ワークショップでは参加者が主体的に取り組むようカリキュラムを組むため、コミュニケーション能力や課題解決能力を養うことができます。近年では働き方改革の影響もあり、インターネット環境を活用して開催する「オンラインワークショップ」にも注目が集まっています。
この記事では、オンラインワークショップとは何か、メリット・デメリットを踏まえてわかりやすく解説します。また、オンラインワークショップの開催方法や成功させるコツも紹介します。
目次
1. オンラインワークショップとは?
ここでは、オンラインワークショップとは何か、意味や定義を紹介します。また、オンラインワークショップとオンラインセミナーの違いについても解説します。
1-1. そもそもワークショップとは?
ワークショップとは、「体験型講座」「グループ学習」「研究集会」などとよばれることもあり、参加者が個々で考え、ほかの参加者と協力し合いながら与えられた課題をこなすスタイルの取り組みを指します。日本では、企業における社員研修の一環としてワークショップがおこなわれることが多いです。また、学校教育の手法や社外の顧客に向けたサービスとして提供されることもあります。
ワークショップで学べることはプログラムによってさまざまですが、主に課題解決能力や合意形成の方法、主体性や積極性を学ぶことができます。ただ話を聞くだけではなく、参加者が主役となって取り組むため、当事者意識が生まれて成果や達成感を得られやすくなる点が特徴です。
1-2. オンラインワークショップの意味や定義
オンラインワークショップとは、「オンライン」と「ワークショップ」を組み合わせた用語で、その名の通り、インターネット環境を活用して開催されるワークショップのことです。オンラインワークショップが注目される理由として、「感染症への対策」「テクノロジーの発展」「働き方改革」が挙げられます。
近年ではIT技術が発展し、便利なITツールがさまざま登場しています。また、感染症への対策や働き方改革のため、テレワークなどのリモートで働くことを推進する企業も増えています。このような背景もあり、オンラインワークショップの開催に取り組む企業も増加しています。
1-3. オンラインワークショップとオンラインセミナーの違い
オンラインワークショップと聞くと、オンラインセミナーとの違いがわかりにくいと感じる人もいるかもしれません。オンラインセミナーもオンラインワークショップと同様に、インターネットを通じて受ける研修プログラムの一種です。しかし、開催方法や内容に違いがあります。
セミナーとは、特定のテーマについての講習会のことを意味します。専門家や有識者を講師として招き、参加者は授業のようなスタイルで話を聞き、最後に質疑応答をする流れが一般的です。一方、ワークショップは授業を受けるだけではなく、参加者が主体となって行動し、学びを得る研修プログラムです。授業を受ける時間がある場合も多いですが、そのあとは基本的に参加者が自分で課題に取り組む時間が設けられています。
つまり、専門的な知識を学ぶのが「オンラインセミナー」、能動的に学ぶ場を設けているのが「オンラインワークショップ」といえます。オンラインワークショップとオンラインセミナーは、目的によってどちらが最適なのか異なるため、それぞれの意味やメリットをきちんと理解して使い分けることが大切です。
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2. オンラインワークショップを開催するメリット
オンラインワークショップを開催することで、さまざまなメリットが得られます。ここでは、オンラインワークショップを開催するメリットについて詳しく紹介します。
2-1. 感染症対策ができる
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために導入した企業も多いオンラインワークショップですが、ほかにもインフルエンザやノロウイルスなどの感染症を防ぐ効果があります。このような感染症対策のため、対面のワークショップではなく、オンラインワークショップを開催する企業もあります。
2-2. 参加場所の制限を受けない
従来の対面式のワークショップでは、参加したいプログラムがあっても、会場の収容人数や場所によって参加できない人が一定数いました。オンラインワークショップの場合、実際の会場を設けないため、人数制限やロケーションが原因で参加できない人を減らすことができます。もちろん、使用するツールやプログラムの内容によって人数制限が出てしまうこともあるかもしれません。しかし、場所を気にせず参加できるため、さまざまな人が平等に教育を受けるチャンスを得られるようになります。
2-3. コストを抑えられる
