組織崩壊寸前だったメッセが「エンゲージメント日本一」になれた理由|“普通の会社”でもできた組織改革とは? |HR NOTE

組織崩壊寸前だったメッセが「エンゲージメント日本一」になれた理由|“普通の会社”でもできた組織改革とは? |HR NOTE

組織崩壊寸前だったメッセが「エンゲージメント日本一」になれた理由|“普通の会社”でもできた組織改革とは?

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本記事は取材をした上で掲載しております。

エンゲージメント日本一の企業を決める『ベストモチベーションカンパニーアワード(※)』で、2021年から3年連続で日本一となり、殿堂入りを果たした株式会社メッセ(メッセグループ)

※ベストモチベーションカンパニーアワード
リンクアンドモチベーションがエンゲージメントサーベイを実施した企業から、「エンゲージメントスコア(従業員のエンゲージメントの指標)」が高い企業を表彰するイベント

「会社が好き」という社員が多く、強い組織ができあがっている印象を受けるメッセ。しかし、そこまでの道程は決して順風満帆ではなく、「どん底」ともいえる状況からのスタートでした。また、同社は遊技事業を営んでいますが、一般的な人気業種とは言い難い、いわゆる「普通の企業」であるとのこと。

そんなメッセが、どのように組織改革を実践していったのか。その背景をメッセCOO宮本さんと、同社と並走してきたリンクアンドモチベーション白木さんのお二人に話を伺いました。

【人物紹介】宮本 茂(みやもと しげる)|株式会社メッセホールディングス 専務取締役COO

1977年生まれ。2001年に東京大学大学院工学系研究科修了、同年ソニー株式会社入社。2004年、東京を中心に遊技業を基幹事業とする株式会社メッセ入社。店舗運営、営業、人事を経験し、2017年から現職。エンゲージメント日本一の企業を決める「ベストモチベーションカンパニーアワード」で、2021年から3年連続で日本一となり、殿堂入りを果たす。同じく2021年には、新規事業として本格的フィンランド式サウナ「ROOFTOP」、都内最大級のコワーキングカフェ「LifeWork」を、2023年には世界最大級のサウナ室を誇るコワーキング&サウナ「MONSTER WORK & SAUNA」をオープンさせるなど、次世代複合型の居場所施設のプロデューサーを務める。

【人物紹介】白木 俊行(しらき としゆき)|株式会社リンクアンドモチベーション インキュベーション推進室 室長

1983年生まれ。2007年に早稲田大学理工学部卒業、同年株式会社リンクアンドモチベーション入社。大手企業向けコンサルティングに従事した後、2010年、自社のR&Dを担うモチベーションエンジニアリング研究所の立ち上げに参画。2017年には、成長企業向けコンサルティング事業および投資事業の責任者に就任。中堅企業からスタートアップまでを幅広く、トータルでの組織人事コンサルティングに従事。2023年、投資・事業開発をおこなうインキュベーション推進室を立ち上げ、室長に就任。

宮本さん、白木さんの共著『組織X』の詳細は以下よりご覧ください

【書籍紹介】組織X|「エンゲージメント」日本一3連覇企業が語る、24のメソッド×事例

今では「毎日、会社に行くのが楽しい」が当たり前の会社に

−本日はよろしくお願いします。まずはメッセさんの事業について、簡単にお伺いさせてください。

メッセは、私の両親が創業した会社で、これまでに遊技事業を中心に成長してきました。

現在は、不動産・サービス・エンタメの領域を掛け合わせた、独自の「居場所事業」を展開しており、その地域だけにしかないお客様の「第三の居場所」を設け、日常に「楽しみ・居心地」を提供しています。

実際に直近では、サウナ、コワーキング、カフェといった施設運営を展開しています。


−「ベストモチベーションアワード」で日本一を3連覇されましたが、組織の特長についても教えてください。

一言でいえば「密度が高く、生産性も高い」組織だと思います。

ありがたいことに、「仕事をするのが楽しい」「毎日、会社に行くのが楽しい」と思ってくれている社員が多くいます。全員が同じ方向を向いて仕事に取り組んでおり、組織としての一体感が強いんです。

