この記事では、最近よく聞く「MVV」という言葉について解説します。
MVVを策定することのメリット、手順、注意点、MVVを浸透させる方法、類語との違い、他社のMVV事例などを解説します。
目次
【豪華ゲスト多数登壇!】変化に負けない「強い組織」を育むためにHRが果たすべき役割を考える大型カンファレンス『HR NOTE CONFERENCE 2024』
「人的資本経営」「ウェルビーイング」「DEI」といったトレンドワードが、HR領域だけでなく社会全体に拡がり始めた昨今。自社組織に漠然と"停滞感"を感じ、「うちは取り残されていないだろうか?」「何かやらないといけないのでは・・・」といった不安や悩みを抱える人事・経営者の皆様も多いのではないでしょうか。
本カンファレンスでは、HR領域の有識者の皆様に、様々な組織課題を解決するためのアプローチ方法について解説いただきます。強い組織を育む企業が実践している事例には、組織強化に必要な考え方や人事が果たすべき役割について学べるポイントが多くあります。ぜひ有識者の皆様と一緒に、組織を強化する「共通原理」について考えてみていただければと思います。
1.MVVについて詳しく解説
1-1.MVVとは?
MVVとは経営学者ピーター・F・ドラッカー氏が提唱した企業の経営方針のことを指します。英語ではMISSHON(ミッション)VISION(ビジョン)VALUE(バリュー)の3つの頭文字を訳したものです。
MVVを策定することで企業の基盤となり事業の方向性を明確にすることができます。
引用:ミッション・ビジョン・バリューってむずかしいから、勝手につくり直してみた。
ミッション
ミッションは企業が成し遂げたい使命であり、その企業の存在意義を指します。企業の根幹となり、そう簡単に変わることはありません。社会にどのような価値を提供し、何を実現するための組織なのかを言語化するためにあります。わかりやすくするために以下にソフトバンクの例を出して紹介します。
ここではソフトバンクの「情報革命」のパワーを人々のために正しく発展させたいという思いが短くまとめられています。
ビジョン
ビジョンは企業の理想的な姿を表します。会社や組織の将来像であり、方向性を表すものとなります。自社が思い描く理想像だとも言えるでしょう。また、理想を達成した後の姿だともいえます。
これはソフトバンクグループが次の30年も引き続き情報革命で人々の幸せに貢献し、「世界の人々から最も必要とされる企業グループ」を目指すという方向性を定めたものです。
バリュー
バリューはミッションやビジョンを達成するための行動指針や価値観を表します。ミッションやビジョンを目的とするとバリューはそれらを実現させるための手段だといえます。
これは困難や無理難題にぶつかりその壁を乗り越える。つらく、大変なことだがお客様のためになるならば、その努力をいとわない。むしろその努力自体、楽しいことだ。という意味が込められています。
1-2.経営理念 企業理念の違い
「MVV」と似ている言葉に企業理念・経営理念という言葉があります。
まず企業理念とは「会社の存在意義」を表したものです。企業が社外にイメージを伝えるものなのでそう簡単に変わることはありません。
経営理念は「経営を進める上で、企業が所有している財産をどのような方針で運用していくのか」を表したものになります。これは市場の動向やニーズ、経営者の考え方で変わる可能性があります。企業理念はミッション、経営理念はビジョンと意味が似ています。
関連記事:5分でわかる経営理念の作り方|定義や企業事例まで分かりやすく解説!