対面のワークショップを開催する場合、会場や誘導スタッフを確保するためのコストが必要です。一方、オンラインワークショップであれば、これらのコストはかかりません。そのため、オンラインワークショップに移行することで、大幅にコストを抑えられる可能性があります。
2-4. データの保存や複製が容易におこなえる
通常のワークショップの場合、講師が参加者に説明するため、黒板やホワイトボードに記載することがあります。これらの内容は保存・複製が難しいため、他で同様のワークショップを開催する場合、再度記載しなければなりません。
一方、オンラインワークショップの場合、電子データを用いるので、簡単に保存や複製をおこなうことができます。同様のオンラインワークショップを開催する場合、保存しておいたデータを使いまわすことで、無駄な手間を省くことが可能です。
また、保存した内容は参加者と共有するだけでなく、参加できなかった人に向けてアーカイブとして公開することもできます。さらに、オンラインワークショップで蓄積したデータは、自社コンテンツとして配信できるため、企業にとっての資産としても役立ちます。
2-5. データ分析・解析が可能
オンラインワークショップを開催する場合、参加者の年齢・性別・住所・職業などの基本情報をデータで収集することができます。収集したデータを基に分析・解析をすることで、参加者の傾向や特徴を客観的に把握することが可能です。分析したデータを活用して、改善に努めることで、より効果的なオンラインワークショップを開催することができます。
3. オンラインワークショップを開催するデメリット
オンラインワークショップには、メリットだけでなく、デメリットもあります。ここでは、オンラインワークショップを開催するデメリットについて詳しく紹介します。
3-1. ITツールの導入が必要
オンラインワークショップを開催するには、まずスマホ・タブレット・PCといった端末とネット環境を用意しなければなりません。また、情報共有をスムーズにおこなうため、Web会議システムやチャットツールなどの導入も必要です。必要に応じて、Webカメラやマイクなども必要になります。
このようなITツールを準備・整備するには、時間や手間がかかります。しかし、一度そろえてしまえば、次からは同じツールを使用できるので、目先のコストだけにとらわれず、長期的な目線で導入を検討しましょう。
3-2. ITツールに不慣れな人は参加しにくい
オンラインワークショップを開催する場合、ITツールの利用は必須ともいえます。そのため、通常のワークショップと比べて、オンラインワークショップの場合、ITツールに不慣れな人の参加が期待できない可能性があります。そのため、ターゲット層を明確にして、オンラインワークショップが向いているかどうかを判断するようにしましょう。
3-3. 通信トラブルが発生しやすい
オンラインワークショップでは、サーバーやネットワークの影響で、通信トラブルが生じる可能性があります。通信トラブルが発生すると、ワークショップを中断しなければならず、スムーズに開催できない恐れもあります。あらかじめ通信トラブルが生じた場合の対応を考えておくと、実際にトラブルが起きた時でも落ち着いて対応することが可能です。また、自社だけでは通信トラブルが生じたときの対応が困難な場合、外部のサポートを利用するのも一つの手です。
3-4. コミュニケーションを取りにくい
オンラインワークショップの場合、複数の人が同時に発言することが難しいです。そのため、一方的なコミュニケーションになりがちで、ワークショップとして機能しない可能性もあります。まずはオンラインワークショップのコミュニケーションの取り方のルールを設けることが推奨されます。たとえば、次のような方法が考えられます。
- 講師の発言に対して疑問がある場合はリアクション機能で反応を示す
- トラブルが生じた場合はチャット機能でコメントする
- 定期的に参加者が自由に発言する時間を設ける
このように、参加者が主体的に参加できるよう工夫をおこなうことで、オンラインワークショップを成功に近づけることができます。
3-5. 実務を学ぶのには向いていない
オンラインワークショップは、次のような実際の作業を伴う実習には向いていません。
- 対面での来客対応や名刺交換などのマナー研修
- エンジニアのネットワーク設定作業
このように、オンラインワークショップは、非対面でおこなわれるため、実務を伴う場合不向きなケースもあります。そのため、目的や内容に応じて、対面とオンラインどちらでワークショップを開催するのかを決めることが大切です。
4. オンラインワークショップのやり方
オンラインワークショップはまだまだ新しい手法なので、開催するときの手順ややり方についてあまり知られていないかもしれません。参加者に満足してもらえるワークショップを開くためには、正しく準備をしたうえで開催することが重要です。ここでは、オンラインワークショップを開催する方法について6つのステップで紹介します。