この前も、全社イベントで表彰されたベテランの社員がいたのですが、受賞コメントで「毎日仕事に行くのが楽しくて、キラキラさせてもらっています」と言っていました。

私は、このような組織力が強い組織を「密度が高い組織」と呼んでいます。密度というのは信頼関係のことです。強い信頼関係があれば、情報伝達、業務連携、意思決定など、あらゆる場面でのコミュニケーションコストを下げることができます。そのため信頼関係の構築は、こだわって綿密に設計しています。

そして、組織力の強さがそのまま生産性の高さにつながっています。今では売上が900億円を超えていますが、これに対してプロフィット部門が150名なので、1人当たり6億円の売上を創出しています。生産性はこの6年で3倍になりました。

信頼関係が強いというのは、ベースとしてその人に対する深い理解があるということです。暗黙の前提、共通言語など、言葉が少なくてもコミュニケーションが伝わりやすく、余計な根回しや気遣いが不要になります。

共通言語を例にすると、メッセさんの行動指針に「明るく前向きに」という言葉があるのですが、その言葉だけでは抽象度が高いじゃないですか。

でも、その裏側にある意味が全て言語化され共有されているので、「明るく前向きに」と言われたら一瞬で認識がすり合うんですよね。

メッセさんの主力事業は、一般的に人気業種だとは言い難い遊技事業です。それにも関わらず、「エンゲージメント」日本一を3連覇しているのは相当すごいことです。

その要因の1つが、経営理念や行動指針を詳細に言語化して全社員に浸透できていることです。ここまでやれている企業は、なかなかありません。

2009年に市況が一変し、組織の弱さが露呈、会社の雰囲気は最悪に

ただ、ここに至るまでには紆余曲折あり、当時を振り返ると「普通の会社」どころか「かなり劣勢の会社」でした。

というのも、2009年に遊技機の規制が強化された影響で、出店すれば売上が伸びる状況から一転しました。お客様の来店が減少し、売上も減少していったんです。

そのタイミングでコストを見直すべく希望退職制度を実施し、一気に50名の社員が退職しました。さらに、新卒採用もストップし、各種社内イベントも廃止しました。

その結果、筋肉質な組織にはなったのですが、引き締めだけを実施して多くの仲間が去っていったので、会社の雰囲気は最悪でした。私もその頃は毎日会社に行くのが嫌で、責任感だけでなんとかやれていた感じです。組織は空中分解寸前の状況だったと思います。

これまでは、社長・副社長を中心に大家族主義的な感じでやってきたのですが、それだけで組織運営の骨組みがなかったんです。一気にメッキが剥がれたというか、会社の弱さがかなり露呈したタイミングでした。

メッセさんの場合、業界の波にのって右肩上がりで急成長してきたので、「売上が落ちる」というショックが、普通の会社よりも何倍も大きかったのだと思います。

順調な企業ほど、売上が落ち込んだタイミングで「緊急事態だからなんとかしなきゃ」と、余計に重く受け止めてしまう傾向があります。

たしかに、過剰反応しすぎた感はありますね。今振り返ると、あそこまでやらなくてもよかったのかもしれません。

また、遊技事業は「強いビジネス」なんですよね。そのため、事業成長の勢いや、給与・待遇の部分を中心に魅力を感じて集まっている社員が多くいるわけです。

でも、そこが傾いてしまったので、想像を絶する速さで組織が崩れてしまった。

改革の一歩目として立ち返った「なぜ会社を経営しているのか?」という問い

−そこからどのように改革を進めていったのでしょうか?