1-3.行動指針(クレド)との違い
行動指針とは経営理念・企業理念を達成するために具体的な行動を明文化したものであり、今後行う行動が適切かどうか判断する際の基準になります。
また、クレドとは「企業の活動や仕事の基準となる信条」のことを指します。この2つの言葉とバリューは似ていますが、バリューには目標を達成するための価値観という意味があります。行動指針とクレドには価値観が含まれていません。
1-4.パーパスとの違い
パーパスとは「社会の中でその企業が何のために存在しているのか」を指す言葉です。これはMVVの中のミッションによく似た意味であるといえます。
しかし、存在価値の意味合いでこの2つは異なります。パーパスとは社会的存在価値を定義するものです。第三者視点つまり、社会からの視点が含まれます。それに対しミッションは第一人称視点つまり、企業視点で描かれることが多いです。
関連記事:パーパスとは?MVVとの違いや企業事例、注目されている背景をご紹介
2.MVVを設定するメリット
2-1.一貫性のある社会貢献活動が行える
現代の企業は利益追求だけではなくステークホルダーに対する社会的責任を負う必要があります。従業員、消費者、投資家、企業の地域の住民などがステークホルダーに該当します。社会的責任が重要視されるようになった背景として、利益追及だけを推進した企業活動による、環境破壊や労働問題などの社会問題が挙げられます。
MVVを設定することで、より明確に企業の社会的責任を定義することができます。それにより、企業の存在意義に沿った、社会貢献活動をおこなうことができます。
2-2.採用のミスマッチを減らすことができる
MVVを設定することで新たに人材を採用する際に役立ちます。なぜなら、MVVがその会社の持つ価値観や理想像に合う人材かどうかの基準となるからです。MVVという共通認識を基準に採用することで入社後のミスマッチを防ぐことができます。
またMVVが明確な企業は、そのMVVに賛同した人材が集まる可能性も高まります。
2-3.従業員エンゲージメントの向上
従業員エンゲージメントとは従業員が会社に対して持っている愛着や信頼感のことを指します。MVVを共有することにより従業員は共通した目的をもって行動することができます。それにより、自分が担当している仕事が何のために行っているのかが明確になり仕事に対するモチベーションを高めることができます。
また従業員のエンゲージメントや仕事へのモチベーションが高い状態だと業務への満足度が高まり、「離職率の低下」につながります。
3.MVVを設定する際の手順
3-1.策定する際のメンバーを決める
主に代表者、経営幹部、役員などの経営に関わる方がMVVを策定します。そのほかに、営業部や人事部、一般社員の意見も考慮するために一般社員からの意見を採用する場合もあります。この際に事業内容を一度整理し、事業の目的をもう一度振り返ることが重要になります。
3-2.ステークホルダーと市場を分析する
事業の内容を整理し、目的が確認出来たら社会環境や市場のニーズを分析します。そうすることで「自社は社会に対してどのような使命を負うべきなのか」、「どのような課題を解決するべきなのか」という点を明確化することができます。以下では市場分析をする際に有効なフレームワークを紹介します。
PEST分析
PEST分析とは自社を取り巻く外部環境が、現在もしくは将来的にどのような影響を与えるかを把握・予測するためのフレームワークのことです。政治(Polotics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの視点から市場を分析します。
これにより、事業戦略が立てやすくなります。
3C分析
3C分析とは「Company(自社)・Customer(顧客・市場)・Competitor(競合)」を分析することで事業戦略を立てるフレームワークのことを指します。3C分析で、顧客が自社に求めるニーズ、競合他社のMVV、自社がステークホルダーに対しどのような価値提供ができるのかを分析することができます。
これにより、自社の存在価値がより鮮明になります。
3-3.分析をもとにMVVを策定する
上記の分析をもとにMVVを策定していきます。この際の順番はピラミッドの一番上であるミッションから作ります。ミッションは企業の使命、存在意義であり一度策定したらそう簡単に変わるものではありません。そのため時間をかけて決める必要があります。
ミッションが決まったらミッションをもとにビジョンを決める。ビジョンをもとにバリューといった順番で決めていきます。そうすることで一貫性を持ったMVVを作ることができます。
3-4.社内外に周知させる
MVVが完成したら、社内に周知させます。せっかくMVVを策定しても従業員に周知されていなければ意味がありません。従業員の意識に浸透することではじめて、効果を発揮します。MVVを知ってもらうことで従業員と企業の共通認識が生まれ企業の一体感につながります。
また社内だけではなく、ホームページやソーシャルメディアを通じ社外に告知することも必要です。
4.MVV策定の際の注意点
4-1.だれが見てもわかりやすい目標にする
MVVを広めるには共感してもらうことが重要です。
そのためには端的で、だれが見てもわかりやすいものにする必要があります。人によって解釈が別れるような言葉や理解しづらい難解な言葉、共感が得られない言葉は使わないようにしましょう。
4-2.社外への影響力を考慮する
MVVは社外への影響力もあるので、第3者が見ても理解できるようにする必要があります。MVVには自社の事業内容を反映させる必要がありますが、自社の理想像の押し付けになってしまうと企業の評判を落としてしまう可能性があります。あまりにも社会性から逸脱したMVVはSNSやインターネットが発達している現代では炎上の危険性があります。
それらを防ぐためにも、時代性や社会性に即した言葉選びが大切です。
4-3.中長期的目線で設定すること
MVVはすぐに達成できるものではなく、会社の基盤として中長期的に使用できるものにしましょう。成果もすぐには現れるものではないので、MVVに基づいた施策を継続的に行う必要があります。