4-1. ワークショップの内容を決める
最初に決めておきたいのが、ワークショップの内容です。ワークショップの内容によって、オンライン・オフラインのどちらで開催するか、配信ツールに求める機能が変わります。ワークショップの目的やテーマを大まかに決め、そこから詳しいプログラムを作っていきましょう。オンラインイベントはメリハリが大切なので、しっかりとタイムスケジュールを組んで、いつ何をするのかを明確にしておくことが大切です。
4-2. 配信ツールを決める
オンラインワークショップは、Web会議システムを活用して配信することが一般的です。近年ではさまざまなWeb会議システムが登場しているので、どれを使ったらよいかわからず、困っている企業も少なくないでしょう。ITツールの料金や機能、使いやすさ、サポートなどの観点から、複数のツールを比較し、実施するオンラインワークショップのプログラムに合った配信ツールを選ぶことが大切です。
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4-3. 集客する方法を決める
開催内容と配信方法が決まったら、集客の方法について考えていきましょう。早めに告知しておけば、それだけ集客効果が高まるため、できるだけ余裕を持って周知することをおすすめします。社内向けワークショップであれば、社内報やメール、掲示物などを通しておこなうことが一般的です。社外向けに開催する場合は、SNSや情報サイト、ホームページなどを活用して告知しましょう。
なお、媒体によって利用者層が異なる点に着目しましょう。たとえば、Instagramは比較的若年層の利用者が多く、中年層以上はFacebookの利用者が多くなります。告知媒体によって訴求できる層が異なるため、まずはターゲットをよく分析し、どの方法がもっとも効果的に集客できるのかについて考えることが肝心です。
4-4. 当日の役割分担を決める
ワークショップの内容に応じてプロジェクトのメンバーと役割分担、当日の体制を決めましょう。誰が何をするのか、いつどこでどのような仕事をするのか、機材をどのように繋ぐのかなどを図や表に書き出しておくと、必要な準備や当日の流れが容易に把握できるようになります。オンラインワークショップでとくに重要なのは、以下の3つの役割です。
- 進行役を務めるファシリテーター
- スムーズな進行をサポートするタイムキーパー
- オンライン配信知見があるメンター
ファシリテーターは、参加者の気持ちや雰囲気を察しながら、話しやすい雰囲気を作る必要があります。円滑なコミュニケーションの要といえるでしょう。また、タイムキーパーやオンラインワークショップに慣れているメンターを配置することで、よりメリハリのある、安定したワークショップを開催することができます。ほかにも、画面の切り替えや資料の共有をサポートするスタッフや、音声やカメラを調整するスタッフなど、必要に応じて役割を振っておきましょう。
4-5. 参加者のコミュニケーション方法を決める
オンラインワークショップにおいて、参加者とのコミュニケーションの取り方に注意を払う必要があります。とりわけオンラインワークショップは、参加者同士の交流が濃密であればあるほど満足度が高く濃い内容になります。そのため、オンラインでも対面式と同様に、双方向のコミュニケーションを実現できるように、環境を整備することが大切です。また、チャット欄を開放したり、質問の時間を設けたりして、参加者が発言しやすくなるように、コミュニケーションのルールを決めておくことも、スムーズなオンラインワークショップの運営のために重要です。
4-6. 繰り返しリハーサルをして当日を迎える
オンラインワークショップを開催するときは、念入りなリハーサルが大切です。直前にリハーサルをおこなうと、機材が壊れるなど、トラブルが発生した場合に対応が間に合わなくなるため、必ず数日前から複数回にわたってリハーサルをおこないましょう。なお、リハーサルでは、次のようなポイントに注意しましょう。
- 画質や音質は一定レベル以上であるかどうか
- インターネット回線が安定しているかどうか
- 動画や資料、画面の共有方法はどうするのか
- どのタイミングでどの話者に画面を固定するか
- スタッフの役割と実際の動きに問題がないかどうか
初めてオンラインワークショップを開催する場合、不安がなくなるまで何度もリハーサルしておくと、当日は安心してワークショップを進めることができます。
5. オンラインワークショップの開催に必要なもの