社長・副社長・私の3人で話し合いを重ねていったのですが、行き着いたのは「なぜ私たちは会社を経営しているのか」という「Why」の部分でした。

この「Why」については、社長・副社長・私の3人全員に共通して、働いてくれている社員への感謝と恩返しの気持ちが強くありました。

そこから、純粋にその想いをそのままの言葉として文字化し、宣言することから始めました。それが今の経営理念となっている『私たちは、全従業員の物心両面の幸福を実現し人類社会の進歩発展に貢献します。』です。

メッセさんが経験されたような「クライシス」は企業にとって重要な機会なんです。「究極的には会社をたたむ選択肢もあり、継続するかどうか」という場面で、「なぜ継続するのか」という議論は絶対に起きるんですよ。

その時にメッセさんの場合は、経営陣3人の「Why」がすり合っていたことがすごく大きかったと思います。

また、それをちゃんと言葉にして社員に宣言し、経営理念にまでまとめ上げたこともポイントだと思います。「まあそうだよね」と頭の中で終わらせてしまう企業も結構あるんです。

会社を立て直すために、とにかく書籍を読み漁り、人と会い、様々な学びを得ていったのですが、たまたま私が稲盛先生の書籍『稲盛和夫の実学−経営と会計』に出会ったことと、同時期に社長・副社長が、稲盛先生の教えを学ぶ『稲和塾』を紹介されたんです。

そこで3人とも稲盛先生の考え方に出会い、感銘を受けました。

稲盛先生の提唱する「京セラフィロソフィ」は、「会社に賛同して集まってくれた、仲間のために経営をする」ということが核となっており、私たちの価値観と方向性が一緒だったのです。

そこから、「自分たちの考え方は間違っていない。稲盛先生の考えを貪欲に学んでいけば、会社は良くなる」「もうやるしかない!」と一気にスイッチが入ったんです。

ただ一方で、組織を具体的に改善していくノウハウや方法論が特にあるわけでもなく、抽象的な話しかできなかったんです。

そして、組織づくりを模索していく中で、リンクアンドモチベーションさんにお願いすることにしたんです。

その当時、リンクアンドモチベーションさんも急成長されていました。基幹技術「モチベーションエンジニアリング」の体系が出来上がっていましたし、毎年優秀な人材を採用していて、組織も事業も拡大し続けていました。

それを横目に見てきていたので、リンクアンドモチベーションさんから学ぼうと、理念策定から人事制度構築、人材育成、組織改善まで、もう一切合切お願いしたんです。

当社は従業員エンゲージメント向上のためのサービス「モチベーションクラウド」を提供しており、20分程度の簡単なサーベイで、組織のエンゲージメント状態をスコア化して見ることができます。

当時のメッセさんのエンゲージメントスコアは55でした。エンゲージメントスコアは偏差値で出しているので、このスコアは平均的な数値といえます。今のメッセさんは80をゆうに超えている状態なので、いかに改善されてきたかがわかると思います。

そのサーベイの中に「理念戦略」に関する項目があります。稲盛先生の“理念を大切にする経営思想”を実践しているのであれば、当然そこの項目の数値が高くなっているはずですが、実はそこまで高くはなかったんです。

ふたを開けてみると、「理念戦略」の項目に対しては「期待度は低く、満足度が高い」という状態で、社員からすると「お腹いっぱい」になっていたんです。

理念の本当の意味をまだ社員が咀嚼しきれていない一方で、経営陣からの発信が非常に多いという状況です。「よくわからないけど、すごく熱心に発信しているな」という感じですね。

これは、経営と現場の間に大きな距離があることを意味します。

当時は社員からすると、宮本さんは“宇宙人”みたいな感じだったと思います。「私たちとは違う。なんかすごいことを言っているけど、そもそもが違うから理解できないし、理解する必要はない」という雰囲気がありました。

当時は、私と社員はつながっていなくて、「これは大事なんだよ」といっても意図が伝わっていませんでした。今は社内の共通言語があるからこそ、円滑なコミュニケーションが成り立ちますが、当時はそれがありませんでした。