また、長い間経営していく上で、MVVが社会に適さなくなる可能性があります。その際にはMVVを変更する柔軟性を持つことも必要になります。
4-4.目標に具体性を持たせること
ただ目標を設定するだけではあまり意味がありません。重要なのはMVVに即した行動を、実際に行うことです。特に従業員の行動指針を示すバリューをできるだけ明確に設定することで実際の行動に移しやすくなります。MVVを策定した後にMVVに即した具体的な施策を決め、実行することが重要になります。
5.MVVを浸透させる具体的な方法
5-1.社内報に掲載する
社内報とは会社の情報や理念、社員紹介などを発信するメディアのことです。社内報を使って、定期的に経営層からMVVに関するメッセージを発信することで、社員の目に止まることが増えます。
また多くの人に読んでもらうために、一番最初のページにMVVを記載する、大きいフォントで目立つようにする、など様々な工夫が考えられます。
5-2.クレドカードを作成する
クレドカードとは企業の行動指針や理念が簡潔にまとめられたカードです。クレドカードは小さく持ち運びも容易なため、必要に応じてMVVをすぐに確認することができます。常にMVVを確認することで定着しやすくなります。
5-3.1ON1を利用する
1on1とは定期的に部下と上司が1対1でおこなう面談のことです。1ON1を行うことでMVVを上司から社員一人一人に直接伝えることができます。社員から質問がある場合でも、その場で答えることができるので正確性が高いです。
また部下に正しくMVVが伝わっているか、理解度チェックを行うこともできます。
6.【よくある課題】MVVが現場まで浸透しない
MVVの問題点として、現場まで浸透しづらく形骸化しやすいことが挙げられます。この課題はどのように解決すれば良いのでしょうか。
【改善策】MVVを評価制度に組み込む
改善策としてMVVを評価制度に組み込むことが挙げられます。MVVに沿った考え方や行動が評価に反映されると社員はMVVを意識して行動するようになります。
この時にどのような行動や考え方が評価されるのか明確に表すこと、評価の基準を公表することで従業員は行動に移しやすくなります。
7.MVVを策定した企業の成功事例
7-1.キリンホールディングス
キリンホールディングスはミッションに『自然と人を見つめるものづくりで、「食と健康」の新たなよろこびを広げ、こころ豊かな社会の実現に貢献します』ビジョンに『食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる』バリューに『熱意・誠意・多様性〈Passion Integrity. Diversity.〉』を掲げています。
これらのmvvに食と健康に関連した様々な社会貢献活動を行っています。
7-2.博報堂
博報堂はミッションに『未来を発明する会社へ。Inventing the future with sei-katsu-sha』ビジョンに『生活者発想 パートナー主義』バリューに『Ask 第一生活者として問いを立てる Draw まだ見ぬ生活場面を描き出す Build 次の時代状況を出現させる』を掲げています。
このビジョンをもとにSDGSの広報活動や地域コミュニティ活性化の支援などの活動を行っています。
7-3.デジタル庁
ミッションに『誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を。』ビジョンに『優しいサービスのつくり手へ。大胆に革新していく行政へ。』バリューに『一人ひとりのために、常に目的を問い、あらゆる立場を超えて、成果への挑戦を続けます』を掲げ、これらをもとにだれにでもわかりやすいデジタルの普及を行っています。
7-4.ソニー
ミッションに『クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。』バリューに『夢と好奇心から、未来を拓く。多様な人、異なる視点がより良いものをつくる。倫理的で責任ある行動により、ソニーブランドへの信頼に応える。規律ある事業活動で、ステークホルダーへの責任を果たす。』を掲げています。
7-5.ファーストリテイリング
ファーストリテイリングはユニクロを運営する大企業です。ミッションに『服を変え、常識を変え、世界を変えていく』ビジョンに『本当に良い服、今までにない新しい価値を持つ服を創造し、世界中のあらゆる人々に、良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供します。
独自の企業活動を通じて人々の暮らしの充実に貢献し、社会との調和ある発展を目指します』
バリューに『お客様の立場に立脚、革新と挑戦、個の尊重、会社と個人の成長、正しさへのこだわり』を掲げています。
8.まとめ
ここまでMVVについて解説してきました。MVVは企業が長期的に成長するための一つの指針となる重要なものです。MVVを策定した後、形骸化させないためにしっかりと運用していくことが重要です。
MVVは世界の情勢や自社を取り巻く環境により変化する可能性があります。一度MVVを策定した企業ももう一度見直してみてはいかがでしょうか。
【豪華ゲスト多数登壇!】変化に負けない「強い組織」を育むためにHRが果たすべき役割を考える大型カンファレンス『HR NOTE CONFERENCE 2024』
「人的資本経営」「ウェルビーイング」「DEI」といったトレンドワードが、HR領域だけでなく社会全体に拡がり始めた昨今。自社組織に漠然と"停滞感"を感じ、「うちは取り残されていないだろうか?」「何かやらないといけないのでは・・・」といった不安や悩みを抱える人事・経営者の皆様も多いのではないでしょうか。
本カンファレンスでは、HR領域の有識者の皆様に、様々な組織課題を解決するためのアプローチ方法について解説いただきます。強い組織を育む企業が実践している事例には、組織強化に必要な考え方や人事が果たすべき役割について学べるポイントが多くあります。ぜひ有識者の皆様と一緒に、組織を強化する「共通原理」について考えてみていただければと思います。