調達時期 |
要員ヒストグラム |
期間ごとの要員数、作業時間のグラフ |
要員離任計画 |
要員の解任方法、時期 |
表彰と報酬 |
表彰・報奨の明確な基準、運用 |
トレーニング・強化計画 |
要員のスキルを強化する訓練、計画 |
要員役割・責任範囲 |
要員ごとの責任、立場の確立 |
法令遵守・安全 |
関連する法令、要員の健康と安全 |
計画を立てるときは、企業の短期的な計画や長期的な目標を考慮することが重要です。また、人的資源マネジメント計画を具体的に設定することで、予期せぬ事態にも柔軟に対応できます。
5-2. プロジェクトチームの編成
人的資源マネジメント計画に基づき、必要なスキルを持つ従業員を各ポジションに配置します。プロジェクトチームの編成で考慮すべきポイントは3つです。
- スキルのマッチング
- チーム内での役割分担
- 円滑なコミュニケーション
要員個人の強みや弱みを理解したうえで、相互に補完し合えるチームを作ることが重要です。欠員が出たときには、社外からの調達も検討しましょう。
また、プロジェクトチームの組織図を作成することがおすすめです。責任の所在が明確になることで、プロジェクト全体の方向性が統一され、スムーズな進行が可能となります。
5-3. プロジェクトチームの育成
編成されたプロジェクトチームは、業務の効率性をさらに高めるために育成します。要員の成長がプロジェクトの成功に直結するためです。
タックマンモデルでは、チームの形成を5つの段階に分けて解説しています。
- 形成期(チーム発足)
- 混乱期(メンバー内のぶつかり合い)
- 統一期(信頼関係の構築)
- 機能期(パフォーマンスの向上)
- 散会期(チーム終焉)
形成期は、要員同士がお互いのことをよく知らない状態です。リーダーはコミュニケーションを増やす施策が求められます。
混乱期は、実際にプロジェクトにアサインするなかで、意見の違いや対立が生まれる段階です。この時期を越えると、要員同士がお互いの意見を認め合う統一期に入ります。
機能期は、チームの結束力が高まり、チーム全体のパフォーマンスが最高潮に達するときです。その後は、要員の離脱やチームの解体が進む散会期に入ります。
5-4. プロジェクトチームのマネジメント
次にプロジェクトチームのマネジメントをおこないます。
プロジェクトチームの課題は、早期発見して解決することが重要です。プロジェクトを遂行すると、要員同士の対立が生まれることもあります。
対立を放置すると、チームワークが乱れて生産性の低下につながりかねません。リーダーは、チームをまとめるコンフリクトマネジメントを実施する必要があります。
6. 要員管理に役立つツール・システムの特徴
要員管理に役立つツール・システムには、2つの特徴があります。
- クラウドで一元管理できる
- 自由にカスタマイズできる
6-1. クラウドで一元管理できる
要員管理に役立つツール・システムは、クラウドで一元管理できることが特徴です。要員管理専用のツール・システムは、大きく分けて2つのタイプがあります。
クラウド型(SaaS) |
オンプレミス型 |
オンライン上のサービスをインターネット経由で使用 |
サーバーにソフトをインストールして使用 |
クラウド型(SaaS)は、外部と情報共有しやすいことがメリットです。一方で、オンプレミス型は、サーバーにインストールするときに、ベンダーやエンジニアに依頼する必要があります。
手間やコストの面から比較しても、クラウド上で完結する要員管理ツール・システムの方がおすすめです。
6-2. 自由にカスタマイズできる
要員管理に役立つツール・システムは、企業の要望や実態に合わせて、自由にカスタマイズできることが特徴です。
例えば、製造業なら、社内のエンジニアの資格登録やスキル開発プログラムの構成などを把握できるよう、カスタマイズできるツールが望ましいでしょう。
要員管理はExcelやGoogleスプレッドシートなど、無料ツールでも可能です。しかし、要員管理に特化した機能を自由にカスタマイズできるツール・システムの方が、簡単かつ利便性が高いといえます。