「宮本さんがなんか言ってるけど、わかってないって言ったら怒られるから、わかってるふりをしなくちゃ」という感じでしたね。

ですので、この経営と現場の距離を埋めることが重要だったんです。

「距離感がある」ことに加えて、「温度差」もありました。

当時のメッセさんが掲げていたのは、「東京でナンバーワンの遊技事業会社になる」というものでした。でも、社員にそれを伝えても、鼻で笑う人がいたんです。

宮本さんが部屋から出て行った後に、「いや、そんなのできっこない」と言いだす社員もいました。

そのような状況に対して、何が1番大事なポイントとなるのか。これは、経営と現場の間をつなぐ「結節点」となる存在でした。

決してぶれることがない理念・指針「メッセフィロソフィ」が誕生

どれだけ企業理念・人事制度といった仕組みをつくりこんでも、経営と現場をつなぐ「結節点」がないと意味がありません。ですので、最初に実施したことは「会社の中に通訳者をつくる」ことです。

はじめのうちは、外部のリンクアンドモチベーション、つまり私が宮本さんの通訳者になりました。「宮本さんはこういう意図で言っているんです」と、外部の人間として客観的な立場で解説をしていきました。

そうすると、「社外の人も言っているんだから、宮本さんは正しいんだ、信じていいんだ、自分たちも真似してやるべきことなんだ」と、徐々に信頼度が上がり、共通認識が生まれ、ベクトルが合ってくるようになりました。

そのタイミングでもともとあった経営理念に加えて、経営指針・行動指針を半年くらいかけてつくりあげていきました。

こうして、以下の3つを「メッセフィロソフィ」として体系化し、あらゆる判断をおこなう上での社内の共通言語となるものをつくりあげました。

  • 経営の目的(Why)を定めた「経営理念」
  • 会社の判断・行動の拠り所となる「経営指針」
  • 個人の判断・行動の拠り所となる「行動指針」
メッセフィロソフィ

経営指針に関しては、「マズローの欲求階層説」をもとに、「対従業員」「対顧客」「対地域住民」「対産業従事者」「対日本在住者」で構成されており、判断の基準となる経営指針を30個に分けて整理しています。

人間の5大欲求を土台に、かなりつくり込んだので、何があってもぶれないし、崩れることはないと自負しています。

行動指針は7つあるのですが、PDCAサイクルに合わせて配置しています。

また、現場の社員が日々実践するものなので、わかりやすさにもこだわりました。社内では良い例、悪い例を設けて、ぱっと見てわかるように示しています。

メッセフィロソフィもかなりつくりこみましたが、メッセさんのすごさは結節点となるミドルマネジメント層にもあります。学ぶ意欲と実践速度が半端じゃないんです。

例えば、私が講師となって実施している研修では、「伝道師として私になったつもりで、今日学んだことを店舗の皆さんに教えてください」と伝えているのですが、研修が休憩に入った1秒後に全員チャットを開いて、その内容を店舗のメンバーに伝えているんです。もう即実践です。

宮本さんが「これ大事だから、すぐやろう」と言ったことに対しても、直後にその内容を店舗に送っているんです。そして、店舗に帰ったら即実践をしてくれています。この動きがベースにあって、かなりびっくりしました。

前提として、一生懸命で、がむしゃらに仕事をする社員が多いです。

あとは、自分たちの現状やバックグラウンドに対して自信を持てていなかったので、それを穴埋めしたいという気持ちも強くあって、「ちゃんとした情報や知識」に飢えていたんです。

当時は、社員全体に「外に出たら私たちは通用しないし、大したことない」という空気がありましたが、今はみんなメッセにプライドを持ってくれていて「私たちは立派なんだぞ」という雰囲気が醸成されています。