プログラムや進行方法をしっかりと決めておくのはもちろんのこと、オンラインワークショップの開催に必要な機材やツールを用意することも忘れてはいけません。オンラインワークショップの開催に必要なツールは、以下のとおりです。
- インターネット回線
- PC
- スマホ
- カメラ
- マイク
- 配信ツール
PCにカメラとマイクが内蔵されている場合、それを使用しても問題ありません。高画質や高音質にこだわるのであれば専用の機材の用意をおすすめします。しかし、画質や音質を上げるほどデータの通信量が増加し、回線が遅くなる恐れもあるので注意しましょう。配信ツールは、Web会議システムを使用することが一般的です。ツールによってワークショップに向いているものと向いていないものがあるため、よく機能を比較して企画に合ったものを選ぶことが重要です。
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6. オンワインワークショップを成功させるためのコツ
オンラインワークショップであっても、参加者の目的や主催者の役割は対面式と変わりません。しかし、オンライン越しの場合、臨場感や場の雰囲気を感じにくくなるため、参加者同士で温度差が生まれてしまう恐れがあります。そのため、オンラインワークショップでは、対面式でおこなうワークショップとは異なるポイントに気をつけなければなりません。ここでは、オンラインワークショップを成功に導くためのコツについて詳しく紹介します。
6-1. 入念に事前準備しておく
オンラインワークショップの成功は、事前の準備にかかっているといっても過言ではありません。進行がもたついたり、通信トラブルが多かったりすれば、いくらワークショップの内容が優れていても参加者の満足度は低くなってしまいます。何度もリハーサルをおこなうことはもちろん、通信環境や機材のチェックも念入りに済ませておきましょう。
6-2. 参加しやすい導線を作っておく
オンラインワークショップを成功させるためには、多くの参加者を集めて活発な会にすることが大切です。場合によっては少数精鋭のワークショップのほうが適しているケースもありますが、定員を大きく下回ってしまうときは、開催自体が難しくなることもあるかもしれません。そのため、参加しやすい導線を整えておき、しっかりと集客できる仕組みを作ることが大切です。たとえば、次のような施策が有効的です。
- 申し込みの入力フォームをシンプルにして心理的障壁を取り除く
- 簡単に参加できる配信ツールを使用する
- コンテンツや配信に関する質問窓口を用意する
- 次回のセッションの申込みページを共有して継続参加を促す
申込・参加方法を明確にし、応募者の手間を最小限にすることで、参加者が集まりやすくなります。また、ITツールに不慣れな人の参加も促すため、初心者の応募を歓迎していることや、サポート体制が充実していることもアピールするとよいかもしれません。
6-3. コミュニケーションが活発になる工夫を盛り込む
オンラインワークショップを開催するときは、画面越しのコミュニケーションになります。画面越しでは発言のタイミングがわからないと感じてしまう人も多いです。また、発言がかぶってしまうことを避けて口数が少なくなりやすいです。そのため、参加者が活発にコミュニケーションを取ることができるような環境を整備することが大切です。次のような工夫をしてコミュニケーションが取りやすいワークショップにしましょう。
- 開始前からルームを開き、参加者が雑談を楽しめる場を作る
- ワークショップ中はチャットを開放し、自由に発言してもらう
- 参加者に問いかけ、発言を促しながら進行する
- ブレイクアウトルームを設けて参加者同士に会話の機会を与える
- 終了後は希望者に向けた交流会を開く
ワークショップでは、上記のように参加者が主体となって発言や課題への取り組みを進められるよう、サポートすることが成功のカギです。
6-4. タイムスケジュールを細かく設定する
オンラインワークショップを開催するときは、できるだけ細かくタイムスケジュールを設定しましょう。どうしても孤独感を覚えやすいオンラインイベントでは、集中力や熱意が長く続かないためです。作業や説明は長くとも20分程度を目安に、アイスブレイクの時間を作りながらメリハリのあるプログラムにするとよいでしょう。
7. オンラインワークショップの成功はコミュニケーションがカギ
オンラインワークショップでは、画面越しに参加者が主体となって課題をこなしていきます。参加者の当事者意識や協力が重要となるので、コミュニケーションを取りやすい環境を整えることが大切です。コミュニケーションを促してオンラインワークショップを成功させるためには、事前準備が欠かせません。当日スムーズに進行させるためのリハーサルや使いやすいツール選びが肝心となるため、早くから念入りな準備をしておきましょう。