そういった背景もあって、全社員がスポンジのように吸収してくれました。これは本当にありがたかった。

例えば、経営から何かしらのメッセージを発信した際、その情報の純度が100だとします。陥りがちなケースだと、そこからミドルマネジメント層が10程度しか理解できず、現場に落とし込んでも伝わらずに、最終的に1しか実践されない。そんなことが往々にしてあります。

それに対して、メッセさんの場合は情報の伝達度が非常に高いんです。ミドルマネジメント層が本気で吸収するので、80ぐらいの純度で理解して現場に落とし込み、現場は50ぐらいの実践度になる。同じことを伝えても50倍くらいの開きが出る感覚です。

ご支援した内容を振り返ると、奇をてらったことをやったわけではなく、非常にオーソドックスな内容です。ただ、その吸収度と実践度が桁外れに高かった

それがメッセさんがここまで大きく変革できたポイントだったと思います。

理念浸透のコツは、「絞ってとにかく徹底的にやり抜く」こと

−メッセフィロソフィの浸透に向けて、具体的にどのような施策をおこなっていったのでしょうか?

まず前提として、組織施策においては「何をやるか」以上に、「どこまで愚直にやり抜けるかが重要だと考えており、そこに非常に重きをおいて実践していきました。

組織施策の例として、1つ目が「全社員1on1」です。これは私が年間を通して、毎日全社員と朝イチ15分の1on1をおこなうもので、自身の最重要業務の1つと位置づけています。1on1では、現在の業務や心と体の健康状態、家族のことなど幅広く聞いています。

また、この1on1を通して現場の社員たちと話すことで、前述の経営が発信した「100の情報」の純度が、現場ではどれほど減衰しているのか、いないのかも確認しています。

2つ目の施策は、年間3,000個生み出される理念体現ストーリーです。これは、アルバイトを含めた全社員に毎月1回作成してもらっているものです。

毎月テーマとなる経営指針を設けて、そのテーマの体現についてストーリー形式で記してもらい、その中から「物語大賞」を選出し、全社員の前で表彰しています。

2016年から開始していますが、毎月必ず1人1枚書いてもらっているので、これまでに累計30,000個以上のストーリーが生まれています。

普通に考えたら、経営業をしながら全社員と毎日1on1なんてできないですし、しかも朝イチという脳が一番元気なゴールデンタイムにやっているわけです。

口で言うだけではなく、実際に最重要業務として実行しているので、その本気度が伝わりますよね。

このように、経営陣が本気で率先垂範をして、やり抜くことにこだわっているので、ミドルマネジメント層にもその想いが伝播し「フィロソフィの浸透・体現に本気で向き合わないといけない」となり、組織施策がしっかりと運用されていくのだと思います。


−ちなみに、これまでの組織変革を通して、実際に感じた大きな変化はありますか?

採用に関しては、採用力のレベルが2段階くらい上がった気がします。採用母集団も圧倒的に増えましたし、採用競合も明らかに変わってきています。

もともと社員の多くはアルバイト出身でした。それが今や、大企業やメガベンチャーでも活躍できそうな一流大学の優秀な方がエントリーしてくれて、最終的に当社を選んでくれるようになっています。


−採用の仕組みを大きく変えたりしたのでしょうか?

そういうわけではありません。単純に会社としてのレベルが上がっているのだと思います。

メッセでは新規事業を多く手掛けるようになってきていますが、これは採用のためにやっている側面も大きいんです。

もちろん、顧客に新しい体験をしてもらいたい想いが強いのですが、優秀な方を採用するために新規事業をつくっている感覚も強くあります。

あとは離職についても変わってきましたね。昔は離職率が15%くらいありましたが、今は5%〜10%に減りました。さらに、離職理由も大きく変わりました

昔の離職理由は、「一緒に働く同僚が嫌だから」「仕事がつらいから」「もっと給料が良いところに転職する」といった理由がほとんどでした。

それが今の離職理由を見ると、「理念やビジョンに共感し切れなかった」という理由が多く、本質的な考え方が合わなかったケースがほとんどです。

ですので、採用基準も「当社と考え方が合うかどうか」を重視して見ています。「超優秀だけど、考え方への共感度が低い、うちっぽくない」という方は、採用を見送ることにしています。


−これまでを振り返ってみて、「やって良かった」と感じるものはありますか?

当たり前のことを当たり前に徹底してやり抜く」ことは、やはり良かった点ですね。

そもそも経営層の我々からして大した人間の集まりじゃないという変な自負があるので、だからこそ先人の英知を真似て、それを徹底的にやりきることができます。

メッセのフィロソフィの中には、「明るく前向きに」「謙虚で素直に」というフレーズがあるのですが、例えば「ありがとう」と伝えることはすごく当たり前のことなのに、なかなかできない。でも、その当たり前を徹底することが大事なんです。

稲盛先生や世の中の成功している方々は、当たり前でどこでも通用する大事な考え方を説いています。その言葉をベースにフィロソフィを構成し、その言葉を信じて徹底的にやり抜く。それは本当にやってよかったことですね。

よく、「What(何をするか)」「How(どのようにやるか)」において大事なポイントとして伝えているのは、「やることを絞る」ことです。

組織変革やエンゲージメント改善で伸び悩む企業は、あらゆるソリューションに手を出してしまい、手を広げすぎた結果、中途半端な成果になってしまいます。

メッセさんは、「リンクアンドモチベーションから徹底的に学んで骨の髄まで吸収してやろう」みたいな強い意志を感じましたし、色々な施策をやるのではなく絞ってやったことが大きかったと思います。

メッセの組織事例をモデルとし、これからの組織のあり方を提示したい

−最後になりますが、お二人の今後の展望についてお伺いさせてください。

メッセでは、次の30年を見据えて「経営の民主化」をしていきたいです。

社長・副社長・私の体制から、徐々に経営の意思決定権を従業員に権限委譲していこうと考えています。

今いるメンバー、これからジョインしてくるメンバーが自分たちで経営できる体制が理想で、そのために採用にも一層注力していますし、育成面でも「経営者育成プログラム」を始めています。

また、私たちは「居場所革命」というビジョンのもと、具体的には「孤独化の解消」と「極上体験の民主化」の実現を考えています。

「孤独化の解消」は、現代では個人化や核家族化、過疎化等の影響で、孤独な環境が増えています。その孤独を解消できるような場所をつくるということです。

「極上体験の民主化」は、「極上の体験」ができる人って経済的余裕のある一部の層に限られるじゃないですか。それを民主化して、多くの人たちに極上の体験を届けていきたいと思っています。

「理想の組織ってなんですか」「理想の組織をつくっている会社はどこですか」と聞かれても、みなさんぱっとでてこないのではないでしょうか。

でも、そのモデルケースの1社がメッセさんだと思いますし、さらに進化を遂げていくはずです。「メッセさんみたいな会社を目指したい」という企業を増やしていきたいですね。

21世紀の組織のあり方にはまだ解がありません。

今回メッセさんとの共著『組織X』では、では、「PCマトリクス(「経営の4P」とそれらをつなぐ「4つのC」)」という考え方をまとめています。これをこれからの組織のあり方の1つとして、もっと多くの企業に伝えていければと考えています。

宮本さん、白木さんの共著『組織X』について

普通の企業でも、最高に幸せな組織をつくれる!

「何のために経営しているのか、わからない」
「現場が疲弊し切っている」
「社員が何を考えているのか、わからない」
「いい人財が育たず、業績も上がらない」
「社内のコミュニケーションがうまくとれていない」

こうした悩みを抱える経営者やビジネスパーソンは、数多くいらっしゃるでしょう。そうした課題をすべて解決し、強みへと変えることができる。

その原則を24個にまとめた新時代の理論『組織X』として、わかりやすい事例とともにお伝えする1冊です。

【書籍紹介】組織X|「エンゲージメント」日本一3連覇企業が語る、24のメソッド×事例

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